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■ハリスンの夢
収録CD
(ブラスバンド)
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樋口幸弘の「ウィンド楽書(ラクガキ)ノ−トファイル」
ファイル・ナンバ−12
ピ−タ−・グレイアム:ハリスンの夢
HARRISON’S DREAM
(Peter Graham)
File No.12-12:日本初演直前、作曲者来日ガセ情報飛び交う!!

 大阪市音楽団(市音)専用の楽譜セットやアメリカ空軍ワシントンD.C.バンドの公式CDも無事到着。2002年の暑い夏が過ぎ、秋の声をきく頃になると、BPラジオのタイトルも“ウィンド・トップ・ランナー”と決定し、『ハリスンの夢』日本初演へ向けての周辺準備は本格始動を始めた。

 この間、東京佼成ウインドオーケストラと客演指揮者ドナルド・ハンスバーガー(Donald Hunsberger)がシカゴのミッドウェスト・クリニックのコンサートでこの作品を演奏することで合意。これに伴い、同ウインドはアメリカ演奏旅行直前の12月10日の第75回定期演奏会で急遽この作品を取り上げることが決定。指揮者は、ダグラス・ボストック(Douglas Bostock)。一方の市音も、日本初演を行う第85回定期演奏会の内容をプレス・リリース。それに先立ち、解説執筆の依頼を受けるもいつものように丁重にお断りし、その結果、少々筆不精気味のピーターが自分で答えずにこちらに振ってきたこともあって両定期の解説執筆者から取材を受けるはめに、などなど、日々のハードワークで時間がとれないにもかかわらず、筆者の周囲は相変わらず騒々しい。

 しかし、そういった案件は、忙しくても事務的にカタがつくのでいいが、10月の半ばになって、出所不明のある噂が飛び交ったのには正直閉口した。それが、「“ハリスンの夢”の日本初演を聴くために、作曲者のピーター・グレイアムが大阪にやってくることになった!!」という、とんでもないデマ情報だったから!!

 最初の問い合わせの電話は、10月15日、佼成出版社の水野博文さんからだった。---------- 『今、ウインド(東京佼成ウインドオーケストラのこと)の事務所で聞いてきたんですが、グレイアムさん聴きに来られるんですって!! 急遽、ウインドとも相談して、マネージャーともども市音さんの演奏会へ4人でおじゃますることにしました。ついては、宿泊先などご存知でしたら、教えていただきたいんですが・・・。』

 寝耳に水の話だったので、本人に確認すると約束。電話を切ってから数分後に、今度は大阪市音楽団の延原弘明さんからの電話。--------- 『佼成さんから、グレイアムさんが来られるって聞いたんですが、ホンマ(本当)ですか?  他からも問い合わせが入ってますし。そうでしたら、ウチ(市音)としましても初演の楽譜もいただいていますので、演奏会後のパーティーなど、いろいろ準備しないといけませんので・・・。あちら(東京佼成)さんも、大勢できはる(来られる)て言うてはりますし(言ってらっしゃいますし)・・・。ホンマやったら、すぐ動かなあきません(すぐに動かないといけません)ので。』

 筆者の知らないところで何かが起こっていることはもう確実だった。すぐに真相を確認する必要があったので、早速、ピーターにメールを打つことにした。件名は「いい噂」。

 『ディアー・ピーター。今日、東京佼成から、大阪市音楽団による“ハリスンの夢”の日本初演を聴くために作曲者が大阪に来ることになったという報せを聞いた。これは、本当のいいニュースなのか、それとも単なるデマなのか。すぐ確認したい。ユキヒロ』

 驚いたのか、返信はすぐにあった。

 『ディアー・ユキヒロ。これは奇妙なことだ。というのも、数分前、同じ内容のメッセージをダグラス・ボストックから受け取ったところだったからだ。しかも、ソルフォード(大学)の私の教え子がそう言ったという内容だった。残念ながら、それは事実ではない。どうしてそんな噂がたったかは知らないが、たぶん数日前のことだろう。実際、大学の日程が一杯で、とても無理な話なんだが・・・。』 
 
  ちょっと怒っている。しかし、ここまで読んでピーンと来た。どう考えてもこれは東京発の噂に違いない。そこで、この根も葉もない噂の撲滅と真相を確かめることをピーターに約束して交信を終了。

 市音と佼成のいろいろな関係者に電話を入れ、噂を打ち消すと同時に事情を聞いていく内に、こんどの噂の発信源をほぼ特定。ピーターにも確認した情報を送る。

 これにて一件落着と思いきや、やや遅ればせながら、バンドパワーのコタロー氏から、『今、ブラスバンドをやっている人の間で、ピーター・グレイアムが来るって大騒ぎになっているんだけど、これって本当?』との確認の電話。

 あ〜あ。もう、うんざりだ。このガセネタを撒き散らしたご本人は、自分が不用意に発したことが、こんな大騒動に発展しているのを知っているのだろうか。

 みなさん、未確認情報にはご注意を!!

▲『ハリスンの夢』が日本初演されるされることを伝える大阪市音楽団の定演チラシ

(つづく)


(c)2008,Yukihiro Higuchi/樋口幸弘
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