日時:2008年9月14日(日) 14:00開演
会場:サントリーホール
レポート:関根志郎(トランペット奏者)
7月のルベン・シメオ君とのインタビューから早2ヶ月。彼のデビュー・コンサートは日本中のトランペッター、そしてシエナファンが待ちに待っていたことであろう。
9月14日、サントリ-ホールはもちろん満員。やはり楽器を持ったお客さんが多い中、やはりトランペットを背負う方が多い。ルベン&シエナというトランペット界と吹奏楽界と最強の組み合わせなのだから見逃すわけにはいかないのだ!
さて、冒頭はシエナ定番のバーンスタインの「キャンディード序曲」である。
エネルギッシュな木管群とパワフルな金管サウンドを指揮の橘 直貴氏により巧みに操られ、また新しいシエナサウンドを楽しむことができた。
さて、いよいよ天才トランペッターの登場である。ゆっくりと落ち着いた足取りでソロ位置に向かう。冒頭は「マカレナの乙女」
聴衆は完全に彼に釘付けになり、そして魅了された。
彼の演奏はまさに芸術であり、会場は度肝を抜かれた。
マカレナとはスペインで「イカした人」といったニュアンスがあるようだが、まさに彼のことを指している。
美しく無理のない高音域―
ブリリアントでストレスのないサウンド―
興奮が冷め切らぬまま2曲目へ―
「愛の夢」
美しくも難易度が高い曲にも関わらず、さらりと吹きこなす彼に唖然とさせられた。シエナとのアンサンブルも見事にマッチしており、暖かい彼の歌心が味わえる作品であった。
そしてシエナ単独の演奏の歌劇《カヴァレリア・ルスティカーナ》は木管による優雅な旋律は終わるのが惜しい名演奏であった。
一部最後は、アルチュニアンの「トランペット協奏曲」である。
この曲は定番の作品であるが、彼の演奏は、まるで言葉を話すかのように、おしゃべりをするように楽器を吹いている。
冒頭は勇ましくかつ堂々と、また弱奏部では透き通るような艶やかな音色を聴かせてくれた。
圧倒されっぱなしの一部はあっという間に過ぎ去ってしまった。
二部の1曲目は「熊蜂の飛行」
いわずと知れた名曲はどんな楽器で演奏されても超絶技巧を要求される難曲であるが、やはり彼はあっさりと吹きこなしてしまった・・・
ここまでくると笑えてしまう。
彼のテクニックは実に無駄がなくスムーズに演奏されていた。
続いて、「マリベル~スペイン幻想曲」
彼の故郷のスペイン一色の作品であり、彼の明るくて情熱的なサウンドと、バックのシエナの活気的でドライブ感のある音楽のコラボレーションが会場を奮い立たせた。
ルベン・シメオ君が一度退場すると、単独演奏でシエナの十八番「アルメニアン・ダンス パートⅠ」。吹奏楽の名曲中の名曲のこの作品では、かつて作曲自身に「いままで最高の演奏」と絶賛されたというのが納得いくシエナのレヴェルの高さを思い知らされた。
最後は、J.アーバン作曲「ヴェニスの謝肉祭変奏曲」
金管奏者でなくてもどこかで耳にしたことがあるのではないだろうか。
トランペットの超絶技巧の定番といえばこの曲であろう。
変奏を重ね、徐々に難解な場面へと移ってゆく。
同世代の楽器をもった若者たちだけでなく、大人までもが軽やかに、まるで鼻歌でも歌うかのように演奏する彼を見入ってしまっていた。
さすがはトランペットの神様モーリス・アンドレの弟子であった。
指揮、橘氏とのトークの中で、
「皆さんもコツコツと練習すれば僕みたいになれます」
といった名言も・・・。
そしてシエナといえば「星条旗よ永遠なれ」
会場の楽器を持ってきたお客さんとシエナのメンバーで合同合奏をするというお決まりの企画であるがなんと本日は会場からお若いトランペッターが2名!!
この2名は記念にルベン君と握手!
一生の思い出になったことであろう。
そして3人並んでアンコール「星条旗よ永遠なれ」が始まった。
中間部の通常ピッコロsoliで演奏される箇所は何とルベン君のソロで!
ちなみに使用楽器はE♭管とのこと!!
そんな最後まで驚異的なプレーを見せ付けたルベン・シメオのデビュー・コンサートは幕を閉じた。
その後、早くも彼の虜になってしまった長蛇の列のファンへのサイン会が開催。
世界で一番多忙な16歳なのではないだろうか・・・
まだ演奏を聴いていない&もう一度聴きたい人は9月上旬に発売されたデビューCDを是非聴こう。
神様の後継者の彼の今後の活躍に注目したい。
【BPショップで購入する】
【CD】トランペット・サーカス~スペインから天才少年がやってきた~/
ルベン・シメオ(Trp)/シエナ・ウインドオーケストラ
http://item.rakuten.co.jp/bandpower/cd-1588/
【Book】バンドジャーナル/Band Journal:2008年10月号【雑誌】
…表紙&SPOTLIGHTは、スペインの天才少年トランペッター、ルベン・シメオ。
16歳という若さで、超絶技巧と超高音をマスターしているルベン君ですが、
素顔はゲーム好きの高校生でした。特製ピンナップ付き。
http://item.rakuten.co.jp/bandpower/bk-4093/