【コラム】富樫鉄火のグル新  第304回 合唱で聴きたい~よみがえる岡林信康

岡林信康(1946~)が新アルバム『復活の朝』(FUJI)をリリースした。ライヴ盤などを別にすれば、23年ぶりの新曲アルバムだという。これがとてもいい内容だったので、ご紹介したい。

 岡林信康といえば、1960年代後半~70年代にかけて、《山谷ブルース》《友よ》《手紙》《チューリップのアップリケ》《流れ者》といった、社会の矛盾や不公正を衝くプロテスト・ソングで知られるシンガー・ソング・ライターだ。“フォークの神様”とも称されていた。
 いままでに10社前後のレコード会社を渡り歩き、そのたびに新しいジャンルに挑んできた。あるときなど、ド演歌の世界に入り込み、西川峰子や美空ひばりに楽曲を提供した。かと思えば、TV時代劇のエンディング・テーマを歌ったこともある。ボブ・ディランを彷彿とさせる作風だった時期もあった。

 そんなカメレオンぶりのせいで、ずっと追いかけてきたファンを別とすれば、一般には、名前こそ有名だが、一筋縄ではいかない、不思議な存在だったのではないだろうか。
 特に、ある時期から農耕生活に入ったため、引退したと思っているひともいるかもしれない。だが、ライヴ・コンサートはずっと続けてきた。

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■交響曲《ワインダーク・シー》/ジョン・マッキー(演奏:昭和ウインド・シンフォニー)

2020年12月に録音された昭和ウインド・シンフォニーのCD「交響曲《ワインダーク・シー》」がブレーンより発売された。収録されているのは、タイトル曲ほか、ジョン・マッキーの「セイクレッド・スペース」など、全5曲。詳細などは以下の通り。

■交響曲《ワインダーク・シー》/ジョン・マッキー
演奏:昭和ウインド・シンフォニー
Wine-Dark Sea: Symphony for Band
https://item.rakuten.co.jp/bandpower-bp/cd-4734/

【データ】

・演奏団体:昭和ウインド・シンフォニー(Showa Wind Symphony)
・指揮者:福本信太郎(Shintaro Fukumoto)
・発売元:ブレーン・ミュージック
・発売年:2021年
・収録:2020年12月9日,10日 昭和音楽大学 テアトロ・ジーリオ・ショウワ
・メーカー品番:

【収録曲】

1. インフィニティ~ブルーインパルスの為に/和田 信【6:07】
The Infinite – for Blue Impulse/Shin Wada

2. リ(ニュー)アル》/ヴィエット・クオン《日本初演》
Re(new)al/Viet Cuong
第1楽章:水力 Hydro【4:30】
第2楽章:風力 Wind【5:45】
第3楽章:太陽光 Solar【5:42】
打楽器ソリスト:杉本和, 小野寺秀策, 小嶋義貴, 荻原未来

3. ハバナ/ケヴィン・デイ《日本初演》【7:49】
Havana/Kevin Day

4. 交響曲《ワインダーク・シー》/ジョン・マッキー
Wine-Dark Sea: Symphony for Band/John Mackey
第1楽章:思い上がり Hubris【10:34】
第2楽章:不死の糸は弱く Immortal thread, so weak【11:26】
第3楽章:亡霊たちの歓待 The attentions of souls【8:57】

5. セイクレッド・スペース/ジョン・マッキー【4:11】
Sacred Spaces/John Mackey

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https://item.rakuten.co.jp/bandpower-bp/cd-4734/

■スパイラル・ブロッサム(演奏:東海大学付属高輪台高等学校吹奏楽部)

東海大高輪台高校の「スパイラル」シリーズ第18作目となるCD「スパイラル・ブロッサム」がカフア・レコードより発売された。収録されているのは、アーノルド(瀬尾宗利編曲)の「第六の幸福をもたらす宿」をはじめ、酒井 格の「たなばた」など、全10曲。詳細などは以下の通り。

■スパイラル・ブロッサム
演奏:東海大学付属高輪台高等学校吹奏楽部Vol.18
Spiral Blossom【吹奏楽 CD】CACG-0306
https://item.rakuten.co.jp/bandpower-bp/cd-4733/

【データ】

・演奏団体:東海大学付属高輪台高等学校吹奏楽部
(Tokai University Takanawadai Senior High School Wind Orchestra)
https://item.rakuten.co.jp/bandpower-bp/cd-4733/

【データ】

・指揮者:畠田貴生、島川真樹、川村伸彦、中村俊哉
・発売元:カフア(CAFUA)
・発売年:2021年
・収録:
・メーカー品番:

【収録曲】

〇セッションレコーディング

1. 喜歌劇「軽騎兵」序曲/スッペ(arr.中橋愛生)
“Leichte Kavallerie”Overture/Franz von Suppe(arr.Yoshio Nakahashi)

2. KAGENUI/石毛里佳
KAGENUI/Rika Ishige

3. 第六の幸福をもたらす宿/マルコム・アーノルド(arr.瀬尾宗利)
The Inn of the Sixth Happiness/Malcolm Arnold(arr. Munetoshi Senoo)

4. たなばた/酒井 格
The Seventh Night of July/Itaru Sakai

〇ライブレコーディング

5. エクストリーム・メイクオーバーより/ヨハン・デメイ
Extreme Make-Over Metamorphoses on a Theme by Tchaikovsky/Johan de Meij

6. 式典のための行進曲「栄光をたたえて」/内藤淳一
“Under the Flag of Glory” Ceremonial March/Jun-ichi Naito

7.谺響(こだま)する時の峡谷 吹奏楽のための交唱的序曲/中橋愛生
The Canyon in Temporal Echoes Antiphonal Overture for Symphonic Band/Yoshio Nakahashi

8. 祝典のための前奏曲「美しき花達よ、今ここに輝け」/福島弘和
Festival Overture “Be happy with you”/Hirokazu Fukushima

9. シンフォニエッタ第4番「憶(おも)いの刻(とき)」/福島弘和
Sinfonietta No.4“For a Brighter Future”/Hirokazu Fukushima

10. スパイラル・ブロッサム/鈴木英史
Spiral Blossom/Eiji Suzuki

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■カンタービレ~気迫の音楽を 2013-2020(演奏:北斗市立上磯中学校吹奏楽部)

北斗市立上磯中学校吹奏楽部の2013年から2020年までのコンクール&コンサートのライヴ盤を収録した2枚組CDがブレーンより発売された。収録されているのは「ルイ・ブージョワーの賛歌による変奏曲」「 エルフゲンの叫び」など、全24曲。詳細などは以下の通り。

■カンタービレ~気迫の音楽を 2013-2020
演奏:北斗市立上磯中学校吹奏楽部
https://item.rakuten.co.jp/bandpower-bp/cd-4735/

【データ】

・演奏団体:北斗市立上磯中学校吹奏楽部
・指揮者:中條淳也(Junya Nakajo)
・発売元:ブレーン・ミュージック
・発売年:2021年
・収録:
・メーカー品番:

【収録曲】

CD1

2013年度 第61回全日本吹奏楽コンクール
1. 勇者のマズルカ/三澤 慶【4:45】
2. 交響曲第2番「キリストの受難」より/フェルレル・フェルラン【6:45】 [6:45]

2014年度 第59回北海道吹奏楽コンクール
3. 最果ての城のゼビア/中西英介【4:15】

2014年度 第20回日本管楽合奏コンテスト
4. エルフゲンの叫び/ジェフリー・ローレンス【7:20】

2015年度 第63回全日本吹奏楽コンクール
5. 秘儀III -旋回舞踊のためのヘテロフォニー/西村 朗【4:04】
6. ルイ・ブージョワーの賛歌による変奏曲/クロード・T・スミス【7:10】

2016年度 第64回全日本吹奏楽コンクール
7. ある英雄の記憶 ~「虹の国と氷の国」より/西村 友【4:13】
8. 華麗なる舞曲/クロード・T・スミス【7:14】

2017年度 第65回全日本吹奏楽コンクール
9. インテルメッツォ/保科 洋【4:35】
10. 吹奏楽のための交響曲「ワインダーク・シー」より/ジョン・マッキー【6:57】

2018年度 第66回全日本吹奏楽コンクール
11. 吹奏楽のための「ワルツ」/高 昌帥【4:06】
12. ブリュッセル・レクイエム/ベルト・アッペルモント【7:29】

CD2

2019年度 第67回全日本吹奏楽コンクール
1.「あんたがたどこさ」の主題による幻想曲/林 大地【3:57】
2. フェスティバル・ヴァリエーション/クロード・T・スミス【7:30】

2020年度 第26回日本管楽合奏コンテスト
3. 組曲「展覧会の絵」より/ムソルグスキー(arr.石津谷治法)【8:00】

平成29年度 こども音楽コンクール
4.「舞踏組曲」より/バルトーク(arr.田川伸一郎)【6:39】

平成30年度 こども音楽コンクール
5. バレエ音楽「青銅の騎士」より/グリエール(arr.田川伸一郎)【6:14】

令和元年度 こども音楽コンクール
6. 歌劇「トゥーランドット」より/プッチーニ(arr.渡辺秀之)【5:42】

2016年 第47回日本吹奏楽指導者クリニック
7. 「鳳凰」~仁愛鳥譜/鈴木英史【6:29】
8. 交響曲第2番 第3、第4楽章/ラフマニノフ(arr.瀬尾宗利)【6:48】

2019年 第50回日本吹奏楽指導者クリニック
9. カーン/ジュリー・ジロー【6:03】
10. 第50回日本吹奏楽指導者クリニック ジュピター/ホルスト(arr.三浦秀秋)【6:21】

2020年 HAPPYコンサート
11. 交響組曲「天気の子」/野田洋次郎(arr.郷間幹男)【8:24】

2020年 第4回NJBサマーコンサート
12. MOVE ON/石川一宏/内藤慎也(arr.真島俊夫)【4:30】

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■究極の吹奏楽~FUNKY植田薫&武商吹部編

「日本一ファンキーな吹奏楽部」と呼ばれる福井県立武生商業・商工高等学校吹奏楽部の「初」のファンクCDがロケット・ミュージックより発売された。収録されているのは「セプテンバー」「レッツ・グルーヴ」など全12曲。詳細などは以下のとおり。

■究極の吹奏楽~FUNKY植田薫&武商吹部編
Premium Wind Ensemble Collection of“Funky Kaoru Ueda & Takesho H.S. Band”
http://www.bandpower.shop/shopdetail/000000000978/

【データ】

・演奏:武生商業・武生商工高校吹奏楽部
・指揮:植田 薫
・発売元:ロケットミュージック
・発売年:2021年
・収録:
・メーカー品番:

【収録曲】

  1. セレブレーション/クール & ザ・ギャング【5:01】
    CELEBRATION/Kool & The Gang
  2. アップタウン・ファンク/マーク・ロンソン and ブルーノ・マーズ【5:17】
    UPTOWN FUNK/Mark Ronson and Bruno Mars
  3. セプテンバー/アース & アンド・ファイアー【4:12】
    SEPTEMBER/Earth,Wind & Fire
  4. アイ・キャント・ターン・ユー・ルース/アレサ・フランクリン【5:05】
    I CAN’T TURN YOU LOOSE/Aretha Franklin
  5. シンク/アレサ・フランクリン【3:05】
    THINK/Aretha Franklin
  6. シェイク・ア・テイル・フェザー/レイ・チャールズ and ブルース・ブラザーズ【4:29】
    SHAKE A TAIL FEATHER/Ray Charles and The Blues Brothers
  7. レッツ・グルーヴ/アース・ウィンド & ファイアー【7:02】
    LET’S GROOVE/Earth,Wind & Fire
  8. ウォーク・ザ・ダイナソー/ウォズ (ノット・ウォズ)【4:35】
    WALK THE DINOSAUR/Was(Not Was)
  9. レッツ・ゴー・クレイジー/プリンス【4:28】
    LET’S GO CRAZY/Prince
  10. ブレイム・イット・オン・ザ・ブギ(今夜はブギー・ナイト)
    /ザ・ジャクソンズ【4:02】
    BLAME IT ON THE BOOGIE/The Jacksons
  11. トマト・イッパツ/スペクトラム【4:53】
    TOMATO IPPATSU/Spectrum
  12. ラヴ・ピース・アンダー・ザ・グルーヴ
    (植田薫,山本治和&The New Beadsオリジナル作品)【5:33】
    LUV,PEACE under the GROOVE

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【コラム】富樫鉄火のグル新 第303回 石巻の「ベテランにして新人」ジャーナリスト

 本日は3月11日。
 どのメディアも「東日本大震災10年」で一色だが、本コラムでは、あるジャーナリストをご紹介したい。
 すでにYAHOOニュースにも転載されたので、ご存じの方も多いと思うが、東京中日スポーツ新聞の芸能デスクだった、本庄雅之さん(61)である。

 本庄さんは、長年つとめた同社を昨年末に定年退職し、故郷の宮城県石巻市にもどった。そして、この1月、地元紙「石巻日日(ひび)新聞」に再就職。第二の人生を歩みはじめた。
 本庄さんは、本日(3月11日付)、古巣「東京中日スポーツ」の文化芸能面に寄稿し、次のように書いている。

「10年前のあの日、実家も被災。丸4日、両親の生死が分からなかった。避難所での生存が確認できたのもつかの間、父親は避難先の秋田で難病を発症。6月に旅立った。極度のストレスが原因ではないかと関連死の申請をしたが、認められなかった。1年半後、リフォームした実家に戻った母親も4年前に他界。以来、家のメンテナンスなどで行き来しながら、石巻を見つめてきた」

 彼が再就職した「石巻日日新聞」は、前身まで含めれば1912年創刊の老舗新聞。石巻市、東松島市、女川町で発行されている夕刊紙だ。
 災害発生時、社屋が被災し、印刷が不能となった。だが、その間、「手書きの壁新聞」や「市販プリンタによる印刷」で「発行」しつづけ、結局、1日も休刊しなかったことで一躍注目を浴びた。その年の菊池寛賞を受賞している。

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【コラム】富樫鉄火のグル新 第302回 「懐かしさ」の理由~よみがえる《ジンギスカン》

 このCDジャケットをご覧いただきたい。どう見ても若いとはいえないオジサン・オバサンたちが、すさまじい厚化粧とド派手な衣装で迫ってくる。
 彼らは、《ジンギスカン》を歌った「ジンギスカン」なるグループである。
 1979年に、「ミュンヘン・ディスコ・サウンド」として世界中で大ヒットした曲だ。

 この曲は、1979年のユーロビジョン・ソング・コンテストにおける「西ドイツ代表曲」だった。作詞作曲者コンビ(作曲者はプロの音楽家だが、作詞者は経済学者)は、「曲」で応募したのだが、ステージで歌う「歌手」が必要となり、急きょ、オーディションでシンガーとダンサー6人が集められ、曲名と同じ「ジンギスカン」のグループ名で本選会に出場した。

 結果は4位だったが、その異様なハイテンションぶりと、わかりやすくて楽しい曲想で、たちまち世界的大ヒットとなった。
 日本でも膨大な数のアーティストがカバーし、高校野球やプロ野球、サッカーの応援音楽としてロング・ヒットとなった。ディスコ曲の枠を超え、盆踊りで人気となったほか、幼稚園・保育園での定番となり、いまでも運動会などで幼児たちが「ウ! ハ!」と元気な声をあげて踊っている。

 その彼らの14年ぶり(日本では39年ぶり)のオリジナル・アルバム『ヒア・ウィ・ゴー』がリリースされた。

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■樋口幸弘のウィンド交友録~バック・ステージのひとり言 第144話 ウィンド・オーケストラのための交響曲

▲木村吉宏(1939~2021)(大阪市音楽団練習場前)

▲CD – ウィンド・オーケストラのための交響曲[1](東芝EMI、TOCZ-9242、1994年)

▲TOCZ-9242 – インレーカード

『よし! その話、こうた(買った)!!』

1993年(平成5年)5月、大阪市音楽団(市音:現Osaka Shion Wind Orchestra)の団長兼常任指揮者(当時)の木村吉宏さん(1939~2021)から電話が入り、昼食をご一緒した際、木村さんのある問いに応えた筆者の言に対し、周囲も驚く大きな声で、もの凄い勢いで返って来た言葉だ。

場所は、森之宮ピロティホール併設のアピオ大阪(大阪市立労働会館)1階のレストランだった。

当時の市音は、1991年から、東京佼成ウインドオーケストラ、シエナ・ウインド・オーケストラなどとともに東芝EMIのCD「吹奏楽マスターピースシリーズ」(3枚組ボックス全10巻:TOCZ-0001~0030)の国内レコーディングの一翼を担っており、市音としての初録音盤の「“吹奏楽:ワーグナーの饗宴”Vol.1」(TOCZ-0003)を含む《第1集》が1991年3月27日(水)に、2枚目の「“吹奏楽:ロシアの巨匠たち” VOL.2」(TOCZ-0006)を含む《第2集》が1991年10月23日(水)に、3枚目の「“吹奏楽:フランスの巨匠たち” VOL.2」(TOCZ-0009)を含む《第3集》が1992年4月22日(水)にリリースとなっていた。(参照:《第54話 ハインツ・フリーセンとの出会い》

また、単独発売盤として国内吹奏楽CD史上空前のセールスを叩き出した「大栗裕作品集」(東芝EMI、TOCZ-9195)が1993年1月20日(水)に、「吹奏楽ベスト・セレクション’93」(東芝EMI、TOCZ-9205)が同年5月12日(水)に発売。活発なレコーディング活動が行なわれていた。(参照:《第43話 大栗 裕「仮面幻想」ものがたり》、《第44話 朝比奈 隆と大栗 裕》

その一方、1992年5月13日(水)、大阪のザ・シンフォニーホールで行なわれた「大阪市音楽団 第64回定期演奏会」で日本初演されたヨハン・デメイ(Johan de Meij)の交響曲第1番『指輪物語(The Lord of the Rings)』をNHKがライヴ収録し、同年8月16日(日)のFM番組「生放送!ブラスFMオール・リクエスト」でオン・エアされ、全国的な話題となり、その結果、1994年2月27日(日)に市音初の自主制作盤としてリリースされる「大阪市音楽団 NHKライヴ 指輪物語 ─ 本邦初演 At the Symphpny Hall」(大阪市教育振興公社、OMSB-2801)の制作プロジェクトもなんとか目鼻がつく段階まで進んでいた。(参照:《第58話 NHK ? 生放送!ブラスFMオール・リクエスト》、《第64話 デメイ「指輪物語」日本初CD制作秘話》)

個人的にも、この短期間に、“マスターピース盤”3枚と“大栗盤”のプログラム・ノートの執筆とNHK番組のナビゲーター、市音初の自主制作盤のプロデューサーまでつとめることができたことは、とても愉快な想い出であり、誇りに思っている。

話を元に戻そう。

冒頭の木村さんのクエスチョンは、以下のようなものだった。

『東芝(EMI)の録音やNHKのラジオがあって、ウチの連中、みんな喜んどる(喜んでいる)けどなぁ、それではあかんのや(ダメなんだ)。これからのわが社(市音)は、わが社独自のもの(企画)をやっていかな(いかないと)、あかんのや(ダメなんだ)。なんぞ(何か)、ええ考え(面白いアイデア)ないか?』(カッコ内は筆者)

大阪弁バリバリのこの発言をもう少し噛み砕くと、持ち込まれた“依頼もの”だけを待っているようではダメで、誰もがやったことがない独自色のある“自主制作もの”がやれないか、という趣旨の質問だった。

これを聞いた瞬間は、正直まさかこの昼食の席で、楽団の将来を左右するかも知れない、そんな重大な質問が飛んでくるとは思ってもみなかった。しかし、目の前の現実として、《第3集》まで進んだ東芝EMIの“吹奏楽マスターピースシリーズ”が、監修者の石上禮男さんの発案で、《第4集》、《第5集》をアメリカの大学バンドで、《第6集》をヨーロッパのプロで録ることが決まっており、しばらくこのシリーズの国内録音がないのも事実だった。年間150回近い演奏機会がある市音を束ねる長としては、せっかくレコーディングで盛り上がった楽団としての上昇機運を萎めかねない状況を座視できなかったのだろう。

道理で、昼食時間とは言え、筆者を楽団事務所の外に連れ出した訳だ。

一瞬いろいろな考えが頭をめぐったが、その中から長く暖めてきたアイデアを1つだけ返すことにした。

『吹奏楽のオリジナル交響曲全集なんてどうでしょうか。』

第47話 ヨーロピアン・ウィンド・サークルの始動》でもお話ししたように、それは、3年ほど前に佼成出版社の柴田輝吉さんの質問に答えて一度発案したことがあった。しかし、その際は制作側と演奏側の議論が噛み合わず、敢えなくボツとなった。柴田さんから伺った話では、誰の指揮でやるのか、ということも政治的な課題となっていたらしい。

しかし、筆者にとっては、この交響曲録音構想は、1983年(昭和58年)に市音60周年を期して企画したLP「吹奏楽のための交響曲(日本ワールド、WL-8319)以来、ずっと時間をかけて暖めてきたアイデアであり、1988年の『指輪物語』など、新作の登場により、中身は絶えずアップデートを重ねてきた。(参照:《第65話 朝比奈隆:吹奏楽のための交響曲》)

機はいよいよ熟していたのである。

筆者の言を聞いて、木村さんの眼鏡の奥がキラリと光った。

そして、冒頭の発言へとつながったわけだ!!

木村さんは、続けて『ウィンドのシンフォニー集とは面白い!!あんたなぁ、この話、最後まで責任もって面倒みな(面倒みないと)、アカンで(ダメだぞ)。監修者として。早速、ライブ(ライブラリー)にある楽譜をリストアップさせ、会議の日程出させて連絡入れさせるから。頼むわ。』(カッコ内は、筆者)と、こちらにアレコレ言わせず、すでに“もう決めている”様子だ。

その後、会議は、筆者のヨーロッパ渡航の前に、6月24日(木)と7月8日(木)、市音練習場2階奥のアンサンブル室で行なわれ、市音プログラム編成委のメンバーがライブラリーにあるオリジナル交響曲を調べ上げたリストと筆者のもつ最新ネタをもとに検討。それだけで、少なくとも10枚以上のCDが作れそうだった。

自主制作らしい、アカデミックなシリーズになりそうな予感がした!

とは言っても、当時の市音は、大阪市という行政機関の一部だったので、その時点での最大の課題が、予算請求とスケジューリングになることは明らかだった。

とくに予算面では、市音のマネージメント・セクションを拡充させるための外部組織として作られた“大阪市教育振興公社”の小梶善一さん(元市音クラリネット奏者)の尽力と大阪市音楽団友の会事務局長の藤川昌三さんの協力で、前述のCD「NHKライヴ 指輪物語 ─ 本邦初演 At the Symphpny Hall」の制作費の目処がついたばかりで、その結果がまだ出ていない内に、さらに次のCD制作の予算をつけることがどれだけ困難を極めるのか、それは誰の目にも明らかだった。

ところが、年を越し、1994年(平成6年)に入ると、にわかに情勢が変わってきた。

1993年1月リリースの「大栗裕作品集」が、東芝EMIの当初予想をはるかに上回り、セールスの勢いが衰えないところへもってきて、市音がはじめて自主制作したCD「NHKライヴ 指輪物語 ─ 本邦初演 At the Symphpny Hall」がアッという間に完売。制作費の回収どころか、収益まで出してしまったのである。

これらの結果は、市音のすべてのレコーディング構想に好循環をもたらした。

やがて、東芝EMIで「大栗裕作品集」を手がけたチーム(本来、企画ものや自主制作などを担う第三営業本部)が“シンフォニー・シリーズ”の話に関心を示し、『ぜひ、ウチでやらせてください。』と木村さんに申し入れたことから、後に《ウィンド・オーケストラのための交響曲》と名づけられるシンフォニー・シリーズは、市音の自主企画盤から東芝EMI制作盤へと立ち位置が変更となった。

その後、シリーズ第1弾の曲目が、1994年6月2日(木)の「大阪市音楽団第68回定期演奏会」(ザ・シンフォニーホール)で日本初演されたオランダのヨハン・デメイ(Johan de Meij)の『交響曲第2番“ビッグ・アップル(ニューヨーク・シンフォ二ー)”(Symphony No.2“The Big Apple”- A New York Symphony)』に、フランスのセルジュ・ランセン(Serge Lansen)の『マンハッタン交響曲(Manhattan Symphony)』という、ニューヨークを題材とする2曲に決定。レコーディングは、同年9月29日(木)~30日(金)、京都府八幡市の八幡市文化センター大ホールで行なわれ、CDは12月21日(水)にリリースされた。(参照:《第143話 デメイ:交響曲第2番「ビッグ・アップル」日本初演》)

世界初、吹奏楽のオリジナル・シンフォニーだけのシリーズのスタートである!

そして、その大興奮から27年近い時が流れた…。

多くの人からの連絡で、2021年(令和3年)2月24日(水)夜に、このCDを仕掛けた中心人物でもあった木村さんが亡くなったとの訃報に接し、筆者も、落ち着かない気持ちで28日(日)午後に堺市立斎場で行なわれた告別式に参列した。

そして、近くでお顔を拝す機会を得たが、その時なぜか、“ちょうどええとこに(いいところに)来た。ちょっとやって欲しいことがあるんや。”という懐かしい声が聞こえたような気がした。

またひとつ、個性が旅立った。

合掌。

▲上記3枚 TOCZ-9242 – レコーディング風景(1994年9月29日、八幡市文化センター)

■ヤン・デハーン吹奏楽作品集:リバティ(演奏:オランダ王国陸軍バンド、他)

オランダの作曲家、指揮者、そして世界的に有名な出版社デハスケの創立者としても知られるヤン・デハーンの60歳を記念して作られた3枚組作品集。

ヤン・デハーンは、1951年7月29日、フリースラント州ヴァーンスの生まれ。ウィンド・ミュージックをこよなく愛する父親の影響を受けて育ち、レーウワルデンの教育音楽アカデミーで音楽教育とトロンボーンを、ユトレヘト音楽院でヘンク・ヴァンレインスホーテンに指揮法を師事。オランダのラジオとテレビの指揮者、作曲家、編曲家、また国際審査員として活躍し、オランダ国内だけでなく、東京佼成ウインドオーケストラ、デスフォード・コリアリー・バンドなど、海外の楽団とのレコーディングも行なっている。中でも、佼成出版社からリリースされたCD「ヨーロピアン・ウィンド・サークル“交響詩スパルタクス”」は、ヨーロッパのオリジナルを日本に初めて紹介した記念碑的なCDとして知られる。

このアルバムには、そんな彼の代表的な作品29曲が収められている。古典的手法で書かれ、メロディー・ラインを重視したデハーンの作品は、奇をてらうことなく、とても親しみやすく、心にひびく。

演奏者も、オランダ王国陸軍バンド、東京佼成ウインドオーケストラなど、一流どころがズラリ!収録曲中10曲は、自らタクトをとった“自作自演”だ。

都会的タッチの『リバティ』や『シティースケイプス』、『インスピレーション』、スペインの香りただよう『イスパニョーラ』など、バラエティに富む作品群は、忘れかけていたバンド曲の愉しさを再発見させてくれるかも知れない。

■ヤン・デハーン吹奏楽作品集:リバティ
演奏:オランダ王国陸軍バンド“ヨハン・ヴィレム・フジョー”他
Jan de Haan:Liberty – A Composer’s Portrait
http://www.bandpower.shop/shopdetail/000000000940/

【データ】

・演奏:ドイツ連邦軍コンサート・バンド(Musikkorps der Bundeswehr)、他
・指揮:ヴァルター・ラツェク (Walter Ratzek) 、他
・発売元:デハスケ (de haske)
・発売年:2009年
・収録:
・メーカー品番:

【収録曲】

CD1

1. フェイゼン・メダル・ファンファーレ【5:07】
Geuzen Medal Fanfare

2. リバティ【14:46】
Liberty
第1楽章:自由の女神 Statue of Liberty【4:01】
第2楽章:四天使のトランペッター Four Angelic Trumpeters【4:06】
第3楽章:ベルフォールのライオン The Lion Belfort【6:39】

3. スザート・ヴァリエーションズ【6:49】
Susato Variations

4. ピエリヌス・マグヌス【9:02】
Pierius Magnus

5. トライアンファル・ウィンズ【3:10】
Triumphal Winds

6. スウィート・サンセット【3:39】
Sweet Sunset

7. ゾディアック【5:03】
Zodiac
蠍座 Scorpius【1:52】
水瓶座 Aquarius【1:14】
獅子座 Leo【1:57】

8. フラッシュバック【10:57】
Flashback

9. アースクウェイク【18:00】
Earthquake

CD2

1. フェスティヴァル・イントラーダ【2:24】
Festival Intrada

2. コンソレーション【3:15】
Consolation

3. イスパニョーラ 【13:16】
Hispaniola

4. エメラルド・ジュビリー【3:52】
Emerald Jubilee

5. スプリング・ソング【3:44】
Spring Song

6. バンヤ・ルカ【13:50】
Banja Luka

7. カートゥーン・ミュージック【3:54】
Cartoon Music

8. 新時代への序曲【13:47】
Overture to a New Age

9. サンライズ・インプレッション【6:47】
A Sunrise Impression

10. プリヴィジョン【12:00】
Prevision

CD3

1. ミュージック・フォー・ソレムニティー【9:43】
Music for a Solemnity

2. ダンス・ドゥ・ファンタジー【6:51】
Danses de Fantaisie
Part I【2:07】
Part II【1:48】
Part III【2:56】

3. シティースケイプス 【8:45】
Cityscapes
第1楽章:スカイライン Skyline【3:04】
第2楽章:セントラル・パーク Central Park【3:05】
第3楽章:マンハッタン Manhattan【2:36】

4. ラクダに乗って【2:14】
Camel Ride

5. ヴィクトリー【9:35】
Victory

6. ソング・オブ・フリーダム【3:55】
Song of Freedom

7. インスピレーション【10:23】
Inspiration

8. ディスカヴァリー・ファンタジー【10:10】
A Discovery Fantasy
イントロダクション Introduction【1:32】
ボレロ Bolero【3:12】
ロンドー Rondeau【1:10】
インテルメッツォ Intermezzo【2:49】
フィナーレ Finale【1:27】

9. スパニッシュ・トリプティク【7:16】
Spanish Triptych
ぺニョン・デ・イファク Penon de Ifach 【1:28】
サン・ハイム San Jaime【1:44】
ベルニア山地 Sterra de Bernia【4:04】

10, クリスマス・ファンタジー【8:51】
Christmas Fantasy

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■ザ・レイド(演奏:コーリー・バンド)

2015年、ウェールズのアべーダレ総合校にあるコーリー・バンドのバンドルームでレコーディングされたコーリー・バンドのコンサート・アルバムで、指揮はフィリップ・ハーバー、ディレクターはフィリップ・スパーク、エンジニアはリチャード・スコットが担っている。

冒頭を飾るのは、フィリップ・スパークの『輝く雲にうち乗りて』。キリスト教メソジスト派の教会で聖霊降臨節の賛美歌として歌われてきた“見よ、主は輝く雲にうち乗り”の原曲である賛美歌“ヘルムズリー”をベースにした輝かしい幻想曲。すでに吹奏楽用のバージョンもよく知られているが、オリジナルはブラスバンド用に書かれ、米ペンシルベニア州のランカスター・ブリティッシュ・ブラス・バンド創立10周年記念作として作曲、作曲者の指揮で初演された。

注目したいオリジナル作品は、オリヴァー・ヴェースピの『ザ・レイド』とトーマス・ドスの『タイム・マシーン』だろう。

『ザ・レイド』は、スイス・ルツェルン州のブラスバンド“ムジークゲッシェルシャフト・ゼレンベルク”の75周年委嘱作として2014年に書かれ、14世紀のゼレンベルク周辺の谷間の牛泥棒との闘いと悲劇がテーマとなっている。叙情的なテーマが劇的なパッセージの間に組み込まれ、ドラマチックな展開を見せることから、2015年のスイス・ブラスバンド選手権(セカンド部門)など、ヨーロッパ各地の選手権でさかんに演奏されている。

一方の『タイム・マシーン』は、オランダの芸術団体クンストファクター・ユトレヘトの委嘱により、2012年のオランダ・ブラスバンド選手権(ファースト部門)の指定課題として書かれた問題作で、石器時代に始まる時間の旅が描かれている。過去~現在~未来を旅する内、あるとき環境破壊に気づき、当惑し、前の時代にあったものが後の時代にはないことを知る。激情が込められたドラマチックな作品でたいへんインパクトがある。

名手ヘレン・ウィリアムズのすぱらしいフリューゲルホーン・ソロが愉しめるスパークの『月の歌と太陽の踊り』は、久しぶりに懐かしいスパーク節が堪能できるソロ曲といえ、このCDの中の一服の清涼剤となっている。

■ザ・レイド
演奏:コーリー・バンド
The Raid
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【データ】

・演奏:コーリー・バンド(Cory Band)
・指揮:フィリップ・ハーパー(Philip Harper)
・発売元:デハスケ(de Haske)
・発売年:2015年
・収録:2015年, Ysgol Gyfun Rhydywaun, Aberdare, Wales
・メーカー品番:

【収録曲】

1. 輝く雲にうち乗りて~賛美歌“ヘルムズリー”による幻想曲
/フィリップ・スパーク【6:34】
With Clouds Descending – A Fantasy on the Hymn Tune “Helmsley” /Philip Sparke

2. 歌劇「シルヴィア」から“バッカスの行列”
/ドリーブ(arr.スティーブン・C・バーンウェル)【6:10】
Cortege De Bacchus/Leo Delibes(arr. Stephen C. Barnwell)

3. ノルウェーの賛歌/アクセル・フィスク(arr.フィリップ・スパーク)【4:07】
A Norwegian Hymn – Hymn to Frei/Axel Fiske(arr. Philip Sparke)

4. 3つの塔/マルク・ジャンプルケン【8:55】
The Three Towers/Marc Jeanbourquin
第1楽章:デューレンビュールの塔 The‘Durrenbuhl’Tower
第2楽章:ネコの塔 The Cats Tower
第3楽章:赤い塔 Red Tower

5. 主題と変奏/オリヴァー・ヴェースピ【9:54】
Theme and Variations/Oliver Waespi

6. 月の歌と太陽の踊り/フィリップ・スパーク【8:45】
Moon Song, Sun Dance/Philip Sparke
フリューゲルホーン:ヘレン・ウィリアムズ(Helen Williams)

7. ザ・レイド/オリヴァー・ヴェースピ 【13:44】
The Raid/Oliver Waespi

8. タイム・マシーン/トーマス・ドス【13:33】
Time Machine/Thomas Doss

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