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【注目曲】

大ブレークの兆しあり、ヨハン・デメイ:『エクストリーム・メイク=オーヴァー』

Text: 樋口幸弘(ウィンド・ナビゲーター)

▲作曲者のヨハン・デメイ
プロフィール


  2007年、日本のステージにも登場。一躍注目を集めることになったオランダの作曲家ヨハン・デメイ(1953〜)の『エクストリーム・メイク=オーヴァー(Extreme Make-over)〜チャイコフスキーの主題による変容〜』がブレークの兆しを見せている。

 日本では意外と知られていないが、この作品のオリジナルは、コルネットやフリューゲルホーン、テナーホーン、バリトン、ユーフォニアムなどのサクソルン属金管楽器を中心とする“ブラス・バンド”編成のために書かれた作品だった。

 このオリジナルは、ヨーロピアン・ブラス・バンド連盟の委嘱により、オランダのフローニンゲで開催が決まった「ヨーロピアン・ブラス・バンド選手権2005」のセット・テストピース(指定課題)として作曲された。委嘱にあたっては、同連盟の中心人物のひとりであり、デメイの親友でもあるベルギーのヤン・ヴァンデルローストの強いプッシュがあったことが知られ、作品は2004年秋に完成。フローニンゲのマルティンプラザで開催された同選手権の初日、2005年4月29日、ヨーロッパ各国からノミネートされた合計9つのチャンピオン・バンドにより、初の演奏が行われた。

 このときの優勝バンドは、イングランド代表、ニコラス・チャイルズ指揮、ブラック・ダイク・バンド(1855)。選手権初日の『エクストリーム・メイク=オーヴァー』で98ポイントを獲得して首位に躍り出た同バンドは、翌4月30日のオウン・チョイス(自由選択曲)で演奏したピーター・グレイアムの『地底旅行(Journey to the Centre of the Earth)』 (世界初演)でも98ポイントを得て、満点にわずか4ポイントという合計196ポイント。2位以下にぶっちぎりの優勝を飾った。その白熱の演奏は、CD「Highlights from the European Brass Band Contest 2005」(英Doyen、DOYCD196)DVD「同タイトル」(英World of Brass、WOB112)に収録されている。

 日本でもおなじみとなったウィンド・オーケストラ版は、オリジナルの大成功翌年の2006年、デメイが客演指揮をすることになったドイツのフライブルク・ブラスオルケスターのガラ・コンサートのために新たにオーケストレーションされた。初演は、同年6月1日、ドイツのフライブルクのコンツェルトハウス・フライブルクにおける同コンサートで行われ、自作自演によるそのコンサートのライヴは、CD「Klezmer Classics」(蘭Amstel Classics、CD 2006-02)に収録された。このバージョンが産み出された瞬間を知ることのできるとても貴重な録音だが、CDでは演奏者名はフライブルク・ウィンド・オーケストラと英語でのクレジットとなった。

 

 そして、2006年12月29-30日、スペインのブニョール・アルティスティカ交響吹奏楽団(指揮:ヘンリー・アダムス)が行ったデメイの交響曲第3番『プラネット・アース(Planet Earth)』ウィンド・オーケストラ版の世界初演シリーズにおいて、『エクストリーム・メイク=オーヴァー』は、再びクローズアップされることになる。同じプログラムで行われた3箇所のコンサートがすべて収録され、そのベスト演奏を編集したCD「Symphony No.3 Planet Earth - Johan de Meij」(蘭World Wind Music、WWM500.144 / 蘭Amstel Classics、CD2007-01)が制作されたからだ。『指輪物語(The Lord of the Rings)』(交響曲第1番)に始まるデメイの交響曲は、それだけで衆目を集める。2007年発売のこのCDは爆発的大ヒット。『プラネット・アース』はもちろんのこと、同じCDに収められていたライヴネス溢れる演奏の『エクストリーム・メイク=オーヴァー』も注目を集めることになった。

 

 2007年、交響曲第3番『プラネット・アース』ウィンド・オーケストラ版は、日本のステージをも席巻する。同年6月8日、大阪のザ・シンフォニーホールで行われた大阪市音楽団第94回定期演奏会において、作曲者自身による日本初演が実現したからだ。『プラネット・アース』以外の演奏曲も、『ウィンディ・シティ序曲(Windy City Overture)』、『エクストリーム・メイク=オーヴァー』という、オール・デメイ・プログラムという意欲的内容。演奏家にとってまさに“のるかそるか”というライヴとなったエキサイティングなステージは、5.1チャンネル・サラウンド方式という最新の録音技術を駆使してCD化(Cryston <オクタヴィア>、OVCC-00051)され、評判をよんでいる。デメイが棒を振らず演奏者にすべてをまかせた『エクストリーム・メイク=オーヴァー』冒頭のサクソフォン・カルテットの調べや、指揮者が巻きに巻いた演奏事故ギリギリ一杯のものすごいテンポの後半部は、ただそれだけでも聴きものだ。

 

 そして、この年、全日本吹奏楽コンクールにも登場

 ロシアの作曲家チャイコフスキーに対する一種のトリビュートとして書かれた音楽的変容である『エクストリーム・メイク=オーヴァー』。21世紀の最新オリジナルではあるが、有名な弦楽4重奏曲第1番の"アンダンテ・カンタービレ"のテーマに始まり、交響曲第4番や第6番、幻想序曲"ロメオとジュリエット"のテーマも使われていることから、親しみやすく、演奏者、聴衆の双方が愉しめる作品となっている。

(2008.02.18)
(C)2008、Yukihiro Higuchi / 樋口幸弘


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