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すでに、BPでも紹介されているように、12月11日、東京佼成ウインドオーケストラ(TKWO)の新譜『フェスタ』が発売される。
幸い、発売前に試聴する機会を与えていただいたので、紹介がてら、聴きどころなどをお伝えしておこうと思う。
周知のように、TKWOは、1990年より「ジャパニーズ・バンド・レパートリー」シリーズと題し、邦人作曲家による吹奏楽曲、管打楽器アンサンブル曲を積極的に録音、リリースしつづけている。
アルバム・タイトルのみをリリース順に挙げると、『深層の祭』『ぐるりよざ』『能面』『火の伝説』『行列幻想』『シグナルズ・フロム・ヘヴン』『トーンプレロマス55』『飛天の舞』と、現時点で8タイトルを数える。
どれも、歴史的に意義ある曲や最新の曲、また、吹奏楽曲や管打楽器アンサンブルに縁のなさそうな作曲家による珍しい作品など、たいへん貴重な収録曲が多く、国内吹奏楽ディスクとして異彩を放っている。
特に、1999年にリリースされた、『トーンプレロマス55〜黛敏郎管楽作品集』は、衝撃的なディスクだった。
まず、指揮に、黛の盟友にして、日本を代表する指揮者・岩城宏之が起用されたこと。
そして、当時すでに故人となっていた黛敏郎の、主要吹奏楽(管打楽)作品を網羅し、TKWOが凄絶ともいえる名演を繰り広げていること。
また、日本音楽界の寵児として、時代を駆け抜けた黛作品が、いま聴いてもまったく古びていない、”永遠のモダン”であることを、世間に再認識させたこと(ぜひ、多くの方々に聴いていただきたい。「天才とは、こういう人のことを指すのか」と、唖然呆然となるはずだ)。
こういった様々な点が評価され、このディスクは、その年の芸術祭優秀賞を受賞している。
◆同時代の管楽合奏
今回紹介する『フェスタ』は、上述のディスクを生み出した、岩城&TKWOコンビが再び取り組んだ意欲作だ。「ジャパニーズ・バンド・レパートリー」シリーズの、第9作目にあたる。
今回のコンセプトは、ライナーノーツの言葉を借りると、「同時代の管楽合奏」。
つまり、武満徹の曲を除くと、すべてが、1900年以降に発表された、新しい作品群なのである。曲目は、以下のとおり。
1.フェスタ(2004版) 作曲/北爪道夫(改訂版初演・初録音)
2.祝典序曲「鳥たちへのファンファーレ」op.90-1 作曲/吉松隆 (初録音)
3.ユーフォニアム協奏曲 作曲/天野正道 (本邦初演・初録音/Euphソロ 外囿祥一郎)
4.スノー・ホワイト 作曲/田村文生(福島県立磐城高等学校委嘱作品 初演・初録音)5.室内協奏曲 作曲/武満徹
6.巫楽:管楽と打楽器のためのヘテロフォニー 作曲/西村朗 (94年度版本邦初演・初録音)
吹奏楽ファンなら、これら作曲者のほとんどは周知であろう。
北爪道夫は、2004年のコンクール課題曲『祈りの旅』の作曲者。曲は、鹿児島ウインドアンサンブルの委嘱作品。
吉松隆は、「調性やメロディのある」現代音楽を追及し、多くの作品のモチーフに「鳥」を掲げている。今回の「鳥たちへの〜」は、渋谷区政70周年を記念して、渋谷区青少年吹奏楽団によって初演された曲だという。ご本人は、「吹奏楽には関わりたくない」旨の発言をしているので、これはある意味、たいへん貴重な作品である。
天野正道は、もう説明不要。『GR』『BR』である。ユーフォ・ソロに、人気奏者・外囿祥一郎が迎えられている。曲は、その外囿自身の委嘱により、英国王立ノーザン音楽院バンドで初演された(かの、天才ユーフォ奏者スティーヴン・ミードのいるバンド)。3部構成で、18分余の曲だ。
田村文生は、1994年のコンクール課題曲『饗応夫人』で話題になった。この曲は、名門・磐城高校吹奏楽部(福島)の委嘱作品だ。
武満徹は、今回の6作品の作曲家中、唯一の故人。曲は、1955年に、実験工房演奏会で、N響メンバーによって初演されたものだという。
最後の西村朗は、アジアの民族音楽をモチーフにした音楽を多く発表している。曲は1990年に墨田区の委嘱で、東京吹奏楽団により、両国の国技館で初演された。
作曲にあたってのイメージも、この「国技館」がヒントになったようだ。
◆素晴らしい解説
かように、このディスクは、吹奏楽以外の分野でも活躍している一級邦人作曲家が、吹奏楽・管打アンサンブルの機能を最大限に発揮させた、ユニークな曲が並んでいる。
まさに、コンセプトにある「同時代の管楽合奏」を知っておくに、最良の実例となるであろう。普段、なかなか聴く機会がない地方産の委嘱作品を知る、いいデータでもある。
演奏は、まことに快演・名演。ディレクター&エンジニアを、おなじみ小貝俊一がつとめ、明晰な響きを記録させることに成功している。このあたりは、とにかく聴いていただくしかない。
なお、こうやって、私ごときが偉そうに解説・紹介を書いているが、これらの多くは、ライナーノーツの筆者・中橋愛生氏の原稿からの受け売りである。
というのは、このディスクは、中橋氏の解説が、実に丁寧で、データ面も充実していて、素晴らしいのだ。
中橋氏は、東京音大・大学院を卒業後、吹奏楽の世界を中心に活躍している作編曲家・指導者・研究家である。
特に、本ディスクにも収録されている西村朗に師事したためか、『巫楽』の解説では、まことに見事な楽曲解説・分析が披瀝されている。
同じ、音楽についてものを書いている一人として、頭の下がる思いがした。
そういう点でも、この『フェスタ』は、実に貴重で、重要なディスクである。ぜひ、多くの方々に購入して、聴き込んでいただきたいと願っている。
(余談だが、スパークの人気曲に『フィエスタ!』というのがあり、チック・コリアには『ラ・フィエスタ』がある。これらを収録している吹奏楽ディスクもいくつか出ているので、店頭購入の際に、間違えないでいただきたい。吹奏楽に詳しくない店員さんにとっては、どれも同じに聞こえておかしくない。
今回のは、佼成出版社の『フェスタ』である!) Text:富樫哲佳
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