4月18日(火)に、横浜みなとみらいホールにおいて開催された「テュービアム・コンサート
vol.5」に行ってきました。今回のプログラムも前回と同様に邦人作品ばかりを集めた演奏会で、吹奏楽界で活躍されている若手作曲家のバリテューアンサンブル作品の初演も含めた8作品が、作曲者本人の解説付きで聴ける演奏会です。
演奏会は2部構成で、同アンサンブルの音楽監督である戸田顕氏の司会により、作曲家の作品解説やインタビュー等のお話を交えながら進んでいきます。さっそく、演奏会にふれたいと思います。
第1部最初の曲は、高橋宏樹作曲《Two Days》です。
この作品は、構想段階の時にモンティ作曲の《チャルダッシュ》のような、たっぷり歌える部分と技巧的な部分があるものが面白いのではないかと思い作曲され、作曲者自身「楽しく出来るエチュード」だと思っているそうです。高橋氏らしい親しみやすいメロディーとハーモニーは演奏していても楽しめる作品だと思います。細かいパッセージは少し練習しないと難しいと思いますが、流石はテユービアムの皆さん、とても極め細やかな演奏でした。
2曲目は、石毛里佳作曲《奇妙なワルツ》です。
彼らのCDにも収録されていますこの作品は、大学一年生の時の作品だそうです。タイトルの通り“奇妙”な雰囲気を出すのに、半音階をメインに、増4度・減5度を使用し作られているそうです。音の跳躍や音程のとり方など技術的に少し難しいと思いますが、更に実力をつけるために取り組むには良い作品だと思います。
3曲目は、戸田顕作曲《Dawn to Peace》です。
タイトルを日本語訳にすると《平和への夜明け》だそうです。作曲者自身が仕事で広島に訪れた際に感じ受けたものをそのまま作品にされたそうで、戸田氏の平和に対する強い思いは、書かれている作品を通じてもご理解頂けると思います。純粋な和音にゆったりとしたメロディーで構成されているシンプルかつ音楽性の非常に高い作品で、音楽性を養うのにとても相応しい作品だと思います。メロディー・ユーフォニアムの美しくやわらかい音色に会場は包まれました。
第1部最後の作品は、侘美秀俊作曲《マロニエの並木道》です。
この作品は、栃木の「ユーフォニアム‐テューバアンサンブル『バス・ブレザー』」の委嘱で2005年に作曲されました。作品は3つの小品からなる組曲の形式で、各曲の冒頭とエンディングに共通するモティーフが使われています。それぞれの作品は親しみやすいポップなメロディーとハーモニーやスウィングなどのリズムが入っており、とても演奏しやすい作品だと思うので、奏者は演奏する楽しさを素直に感じられると思います。テュービアムのメンバーの皆さんも楽しそうに演奏されていましたし、ユーフォニアム1本を中央にソロ楽器の様に配置されていたのも興味深かったです。
休憩を挟んで第2部の第1曲目は、三澤慶作曲《夢の回廊》です。
三澤氏は、2006年度全日本吹奏楽コンクール課題曲IV《海へ...吹奏楽の為に》の作曲家です。この作品は、バリチューアンサンブルでの最もメジャーな編成であるカルテットを避けて、あえてトリオとして作曲されたそうで、バリチューアンサンブルで一番問題になるであろう楽器の音域による響きの混濁を避ける為で、アレンジの「厚み」を常に要求される金管アンサンブルにあってあえて「薄さ」を追求したそうです。編成が「Euph.2・Tuba
1」と本数が少ない分、音やハーモニーがとてもクリアーに聴こえる作品なので、更なる演奏者の力量が求められますが、皆さんの演奏は素晴らしく、テュービアムの演奏技術の高さを改めて感じる事のできる演奏でした。
2曲目は、金井勇作曲《銀色の森》です。
この作品は、主に銀メッキ仕上げの管体である「ユーフォニアム・テューバ」が立ち並ぶ様を想像しタイトルがつけられたそうで、その印象から増4度・長7度という緊張感を伴う音程を紡ぎ合う場面から始まり、未知ではあるが、好奇心をくすぐられるような森の中を探検する気分でというコンセプトで作曲されたそうです。全体的に音が散りばめられている調性感のない作品なので、金属の無機質な感じが表現されていると思います。演奏は技術的にかなり難しいと思いますが、とても素晴らしい演奏でした。
3曲目は、福島弘和作曲《芝居小屋のある風景》です。
この作品は、「三文オペラ」の劇中歌や「第三の男」の様な映画音楽が、バリチューアンサンブルのサウンドに似合うのではないかと思ったのが作曲のきっかけで、タイトルの通り、立派な国立劇場とかではなく、下町の倉庫を改造した様な寂れた芝居小屋から役者が歌う劇中歌が、スモークの匂いと共に聞こえてくるようなイメージの作品だそうです。中間部のゆったりしたメロディーを役者がしっとりと歌いあげる様子ですが、どこか儚さも持ち合わせている風にも感じま
す。街の“賑わいと静寂”といったコントラストのある演奏がとても良かったです。
最後の作品は、八木澤教司《牢獄のサロメ》です。
この作品は、フランスの画家ギュスターヴ・モローの同名の作品「牢獄のサロメ」(1873-76年頃)からのインスピレーションで書かれた作品だそうです。中間部は若干速度を上げ楽器同士の掛け合いなどがありますが、全体的にたっぷりと呼吸と間合いを楽しむ曲です。技術的にはそれほど難しくは感じませんが、伸ばす音が多いので、音の持続性を常に求められる作品ですが、流石プロの集中力というもので、緊張感の中でも常に間合いの駆け引きを楽しんで演奏されていました。
アンコールも2曲演奏され、素晴らしい演奏会でした。
今回で5回目の演奏会を迎えた、バリチューアンサンブルのパイオニア「テュービアム」。このアンサンブル・演奏会があったからこそ、邦人のバリチューアンサンブル作品が数多く生まれ、それと共に、作品のレベルが技術的にも音楽的にも高い、良い作品が生まれてきています。テュービアムの皆さんは、そのパイオニアとして牽引されてきた事は本当に素晴らしいと思います。
今回で2回目となるオール邦人プログラムも、技術面、音楽面、精神面等、細かくコントロールしなければならない事が多々あったかと思いますが、本当に素晴らしい演奏でした。次回の演奏会も更なる素晴らしい演奏を楽しみにしております。
最後に、今年は5周年記念ということで、CD「Tubium Dances」(ブレーン)がリリースされました。音楽監督の戸田氏の作品を始め、天野正道氏・鈴木英史氏・八木澤教司氏・本日演奏された石毛氏の作品の計8曲が、プロのバリチューアンサンブル「テュービアム」の素晴らしい演奏で収録されております。今までに都合がつかず演奏会に行けなかった方々も、このCDでプロのバリチューアンサンブルの演奏と、作品の素晴らしさをぜひ実感して下さい!
■テュービアムHP
http://www002.upp.so-net.ne.jp/TUBIUM/
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