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【注目曲】

ヤン・ヴァンデルロースト「いにしえの時から」

Text:樋口幸弘(ウィンド・ナビゲーター)

▲ヤン・ヴァンデルロースト(Jan Van der Roost)

 2010年6月18日(金)、東京・大田区民ホール アプリコで開催される「タッド・ウィンドシンフォニー第17回定期演奏会」で、ベルギーから作曲者を客席に招き、ヤン・ヴァンデルローストの大作『いにしえの時から (From Ancient Times)』ウィンド・オーケストラ版が世界初演される。

 周知のとおり、この作品のオリジナルは、「ヨーロピアン・ブラスバンド選手権2009」のチャンピオンシップ部門指定課題(セット・テストピース)として作曲された“ブラスバンド編成”の作品だ。

 出版社が提示するグレードは、Grade 6。難易度的に言うなら、もうこれ以上のグレード表記はないという、ハイエスト・レベルの作品なのだ。

 今回パブリックな世界初演が行なわれるのは、そのウィンド・オーケストラ用の新バージョンということになる。

 2つ以上の旋律を同時に重ねる多声音楽に“ポリフォニー”と呼ばれる形式がある。ヴァンデルローストの『いにしえの時から』は、15世紀から16世紀のルネサンス期にポリフォニーを駆使して黄金時代を迎えた“フランドル楽派(フランダース・ポリフォニスト)”と呼ばれるベルギーの作曲家たちの音楽にインスパイアードされた作品だ。

 タイトルには“Ancient”という単語が使われているが、ここでは“太古”とか“古代”をさす意味では使われていない。“Ancient Times”は、正しく“フランドル楽派”が活躍した時代をさしているわけだ。

 ただ、ヴァンデルローストは、この作品の中で、古きよきその時代の旋律やリズムの模倣をした音楽を書いたわけではない。作品は、あくまで21世紀の音楽として書かれ、ポリフォニーを現代技法の中で昇華させている。

 同時進行する動きは、曲の始めに近いところで現れるサクソフォン・セクションやトロンボーン・セクション等の各アンサンブルだけでなく、木管、金管、打楽器の別なく、楽器群の組み合わせや速度を変化させながら、手加減のないハイエスト・テクニック満載のスリリングな場面としてつぎつぎ現れる。

 が、それだけではない。

 コーダに至る直前に現れる、心が温まるような美しいメロディーとハーモニーは、実際にこの曲を聴いた誰もが“必ず涙腺が緩む”箇所と言うほどの安らぎと感動を与えてくれる。この部分では、名曲『カンタベリー・コラール』などと同じ種類の幸福感を体感する人も多いはずだ。

 そしてコーダ。ここは神に捧げる愛を感じさせるテーマが高らかに歌われ、すさまじいパッションとともにクライマックスへと向かっていく。

 今度のウィンド・オーケストラ版が作られるに当たり、ハープ、ピアノなど多種多彩な楽器が加えられたが、それだけでなく、新曲を書くのと同じぐらいの情熱と時間がオーケストレーションとスコアリングに費やされた。

 実は、完成までの間に『あまりに難しい曲になってしまう』と言って、一時スコアリングが中断された時期もあった。

 そんな作曲者に対し、『手加減しなくて結構です!』と勇気づけたのが、今回初演を指揮する鈴木孝佳(タッド)氏だった。

 ヴァンデルロースト、鈴木両氏は、名演との誉れ高いタッド・ウインドシンフォニーのCD『カンタベリー・コラール』(Windstream、WST-25008)以降、厚い信頼関係に結ばれている。

 結果、出来上がった曲は、まさに何年に1度現れるかどうかと言えるほどの、聴きごたえ万点の音楽となった。間違いなく、作曲者の最高傑作の1つであり、オリジナルとは、また別のテイストが感じられる逸品となった。

 その初演を、自らの成果を確認するためにはるばるやってきた作曲者とともに日本で聴ける幸せを一体どう表現したらいいのだろうか。

 これを簡単に聴き逃す手はない!

 6/18は、もう間もなく!

 カレンダーに大きく赤丸をつけ、アプリコに全員集合だ!

TADウインドシンフォニー第17回定期演奏会の詳細はこちら >>>



【いにしえの時から】ウィンド・オーケストラ版

Piccolo
Flutes (I、II)
Oboes (I、II)
English Horn
Bassoons (I、II)
Contra Basson

E♭ Clarinet
B♭ Clarinets (I <div.>、II <div.>、III <div.>)
E♭ Alto Clarinet
B♭ Bass Clarinet
B♭ Contra Bass Clarinet

B♭ Soprano Saxophone
E♭ Alto Saxophones(I、II)
B♭ Tenor Saxophone
E♭ Baritone Saxophone
B♭ Bass Saxophone

B♭ Trumpets(I <div.>、II <div.>、III <div.>)
B♭ Flugel Horns (I、II)
F Horns (I、II、III、IV)
Trombones(I、II、Bass)
Euphoniums (I、II)
Tubas (I <div.>、II)
Double Bass

Harp
Piano

Timpani

Mallet Percussion
(Marimba、Xylophone、Glockenspiel、Vibraphone、Tubler Bells、Crotales)

Percussion
(Snare Drum、Bass Drum、Tom-Toms、Clash Cymbals、Suspended Cymbals (Large、Medium、Small)、Tam-Tam (Large)、Triangle、Tambourine、Whip)


◎「いにしえの時から」のオリジナル・ブラスバンド版の音源・映像をチェックする

■ヨーロピアン・ブラスバンド選手権2009【CD2枚組】


http://item.rakuten.co.jp/bandpower/cd-1945/

■トライアンファント・ブラス〜コーリー・バンド【CD】


http://item.rakuten.co.jp/bandpower/cd-2088/

■ヨーロピアン・ブラスバンド選手権2009【DVD2枚組-PALシステム】


http://item.rakuten.co.jp/bandpower/dvd-9378/

(C)2010、樋口幸弘 / Yukihiro Higuchi

(2010.06.07)


◎TADウインドシンフォニー第17回定期演奏会

【日時】2010年6月18日(金)  開場:午後6時30分 / 開演:午後7時
【指揮】鈴木孝佳 (タッド鈴木)
【会場】大田区民ホール アプリコ(東京)
・JR京浜東北線/東急多摩川線・池上線 「蒲田駅」東口 〜 徒歩約3分
・京浜急行 「京急蒲田駅」 〜 徒歩約7分

【曲目】
・春の猟犬 (アルフレッド・リード)
・オクトーバー (エリック・ウィッテカー)
・フェスティヴァル・ヴァリエーション (クロード・T・スミス)

・フェスティヴァル・ファンファーレ・マーチ (ロジャー・ニクソン)
・故郷からの手紙 (フィリップ・スパーク)
・いにしえの時から (ヤン・ヴァンデルロースト) - 世界初演

【料金】
一般 ¥2,500 / 高校生以下 ¥1,500 (全自由席) / 当日券有り(料金同) 

【前売り】
《ちけっとぴあ》Pコード 105-417
パソコン・携帯電話から → http://t.pia.jp/ へアクセス
電話での予約 → 0570-02-9999

【問い合わせ】
タッド・ウインドシンフォニー代表 田島 (電話)090-4061-0134

【TAD Wind Symphony の公式ホームページ】
http://www3.ocn.ne.jp/~tad.wind/



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