2005年7月5日、ピーターに送った最新作『地底旅行』のウィンド・オケ版委嘱に関する質問メールへの返答は、その日のうちに送られてきた。
『ディアー、ユキヒロ。
あなたの質問に関する返答です。
1)イエス、もちろん、大阪市音楽団(市音)が録音を考えてくれているとしたら、とてもうれしく思います。(その場合)、8月にはトランスを始めていることでしょう。
2)もし、彼らが財源を見出すことができるなら、それにこしたことはありません。それが不可能だった場合、もちろん、あなたは委嘱することができますが、私はあなたから一切の代価を得たいとは思いません。それは私の贈り物です。私は、あなたの名を委嘱者としてスコア上に記すことでしょう。
3)私は、心からセッションに参加したい。レコード会社は、飛行機代を工面してくれるでしょうか。もし、ダメでも、自分で作り出すでしょう。
私は、市音の『ザ・レッド・マシーン
(The Red Machine)』(CD: ニュー・ウィンド・レパートリー2005、大阪市教育振興公社、OMSB-2811)の録音にとても感動しています。彼らは、世界最高のバンドのひとつです。私は、新作の演奏を彼らが最初に行うことについて、最大限の保障をしたいと思います。
ピーター』 |
いつもの軽いタッチではなく、典型的キングズ・イングリッシュの敬語で書かれたこのメールから、ピーターの市音に対する敬意と、『地底旅行』のトランスにかける意気込みが感じられた。
これだけの回答をもらった以上、こちらもそれに応えねばならない。「ニュー・ウィンド・レパートリー」が、大阪市振興公社制作の市音自主CDというのは、うまく伝わっていなかったようだが、そんなことはどうでもいい。飛行機代や宿代の負担も、どうってことない。真夜中なので市音の方々への連絡はできなかったが、ピーターにはすぐに返信を入れることにした。
『ディアー、ピーター
とても素早い、そして、とっても暖かい返答、ありがとう。
大阪市音楽団とは、この件についてすぐに協議に入ります。しかし、少なくとも、これだけは言っておきましょう。飛行機代や宿代については、心配ご無用。こちらでなんとか工面するから。
この件に関して、常にアップ・デートの連絡を入れます。
もう一度、ありがとう。心より、ユキヒロ』 |
さあ、忙しくなるゾ!!
翌日、市音プログラム編成の田中 弘さんに、ピーターの返答を伝える。田中さんは、すぐにプログラムの会議で“レコーディング候補”にするか否かを議題に上げてくれることになった。
しぱらくして、結果を窺いに市音に行くと、ピーターの『地底旅行』は、周囲一決でCD「ニュー・ウィンド・レパートリー2006」の収録曲に決まっていた。聞くと、いろいろな意見がそれをあと押ししたようだった。なかでも、ユーフォニアム奏者の三宅孝典(みやけ たかのり)さんのつぎの発言は会議を大きく支配したようだった。
『“宇宙”のあとに“地底”というのは、面白い!!』
作曲者が実際にやって来て、フィリップ・スパークの『宇宙の音楽 (Music
of the Spheres)』を世界初演し、今度はピーター・グレイアムが来て『地底旅行(Journey
to the Centre of the Earth)』を世界初録音するというのは、プレイヤー冥利につきる、というのだ。
市音には、おもしろい人たちがいる。
(つづく)
(2007.10.09)
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