
マスメディアが“~の名手”と呼ぶ演奏家は、広いこの世界のこと、間違いなくどんな国にいる。しかし、そんな中、天賦の才能を与えられただけでなく、若くしてそれが認められ、世界中のプロが羨むような超有名交響楽団のトップシートをもサラリと手許に引き寄せてしまうホンモノの強運の持ち主がいる!
2009年7月、弱冠21歳にしてロンドン交響楽団首席トランペット奏者に任命され、9月1日に着任。このCDでもすばらしいソロを楽しませてくれるフィリップ・コプもそんな1人だ!!
ロンドン響のトランペット奏者と言えば、長年にわたり、モーリス・マーフィー(1935~2010)とロッド・フランクス(1956~2014)の2人が“ダブル首席”として活躍。多忙なオーケストラだけに、2007年のマーフィーの退団後、フランクスとともに首席の任にあたる奏者を探し出すことは、楽団として大きな懸案事項となっていた。
その後、多くの優秀な奏者が何人も試用されたが、ロンドン響の顔だったスター・プレイヤー、マーフィーの跡をつげるような、オーケストラとのマッチングでピッタリくる奏者はなかなか現れなかった。
しかし、2009年、ロンドン響のプレジデント、サー・コリン・デイヴィス(1927~2013)がタクトをとるシリーズでトライアルのチャンスを得たコブのパフォーマンスをオーケストラのメンバーが賞賛。名誉あるロンドン響首席のポジションをコブにもたらすことになった!!
つぎの瞬間、『フィリップ・コブが、2009年7月、ロンドン響の首席トランペットのポジションを喜んで受け入れた。今なお21歳の間に。』というロンドン響のプレス・リリースが世界を駆け巡り、同僚となったもう1人の首席奏者フランクスも『LSO(ロンドン響)は、とうとう、21歳のフィリップ・コブに、すばらしい首席トランペットを見い出した。』と歓迎のコメントを残した。
そう言えば、偶然ながら、マーフィーもフランクスも、世界的に知られるブラスバンド、ブラック・ダイクの出身。長く救世軍のブラスバンドでコルネットをプレイしたコブの演奏スタイルが、この伝統あるオーケストラのフィーリングにピッタリ合ったのかも知れない。
いずれにせよ、ブラスバンド出身奏者が広く音楽界で活躍する、いかにもイギリスらしい話だ!!
救世軍の作曲家ポール・シャーマンがコブのために書いたブリリアントなトランペット独奏曲『フローリッシュ』で始まるこのアルバムは、コブがロンドン交響楽団に入団後の2012年にリリースされたすばらしいソロ・アルバムで、全篇がコブの魅力に満ちている!!
曲によって楽器を持ち替え、心に響くように美しいケネス・ダウニーの『オアシス』やリリアン・レイの『サンシャイン・オブ・ユア・スマイル』、ジョイ・ウェッブ の『シェア・マイ・ヨーク』ではコルネット、エリック・ウィッテカーの『海の子守唄』ではフリューゲルホーンと吹き分けているが、これが実にすばらしい!!
コルネット・ファンには、エリック・ライゼンの名曲『心の歌』が収録されたこともビッグニュースだろう!
映画音楽のフィールドで活躍するアンドルー・ピアースの『マエストロ』は、テクニックのみならず、音楽の表情の移り変わりという点でも、このアルバムで最も聴きものの音楽の1つ。まるでライヴのようなモチベーションもすばらしい!まるでアンコール・ピースのような『インタールード』もドラマチックな曲だ!
バックをつとめる救世軍インターナショナル・スタッフ・バンドも、ロンドン響に入団した今でもときどきプレイするコブのホームグラウンドというべきブラスバンドで、相性もバツグン!!
ラストは、輝かしいトランペットの『ティコティコ』できめて、アルバムはハッピーエンド!
変幻自在な曲目とテクニックで聴かせるファースト・クラスのソロ・アルバムだ!
■フィリップ・コプ独奏集~ソングズ・フロム・ザ・ハート
(ロンドン交響楽団首席トランペット奏者)
Songs from the Heart~Philip Cobb
The International Staff Band
【収録曲】
1. フローリッシュ/ポール・シャーマン 【4:55】
Flourish/Paul Sharman
2. オアシス/ケネス・ダウニー 【4:35】
Oasis/Kenneth Downie
3. 心の歌/エリック・ライゼン 【9:08】
Songs in the Heart/ Erik Leidzen
4. サンシャイン・オブ・ユア・スマイル/リリアン・レイ 【3:26】
The Sunshine of Your Smile/Lilian Ray
5. シェア・マイ・ヨーク/ジョイ・ウェッブ (arr. アイヴァー・ボサンコ) 【4:11】
Share My Yoke/Joy Webb (arr. Ivor Bosanko)
6. マエストロ/アンドルー・ピアース 【15:48】
The Maestro/Andrew Pearce
7. インタールード/アンドルー・ピアース 【4:50】
Interlude/Andrew Pearce
8. ヴァリエーションズ・オン・ア・ワンダラス・デイ/ポール・シャーマン 【5:08】
Variations on Wondrous Day/Paul Sharman
9. みなささげまつり/デヴィッド・チョーク (arr. アンドルー・マッケレス) 【4:26】
I Surrender All/David Chaulk (arr. Andrew Mackereth)
10. 海の子守唄/エリック・ウィッテカー (arr. ポール・シャーマン) 【4:31】
The Seal Lullaby/Eric Whitacre (arr. Paul Sharman)
11. ティコティコ/ゼキーニャ・デ・アブルー (arr. ジョン・アイヴスン) 【4:10】
Tico Tico/Zequinha Abreu (arr. John Iveson)
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http://item.rakuten.co.jp/bandpower/cd-3936/