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【注目曲】

女性初のエミー賞作曲家、ジュリー・ジローが
南部のトラッドにふれた会心作『ヴィジルス・キープ』 ---
日本初演を収録したタッドWSのCDも、アメリカで大反響!!


 2007年6月1日、東京・大田区民ホール アプリコで行われた「タッド・ウインドシンフォニー第14回定期演奏会」で、鈴木孝佳の指揮により日本初演が行われた、アメリカの作曲家ジュリー・ジローの『ヴィジルス・キープ』が内外で評判を呼んでいる。

 この作品は、2005年、アメリカ・アラバマ州オーバーンのオーバーン大学シンフォニック・バンドと同バンドの監督、ジョニー・D・ヴィンソン博士の委嘱で作曲され、同年4月15日、オーバーンの隣町オぺライカのオペライカ・パフォーミング・アーツ・センターで開催された同バンドのコンサートで、同博士の指揮で世界初演された。

 曲名の『ヴィジルス・キープ』は、“寝ずの番は続きます”という意味をもつ。

 黒人、白人の別なく、過酷な肉体労働と貧困の中に喘いできたアメリカ南部の暮らしとトラッドへの形を変えた“称賛”として書かれたこの作品は、ヴィンソン博士の提案もあり、“セイクリッド・ハープ(聖なるハープ)”と呼ばれるアメリカ南部で歌い継がれるア・カペラ合唱にモティーフを求めている。

 この“セイクリッド・ハープ”は、植民地時代をルーツとする合唱のトラッドであり、教会などの賛美歌としても歌われてきた。“ハープ”という文字が含まれるが、一切の伴奏楽器を使用せず、互いに向かい合った Trebles と Basses、Altos と Tenorsの合計4つのグループに分かれて歌唱する人間そのものを“聖なるハープ”に見立てることから、その名がある。日本でもおなじみとなっている、かの『アメージング・グレース』のメロディーもセイクリッド・ハープ歌曲集の中に見られる。

 実際に、『ヴィジルス・キープ』のモティーフとなっているのは、「セイクリッド・ハープ歌曲集」の第457番として親しまれている『ウェイフェアリング・ストレンジャー(見知らぬ旅人)』のメロディー。しかし、作曲者のジローは、この作品をその旋律の単なる主題と変奏のかたちにまとめるのではなく、それを“南部”を象徴する主題としてさまざまな形で扱い、曲全体をスケール豊かな南部称賛の音楽として書き上げた。最終部の展開では、対位的な位置づけでスーザの『星条旗よ永遠なれ』の断片も聴かれ、まさに南部万歳!! その雄大なエンディングは、とても印象に残る。

 そして、今やウェブ時代。発表以来、アメリカでは、『ヴィジルス・キープ』は、初演者のオーバーン大学シンフォニック・バンドだけでなく、多くのバンドがウェブ上にその演奏を公開するほどの人気曲となっている。そして、先に書いたタッド・ウインドシンフォニーのライヴを収録したアーカイヴCD「タッド・ウィンド・コンサート(3)ヴィジルス・キープ」(WindStream、WST-25006)は、2008年1月の発売以来、アメリカでは各収録曲の作曲家たちを熱狂させただけでなく、プロの指揮者をも巻き込んで、ものすごい評判を呼んでいる。 
 
  『私は、無言のままにされます......。そして、もし、あなた方が私を知っているならば、それ自体(私を黙らせたこと)が、どれだけすばらしい功績であるかを知っていただけることでしょう!』

 CDを聴いたジローがタッド・ウインドシンフォニーに寄せたメッセージには、それがどれだけ作曲家の意図をくみとった演奏であるかが綿々とつづられていた。そして、こんなCDを作ってくれるのであるなら、1曲プレゼントしたいとも。

 エミー賞作曲家、ジュリー・ジロー。日本では、『翼とともに(To Walk With Wings)』の作曲者であること以外、その名はまだまだ知られていない。しかし、近年の作品の充実ぶりは目を瞠るものがあり、今年は、いろいろなバンドがその作品を取り上げる予定と聞く。多才でかつ多作家。ジョン・ウィリアムズやジェリー・ゴールドスミスを師にもつこの女流作曲家の動向は、いよいよ目を離せなくなってきた。


ジュリー・アン・ジロー Julie Ann Giroux

 1961年12月12日、マサチューセッツ州フェアへブンに生まれる。ルイジアナ・ステート大学とボストン大学に学び、ピアノとホルン奏者として活躍。作曲を主にジョン・ウィリアムズとジェリー・ゴールドスミスに師事。3才でピアノを始め、9才で最初の出版曲が出るほどの天賦の才能を発揮。1988年、エミー賞に初ノミネート。その後、作曲部門で女性として初めて、同時に最年少でエミー賞を受賞。これまで100以上のテレビ番組に楽曲を提供し、セリーヌ・ディオン、ダドリー・ムーア、マドンナ、マイケル・ジャクソンら、著名なミュージシャンのアレンジも担当してきた。作品は、交響曲、吹奏楽、ソロ、アンサンブルなど、多岐にわたり、コマーシャル音楽でも活躍している。1983年に初のウィンド・バンド曲を書き、これまで、プロのウィンド・アンサンブルやミリタリー・バンド、大学バンドのために膨大な数の作品を書いている。


【ジュリー・ジロー: ヴィジルス・キープ収録CD】

タッド・ウィンド・コンサート(3) ヴィジルス・キープ

【指揮】鈴木孝佳
【演奏】
タッド・ウインドシンフォニー

【曲目】

1.ロッキー・ポイント・ホリディ(ロン・ネルソン)
 Rocky Point Holiday/Ron Nelson

2.サンクチュアリー(フランク・ティケリ)
 Sanctuary/Frank Ticheli

3.ヴィジルス・キープ(ジュリー・ジロー) -本邦初演-
 Vigils Keep - Inspired by Sacred Harp #457 -“Wayfaring Stranger”/Julie Giroux

【収録】2007年6月1日、東京・大田区民ホール アプリコ
【価格】1,400円(税込)
【CD番号】WindStream、WST-25006

【BPショップCDの詳細を見る>>>>
http://item.rakuten.co.jp/bandpower/cd-1437/

(2008.02.29)


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