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【レポート】

ウインドアンサンブルを極める!
ハーツ・ウインズの鮮烈な第一回定期演奏会

日時:2009年7月3日(金)
会場:府中芸術の森 ウィーンホール
レポート:野本和也(東京吹奏楽団 テューバ奏者)

▲ウインドアンサンブルの歴史と可能性を見事に表現した一夜。
満席の聴衆が、ウインドアンサンブルの響きに酔いしれた。

■実力ある若きウインドアンサンブルの記念すべき第1回コンサート!

 ハーツ・ウインズは、故F.フェネル氏が唱えた「ウインド・アンサンブル」を極めようという主旨で、最初はリハーサルバンドとして発足したとても興味深いバンドだ。
 当初は小アンサンブルやソロ・コンサートなどの活動を行っていたが、今回の演奏会はフル編成による記念すべき第1回定期になる。メンバーは音大卒業の実力者揃いで、音大講師や有名ソリスト、プロオーケストラや吹奏楽団で活躍する面々が見える。
 指揮の大澤健一氏はF.フェネル氏に師事しており、これらのメンバーとどのような演奏が聴かせてもらえるかとても楽しみだった。

  当日のプログラムは、今年がハイドン没後200年、メンデル スゾーンが生誕200年ということで、2人の偉大な作曲 家にちなんだ曲と、フェネル氏が好んで演奏していた曲が演奏された。

■C管クラリネットとバセットホルンを使用したオリジナルな響き

 第1部は《ウインド・アンサンブルの原点》ということで、1曲目にメンデルスゾーンの「ハルモニームジークの為の序曲 作品24」が演奏された。この曲は通常「吹奏楽のための序曲」として親しまれているが、今回はオリジナルのスコアの指定通り、クラリネットはBb管ではなくC管を使用し、バセッ トホルン(モーツァルトが愛用したF管のテノール音域のクラ リネット)を用いて演奏した。F管ソプラニーノに関しては、 現在製作されていない為Eb管で代用したとのこと。現在の 吹奏楽編成に編曲された演奏を普段耳にしている筆者にとっては、非常に新鮮な響きに聴こえた。

■小編成ウインドアンサンブルによる古典名曲への新たなアプローチ

 メンデルゾーンの管楽器編成によるハイドン(編曲:福井雄一)の「トランペット協奏曲 変ホ長調」は、面白い試みであった。管楽器の特性を上手く生かした編曲に仕上がっている。今後このようなアプローチで、シリーズにするということだが、モーツアルトの協奏曲などが楽しみである。非常に安定したソロを聴かせてくれた宮本弦氏は東京音楽大学を今年卒業した才能あふれるプレイヤーで、彼の今後がとても楽しみである。

 3曲目はノーマン・デロ=ジョイオの「ハイドンの主題によるファンタジー」。この曲はハイドンが作曲したクラヴィーアの為 の小品「アレグロ」を題材に作曲されたもので、「テーマ」と3 つの「ファンタジー」という構成で書かれている。最初に原曲をピアノ・ソロで演奏。テーマがよくわかりこのような演出は非常に有り難いと思った。

■斬新なクラリネット・コンチェルト、これは名曲だ!

 第2部はコープランドの「市民のためのファンファーレ」から。金管楽器奏者泣かせの難曲だが、このバンドの質の高さを感じた。

  さて、本日一番印象的だったマーティン・エレビーの「クラリネット協奏曲」
 エレビー (1957ー)はロンドンの王立音楽学校でジョーゼフ・ホロ ヴィッツ氏に作曲を師事したイギリスの作曲家で、日本でも「パリ のスケッチ」や「ユーフォニアム協奏曲」などが有名だ。2000 年に作曲された「クラリネット協奏曲」はジャズ的な要素がちりばめられた曲で、聴いていて飽きの来ない曲だった。特に第2楽 章はとても美しい旋律で、ソリストを務めた大和田智彦氏の音楽性 豊かな表現と相まって見事な演奏となった。この曲がもっと演奏される機会が増えることを期待したい。

▲ソリストを務めた大和田智彦氏


 ソロと伴奏のバランスを考えた、斬新なセッテイング(木管と金管を対峙して中心にピアノ、ハープ、打楽器、ベースを配置)が効果的だった。

 第3部は《F.フェネル氏の足跡を辿る…》ということ で、フェネル氏が生前よく演奏されていたバッハのオルガン曲「幻想曲ト長調」とグレンジャーの「リンカンシャーの花束」が演奏 された。ゴールドマン編曲の「幻想曲ト長調」は各楽器の持つ色 彩を見事に生かした編曲で、パイプオルガンが設置されている ウィーンホールでこの選曲は非常に良かったと思う。管楽器=オルガンという図式が見事に表現された。

■ウインドアンサンブルの名曲はやはりこれだ!
「リンカンシャーの花束」はイギリスのリンカンシャー地方(ロ ンドンの北東)の民謡をもとに、オーストラリア出身のグレンジャーが 1934年に作曲した曲で、吹奏楽のレパートリーとしてはとても重要な曲となっている。フェネル氏に直接指導を受けた大澤氏の要求に、メンバーが応えようと一所懸命演奏しているのがとても印象的な演奏だった。

 どの演奏もとても熱の入った演奏で、若い人たちのエネルギーを感じた演奏会だった。終演が21時を超えていたが、飽きることなく最後までウインド・アンサンブルを楽しめたと思う。このような音楽的内容の高い魅力的なコンサートを継続するのであれば、ハーツ・ウインズのファンは確実に増えていくと思う。次回も期待したい。(東京吹奏楽団 チューバ奏者 野本和也)


 【ハーツウインズ】
「吹奏楽を専門的に追求したい」「ウインドアンサンブの名曲をたくさん演奏したい」新しいウインドアンサンブルを探求する活動が始まりました。 メンバーは、35名のウインドアンサンブル編成になります。プロオーケストラや音楽大学講師として活躍している奏者、音楽大学出身の優秀な奏者が集まりました。全員ソロからアンサンブルまで多才な演奏ができる個性的で活動的な奏者ばかりです。
 ウインドアンサンブル Wind Ensemble の作品を最高水準の演奏で発表し、芸術音楽として鑑賞されることを目的とします。吹奏楽界に多大な功績を残して2004年に他界した指揮者フレデリック・フェネル氏の提唱した「ウインドアンサンブル」を継承し研究する。またフェネル氏の日常の目標であった、「吹奏楽の楽しさを広め、吹奏楽の発展と向上に情熱を注ぐ」精神を尊重し実行します。また、吹奏楽史上、重要とされている作品、名作として認められる可能性のある作品を積極的に演奏し、その演奏内容が全世界のウインドアンサンブル音楽の手本となることを目的とします。

■オフィシャルサイト http://heartswinds.web.fc2.com/
ハーツ・ウインズ事務局
〒140-0013 東京都品川区南大井3-23-3 PMR695
Tel:070-5661-2177
E-mail:heartswinds_office@yahoo.co.jp
当団に関するお問合せ、上記事務局までお気軽にお問合せ下さい。


■プログラム
(プレコンサート)ハイドン/ディベルティメント(木管5重奏)

<1部 ウインドアンサンブルの原点>

  • ハルモニームジークの為の 序曲 作品24/メンデルスゾーン
  • トランペット協奏曲 変ホ長調 (トランペット独奏:宮本 弦)/ハイドン
  • ハイドンの主題によるファンタジー/デル・ジョイオ

<2部 エレビー/クラリネット協奏曲>

  • 市民のためのファンファーレ/アーロン・コープランド
  • クラリネット協奏曲(クラリネット独奏:大和田智彦)/マーティン・エレビー

<3部 F.フェネルの足跡を辿る・・・>

  • ファンタジア ト長調/バッハ
  • リンカンシャーの花束/グレンジャー

指揮:大澤健一(ハーツ・ウインズ常任指揮者、国立音楽大学講師)

独奏:大和田智彦 Clarinet(ハーツ・ウインズ コンサートマスター) 、
宮本 弦 Trumpet(第25回日本管打楽器コンクール第2位)
演奏:ハーツ・ウインズ

(2009.07.11)

 
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