吹奏楽マガジン バンドパワー 吹奏楽マガジン バンドパワー
スペシャル >>インデックス
樋口幸弘の「ウィンド楽書(ラクガキ)ノ−トファイル」

<Version I> ブラス・バンド版 (Brass Band Version)

[作曲年]

2005年

[作曲の背景]

 イングランドのブラス・バンド、ブラック・ダイク・バンド(The Black Dyke Band)の委嘱による。折りしも、フランスの小説家ジュール・ベルヌ(Jules Verne, 1824-1905)の没後100周年という区切りの年にあたり、同題のベルヌの小説(1864)に題材を求め、2005年3月に完成。スコアには「To Ryan and Megan」と、この小説の大ファンである作曲者の息子ライアンと娘メーガンにあてたメッセージが書き込まれた。正式タイトルは、『JOURNEY TO THE CENTRE OF THE EARTH -Symphonic Scenes for Brass and Percussion』。

[編 成]

E♭ Soprano Cornet
B♭ Cornets
 Solo Cornets<I、II、III、IV>
 Repiano Cornet
 2nd Cornets<I、II>
 3rd Cornets <I、II>
B♭ Flugelhorn
E♭ Tenor Horns(Solo、II、III )
B♭ Baritones(I、II)
Trombones (I、II、Bass)
B♭ Euphoniums (I、II)
E♭ Basses (I、II)
B♭ Basses (I、II)

Percussion 4 players:
Timpani (Doubl.: Triangle、Tam-Tam、Suspended Cymbal、Effect CD)
Percussion I (Bass Drum、Tam-Tam、Hi-hat Cymbal、Snare Drum、Triangle、Suspended Cymbal、Clash Cymbals)
Percussion II (Tam-tam、Glockenspiel、Xylophone、Suspended Cymbal <large>、Tubular Bells, Bass Drum)
Vibraphone

[楽 譜]

 2005年9月、イギリスのGramercy Musicから出版。ISMN番号:(フル・スコア:M-57017-084-5、スタディ−・スコア:M-57017-085-2、パ−ト:M-57017-086-9) 。「To Ryan and Megan」との献辞がある。

[初 演]

 2005年4月30日、オランダ、フローニンゲ(Groningen)のマルティンプラザ・ミデン・ハル(Midden Hall, Martinplaza)で開催された2005年ヨーロッパ・ブラス・バンド・コンテスト(The European Brass Band Contest 2005)のチャンピオンシップ部門2日目において、イングランド代表、ニコラス・チャイルズ(Dr.Nicholas Childs)指揮、ブラック・ダイク・バンド(The Black Dyke Band)が自由選択曲として世界初演し、100点満点中98ポイントを獲得。ブラック・ダイク・バンドは、前日のセット・テスト・ピース(課題)の演奏で挙げた96ポイントと合わせて合計194ポイントとなり、2位に7ポイント差をつけ、創立150周年の記念すべき年にヨーロッパ・チャンピオンの座に返り咲いた。

<Version II>ウィンド・オーケストラ版(Wind Orchestra Version)

[完成年]

2006年

[背 景]

 大阪市音楽団企画・演奏のCD『ニュー・ウィンド・レパートリー2006』(大阪市教育振興公社、OMSB-2812)のための収録予定曲として、樋口幸弘の委嘱により、Version Iをウィンド・オーケストラ用にオーケストレーション。2005年秋に着手され、2006年1月にオーケストレーションを完成。インストゥルメンテーションの変更により、正式タイトルは『JOURNEY TO THE CENTRE OF THE EARTH -Symphonic Scenes for Winds and Percussion』となった。

[編 成]

Piccolo
Flutes(div.)
Oboe
Bassoons(div.)
E♭ Clarinet
B♭ Clarinets(I <div.>、 II、 III)
E♭ Alto Clarinet
B♭ Bass Clarinet
Bassoons(div.)
E♭ Alto Saxophones(I 、II)
B♭ Tenor Saxophone
E♭ Baritone Saxophone
B♭ Trumpets (I<div.>、II、III)
F Horns(I、II、III、IV)
Trombones (I、II、Bass)
Euphoniums(I、II)
Tubas <div.>
String Bass
Piano
Timpani
Mallet Percussion
(Xylophone、Glockenspiel、Vibraphone、Tubular Bells)
Percussion
(Bass Drum、Snare Drum、Clash Cymbal、Suspended Cymbal、Hi-hat Cymbal、Tam-Tam、Triangle)

[楽 譜]

 2006年5月、イギリスのGramercy Musicから出版。ISMN番号:(フル・スコア:M-57017-087-6、パ−ト:M-57017-088-3)。スコア・タイトル・ページには、「This wind transcription was commissioned by Yukihiro Higuchi. The premiere recording was given by the Osaka Municipal Symphonic Band (Japan), Kazuyoshi Akiyama, Conductor, February 2006」と、委嘱と録音に関しての特記がある。

[初 演]

 2006年2月8日(水)、コラボレーションのために来日した作曲者の立会いのもと、京都府八幡市の八幡市文化センター大ホールにおける大阪市音楽団のレコーディング・セッションにおいて。指揮、秋山和慶(あきやま かずよし)。レコーディングではあるが、作曲者はこの日の演奏をオフィシャルな初演とし、レコーディング用に準備されたスコアに自筆サインとともにその旨を記入して委嘱者に手渡した。


ピ−タ−・グレイアム/Professor Peter Graham

 1958年12月5日、スコットランドのラナ−クシャ−(Lanarkshire)に生まれた。一家は音楽一家で、母親からピアノのレッスンを、そして父親がバンドマスタ−をつとめていたこの地方の救世軍のブラス・バンドでコルネットを学び、その後、エディンバラ大学で本格的に音楽を学んだ。在学中からレイ・ステッドマン=アレン(Ray Steadman-Allen)やエドワ−ド・グレッグスン(Edward Gregson) といった作曲家に自ら進んでコンタクトし知己を得て、1980年の同学卒業後は、ロンドン大学ゴ−ルドスミス・カレッジ(Goldsmith College,University of London)のグレッグスンのクラスでさらに作曲の勉強を続け、作曲で博士号を得た。1983〜1986年の間、アメリカのニューヨ−ク市に住み、フリ−ランスの作・編曲家として救世軍イ−スタン・テリトリ−・ミュ−ジック・ビュ−ロ−で楽譜編集の仕事にたずさわった他、救世軍ニュ−ヨ−ク・スタッフ・バンド(The Salvation Army New York Staff Band)のスタッフ・アレンジャ−をつとめた。イギリス帰国後、ロンドンの救世軍インタ−ナショナル・ミュ−ジック・エディトリアル・デパ−トメントの先任音楽編集者に就任し、1987〜1991年の間は救世軍リ−ジェント・ホ−ル・バンド(The Salvation Army Regent Hall Band )のバンドマスタ−をつとめた。この頃まで、作・編曲の多くは主に救世軍バンド用のものだったが、日本でも知られている「ディメンションズ(Dimentions)」(1983)の出版以降、救世軍以外のブラス・バンドのための作品も発表されるようになり、「エッセンス・オブ・タイム(The Essence of Time )」(1989)や「モンタ−ジュ(Montage )」(1994)など、世界的に演奏されるレパ−トリ−も多い。一方で、BBCテレビやラジオのアレンジャ−としても仕事をこなすようになり、BMG/RCA Red Labelからの委嘱により作編曲を担当した世界的なシロフォン奏者エヴリン・グレニ−(Evelyn Glennie)のCD "Reflections in Brass" は、アメリカのロサンジェルスで授賞式が行なわれた "1999年グラミ−賞(1999 Grammy Award)"において "ベスト・クラシカル・クロスオ−ヴァ−・アルバム(Best Classical Crossover Album) "に選ばれた。近年は、ウィンド・バンドのための作編曲にも精力を傾けるようになり、アメ リカ空軍ワシントンDCバンドの委嘱作でアメリカ・バンドマスタ−ズ・アソシエ−ションの "ABAオストウォルド作曲賞2002 (2002 ABA/Ostwald Award)"に輝いた「ハリスンの夢 Harrison's Dream)」(2000)の成功により、さらにインタ−ナショナルな注目度が高まった。2003-2005年の間、ロンドンのコールドストリーム・ガーズ・バンド(The Regimental Band of the Coldstream Guards)の座付き作曲家(Composer-in-residence)となり、この間、大ヒットとなった「ザ・レッド・マシーン(The Red Machine)」を作曲したが、これは歴史あるこのバンド初の一般市民からの登用だった。

 1994年に自身の出版社グラマ−シ−・ミュ−ジック(Gramercy Music)を設立。現在、イングランドのチェシャー(Cheshire)に住まいし、マンチェスタ−のソルフォ−ド大学(University of Salford )の作曲科教授(Professor of Composition)として、多忙な毎日を送っている。

 

(c)2006, Yukihiro Higuchi/樋口幸弘
>>インデックスページに戻る
>> スペシャルトップページに戻る
jasrac番号 吹奏楽マガジン バンドパワー