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【レコーディング速報】

大阪市音楽団の人気シリーズ
CD「ニュー・ウィンド・レパートリー2008」収録完了

ピクールの『ガリア戦記』、グレイアムの『キャッツ・テイルズ』、
スパークの『セントローレンス川のこだま』、広瀬勇人の『アルカディア』、
田中久美子の『虹』などなど、
話題曲満載のCDの発売は、来る4月21日に決定!!

Text: 樋口幸弘(ウィンド・ナビゲーター)

 2008年2月17日(日)〜18日(月)、京都府・八幡市文化センター大ホールで行われた大阪市音楽団の自主制作CD『二ュー・ウィンド・レパートリー2008』(指揮: 秋山和慶)のレコーディング・セッションにお邪魔した。

 1996年から始まったこのシリーズは、シカゴのミッドウェスト・クリニックなどから得られる膨大な新譜資料だけではなく、市音独自のネットワークから掘り起こしたレパートリーが含まれ、毎回"これは!!"と唸らせる曲が入っているのが大きな特徴。

 今回も、広瀬勇人の『アルカディア』、田中久美子の『虹』という、注目の邦人作曲家への委嘱新作のほか、ピーター・グレイアムの書き下ろし『キャッツ・テイルズ』ウィンド・オーケストラ版や委嘱者による初演がまだ終わっていないフィリップ・スパークの『セントローレンス川のこだま』といった他のCDでは聴くことができない魅力的なレパートリーが満載。これに、現在話題沸騰中のバルト・ピクールの『ガリア戦記』まで収録されるというから、事前に渡された収録予定曲を見ただけで胸が高まる。

 以下、セッションの模様を収録順にリポートしよう。

 初日、収録は、午後、広瀬勇人の『アルカディア』から始まった。少年がパラダイス(アルカディア)をめざし、数々の困難に立ち向かいながら、ついに夢に見た土地にたどりつく、という発想から得られたというこの作品は、立会いの作曲者も大満足の実に若々しいイメージの仕上がり。早くもヒットの予感だ。

 2曲目はスパークの『セントローレンス川のこだま』。この作品は、今年400周年を迎えるカナダのケベック市の4月の記念イベントのために委嘱された3楽章構成の組曲。“こだま”というタイトルのイメージどうり、左右にやや遠めに配置されたトランペットとバンド内のフルートによるエコーのように響く冒頭からいきなり印象的。さすがスパークと唸らせる。ケベックの民謡に題材を求めたこの組曲は、演奏効果も高く、かつ親しみやすい内容の音楽だった。初演前の収録なので、発売されているどのCDにも入っていない、日本のバンド・ファンへの大きな贈りものとなるだろう。

 初日ラストは、今回の隠し目玉というべきグレイアムの『キャッツ・テイルズ』。今年1月28日に東京でトレイルブレイザーズ・テンピース・ブラスによるオリジナルが初演されたばかりのこの曲は、作曲段階からテン・ピース・ブラス・アンサンブル版、ブラス・バンド版、ウィンド・オーケストラ版が意図された野心作。ニューヨークで“キャッツ”と呼ばれるジャズ奏者たちをテーマとした5曲構成の組曲で、各楽章は、それぞれ、エルマー・バーンスタイン、ヘンリー・マンシー二、ソニー・ロリンズ、ジョージ・ガーシュウィン、レナード・バーンスタインに対するトリビュートとなっている。トランペット、テナー・サックス、ヴィブラホン、フリューゲルホーン、トロンボーンなど、ソロもビシバシで、この日に備えてわざわざ衣装持参でソロに望んだプレイヤー(誰でしょう?)もいたほどの大盛り上がりライヴ・セッション大会となった!!

 余談ながら、見学に訪れていた某指揮者が、セッションが終わるやスコアをにぎりしめながらモニター・ルームに飛び込んできて、『これは、ホント面白い!!  吹奏楽はこういうのをどんどんやらなければ!!』と大絶叫。セッションにかかわったすべての人がハッピーな1日目のフィナーレとなった。

 2日目は、午前中からセッションで、やはり作曲者を迎え、田中久美子の『虹』から開始された。夏のある夕方に見た大きな二重の虹からイメージを膨らませ、人々の夢や希望が、虹の煌きとともに、青空に無限大に広がっていきますように…という作曲者の思いの込められたこの作品は、きめ細かくひじょうにさわやかな印象の仕上がりとなった。

 昼食後の2曲目は、紀元前に行われたローマとネルウィイ族(現在のベルギー周辺に住んでいた)との戦いをテーマにした現在話題沸騰中のピクールの『ガリア戦記』。

▲バルト・ピクール(Bart Picqueur)

 大阪にあるベルギー・フランドル政府の交流センターの協力も得たこのセッションは、文字どおりの異文化交流。リハーサルでは、3楽章にある有名なカエサルの『来た、見た、勝った』というローマへの戦勝報告の名言を茶化したラテン語と古いフラマン語の混じった歌の発音から練習。すでに発売されているベルギーのギィデ盤ではとても整った斉唱となっているが、ビールを飲みながら憂さ晴らししているネルウィイ族の歌がそんなテンションではないはず、と収録方針決定。“飲み会”のムードをいかに生かすかがテーマとなった。そこはそれ、ノリ出したら止まらない大阪のバンドのこと。少々の調子っぱずれも含み、声を張り上げての、それはそれはすばらしい歌唱(?)となった。

 もちろん、歌の部分を除く、他の部分も大スペクタクル。指揮の秋山氏も剣のぶつかり合う音を模したであろうアンヴィルや、足かせの鎖をイメージしたかのようなチェーンの音質や音の長さまで妥協しないこだわりようで、曲全体を通して強い意思の込められたライヴネス溢れるすばらしい演奏となった。これは面白い。乞うご期待!!

 3〜4曲目は、ロバート・シェルドンの『スピリット・オブ・キリアン・ヒル』、ブライアン・バルメイジェスの『スタースケイプス』という、小編成でも演奏可能な2曲を収録。シェルドンは、大スペクタクルの直後なので、とてもさわやかな印象。一方のバルメイジェスは、短いながらも3曲構成の個性的な作風が光り、中でもその2楽章の最後に2回出てくる“ドラゴンの声”は、メンバーにも大ウケだった。これは、ひょっとして…と思えたほどの思わぬ収穫だった。 

 以上、収録されたのは合計7曲。話題満載の大阪市音楽団のCD『ニュー・ウィンド・レパートリー2008』。発売は、来る4月21日に決定だ!!

(2008.02.20)

(C)2008 Yukihiro Higuchi / 樋口幸弘 


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