【コラム】富樫鉄火のグル新 第287回 書評『まんが訳 酒呑童子絵巻』

 前回の能・狂言の解説書のなかで、《道成寺》が紹介されていた。その「道成寺」伝説を驚くべきスタイルで取り上げる新書が出た。『まんが訳 酒呑童子絵巻』大塚英志監修/山本忠宏編(ちくま新書)である。

 詳しい方なら、書名や著者名から想像がつくだろう。これは、日文研(国際日本文化研究センター)が所蔵する「絵巻」を、場面ごとに拡大抜粋してコマ割りし、吹き出しを付け、「まんが」風に再構成したものである。素材は、書名でもある「酒呑童子絵巻」のほか、「道成寺縁起」、「土蜘蛛草子」の3本。
 これらのオリジナル絵巻は、日文研のサイトで無料公開されており、自由に閲覧できる。しかも、素晴らしい使い勝手の良さと精度である。だから、いまさら、鮮明度ではるかに落ちる、小さな新書判に印刷された「紙」で観る必要など、ないはずである。

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■レスピーギ/交響詩「ローマの松」(演奏:ロンドン・シンフォニック・ウィンド・オーケストラ)

1991年3月6~7日、東芝EMIのリクエストでロンドンのアビロード・スタジオの第1スタジオで録音されたロンドン・シンフォニック・ウィンド・オーケストラの2枚目のアルバムで、プロデューサーは、東芝EMIの中田基彦と英EMIのジョン・ウェスト、エンジニアはマイクル・シーディーが担った。

収録曲は、レスピーギの交響詩『ローマの松』(サイ・ペイン編曲)とムソルグスキーの組曲『展覧会の絵』(サイモン・ライト編曲)とリムスキー=コルサコフの『ロシアの復活祭』序曲(ジョージ・ミラー編曲)の3曲で、この内、『ローマの松』と『展覧会の絵』ではこのレコーディングのために書き下ろされた新しい編曲が使用されている。

編曲者のサイ・ペインは、このウィンドオーケストラの初CDとなったホルストの組曲『惑星』のトランスクリプションですでに名を挙げ、もう一方のサイモン・ライトも、ウォーレス・コレクションのために斬新なアイデアのスコアを提供し、注目を集めていた新進気鋭のアレンジャーだった。

残る『ロシアの復活祭』序曲は、既存の編曲が選ばれている。編曲者のジョージ・ミラーは、第2次大戦前、有名なグレナディア・ガーズ・バンドの音楽監督をつとめ、ホルストの『組曲第1番』を初レコーディングした指揮者としても知られた。時代こそ遡るが、優れた編曲としてイギリスでは定評のあるものだ。

ロンドンの腕利きが集まったというだけでなく、音響の優れたEMIアビーロード・スタジオの空気感の中に溶け込むようなウィンドオーケストラが演奏したクラシック名曲撰!!

今回紹介するのは、とっくの昔に絶版となった初回発売時のオリジナル盤! 新品状態で少数出土したコレクター・アイテムだ!

【ロンドン・シンフォニック・ウィンド・オーケストラ】
指揮者エリック・バンクスの着想で組織されたウィンドオーケストラ。ロンドン市中の各オーケストラで活躍するプレーヤーのほか、王立音楽カレッジや王立音楽アカデミー等のベテラン教授陣によって構成。EMIのデビュー・アルバムは、ホルストの組曲「惑星」(全曲)。コンサート活動も計画されたが、残念ながら、バンクスのオーストラリアへの移住により、立ち消えとなった。

■レスピーギ/交響詩「ローマの松」
演奏:ロンドン・シンフォニック・ウィンド・オーケストラ
Pini di Roma
https://item.rakuten.co.jp/bandpower-bp/cd-4634/

【データ】

・演奏団体:ロンドン・シンフォニック・ウィンド・オーケストラ(London Symphonic Wind Orchestra)
・指揮者:エリック・バンクス(Eric Banks)
・発売元:東芝EMI
・発売年:1991年
・収録:1991年3月6~7日、Abbey Road Studios No.1、London、U.K.

【収録曲】

  1. 交響詩「ローマの松」/オットリーノ・レスピーギ(arr. サイ・ペイン)【20:13】 
    Pini di Roma/Ottorino Respighi(arr. Cy Payne)
    I) ポルゲーゼ荘の松 I pini di villa Borghese【2:42】
    II)カタコンプ付近の松 I pini presso una Catacomba【6:55】
    III)ジャニコロの松 I pini del Giaicolo【6:05】
    IV)アッピア街道の松 I pini della Via Appia【4:31】
  2. 組曲「展覧会の絵」/モデスト・ムソルグスキー(arr. サイモン・ライト)【35:34】
    Pictures at an Exhibition/Modest Mussorgsky(arr. Simon Wright)
    I)プロムナード~小人~プロムナード Promenade-Gnomus-Promenade【5:12】
    II)古城~プロムナード Vecchio Castello-Promenade【5:30】
    III)テュイルリーの庭園にて Tuileries 【1:10】
    IV)ピドロ(牛)~プロムナード Bydlo-Promenade【3:24】
    V)卵の殻をつけたひな鳥のバレエ Ballet of the chickens in their shalls【1:22】
    VI)サミュエル・ゴールデンベルグとシュムイレ Samuel Goldenberg & Schmuyle【2:11】
    VII)プロムナード~リモージュの市場 Promenade-Limages- Le marche【3:00】
    VIII)カタコンプ(ローマ時代の墓地) Catacombe【2:28】
    IX)死せる言葉による死者への話しかけ Cum mortuis in lingua mortua【2:12】
    X)鶏の足のうえの小屋 The Hut on Fowl’s Legs【3:28】
    X)キエフの大門 The Great Gate of Kiev【5:37】
  3. 「ロシアの復活祭」序曲(作品36)
    /ニコライ・リムスキー=コルサコフ(arr. ジョージ・ミラー)【14:52】
    Russian Easter Festival, Overture/Nikolai Rimsky-Korsakov(arr. George Miller)

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■ブロックバスターズ~スクリーン・スペクタキュラー(演奏:ブリーズ・ブラス・バンド)

1997年12月20日、佼成出版社からリリースされたブリーズ・ブラス・バンド(BBB)のスクリーン・スペクタキュラー! 録音は、大阪府箕面市民会館で行なわれ、エンジニアは、藤井寿典が担った。

『バットマン』『スーパーマン』『スタートレック 4』『ピンク・パンサー』『ロッキー』『サンダーバード』『インディ・ジョーンズ』など、収録されている曲は、地元大阪で年1回行なわれていたブリーズのポップ・シリーズ“ア・ファンタスティック・ナイト”で人気を集めたレパートリーだった!!

ヨーロッパ公演から帰国翌年の1997年、ブリーズがもっとも輝き、充実していた頃にレコーディングされた1枚だ!

発売元の佼成出版社が、その後CDから完全に撤退したため、入手が極めて難しくなったが、奇跡的に流通に残っていた発売当時の新品が少数入荷した。

【ブリーズ・ブラス・バンド】
1990年、オーケストラ・トロンボーン奏者、上村和義を常任指揮者として結成されたブリティッシュスタイルのプロのブラスバンド。同年7月2日のデビューコンサート以来、シリアスな作品をアグレッシブに取り上げる「LIMELIGHT CONCERT」と、ポップな音楽をリッチに聴かせる「A FANTASTIC NIGHT」の2つのシリーズを軸に、年2回の地元での自主コンサートのほか、全国各地への演奏旅行、依頼演奏、クリニック、CD制作など活発な活動を展開。海外の作曲家、指揮者、演奏家などとの交流も盛んで、意欲的なプログラミングや本場から多彩なゲストを招いてのコンサートは、国内外の専門誌等が高く評価。佼成出版社がリリースしたCD「エクスカリバー」(KOCD-2503)および「マーキュリー」(KOCD-2504) が、ともに『レコード芸術』誌の管弦楽部門・準薦盤に選ばれる。1996年10月にヨーロッパ演奏旅行。ロンドンではBBC放送番組「リッスン・トゥー・ザ・バンド」に出演。1998年、平成10年度「大阪文化祭賞」本賞を受賞した。

■ブロックバスターズ~スクリーン・スペクタキュラー
演奏:ブリーズ・ブラス・バンド
The Blockbusters – Screen Spectacular
https://item.rakuten.co.jp/bandpower-bp/cd-4627/

【データ】

・演奏団体:ブリーズ・ブラス・バンド(Breeze Brass Band)
・指揮者:上村和義(Kazuyoshi Uemura)
・発売元:佼成出版社
・発売年:1997年
・収録::1997年6月30日~7月1日、箕面市民会館(大阪府)

【収録曲】

  1. バットマン/ダニー・エルフマン(arr. アラン・キャザロール )【3:27】
    Batman/Danny Elfman(arr. Alan Catherall)
  2. スーパーマン/ジョン・ウィリアムズ(arr. レイ・ファー)【3:35】
    Superman/John Williams(arr. Ray Farr)
  3. スタートレック 4~故郷への長い道
    /レナード・ローゼンマン(arr. ダーロル・バリー)【2:34】
    Star Trek IV – The Voyage Home/Leonard Rosenman(arr. Darrol Barry)
  4. ジェームズ・ボンド・コレクション/(arr. ゴフ・リチャーズ)【6:19】
    The James Band Collection/(arr. Goff Richards)
  5. ピンク・パンサー/ヘンリー・マンシーニ(arr. マーク・ジャクスン)【4:06】
    In the Pink, from The Pink Panther/Henry Mancini(arr. Mark Jackson)
  6. ロッキー/ビル・コンティ(arr. リークス・ファンデルフェルデ)【5:41】
    Gonna Fly Now, from Rocky/Bill Conti(arr. Rieks van der Velde)
  7. クリフハンガー
    /トレヴァー・ジョーンズ(arr. リークス・ファンデルフェルデ)【5:41】
    Cliffhanger/Trevor Jones(arr. Rieks van der Velde)
  8. サンダーバード/バリー・グレイ(arr. エドリッチ・シーバート)【2:41】
    Thunderbirds/Barry Gray(arr. Edrich Siebert)
  9. ライオン・キング~愛を感じて
    /エルトン・ジョン(arr. フランク・ベルナールトス)【3:31】
    The Lion King, Can you feel the love tonight/Elton John(arr. Frank Bernaerts)
  10. インディ・ジョーンズ~魔宮の伝説
    /ジョン・ウィリアムズ(arr. レイ・ファー)【5:57】
    Indiana Jones and Temple of Doom/John Williams(arr. Ray Farr)

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■スパーク(演奏:ブリタニア・ビルディング・ソサエティほか)

1997年、既発売アルバムからコンピレーションされたフィリップ・スパーク作品集。各トラックは、以下の5枚のアルバムからとられている。

・Rule Britannia
(Doyen、DOYCD004、1990年)

・European Brass Band Championships 1991
(FT Records、FT5001、1991年)

・Welsh Wizard
(Doyen、DOYCD022、1993年)

・The Vikings
(Doyen、DOYCD023、1993年)

・European Brass Band Championships 1996
(Doyen、DOYCD057、1996年)

リリース当時、オリジナル原盤のいくつかは既に完売で、このコンピレーションは、熱狂的なスパーク人気も手伝って大歓迎された。プロデューサーには、ニコラス・チャイルズ、アリスン・チャイルズの名がクレジットされている。

演奏者は、ハワード・スネル指揮のブリタニア・ビルディング・ソサエティおよびエイカンゲル=ビョルスヴィク・ムシックラーグ(ノルウェー)、ビョルン・N・サグスタッド指揮、マンゲル・ムシックラーグ(ノルウェー)と、当時ヨーロッパを席巻していたベスト・バンドが勢揃い! ニコラス・チャイルズがソロをとった『パントマイム』は、出身バンドのトレデガー・バンドの伴奏だ。

『パルティータ』『ハーモニー・ミュージック』『ヴァイキング』『エニグマ変奏曲』という収録曲を聴いていくと、1990年代のスパークがいかにブラスバンドのために質の高い作品を書いていたかが実感できる。何よりも、演奏者が高揚感を感じつつ、愉しそうに演奏しているのがいい!

また、『ロンドン序曲』と『ハーモニー・ミュージック』は、今となっては超貴重な1991年と1996年のヨーロピアン・ブラスバンド選手権の興奮ライヴだ!!

もちろん、オリジナル盤もこのコンピレーション盤もすべて廃盤で、このようなリリース当時の新品が出土することは、今後ともまずあり得ない! 愛用のピアノ前に座る若い頃のスパークの写真も超レアだ!!

■スパーク
演奏:ブリタニア・ビルディング・ソサエティほか
https://item.rakuten.co.jp/bandpower-bp/cd-4645/

【データ】

・演奏団体:ブリタニア・ビルディング・ソサエティ・バンド (Britannia Building Society Band) 1~2 / トレデガー・バンド(Tredegar Band)3 / マンゲル・ムシックラーグ(Manger Musikklag)4 / エイカンゲル=ビョルスヴィク・ムシックラーグ(Eikanger-Bjorvik Musikklag)5、6 
・指揮者:ハワード・スネル(Howard Snell) 1~2、5、6 / ビョルン・N・サグスタッド(Bjorn N. Sagstad)4
・発売元:ドイエン (Doyen)
・発売年:1997年
・収録::1990年、Dewsbury Town Hall、Manchester、UK – 1/ 1991年4月27日、De Doelen、 Rotterdam、Holland – 2 / 1993年、Barry Town Hall, UK – 3 / 1996年5月4日、Grieghalle, Bergen、Norway – 4 / 1993年、Assembly Hall at Nordhordland Folkehogskule、Norway – 5~6

【収録曲】

【作曲(全曲):フィリップ・スパーク(Philip Sparke)】

  1. パルティータ 【15:76】
    Partita
    I) アレグロ・リトミーコ・エ・デチーゾ Allegro ritmico e deciso【4:32】
    II)アダージェット / ヴィーヴォ Adagietto / Vivo【19:44】
  2. ロンドン序曲 【12:41】
    A London Overture
  3. パントマイム 【5:02】
    Pantomime
    ユーフォニアム(Euphonium):ニコラス・チャイルズ(Nicholas Childs)
  4. ハーモニー・ミュージック 【14:06】
    Harmony Music
  5. ヴァイキング 【9:34】
    The Vikings
  6. エニグマ変奏曲 【13:35】
    Variations on an Enigma

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■フサ/コープランド/ヴォーン=ウィリアムズ/ヒンデミット(演奏:イーストマン・ウィンド・アンサンブル)

1988年3月28~30日、アメリカ・ニューヨーク州ロチェスターのイーストマン劇場でレコーディングされたドナルド・ハンスバーガー指揮、イーストマン・ウィンド・アンサンブルのシリアスな1枚。プロデューサーは、スティーヴン・エプスタイン、エンジニアは、アーウィン・カッツが担っている。

オリジナルは、翌年、米CBSからCDとしてリリースされたが、その完売後、クラシックCDの復刻を手がけるアメリカのアーキィブ・ミュージックがライセンスを得てオリジナルどおり復刻したのがこのCD-R盤だ。従って、ブックレットもレーベル面もほぼオリジナルどおりきちんと印刷され、製品番号もオリジナルと同じだ。(MK 44916)

収録曲は、ヴォーン=ウィリアムズの『トッカータ・マルツィアーレ』と『吹奏楽のための変奏曲』、ヒンデミットの『協奏音楽(作品41)』、コープランドの『クワイエット・シティ』、フサの『プラハのための音楽1968』と聴き応え満点のレパートリーがズラリ!

『クワイエット・シティ』では、ウィントン・マルサリスのトランペットとフィリップ・コックのイングリッシュホルンのソロがアルバムに華を添えている。

イーストマン劇場の音響の良さと、ウィンド・アンサンブルの面白さが際立つ1枚だ!!

【イーストマン・ウィンド・アンサンブル】
米ニューヨーク州ロチェスターにあるロチェスター大学イーストマン音楽学校に学ぶ学生からオーディション選抜されたメンバーによって編成されるウィンド・アンサンブル(管楽アンサンブル)。1952年、指揮者フレデリック・フェネルの提唱により創設された。作曲家の書いた各パートを必要最低限の奏者で音楽表現するという基本理念にたち、クラリネット以外は各1人のプレイヤーで編成される。創設から1962年までフェネルが指揮をつとめ、1962年からクライド・ローラー、1965~2001年までドナルド・ハンスバーガー、2002年以降、マーク・スキャッタデイが指揮にあたっている。

■フサ/コープランド/ヴォーン=ウィリアムズ/ヒンデミット
演奏:イーストマン・ウィンド・アンサンブル
https://item.rakuten.co.jp/bandpower-bp/cd-4628/

【データ】

・演奏団体:イーストマン・ウィンド・アンサンブル(Eastman Wind Ensemble)
・指揮者:ドナルド・ハンスバーガー(Donald Hunsberger)
・発売元:CBS Masterworks(ArkivMusic)
・発売年:(初出)1989年
・収録:1988年3月28~30日、Eastman Theater at Eastman School of Music、University of Rochester、Rochester、New York、U.S.A.

【収録曲】

  1. トッカータ・マルツィアーレ/レイフ・ヴォーン=ウィリアムズ【4:32】
    Toccata Marziale/Ralph Vaughan Williams
  2. 吹奏楽のための変奏曲/レイフ・ヴォーン=ウィリアムズ 【14:00】
    Variations for Wind Band/Ralph Vaughan Williams
  3. 協奏音楽、作品41 /パウル・ヒンデミット 【13:50】
    Konzertmusik fur Blasorchester, Op. 41/Paul Hindemith
    I) 協奏的序曲 Konzertante Ouverture: Maestoso; Lebhafte Viertel 【5:10】
    II)歌曲「高貴な騎士オイゲン公」による6つの変奏 Sechs Variationen uber das Lied: “Prinz Eugen, der Edle Ritter”【6:18】
    III)行進曲 Marsch 【2:22】
  4. クワイエット・シティ(静かな都市)/アーロン・コープランド【10:52】
    Quiet City/Aaron Copland
    トランペット(Trumpet):ウィントン・マルサリス(Wynton Marsalis)
    イングリッシュホルン(English Horn):フィリップ・コック(Phillip Koch)
  5. プラハのための音楽1968/カレル・フサ 【23:41】
    Music For Prague 1968/Karel Husa
    I)序奏とファンファーレ Introduction and Fanfare: Adagio 【6:17】
    II)アリア Aria: Moderato Molto 【5:52】
    III)間奏曲 Interlude: Misterioso 【3:50】
    IV)トッカータとコラール Toccata and Chorale: Vivace 【7:42】

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【コラム】富樫鉄火のグル新 第286回 書評『教養として学んでおきたい能・狂言』

仕事柄、エンタメ系の入門書やガイドブックには興味があるほうだが、なかなか、これといった本には、お目にかかれない。
 特に代わり映えしないのが、歌舞伎、文楽、能・狂言といった邦楽舞台に関する入門書で、ヴィジュアルが写真かイラストか漫画かのちがい程度で、内容は、ほとんど同じだ。
 ……と思っていたところ、コンパクトながら、まことにユニークな能・狂言のガイドブックが出た。『教養として学んでおきたい能・狂言』(葛西聖司著、マイナビ新書)である。

 著者は元NHKアナウンサーで、現役時代から邦楽番組の名司会者として知られていた。定年退職後は、大学やカルチャーセンターで教鞭をとる「古典芸能解説者」として大活躍だ。わたしも、国立劇場などのトークに何度か接しているが、たいへんな詳しさとわかりやすさに加え、さすがの美しい滑舌・口跡で、これほど聴いて心地よい解説者は、まずいない。

 そんな葛西さんだが、すでに歌舞伎や文楽、能・狂言の解説書は何冊か上梓している。だが今回は「教養として学んでおきたい」と付いているところがミソである。読者層は社会に出て活躍している“大人”だ。若者や初心者に媚びるような筆致は一切ない。「本書を手に取る方なら、ある程度の基礎教養はおありでしょう」と言いたげである。しかし、その筆致に品格があるので、読んでいて嫌味を感じない。こういう文章で入門書を書けるひとは少ない。さすがに、全国放送で不特定多数の視聴者を相手にしてきただけのことはある。

 本書は、まず冒頭で、一般人が触れやすいと思われている「薪能」や「ホール能」(一般ホール公演)にダメ出しする。とにかく「能楽堂へ行け」と説く。

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【コラム】富樫鉄火のグル新 第285回 無料配信でいいのか。

 今年度は中止になったが、毎年、春が過ぎ、吹奏楽コンクールの季節が迫ってくると、SNS上に、中高生たちの似たような投稿が増える。
「うちの学校は、今年のコンクール自由曲が〇〇〇〇という曲に決まったのですが、どこで聴けますか」
 これはYOUTUBEなどのネット上で、「無料」で聴ける音源がどこにあるか、教えてくれと言っているのである。「収録されたCDがあるか」「どこから発売されているのか」といった問いは、まずない。

 いまや、音楽も映像もニュースも会話も、すべてはデジタルで済むようになり、しかも、かなりのものが(違法も含めて)無料でネット上にあふれかえっている。よって人々は(特に若い子たちが)「著作物」に対価を支払う感覚を失いつつある。本も、たとえ半年待ちでもいいから、絶対に書店では購入せず、図書館で借りようとするひとがいる。
 その傾向は、昨今のコロナによる自粛在宅で、一挙に強まったような気がする。

 いま(特にGW期間中は)、ネット上は無料配信の天国である。検索で「無料配信」と入力すると、いかに多いか、わかると思う。映画、ドラマ、アニメ、スポーツ、舞台、能、落語、クラシック音楽、ポップス、オペラ、バレエ、美術展、小説、漫画……およそ、わたしたちの周囲にあるエンタテインメントの大半に、いま、「無料」で接することができる。
 これが、自粛で在宅している人々へのサービスであり、かつ、在宅解除後もファンになってもらうための下地づくりだったことはわかる。しかし、わたしは、やりすぎだと思う。

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■全英ブラスバンド選手権1998(演奏:ヨークシャー・ビルディング・ソサエティほか)

1998年9月、10月に行なわれた「全英ブラスバンド選手権1998」の模様を収録した2枚組ライヴ・アルバム! 収録されているのは、9月19~20日、ハロゲイト・インターナショナル・センターで行なわれたファースト・セクション(1st Section)からフォース・セクション(4th Section)までの各部門の優勝者と、10月17日、ロンドンのロイヤル・アルバート・ホールで行なわれたチャンピオンシップ・セクション決勝の優勝者および第2位の演奏! これで全5部門の“全英チャンピオン”の演奏が愉しめるという訳だ!

例年の“全英選手権”盤と同じスタイルの作りだが、この1998年盤が2枚組になっている理由は、どうやらチャンピオンシップ・セクション決勝のテストピースとして全バンドに課されたフィリップ・スパークの『月とメキシコのはざまに』にあるようだ。

選手権の結果、エントリー全20バンド中、優勝者から第9位のバンドまでが、すべて1ポイント差だったという、全英選手権史上稀に見る結果が出たからだ。しかも各バンドの解釈も演奏時間もまるで違った。これがこのアルバム最大の魅力である!!

2枚組の1枚目の冒頭を飾るアラン・ウィズィントン指揮、プリッグハウス&ラストリック・バンド(優勝 / 197ポイント)と、2枚目冒頭のデヴィッド・キング指揮、ヨークシャー・ビルディング・ソサエティ・バンド(第2位 / 196ポイント)の演奏は、本当にこれが同じ曲なのかと思わせるほど音楽が違い、演奏時間も2分50秒近く違う!!

1998年といえば、スパークの曲作りに大きな変化が現れ始めたとき! このアルバムを2枚組にしたプロデューサーの英断にブラボーだ!

アルバムには、その他、ガラ・コンサートにアメリカから出演したブラスバンド・オブ・バトル・クリークの演奏も3曲入っている。

■全英ブラスバンド選手権1998
演奏:ヨークシャー・ビルディング・ソサエティほか
Highlights from National Brass Band Championships of Great Britain 1998
https://item.rakuten.co.jp/bandpower-bp/cd-4614/

【データ】

・演奏団体:(曲目欄に記載)
・指揮者:(曲目欄に記載)
・発売元:ドイエン(Doyen)
・発売年:1998年
・収録:1998年10月17日、Royal Albert Hall, London, U.K. (CD-1:1、2、5 / CD-2:1、4)/ 1998年9月19~20日、The International Centre, Harrogate, U.K.(CD-1:3、4 / CD-2:2、3)

【収録曲】

【CD-1】

  1. 月とメキシコのはざまに/フィリップ・スパーク 【17:05】
    Between The Moon and Mexico/Philip Sparke
    【指揮】アラン・ウィズィントン(Allan Withington)
    【演奏】プリッグハウス&ラストリック・バンド(Brighouse & Rastrick Band)
  2. リル・ダーリン
    /ニール・へフティ(arr. フィリップ・スパーク / ジム・グレイ) 【5:09】
    Li’l Darlin’/Neal Hefti(arr. Philip Sparke / Jim Gray)
    【指揮】コンスタンティン・キッツオプロス(Constantin Kitsopoulos)
    【演奏】ブラスバンド・オブ・バトル・クリーク(Brass Band of Battle Creek)
    コルネット(Cornet):リチャード・エルマン(Richard Ellman)
  3. ミッドサマー・ミュージック/マイクル・ボール 【12:27】
    Midsummer Music/Michael Ball
    【指揮】デニス・ハドフィールド(Dennis Hadfield)
    【演奏】トッド・モーデンオールド・バンド(Todmorden Old Band)
  4. カプリッチオ/ケネス・ダウ二ー 【13:53】
    Capriccio/Kenneth Downie
    【指揮】マーティン・エヴァンズ(Martyn Evans)
    【演奏】アシュトン=アンダー=ライン・バンド(Ashton-Under-Lyne Band)
  5. ヴォルガの舟歌/ビル・フィネガン(trans. ジェフ・ティジク) 【3:27】
    Volgar Boatman/Bill Finnegan(trans. Jeff Tyzik)
    【指揮】コンスタンティン・キッツオプロス(Constantin Kitsopoulos)
    【演奏】ブラスバンド・オブ・バトル・クリーク(Brass Band of Battle Creek)

【CD-2】

  1. 月とメキシコのはざまに/フィリップ・スパーク 【19:57】
    Between The Moon and Mexico/Philip Sparke
    【指揮】デヴィッド・キング(David King)
    【演奏】ヨークシャー・ビルディング・ソサエティ・バンド(Yorkshire Building Society Band)
  2. ブラスバンドのための3つの小品/フィリップ・スパーク 【15:05】
    Three Miniatures/Philip Sparke
    【指揮】アンドルー・ホワイト(Andrew White)
    【演奏】オールダム・ブラス・97(Oldham Brass 97)
  3. カレドニアの旅/アラン・ファーニー 【13:47】
    A Caledonian Journey/Alan Fernie
    【指揮】スティーヴ・ラージ(Steve Large)
    【演奏】テスト・ヴァレー・ブラス(Test Valley Brass)
  4. シング・シング・シング/ルイ・プリマ(arr. マーク・フリーフ) 【4:33】
    Sing Sing Sing/Louis Prima(arr. Mark Freeh)
    【指揮】コンスタンティン・キッツオプロス(Constantin Kitsopoulos)
    【演奏】ブラスバンド・オブ・バトル・クリーク(Brass Band of Battle Creek)

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■ワールド・グレート・マーチーズ(演奏:グレナディア・ガーズ・バンド)

1979年、ロンドンで制作されたグレナディア・ガーズ・バンドの“世界マーチ集”。かつて、このバンドがメジャー・レーベル“デッカ(Decca)”の専属アーティストだった当時から制作を担当したアーサー・バニスターのプロデュース。録音は、マイク・ロス=トレヴァーが担っている。

オリジナルは、英パレード(Parade)レーベルからLPとしてリリースされたが、デジタル化の波に乗れなかった同レーベルの解散で、本国イギリスでは遂にCD化されなかった。そんなわけで、2004年にカナダのインディーズ“アティック(Attic)”からリリースされたこのCDは、もうそれだけで堂々の“レア盤”の殿堂入り!!

“ワールド・グレート・マーチーズ(世界のグレートなマーチ集)”というタイトルにいつわりなし! 『星条旗よ永遠なれ』『ラデツキー行進曲』『双頭の鷲の下に』『旧友』など、世界の有名マーチのほか、プレヴォーの『ベルギー国家憲兵隊行進曲』、イタリアのオルランドの『芸術家の心』、アメリカのホールの『ジェネラル・ミッチェル』など、日本ではほとんど聴く機会のないマーチも入っている。

指揮者のデリック・リチャード・キンバリーは、1977年から1987年まで、グレナディア・ガーズの音楽監督をつとめた。

バッキンガム宮殿の衛兵交代でならした堂々たるマーチが愉しめる!!

【グレナディア・ガーズ・バンド】
ロンドン、バッキンガム宮殿の衛兵交代の演奏でもおなじみの、5つある近衛(歩兵)軍楽隊のひとつで、1685年、国王チャールズ2世の勅令により、12名の民間奏者を雇用して創設された。その名のとおり、近衛グレナディア(てき弾兵)連隊に所属する。イギリス最古の歴史をもつミリタリー・バンドで、全盛期には65名の定員ながら、多忙なスケジュールをこなすために80名を超す奏者が在籍した。SP時代から数多くのレコーディングを行い、LP時代は、英Deccaレーベルの専属バンドだった。20世紀終盤に、音楽監督1名、奏者49名の定員50名に改編。2006年7月、バリー・ウォッセルの音楽監督就任以降、ウィルビー、スパークなど、現代作曲家のシンフォニック・レパートリーを積極的に取り上げるようになった。

■ワールド・グレート・マーチーズ
演奏:グレナディア・ガーズ・バンド
The World Great Marches
https://item.rakuten.co.jp/bandpower-bp/cd-4632/

【データ】

・演奏団体:グレナディア・ガーズ・バンド (The Band of the Grenadier Guards)
・指揮者:デリック・リチャード・キンバリー(Major Derek Richard Kimberley)
・発売元:アティック (カナダAttic)
・発売年:2004年
・収録:1979年、London、U.K.

【収録曲】

  1. 星条旗よ永遠なれ/ジョン・フィリップ・スーザ 【3:45】
    The Stars and Stripes Forever/John Philip Sousa
  2. ラデツキー行進曲/ヨハン・シュトラウス(父)【2:31】
    Radetzky March/Johan Strauss(senior)
  3. エル・アバ二コ/アルフレド・ヤバロイェス【2:46】
    El Abanico/Alfredo Javaloyes
  4. 歌劇「ユグノー教徒」から“行進曲”
    /ジャコモ・マイアベーア(arr. ダン・ゴッドフリー)【3:20】
    March from the opera Les Huguenots/Giacomo Meyerbeer(arr. Dan Godfrey)
  5. ジェネラル・ミッチェル/ロバート・ブルース・ホール【3:02】 
    General Mitchell/Robert Bruce Hall
  6. 双頭の鷲の下に/ヨゼフ・フランツ・ワーグナー【2:43】
    Under the Double Eagle/Josef Franz Wagner
  7. ベルギー国家憲兵隊行進曲/アルトゥール・プレヴォー【4:49】
    Marche de la Gendarmerie Nationale Belge/Arthur Prevost
  8. ポーギー大佐~シン・レッド・ライン/ケネス・J・オルフォード【4:02】
    Colonel Bogey – The Thin Red Line/Kenneth J. Alford
  9. 芸術家の心/R・オルランド(arr. G・イアシッリ)【4:44】
    Cuore D’Artista/R. Orlando(arr. G. Iasilli)
  10. 旧友/カール・タイケ【4:49】
    Alte Kameraden/Carl Teike
  11. 歌劇「アイーダ」から“グランド・マーチ”
    /ジュゼッペ・ヴェルディ【2:56】
    Grand march, from the opera Aida/Giuseppe Verdi(arr. Samuel Rhodes)
  12. サンブル・エ・ムーズ連隊
    /ロベール・ブランケット(arr. ジョゼフ・フランソワ・ラウスキ)【4:52】
    Le Regiment de Sambre et Meuse/Robert Planquette(arr. Josef Fracois Rauski)
  13. ワシントン竜騎兵/チャールズ・S・グラフラ【4:24】
    Washington Grays/Charles S. Grafulla
  14. 連隊の子供/ユリウス・フチーク【3:18】
    Die Regimentskinder/Julius Fucik

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https://item.rakuten.co.jp/bandpower-bp/cd-4632/

■樋口幸弘のウィンド交友録~バック・ステージのひとり言 第122話 交響吹奏楽のドライビングフォース

▲辻井市太郎(1910~1986)

▲プログラム – 第2回大阪市音楽団特別演奏会(1960年11月9日(水)、毎日ホール)

▲同 – 演奏曲目

▲同 – 曲目変更の謹告

▲第2回大阪市音楽団特別演奏会(1960年11月9日、毎日ホール)

『菊の香につつまれて、ここに大阪市音楽団の第2回特別演奏会が催されますこと、心から喜びにたえません。

この特別演奏会は、吹奏楽の芸術性の向上を目指す辻井団長はじめ55名の団員諸君のたぎる芸塾的意欲のあらわれで、常にはポピュラーな演奏を通じて音楽の芸術性と大衆性のかけ橋の役を果している大阪市音楽団の画期的、野心的企画です。

春の初演は、おかげ様でかなりの好評をもって迎えられ、由緒ある大阪市音楽団の名声をひときわ高めることができました。

第2回公演は、12音音楽の創始者シェーンベルクの主題と変奏 ─ 作品43aをはじめ芸術の秋に贈るにふさわしい本邦初演曲をそろえ必ずや皆さんの激励と期待にこたえるものと信じます。

どうか、温かいご喝采を、切にお願いいたします。 大阪市長 中井光次』(原文ママ)

1960年(昭和35年)11月9日(水)、大阪・北区の毎日ホールで行なわれた「第2回大阪市音楽団特別演奏会」のプログラムを飾った中井光次大阪市長(1892~1968、市長在職:1951~1963)の挨拶文だ。

現職市長がこれほどアツい口上を書くぐらいだ。

7ヶ月前の4月18日(月)、同じホールで行なわれた「第1回特別演奏会」(市長が“春の初演”と記している)は、センセーショナルな成功を収めた!(参照:《第120話 交響吹奏楽団を夢みる》

なにしろ、野外演奏やパレードのものと固く信じられてきた“吹奏楽団”が、“交響吹奏楽”という日本ではなじみのないカテゴリーを旗頭に掲げ、なんと“室内”のコンサート・ホールを使って吹奏楽の芸術性を追求する演奏会を開催! クラシック中心の音楽界をアッと言わせたのである。

地元放送局や新聞各紙を含め、吹奏楽のイメージが変った瞬間だった!

11月の「第2回特別演奏会」は、その成功裏に企画された。後に全日本吹奏楽連盟理事長をつとめることになる指揮者の朝比奈 隆(1908~2001)さんも、プログラムにこんな書き出しの一文を寄せている。

『第1回特別演奏会で我が国吹奏楽界に異常な反響をよびおこした、意欲的な大阪市音楽団と、その団長辻井君は、やつぎばやに第2弾をはなった。』(原文ママ)

マスコミ発表されたプログラムは、以下のようなものだった。

・交響曲 変ロ調
(ポール・フォーシェ)<本邦初演>

・金管楽器とオルガンのための協奏曲 作品57
(セス・ビンガム)<本邦初演>

・主題と変奏 作品43a
(アルノルト・シェーンベルク)<本邦初演>

・ジェリコ 交響吹奏楽のためのラプソディー
(モートン・グールド)<本邦初演>

この内、ビンガムの『金管楽器とオルガンのための協奏曲』は、演奏会寸前(5日前)に独奏者にドクター・ストップがかかり、急遽「第1回特別演奏会」で本邦初演されたルドルフ・シュミットの『ピアノと交響吹奏楽のための祝典協奏曲』の再演に差し替えられたが、それにしても、全曲を<本邦初演>で望むという意欲的なプログラミングに、楽壇は再びアッと言わされたのである。

2日後、1960年(昭和35年)11月11日(金)讀賣新聞に掲載された「音楽評」は、“意欲ある試み”と見出しをつけ、その模様をこう伝えている。

『大阪市音楽団が九日毎日ホールで演奏会をひらいた。辻井市太郎の指揮による約六十人の吹奏楽演奏は、日本ではあまり類例のない演奏会だけに、一部をのぞいて全部本邦初演の曲ばかりならべたプロも珍しい。…..楽団員たちの芸術意欲が市を動かして、こんどフォーシェ、シェーンベルク、グールドなど本格的な吹奏楽曲を初演したわけだ。そうとうな難曲をこなす腕前は立派なもので、真木利一のピアノを加えたシュミットの曲も熱演だったが、吹奏楽の持つ機能をフルに発揮したグールドの作品は圧巻だった。(藤獄彰英)』(「讀賣新聞」昭和35年11月11日(金)、抄録、原文ママ)

専門誌「月刊吹奏楽研究」1961年1月号(月刊吹奏楽研究社)も、38頁に「シンフォニック・バンド 大阪市音楽団 第二回特別演奏会 意欲に燃えて初演曲を世に問う」という記事を掲載した。

『昨昭和三十五年四月十八日に第一回特別演奏会を催して、ヒンデミットの吹奏楽のための変ロ調交響楽、シュミットのピアノと吹奏楽のための祝典変奏曲など、本邦初演の野心的曲目をならべて、吹奏楽の芸術的昂揚への研究成果を世に問う演奏で、天下の音楽界の視聴を集めた大阪市音楽団では、その第二回特別演奏会を、十一月九日午后六時三十分から、毎日ホールで開催した。

四十年にわたる古い伝統にはぐくまれ、辻井市太郎団長の吹奏楽一図の研究的態度と気鋭の隊員、理想的編成など、あらゆる点において、Symphonic Bandとしてわが国最高レベルのものであることは、今日では万人の認めるところである。』(原文ママ、「月刊吹奏楽研究」1961年1月号、吹奏楽研究社)

また、演奏曲の中では、同年秋のフランスのギャルド・レピュブリケーヌ初来日(参照:《第22話 ギャルド1961の伝説》)を意識してか、フォーシェの交響曲に高い関心を示し、短い概説まで加えている。

『この曲はフランス生まれの作曲家フォーシェ(一八五八年生れ)の作品で、一九二六年に、ギャルド・レピュブリケーヌによって初演された吹奏楽のために作曲された交響曲』(同)

NHKのラジオ第2放送(AM)も、1960年(昭和35年)12月30日(金)午後8時15分から、演奏会のライヴを45分番組にまとめてオンエアした。

市音の「特別演奏会」は、1968年(昭和43年)5月28日(火)、毎日ホールで開催された第17回以降、「定期演奏会」と改称され、2014年(平成26年)の民営化後、Osaka Shion Wind Orchestra(オオサカ・シオン・ウインド・オーケストラ)と楽団名を改めた後も、その系譜は、令和の今日まで引き継がれている。

辻井さんが指揮したのは、この内、「第1回」から「第24回」までだったが、ここで特記したいのは、この間、37曲もの“初演”や“本邦初演”が行なわれていることだ。

「第1回」で取り上げられたパウル・ヒンデミットの『交響曲 変ロ調』に始まり、ポール・フォーシェの『交響曲 変ロ調』、エクトール・ベルリオーズの『葬送と勝利の交響曲』、フランク・エリクソンの『交響曲第2番』、ヴィットリオ・ジャンニー二の『交響曲第3番』、アラン・ホヴァネスの『交響曲第4番』『第20番』、ロバート・ウォシュバーンの『交響曲』、トーマス・ベーバースドルフの『管楽器と打楽器のための交響曲』、ポール・ホエアーの『ストーンヘンジ交響曲』まで、シンフォニーだけで10曲の本邦初演が行なわれ、リヒャルト・ワーグナーの『誓忠行進曲』、パーシー・グレインジャーの『リンカーンシャーの花束』、フローラン・シュミットの『セラムリク』、ロジャー・ニクソンの『太平洋の祭り』、ジョン・バーンズ・チャンスの『呪文と踊り』、ポール・クレストンの『ザノ二』を日本に紹介したのも、辻井/市音の定期シリーズだった。

加えて、1969年(昭和44年)11月13日(木)、フェスティバルホールにおける「第20回」と1971年(昭和46年)11月16日(火)、同ホールの「第23回」は、日本ワールド・レコード社からライヴ盤LPレコードがリリースされた。

英語の辞書には、“牽引役”や“推進役”を指す“ドライビングフォース(driving force)”という語がある。

辻井市太郎指揮、大阪市音楽団は、正しく吹奏楽のドライビングフォースだった!!

▲「月刊吹奏楽研究」1961年1月号(吹奏楽研究社)

▲LP – 第20回大阪市音楽団定期演奏会(日本ワールド、JWR-1138、1970年)

▲JWR-1138 – A面レーベル

▲JWR-1138 – B面レーベル

▲LP – 第23回大阪市音楽団定期演奏会(日本ワールド、JWR-2006、1972年)

▲JWR-2006 – A面レーベル

▲JWR-2006 – B面レーベル