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■ハリスンの夢
収録CD
(ブラスバンド)
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樋口幸弘の「ウィンド楽書(ラクガキ)ノ−トファイル」
ファイル・ナンバ−12
ピ−タ−・グレイアム:ハリスンの夢
HARRISON’S DREAM
(Peter Graham)
File No.12-06 :始動!! 大阪市音楽団

 大阪市音楽団プログラム編成のリーダー(現、市音副団長)の延原弘明(のぶはら ひろあき)さんから『ハリスンの夢』について電話が入ったのは、バンドパワーのコタローさんと深夜にこの曲を堪能した数日後のことだった。

 延原さんは、まず音楽全体の感想を述べられた。 

 『スコアと音源ありがとうございました。早速、みんなで聴かせてもらいました。それにしてもエグい(ものすごい)曲ですなー。これ、ホンマ(本当に)エア・フォースかいなー、と思うくらいバラバラになってるところがあって。 まさに空中分解一歩手前ですなー。“グレード7”と書いてあるのが、ホンマ(本当に)、よー(よく)分かりますわー。しかし、曲については、みんな面白がってましたよ。』

 実は、深夜の鑑賞会の翌日、ピーターから送られてきたCD-Rは、同時に受け取ったブラス・バンド版スタディ・スコア(今では絶版)とともに、そのまま市音プログラム編成の手に渡っていた。なぜなら、年初に受け取った Gramercy のカタログにいち早く反応し、“可能ならば、ぜひとも2002年秋の定期演奏会で演奏したい”との申し出があったからだ。そして、曲全体を聴いた市音サイドの印象は、どうやら、無茶苦茶良かったようだ。

▲ブラス・バンド版スタディ・スコア(絶版)

 

 延原さんは、こう続けた。

 『カタログには“2002年2月出版”と印刷されてますが、もう4月になってますわなー(ますよねー)。実際、この曲の楽譜の状況はどうなってますか?ウチがやる場合、プレスリリースなんかもあって、確実なところを知りたいんですが・・・・。 』

 これに対し、筆者は、知っている限りの情報と“少し遅れているが、6月ぐらいにはなんとかなるだろう”という作曲者からの回答をお話しし、念のために作曲者に出版スケジュールを再度確認することを約束した。

 電話を切った後、『いよいよ動き出したな!!』と実感を噛みしめながら、早速作曲者に楽譜出版の件の再度照会と参考のために市音のCDを2枚送った旨、連絡を入れる。CDを送った理由は、今では市音はピーターの大のお気に入りとなっているが、2002年のこの時点では、まだその演奏を聴いたことがなかったからだ。

 返答は、すぐにあった。

 『ディアー、ユキヒロ。そのような有名なバンドに、演奏を提案してくれてありがとう。本当にエキサイティングだ。楽譜は6月出版予定で進行しているが、万が一、遅れるような場合は、市音のための特別なプルーフ・コピーを1セット準備するようにする。ピーター』

 プルーフ・コピーとは、印刷準備の整った版下から実際に現物を試し刷りしたものだ。よーし!! これでOKだ!! まもなく、先方へ届くCDを彼はどう聴くだろうか。そして、市音による日本初演はどのように迎えられるだろうか。そんなワクワクした気持ちでこの返答を繰り返し読む。そして、早速、延原さんにもこの返答を伝える。市音も大喜びで、『ハリスンの夢』の秋の定期での演奏が正式に決定!! ハードな毎日が続くだけに、市音による演奏プロジェクトが動き出したことは、筆者個人にとってもハッピーなニュースとなった。

 そして、4月25日、ピーターから急ぎの短かいメールが入った。

 『ディアー、ユキヒロ。CDが届いたことをすぐに知らせたかった。オープニング・ピース(スパークのシンフォ二エッタ)から、いきなりテリフィック(恐ろしいほど、すばらしい)だ!! これからソルフォードへ向うが、あとは車の中で聴く。ピーター』

 “ソルフォード”とは、彼が作曲科の先生をしているマンチェスターのソルフォード大学のことだ。ともかく、彼も市音の演奏がとてもお気に召したようだ。

 関係者全員、みんなハッピー!! 良かった、良かった!!

(つづく) 


(c)2007,Yukihiro Higuchi/樋口幸弘
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