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イギリスの新旧作曲家の作品にスポットをあてた“名作曲家シリーズ”
(SRC - Single Composer Series)
レーベルのスタートと同時に“スペシャリスト(SRC)”の世界的評価を確立させることになった看板シリーズ。単に1枚のCDにひとりの作曲家の作品を集めただけでなく、レパートリーも作曲家が実際に作曲活動を行っていた(=
生きていた)時代に、各時代の編曲のスペシャリストたちによって作られたウィンド・バンド(ミリタリー・バンド)用のトランスクリプションを中心に据え、演奏者にも現在のイギリスの第一級のミリタリー・バンドを起用するという、スタート当初の企画コンセプトは商業レコード史上前代未聞のものだった。
使用楽譜の多くも、プロデューサーのマイク・プアートン自身がイギリス各地のライブラリーやコレクション、バンドの楽譜庫などから再発掘したもので、これまで録音がなかったために演奏機会もなく、人知れず埋もれたままになっていた楽譜が再び陽の目を見ることになったことの意義は大きい。第9作では、それまでのクラシックの名品に加えて、現代のウィンド・オリジナルにもスポットがあたり、レパートリーのレンジが一気に広がった感がある。
また、録音会場にもナチュラルな響きの得られる教会やホールだけが選ばれ、最もイギリス的なウィンド・バンド編成として知られる"ガーズ"や"ロイヤル・アーティレリー"の各バンドのサウンドが、スタジオのプロセスで作られた音ではなく、その場でナマで聴いているように体感できるのも大きな魅力となっている。本物の"ブリティッシュ・サウンド"がここにある。しかも各セッションでは、いずれも40数名という、今日の基準から考えるとそんなに大きくない編成で録音されているが、演奏人数を感じさせないその音楽性は、さすがプロフェッショナル。シリーズ10作目からは、これにノルウェーのバンドも加わったが、SRCのサウンド・ポリシーは不変だ。
当初の豪華なジュエル・ケースは、制作コストの関係から、8作目にして普通のプラ・ケースに変わってしまったが、逆にブックレットは充実。各作曲家のこれまで知られていなかった側面などについても触れられているプログラム・ノートも読みごたえ十分で、資料性も高く、シリーズへの評価と期待は高まる一方。吹奏楽に関わるすべての人が“座右のライブラリー”として活用したいシリーズとなっている。
[1]【サー・エドワード・エルガー<第1集> -
組曲「インドの王冠」】
Sir Edward Elgar (1) - Crown of India
Suite
指揮:フィリップ・E・ヒルズ中佐
演奏:グレナディア・ガーズ・バンド
録音:2001.6.28-29、ロイヤル・ホスピタル・チャペル(チェルシー)
CD番号:Specialist、SRC101
イギリスの作曲家と言えば、真っ先に名が浮かぶのがエルガー。行進曲『威風堂々』第1番と第3番、『愛の挨拶』、『帝国行進曲』、劇付随音楽『インドの王冠』など、ずらりと並ぶレパートリーはまさにイギリスの定番。演奏者のグレナディア・ガーズ・バンドは、1685年に誕生した名門で、バッキンガム宮殿の衛兵交代を主任務とする5つのガーズ・バンドの顔的存在。各ガーズ・バンド中、もっとも力強い演奏で知られ、かつては英Deccaレーベルの専属バンドとして数多くのアルバムをリリースし、日本でもLondonレーベルのスターとしておなじみだった。
http://item.rakuten.co.jp/bandpower/cd-0528/
[2]【サー・アーサー・ブリス - 王侯たちの時代】
Sir Arthur Bliss - An Age of Kings
指揮:ロバート・J・オーウェン少佐
演奏:スコッツ・ガーズ・バンド
録音:2001.5.2-4、ロイヤル・ホスピタル・チャペル(チェルシー)
CD番号:Specialist、SRC102
H.G.ウェルズのSF小説の映画化のために書かれた『来るべき世界』の音楽で広く知られるブリスは、BBC放送の音楽監督や女王の音楽師範(Master
of the Queen's Music)もつとめた。前衛的な作風で知られる一方、伝統的王室行事や放送番組のための作品も多く、このアルバムにもファンファーレやマーチなど、そういった機会のために書かれた作品が多く収録されている。演奏者スコッツ・ガーズ・バンドのルーツは、1662年に遡る。英ColumbiaやFontana,
Philipsといった各レーベルの専属として世界的に絶大な人気を誇り、チャイコフスキーの“1812年”の吹奏楽による世界初ノーカット商業録音をなしとげたのもこのバンドだった。1970年、日本万国博(大阪・千里丘)に際してイギリスのナショナル・デーのために来日し、東京公演も大成功を収めた。
http://item.rakuten.co.jp/bandpower/cd-0529/
[3]【サー・マルコム・アーノルド - サウンド・バリアー】
Sir Malcolm Arnold - The Sound Barrier
指揮:スティーヴン・スミス少佐
演奏:ロイヤル・アーティレリー・バンド
録音:2001.9.27-28、ウーリッチ・タウン・ホール
CD番号:Specialist、SRC103
アーノルドは、ウィンドの世界でも人気が高い。このアルバムにも『パドストウの救命艇』『アッテンボロ組曲』『4つのコーニッシュ・ダンス』など、人気曲がズラリ。アメリカ空軍バンドの委嘱でマーティン・エレビーが作曲者監修のもとに編曲した狂詩曲『サウンド・バリアー』も注目の一曲だ。演奏者のロイヤル・アーティレリー・バンドは、英陸軍で最も大切にされているバンドのひとつで、創設は1672年。かつては100名編成で、シンフォニーオーケストラとしての演奏も広く行い、ドヴォルザークの新世界交響曲のイギリス初演を行ったのもそのオーケストラだった。近年では、Naxosレーべルのスーザ作品集で世界的成功を収めている。
http://item.rakuten.co.jp/bandpower/cd-0530/
[4]【サー・エドワード・ジャーマン - ウェールズ狂詩曲】
Sir Edward German - Welsh Rhapsody
指揮:フィリップ・シャンノン少佐
演奏:ウェルシュ・ガーズ・バンド
録音:2001.11.22-23、ロイヤル・ホスピタル・チャペル(チェルシー)
CD番号:Specialist、SRC104
編曲の多くが絶版のため、ウィンドの世界では『ウェールズ狂詩曲』だけがよく演奏され、シリーズの中では比較的地味との誤った先入観を持ちやすいが、このアルバムで一度ジャーマン・ワールドにはまると、この作曲家はもっと評価されるべきだとの印象をもつ人も多いことだろう。『ヘンリー8世』『トム・ジョーンズ』など、我々がただ知り得なかっただけの魅力的な作品との出会いもうれしい。柔らかいビロードのような美しいサウンドで演奏を展開するウェルシュ・ガーズ・バンドの創設は1915年。その歴史は各ガーズ・バンド中、最も短いが、いつの時代にもそのクラシック・テイストの演奏は高く評され、BBCレーベルから毎年のようにアルバムが発売されていた時代もあった。
http://item.rakuten.co.jp/bandpower/cd-0531/
[5]【サー・エドワード・エルガー<第2集> -
セヴァーン組曲】
Sir Edward Elgar (2) - The Severn Suite
指揮:フィリップ・E・ヒルズ中佐
演奏:グレナディア・ガーズ・バンド
録音:2001.11.18-19、ロイヤル・ホスピタル・チャペル(チェルシー)
CD番号:Specialist、SRC105
第1集の約半年後に同じチャペルで録音されたエルガーの<第2集>。『コケイン序曲
- ロンドンの下町で』、『青年の杖』組曲第2番、『セヴァーン組曲』(原曲はブラス・バンド)、行進曲『威風堂々』第2番および第4番など、作品の知名度こそ<第1集>に一歩譲るものの、エルガーの魅力満載のレパートリーは、変化にとみ、<第1集>よりはるかに完成度の高いアルバムとなった。前盤でややブラッシーなイメージがあった金管群のテュッティもほどよくバランスされ、チャペルの響きを味方につけたサウンドは“ブリティッシュ”の管の魅力にあふれている。
http://item.rakuten.co.jp/bandpower/cd-0712/
[6]【サー・アーサー・サリヴァン - 失われた音階】
Sir Arthur Sullivan - The Lost Chord
指揮:アンドルー・チャトバーン少佐
演奏:アイリッシュ・ガーズ・バンド
録音:2001.11.20-21、ロイヤル・ホスピタル・チャペル(チェルシー)
CD番号:Specialist、SRC106
イギリスの人々にとって“ギルバート & サリヴァン・オペラ”は、今も昔も最も身近なエンターテイメントのひとつ。日本でもおなじみの組曲『パイナップル・ポール』第1番 & 第2番、オペラ『イオランテ』から“貴族たちの行進”、『失われた音階』などが、本場もののテンポ運びとクラシック・テイストの美しいサウンドで愉しめる。演奏者のアイリッシュ・ガーズ・バンドの創設は、1900年。ヒンデミットの“交響曲変ロ調”をイギリスで始めて演奏、放送したバンドとして有名で、HMVやColumbia、RCAなどのメジャー・レーベルのほか、アメリカのLeedsやLouverneといった出版社からも新しい楽譜の参考レコードの録音を依頼されており、その実力は折り紙つきだ。1972年には、日本演奏旅行を行い、絶賛を博した。
http://item.rakuten.co.jp/bandpower/cd-0532/
[7]【サー・ウィリアム・ウォルトン -
「スピットファイアー」プレリュードとフーガ】
Sir William Walton - Spitfire Prelude & Fugue
指揮:ロバート・J・オーウェン少佐
演奏:スコッツ・ガーズ・バンド
録音:2002.5.9-10、ロイヤル・ホスピタル・チャペル(チェルシー)
CD番号:Specialist、SRC107
シリーズ第2作“ブリス集”の1年後に同じチャペルで収録された“ウォルトン集”。戴冠式行進曲『クラウン・インペリアル』、同『オーブとセプター』、『スピットファイアー〜プレリュードとフーガ』、『ヘンリー5世』など、ウォルトンと言えばこれ、というおなじみのレパートリーを収録したベスト・チュイス盤。その中で、このバンドのクラリネット奏者でもあるスチュワート・ブンヤン編の『シェイクスピア組曲〜ヘンリー3世』と、元ロイヤル・エア・フォース音楽総監督バリー・ヒングリー編の組曲『バトル・オブ・ブリテン』がとても新鮮だ。
http://item.rakuten.co.jp/bandpower/cd-0533/
[8]【ゴードン・ジェイコブ - 祝典のための音楽】
Gordon Jacob - A Festival of Music
指揮:グレイアム・O・ジョーンズ少佐
演奏:コールドストリーム・ガーズ・バンド
録音:2004.11.24-25、ロイヤル・ホスピタル・チャペル(チェルシー)
CD番号:Specialist、SRC108
ホルストやヴォーン=ウィリアムズが行った“ウィンドのためのオリジナル創作”の後継として位置づけられることも多いゴードン・ジェイコブの作品集。『オリジナル組曲』、『バンドのための協奏曲』、『ユーフォニアムのための幻想曲』、『祝典のための音楽』など、今日でも世界中で演奏されるレパートリーが収録されているが、ジェイコブの作品がこれまでこのような形でまとめられることがなかっただけに、バンド録音史上とても重要な1枚となった。演奏者のコールドストリーム・ガーズ・バンドの創設は、1785年。グレナディア、スコッツとともにガーズの名門バンドとして世界的知名度を誇り、RCA,
Pye, Polydor、Chandosなどのメジャーのほか、世界各国のレーベルからアルバムが発売されている。シリーズ第1-7集には録音がなかったが、これは音楽監督ジョーンズ少佐がトランスの録音にまったく関心を示さなかったため。度重なる来日で、その演奏は日本でもおなじみとなっている。
http://item.rakuten.co.jp/bandpower/cd-0827/
[9]【マーティン・エレビー - クライズ・オブ・ロンドン】
Martin Ellerby - The Cries of London
指揮:グレイアム・O・ジョーンズ少佐
演奏:コールドストリーム・ガーズ・バンド
録音:2005.7.、ヘンリー・ウッド・ホール(ロンドン)
CD番号:Specialist、SRC109
世界的人気作曲家エレビーの作品集。シリーズ第9作にして始めて登場した現代作曲家のオリジナル作品集となった。『パリのスケッチ』、『エヴォケーションズ』、『クラリネット協奏曲』、『べネティアン・スペルズ』など、日本でもおなじみの作品に加え、演奏者の委嘱による新作『クライズ・オブ・ロンドン』というラインナップは、まさに“ベスト・オブ・エレビー”といった印象。すばらしい音響を誇るロンドンのヘンリー・ウッド・ホールで収録され、余裕のある美しいバンド・サウンドも魅力。作曲者は、録音後の2005年9月、演奏者コールドストリーム・ガーズ・バンドのコンポーザーズ・イン・レジテンス(座付き作曲家)に就任した。
http://item.rakuten.co.jp/bandpower/cd-0826/
[10]【グスターヴ・ホルスト:
ミリタリー・バンドのための全作品集 -
オラフ王を称えて】
Holst's Complete Music for Military Band
- The Parise of King Olaf
指揮:レイフ・アルネ・タンゲン・ペデルセン
演奏:ノルウェー王国海軍バンド
録音:2006.2.13-17、テンスベルィ 審判教会(ノルウェー)
CD番号:Specialist、SRC110 (2枚組)
現在、存在が確認されている、ホルストがウィンド・バンドのために書いた全作品を収録した世界初のアルバム。初録音となった『オラフ王を称えて』(6曲構成)を核に、作曲者自身が第1楽章と第2楽章の途中までを書き上げていたウィンド・バンド用『ムーアサイド組曲』(原曲:ブラス・バンド)や、『組曲第2番』の第1曲“マーチ”の原型となった『3つの民謡』といった興味深い作品群に、おなじみの『組曲第1番』、『組曲第2番』、『ハマースミス〜プレリュードとスケルツォ』などを配した1枚目。それとは対称的に、2枚目には、ゴードン・ジェイコブ編の『ムーアサイド組曲』、ヴォーン=ウィリアムズ編の『祖国よ、我は汝に誓う』、G・スミス編の組曲『惑星』から“火星”と“木星”という、ホルストを知る人々によってウィンド・バンドにトランスされた編曲が収められている。タイトル曲のモチーフとなったノルウェーの守護聖人、国王“オラフ2世”に敬意を表し、シリーズ初のノルウェー海軍バンドの登場となった。1820年創設のこのバンドは、近年の改正で完全なウィンド・アンサンブル編成となり、30数名の小編成ながら、クラシック・スキルのすばらしい演奏活動を展開している。首席指揮者ペデルセンは、オスロ・フィルのソロ・クラリネット奏者も兼任している。吹奏楽関係者必携のアルバム。
http://item.rakuten.co.jp/bandpower/cd-1201/
(ウィンド・ナビゲーター: 樋口幸弘)
(2007.05.11)
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