9
吹奏楽マガジン バンドパワー 吹奏楽マガジン バンドパワー
BPセミナー/パーカッション
text:冨田 篤(打楽器奏者)
VOL.6 紅蓮の斜陽〜8人の打楽器奏者のために〜

“Setting sun of Burning RED”for eight percussionists
演奏ポイントは、ここだ!


 曲の詳細な内容などは、当サイト内や楽譜に記載されている解説をご覧頂き、ここでは実際の演奏について、いくつかのポイントを挙げていきたいと思います。【楽器編】【演奏編】と分けておりますので、参考にしていただければ幸いです。

※譜面に一部、誤りがありました。Per.2の「59小節目・後半(点線の後)」2分音符3つの音を「1オクターブ下」で演奏してください。お詫びして訂正いたします。

【楽器編】

◆Per.2に見られる、音程を伴ったゴングなどは、学校や地域に「滅多にない」楽器の部類に入る楽器ですので、代用ではなく、新たにもう一つ他の音色をと考え、チャイニーズ・シンバルを代替案として採用しました。代替といっても、「代用」ではなく、あくまで「存在すべき音色」と捉えて頂いて結構です。両者の音色は大きく違いますが、どちらもこの曲の中では、それぞれに味わいの違う「個性」を引き出せる音色です。

チャイニーズ・シンバルを使う際は、元来、シロフォン奏者が使う予定だったチャイニーズ・シンバルを共用するため、セッティングはPer.2のところに配置し、シロフォン奏者が演奏時に移動してきてください。

◆Per.4の大太鼓に、(muted)と書かれたところと、そうでないところがあります。拙作「ヴォルケーノ・タワー」同様、この大太鼓は「西洋風・和太鼓」の音色を求めています。作り方はシンプルで、費用もさほどかからないので、ぜひお試し頂きたいのですが、手順は以下の通り、用意するものは「シーツ・はさみ」の2点です。

(1)大太鼓の打面(演奏する方)のフープを本体から外し、胴にヘッド(皮)が乗っているだけの状態にする

(2)そのヘッドの上にヘッドよりやや大きめに裁断した「シーツ」(布団やベッドで使っている、薄手のシーツです)を乗せ、その上からフープを取り付ける。出来れば白いシーツで。

(3)ボルトを締め、ある程度のテンションで張ったら、叩きながらチューニングする。その際、シーツがフープ下から数センチ出ている方が望ましい。

 以上です。製作時間、数分でしょうか。

 これをセーム皮で巻いてある大太鼓のバチ、もしくは和太鼓のバチで演奏してみてください。きっと「西洋風・和太鼓」の香りがしてくるはずです。よほど「殴る」ように叩かない限り、想像するほど打面が痛むことはありません。ヘッドの内側ではなく、外側(しかも全面に)というのがポイントです。

 拙作品に限らず、大太鼓の「響き」ではなく「ビート」をきかせたい曲などには効果を発揮します。「グリーティングス・トゥ・ハーマン」のような曲にもいいですね。

 また、これはあくまで「muted」状態のものなので、結局、大太鼓を2台用意することを前提に書いております。もし2台なければ、もう少し厚手(バスタオルなど)をフープ上から垂らせるように準備し、muted指定のところだけ打面(出来ればヘッドの直径分の長さで垂れるよう)にあてておけば、即席・和太鼓が出来ます。この場合も、マレットはセーム皮、もしくは和太鼓のバチが望ましいです。

◆40小節目、プレスティッシモで登場する4台の大太鼓は、フロアトム、もしくはマーチング・バスドラムでいいと思います。問題はその中心に据えるS.Cymなのですが、相当な音数・音量を伴いますので、普通に演奏すれば、ガシャン!ドシャン!と想像を絶する大騒ぎです。そこで、ここでもシンバルを少しだけ「muted」状態にしてみようと思います。

 製作手順などは特にありませんが、16〜18インチのシンバルの裏に、5センチ幅に切った厚めのビニールテープを、エッジから7センチ程度のところに4ヶ所、対角線上に貼ってください。実際に叩いてみて、サスティン具合でその枚数・貼る位置を変えて構いません。いわゆる「刀と刀がぶつかる音」をイメージして調整してください。もちろん、演奏後にはテープを剥がし、楽器をきちんとクリーニングすることをお忘れなく。

【演奏編】

 冒頭からしばらく、無調のメロディが続きます。これらは現代的な手法で書かれたものですが、特に難しく考えることなく、途中で挿入されるvib.の雅な響きも含めて、
各音が「どこに向かっていきたいのか」を感じて頂ければ、自然な旋律が生まれてくると思います。Adagio・vivoの指定はありますが、厳格なテンポではありませんので、ゆりかごに揺られているかのごとく、テンポを感じてもらえればと思います。

 この作品中で書いている(ad.lib)は、解説にも書いている通り、鍵盤楽器の音列・音域さえ守って頂ければ、音数もリズムも時間も、全く自由で構いません。例えば、冒頭から出てくるPer.4のS.Cymはロールというより、マリンバやヴィブラフォンに呼応した「動き・抑揚」が欲しいですし、4小節目・mallets.2に見られるウッドブロックは、どこまでも続くデミヌエンドで「こだま(3小節目・per.2の頭のリズムを模した)」のような雰囲気が欲しいところです。しかし、これらはあくまで「私が考えたアドリブ」であって、そうでなくてもよい(むしろ色んなアイデアがあった方がいい)と考え、アドリブとして、奏者の皆さんに任せることにしました。打楽器だからこそ、成せる業だと思いますので、創造の扉を大きく開いて楽しんでください。

 プレスト(16小節目)に入ってからは、アクセントの位置に気をつけて頂きたいのですが、テーマを紡いでいる鍵盤とトムトムは、1小節内に3つ、あるいは5つのアクセントがついています。小節内にクレッシェンドのような指定はしておりませんが、疾走感を出すために、必ず毎小節内、最後のアクセントに向かっていくようにアクセントを重ねてください。

 40小節目に向かって、4小節間のストリンジェンドがかかりますが、ここで重要なのは、39小節目の2拍3連符です。ここでテンポを揃えようとして、ブレーキをかけてしまうと、40小節目からの戦いに火がつきません。少し「なだれ込む」くらいがちょうどいいと思います。スモール・バスドラム2セット+トムトム+大太鼓の戦いは、この曲の大一番です。大きく分けて4つ「対峙(40〜43)・牽制(44〜46)・雄叫び(47・48)・決戦(48〜53・頭まで)」というイメージで演奏すると、よりリアルに感じ取れると思います。これらのパートは、53の頭で雌雄を決するつもりで挑んでください。その後に続く鍵盤打楽器の疾走は、この戦いの終わりを告げるために襲ってくる、官軍の強靭で冷徹な様を表現してください。

 59小節目、2発の銃弾が西郷隆盛の大腿部を貫いた瞬間、音楽が全く別世界に誘われます。センツァ・テンポの指定通り、全てのパートが時間的観念を一切排除し、空間を漂うかのごとく演奏してください。ナショナル・アンセム(国歌)は2つの部分に分かれておりますが、最初(59)はどこからともなく聞こえるようにまっすぐ普遍的に、2つめ(60)はより「歌」としての表現をしっかり出してください。59小節目のマリンバ・ソロは、この「たゆたう空間」を認識した後、演奏をスタートしてください。

 65小節目からのmallets.2&Per.3の木鉦アドリブは、お互いが呼応するような演奏が望まれます。やや人間味あるメロディに対し、人ではない・・・木霊のようなものが語りかけているようなイメージです。もちろん、リズム・奏法は奏者にお任せします。

 72小節目からもう一度、最初のテーマが復元されますが、それはもはや冒頭のような緊張の連鎖ではなく、金属楽器の雅な響き同様、調和を探りながら進んでいきます。メロディによる調性への回帰、それは、この切ない戦いの後、近代日本が歩んできた道であり、人としての「和」を育んでいこうとする、私たちの祖先が夢見た、未来像に他なりません。

 史実だけでは決して語ることの出来ない、私たち日本人の「絆」を、この作品で少しでも感じて頂ければ幸いです。

【楽譜セットをBPショップで購入する】
■紅蓮の斜陽〜8人の打楽器奏者のために〜
http://item.rakuten.co.jp/bandpower/en-00136/

(2010.11.16)


投稿・問い合わせメールはこちらをクリック 
bpmaster@bandpower.net

次へ>>>
吹奏楽マガジン バンドパワー
吹奏楽マガジン バンドパワー
吹奏楽マガジン バンドパワー
jasrac番号吹奏楽マガジン バンドパワー