吹奏楽マガジン バンドパワー 吹奏楽マガジン バンドパワー

【レポート】

吹奏楽版「七人の侍」再演なる!

レポート:福田 滋

▲小郡音楽祭「黒澤明 音楽の世界」演奏:航空自衛隊西部航空音楽

"世界のクロサワ"黒澤明監督の生誕100周年の今年、福岡県小郡市において開催された小郡音楽祭のメイン・ステージで「黒澤明監督 音楽の世界」というタイムリーな企画が行われた。

 初回の平成5年から19回目を迎えた小郡音楽祭のメインを飾るに相応しく、黒澤監督にきわめて近い存在であった映画評論家の西村雄一郎氏を聞き手に、黒澤作品の音楽を4本手掛け(文字通り)現代日本の音楽界を牽引する池辺晋一郎氏をゲストに黒澤監督が最も愛した作曲家、早坂文雄と池辺晋一郎の音楽を中心に繰り広げられた。

 「黒澤映画は音楽がスゴい!と誰もが語りますが、音楽を自在に使い切る演出力は、世界でも1,2を争う映画監督ではないでしょうか。黒澤監督の30本に及ぶ作品に関わった作曲家8人中、たぶん7人が故人です。生きているのは僕だけということであれば、黒澤監督の音楽への想いについて語ることは僕の務めと考えなければならないでしょう。同時に、服部正、早坂文雄、佐藤勝、武満徹など、この仕事の諸先輩の想いも、後世へ伝えていかなければならないと思うのです。」と池辺氏は語る。

▲「黒澤明 音楽の世界」対談。池辺晋一郎氏(左)と西村雄一郎氏 

 実際、黒澤監督は「シナリオを書いている時から、音楽が聞こえてくる」と発言、イメージが明確で具体的であればあるほど、独自な音楽をつくりたいと願う作曲家と監督は必ず衝突したという(武満徹との逸話は有名)。服部正から武満、池辺という黒澤映画の音楽を担当した作曲家の流れは、正に現代日本音楽の歴史そのものである。

 さて、2日間にわたるコンサ−トは映画音楽が中心であり、両日とも前半は福岡で活躍をしているアーティストによるピアノ・トリオ(Vn.原 雅道、Vc.宮田浩久、Pf.宮田玲子)と歌(Sp.山崎三代子)。後半は共通で巨匠「黒沢明生誕100年」を祝って、吹奏楽版による「七人の侍」(早坂文雄/松木敏晃編)、黒澤を尊敬しているルーカスの「スター・ウォーズ・サガ」(J.ウィリアムズ/デ=メイ編)が演奏された。

 とくに2部に演奏された大傑作「七人の侍」(音楽:早坂文雄)の交響組曲は、東京での初演以来(2006年、陸上自衛隊中央音楽隊初演)となった。この音楽は早坂文雄が完成させた最後の映画音楽である。長年肺結核を患っていた早坂の下に、佐藤勝、佐藤慶次郎、武満徹ら3名の弟子が集いスコアを浄書し完成させた作品。約60曲分のスコアは映像に合わせるためのカットも多く、まとめて演奏することは難しかった。

 しかし、早坂文雄没後50年を期に陸上自衛隊中央音楽隊の専任アレンジャー松木敏晃が3つの楽章(第1楽章「怯える村〜練達の士」、第2楽章「美しい村、美しい娘」、第3楽章「合戦そして終劇」)に再構成し編曲。このスコアは早坂文雄の音楽の素晴らしさもあり、各方面から高い評価を受けた。

 今回は大編成用に編曲されたスコアを40名に満たない編成の航空自衛隊西部航空音楽隊(指揮:水科克夫)が工夫(楽器の置き換えやコントラ・ファゴットの使用など)の上にキレのある、流れるような演奏で再現。聴衆から盛んな拍手を受けていた。楽曲へのとりくみ方で大編成スコアは小編成でも充分に演奏出来るという好例を示したと言えよう。続く「スター・ウォーズ・サガ」とアンコールに演奏された「ロサンゼルス・オリンピック・ファンファーレ」も鮮やかな色彩を前面に出した好演で、小編成バンドの良い手本になっていたと思う。会場ロビーでは、評論家に西村氏所蔵の黒澤明資料展も開催され演奏会に華を添えていた。

 池辺晋一郎氏と西村雄一郎のトークも洒脱な話(時にはお得意の駄洒落も)や秘話を交えて、映画音楽の初心者からマニアまでを満足させていた。次回も是非このようなトークを楽しめるコンサートを続けて欲しい(出来れば吹奏楽で!)。

 最後に、暖かく実り多い音楽祭を継続している音楽祭実行委員会の皆さん、音楽監督の山崎三代子さん、市長の平安正知氏(音楽祭の実行委員会も経験)らの御苦労に拍手を送りたい。

 なおこのコンサート、東京から早坂文雄氏の次女夫妻(北浦二郎・絃子両氏)らもコンサートに駆け付けて会を盛り上げていただいたことを伝えておく。

第19回小郡音楽祭メイン・ステージ
黒澤明 生誕100周年記念コンサート『黒沢明 音楽の世界』

【日時】平成22年10月23日「青少年のための映画音楽入門」、24日「黒澤映画・音の世界」
【解説&トーク】西村雄一郎(映画評論家)&池辺晋一郎(作曲家)

【プログラム】
 
第1部

・スターバト・マーテル‥‥‥映画「八月の狂詩曲」より(ヴィヴァルディ)
・「影武者」のテーマ‥‥‥‥‥‥‥映画「影武者」より(池辺晋一郎)
・雨だれ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥映画「夢」より(ショパン)
・オー・ソレ・ミオ‥‥‥‥‥‥‥映画「天国と地獄」より(カプア)
・侍のテーマ‥‥‥‥‥‥‥‥‥映画「七人の侍」より(早坂文雄)
【演奏】ヴァリオリン:原 雅道、チェロ:宮田 浩久、ピアノ:宮田 玲子、ソプラノ:山崎 三代子

第2部

・「七人の侍」組曲(早坂文雄/松木敏晃編)
・「スター・ウォーズ・サガ」(J.ウィリアムズ/デ=メイ編)
・アンコール:ロサンゼルス・オリンピック・ファンファーレ(J.ウィリアムズ)
【演奏】航空自衛隊 西部航空音楽隊(指揮:2等空佐・水科克夫)

■同時開催

「黒沢明資料展」‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥西村雄一郎氏所蔵

▲ポートレイト-黒澤監督と(七人の侍完成試写の日-1954.4.21)
▲小郡音楽祭「黒澤明 音楽の世界」展示
 

(2010.11.06)

吹奏楽マガジン バンドパワー
吹奏楽マガジン バンドパワー
吹奏楽マガジン バンドパワー
 
 
 
 
 
 
 
jasrac番号吹奏楽マガジン バンドパワー