◎楽団としてはまだ発展途上だが、
大きな可能性と今後の活躍を期待させるコンサートだった
3月18日の第10回「響宴」での初の東京進出を果たした興奮の余韻もまだ残る4月5日にフィルハーモニック・ウインズ
大阪の第3回定期演奏会が大阪の森ノ宮ピロティホールで開催されました。
会場では初の自主制作となる5枚目のCDもリリース日を前に先行発売されており、春休み中の中学生や高校生も多く訪れ、大入りの客席で開演を待つことになりました。
音楽監督の木村吉宏氏の指揮で、前半は吹奏楽のオリジナル曲、後半が管弦楽曲からの編曲というオーソドックスな二部構成。その前半で作品が演奏されるマーク・キャンプハウスとマーティン・エレビーとは、ミッドウェスト・クリニックで団員や役員が直接会うなどして親交を深めており、プログラムにもそれぞれ作曲者からのメッセージが寄せられていました。
さて、コンサートはマーク・キャンプハウスの「シンフォニック・ファンファーレ」で幕を開けました。昨年11月のレコーディングでは同じ作曲家の「シンフォニック・プレリュード」が収録されており、立て続けにこの作曲家の新作を演奏していることになります。一聴しただけでそれとわかるキャンプハウスらしいハーモニーによる金管楽器の輝かしい響きが演奏会の開幕にふさわしく、会場の雰囲気をいやが上にも盛り上げます。
樽屋雅徳がギリシャ神話のカストルとポルックスの兄弟をテーマに作曲した「ディオスクロイ」に続いては、この日のメイン・イベントとも言うべきマーティン・エレビーの「トリスタン・エンカウンター」でした。
この曲は、元々は1999年の全英マスターズ・ブラスバンド選手権のために委嘱されたブラスバンド曲で、その後各地のコンテストでもたびたび課題曲として選ばれ、また自由曲としてもよく演奏されています。ワーグナーの楽劇「トリスタンとイゾルデ」の前奏曲をモチーフに、主題を提示する前奏と14の変奏という構成で書かれ、半音進行や三全音音程が印象的に使われた曲です。楽劇のストーリーを彷彿とさせるように、衝撃的な激しい部分とロマンチックな美しい部分が交互に表れ、高い技術を要するソロもふんだんに盛り込まれ、悲恋の物語を彩っているようです。
フィルハーモニック・ウインズ 大阪は2005年に行った最初のレコーディングで「クラブ・ヨーロッパ」を録音し、昨年10月の第2回定期演奏会ではハインツ・フリーセン氏の指揮で「パリのスケッチ」を取り上げるなど、エレビーの作品に積極的に取り組んでおり、作曲者と直接コンタクトを取る中でこの吹奏楽版の委嘱に至り、この日がその吹奏楽版の世界初演となりました。
ブラスバンド曲を吹奏楽に編曲すると、色彩の多様性を得るのと引き替えに失うものが多くあります。特にこの曲はエレビーがブラスバンドを知り尽くしたうえでその機能をフルに活かして書いたブラスバンド界の至宝とも言える名曲であり、その意味で実際に聴いてみるとこの種の編曲作品でよく感じる違和感がなくはなかったというのが正直なところでしょう。
もちろん吹奏楽の曲として聴くと、センスのよいオーケストレーションが心地よく響いてきましたし、楽器の音色の対比が原曲は異なる魅力を引き出していたように思います。メンバーにとっても相当難しい曲だったかと思いますが、果敢に挑戦し、熱演を披露してくれました。
後半はコンクールなどでもよく演奏されるレパートリーで、この夏に自由曲として演奏するらしくこれを目当てに来た学生たちも多かったようです。
鈴木英史による喜歌劇「ロシアの皇太子」セレクションは比較的新しい編曲ですが、これまでたびたび演奏されているこの編曲者の他のセレクションと同様に、アリアや舞曲などを自由に構成してポップス的な要素を持ったメドレー風に接続しており、変化に富んだ陽気な曲が次々と移り変わり目の前を通り過ぎていきます。
そして最後はマルコム・アーノルドの映画音楽からまとめられた管弦楽組曲「第六の幸福をもたらす宿」で堂々たるクライマックスを迎えました。
盛大な喝采に応えて、アンコールには木村吉宏氏の編曲によるピエトロ・マスカーニの歌劇「友人フリッツ」の間奏曲が朗々と歌われ、コンサートの幕を閉じました。
フィルハーモニック・ウインズ 大阪は結成こそ1999年4月ですが、1年半前に現在の楽団名になってからの定期演奏会はまだ3回目であり、若い演奏者で構成されていることからも、やはりその若さがいい意味でも悪い意味でも前面に出た演奏と言えるでしょうか。木村吉宏氏の指揮や要所を押さえるプレーヤーの存在でその勢いが見事に昇華してハッとさせられる瞬間もあれば、踏み込みの甘さや何か物足りないものを感じる部分もあったように思います。
楽団としてはまだ発展途上とも言えるかもしれません。しかし、大きな可能性と今後の活躍への期待を十分に感じさせるコンサートでした。 |