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■オオサカ・シオン・ウインド・オーケストラ 第120回定期演奏会 『スパーク、再び。』(6月3日)

吹奏楽において数多くの作品を作曲した、フィリップ・スパーク。本邦初演の「スラヴォニカ!」をはじめ、アメリカ初の都市計画で建設されたサヴァンナ市の歴史や風物、建造物などからインスピレーションを得て作曲された大作の交響曲第2番「サヴァンナ・シンフォニー」、人気曲「ドラゴンの年」に打楽器、木管低音群、コントラバスを加え近代の吹奏楽スタイルにスケールアップした[2017年版]をプログラムしています。

日時 : 2018年6月3日(日) 開場 13:00 、開演 14:00
会場 : ザ・シンフォニーホール
交通手段 : JR環状線「福島」駅より北へ徒歩7分
料金 : S席5000円、A席4000円、B席3000円、ペア席7000円、学生割(各1000円引)※当日500円増
曲目 :
〈オール・スパーク・プログラム〉
ナポリの休日
・スラヴォニカ!(日本初演)
ドラゴンの年(2017年版)
交響曲第2番「サヴァンナ・シンフォニー」
問合せ :

担当者 Shionチケットセンター
TEL 0800-919-5508
FAX 06-7668-5489
E-Mail info@shion.jp
HomePage http://http://shion.jp/schedule/2018/06/3/

■ドラゴンの年(2017)(作曲:フィリップ・スパーク)

「ドラゴンの年」は、スパークの名を一躍世界的なものにまで押し上げることになった代表作の1つ。元々はブラス・バンドのために書かれた作品で、1984年、当時ウェールズを代表した超強力なブラス・バンドだった“コーリー・バンド”の結成100周年記念委嘱作として作曲された。非常にエキサイティングな曲であり、メロディーの美しさは数あるスパーク作品の中でも1、2を争う。

タイトル中の“ドラゴン”は、ウェールズの象徴であり、同王国の“紋章”や1959年にエリザベス女王によって正式に制定された“ウェールズ国旗”にも使われている“レッド・ドラゴン”をさしている。

この「2017年バージョン」はシエナ・ウィンド・オーケストラの委嘱より作曲され、2017年6月17日に文京シビックホールで行われた「第44回定期演奏会」で世界初演された。

■フィリップ・スパーク氏のドラゴンの年2017年版について解説

『ドラゴンの年 The Year of the Dragon 2017年版』は、シエナ・ウィンド・オーケストラにより委嘱され、本日の公演で世界初演される。

本作の吹奏楽版初版は、ブラスバンド版を作曲した1年後の1985年に作られた。当時、私は吹奏楽の作曲技法を模索し学んでいる途中であった(もちろん、今もその道程にあるが!)。それから32年の時が経過して、吹奏楽という表現手段に対する私のアプローチも、少しは進化し向上してきたつもりである。

以下に、2つのバージョンの主な違いを挙げる;

1)1980年代における吹奏楽事情は、現在よりはるかに国際的では無かった。英国の吹奏楽団は伝統的な軍楽隊のスタイルを踏襲していて、当時隆盛していたアメリカの大学バンドの編成よりも小規模なオーケストレーションを使う傾向にあった。今回の2017年版では、近代的な拡張された打楽器セクションと低音木管楽器群、さらにストリングベースも加え、より国際的な編成を採用した。

2)初版では、木管楽器の譜面に愚直な筆致が見られた。ブラスバンド版から、文字通りそのまま写されたアーティキュレーションによって、ところどころ木管楽器らしからぬ表現になってしまっていたが、今回、それらを改善することに努めた。

3)上記に加えて、私自身の作曲スタイルが、この32年の間で成熟し進化してきた、ということがある。初版にあるいくつかのパッセージは、率直に言って「今の私だったら、こうは書かないだろう」と思う。しかしそれは、初版が「間違っている」のではなく、私の作曲技法が変化しただけのことである。この2017年版は、初版に新しい衣服を着せて見た目を取り繕ったものではなく、もし今日(こんにち)の私だったらこう書いただろう、という一つの結果である。

2017年4月
フィリップ・スパーク

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■Year of the Dragon(2017)

・グレード:5
・作曲:フィリップ・スパーク(Philip Sparke)
・TIME:約13分12秒
・出版:Studio Music
・分類:販売譜(フルスコア&パート譜 セット)

【楽器編成】
Piccolo
Flutes 1
Flutes 2
Oboes 1
Oboes 2
English Horn
E♭ Clarinet
B♭ Clarinets 1
B♭ Clarinets 2
B♭ Clarinets 3
E♭ Alto Clarinet
B♭ Bass Clarinet
Bassoon 1
Bassoon 2
Double Bassoon
B♭ Contrabass Clarinet

B♭ Soprano Saxophone
E♭ Alto Saxophone
B♭ Tenor Saxophone
E♭ Baritone Saxophone

E♭ Trumpet
B♭ Trumpet 1
B♭ Trumpet 2
B♭ Trumpet 3
B♭ Trumpet 4

Horn in F 1
Horn in F 2
Horn in F 3
Horn in F 4

Trombone 1
Trombone 2
Trombone 3

Euphonium(B.C.)
B♭ Euphonium(T.C.)
Tuba

Double Bass
Timpani
Percussion 1
Percussion 2
Percussion 3
Percussion 4

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■樋口幸弘のウィンド交友録~バック・ステージのひとり言 第7話 スパーク“ウェイ・トゥー・ヘヴン”とロイヤル・エア・フォース

 麗かな初春の陽の光が眩い2017年3月4日(土)の午後、大阪のフェスティバルホールでは、イギリスの作曲家フィリップ・スパークを客演指揮者に招いて“大阪音楽大学第48回吹奏楽演奏会”の準備が進められていた。、

プログラムは、「ジュビリー序曲(Jubilee Overture)」「オリエント急行(Orient Express)」「ウィークエンド・イン・ニューヨーク(A Weekend in New York)」「宇宙の音楽(Music of the Spheres)」「リフレクションズ~ある古い日本俗謡による~(Reflections on an Old Japanese Folk Song)」「輝く雲にうち乗りて~賛美歌“ヘルムズリー”による幻想曲(With Clouds Descending – A Fantasy on the Hymn Tune “Helmsley”)」「交響曲第3番“カラー・シンフォニー”(A Colour Symphony – Symphony No.3)」と、初期作から近年作に至る作曲者の変遷を時系列でたどるアカデミックなものだ。

フェスティバルホールは収容2700名を誇る大ホールだが、コンサートの前評判から半端な数ではない座席不足が事前に予想され、その対応準備もあってスタッフの動きが慌ただしい!

ドレス・リハーサル(ゲネプロ)を前にフィリップを楽屋に訪ねると、応接セットのテーブルに1冊の書物がポツンと置かれているのを見つけた。

書名は「Dam Busters: The True Story of the Inventors and Airmen Who Led the Devastating Raid to Smash the German Dams in 1943」(2013年刊)。

直訳では、“ダムバスターズ: 1943年にドイツのダムを粉砕する衝撃的な空襲に挑んだ発明家たちと航空隊員の真実のストーリー”となるタイトルの本だ!

カバーに印刷されている“LANCASTER(ランカスター爆撃機)”と強調された“DAM BUSTERS(ダムバスターズ)”の文字から、それが、第2次世界大戦中、水面をバウンドする特殊な反跳爆弾を開発してドイツの工場地帯へ電力を供給する3つのダムを破壊するという特別任務についた英空軍の“617スコードロン”の実話を描いたジェームズ・ホランドのベストセラーであることがすぐにわかった。

フィリッブは読書家だ。新幹線移動の際にも、よく本を読んでいる。にしても、戦史のドキュメンタリーとは珍しい。筆者の頭の中でも、エリック・コーツ(Eric Coates)の名曲「ダムバスターズ・マーチ(The Dam Busters March)」のメロディーがリフレインする。

彼の方が年上だが、ほとんど同じ時代を生きてきただけあって話の共通項は多い。ビートルズの熱狂的ファンだったと白状したこともあった。テレビ番組「サンダーバード」の話で盛り上がったときも、『イギリスで“サンダーバード”の吹奏楽アレンジが絶版なんて、あり得ない!』とボヤいていたのをよく覚えていた。半年もたつかたたない内に、何の前振れもなくスパーク編『サンダーバード(The Thunderbirds)』がいきなり出版された。シエナ・ウインド・オーケストラやオオサカ・シオン・ウインド・オーケストラなど、フィリップの自作自演コンサートでアンコールに演奏される編曲がそれだ!!

お返しの気持ちもこめ、その後来日するたび、“Made in Japan”のサンダーバード・グッツをお土産としてプレゼントしてきた。しかし、こう頻繁に来日が続くと、さすがにネタ切れの危機!

大阪音大の本番2日前に2人で食事に出かけたが、その時は思い悩んだ挙句、『いつもとは違うけど、今回はスペシャルなモデルを用意した!』と言って、第2次大戦当時の英空軍の名戦闘機“スピットファイア”のダイキャスト・モデルをプレゼントした。ウィリアム・ウォルトン(William Walton)の名曲「スピットファイア、プレリュードとフーガ(Spitfire, Plelude and Fugue)」のテーマとなったあの“スピットファイア”だ。

彼はさっそく包装を解くと、目をキラキラ輝かせて『こいつはすごい!!型式は?』といきなり専門的(?)質問が飛んでくる。『マークV(ファイブ)だ!』と応じると、『マークVか。このタイプのフォルムはとくに美しいんだ…。』などと、やたら詳しい!

同機は、その後、2017年6月のシエナ定期の客演指揮で来日したときにプレゼントした同時代の英空軍の戦闘爆撃機“タイフーン”のモデルと並んで彼のベッドサイドを飾っている。しかし、こんなに受けるとは…。

そんな訳で、2日後に楽屋で見た件の本にもたいへん興味をひかれた。そこで『ロイヤル・エア・フォースの伝説本かい?』と話を振ると、『新しい本だ。617スコードロンの!』と返ってくる。

“新しい本”というのは、1955年公開の映画「The Dam Busters(邦題:暁の出撃) 」の原作本となったポール・ブリックヒル著の「The Dam Busters」(1951)やガイ・ギブソン著の「Enemy Coast Ahead」(1946)などがあるからだ。コーツの「ダムバスターズ・マーチ」も、実はこの映画のテーマとして作曲された音楽だ。

ヒコーキの話でひとしきり盛り上がる内、帰国後の4月に、ロイヤル・エア・フォース・セントラル・バンド(The Central Band of the Royal Air Force)のレコーディング・セッションをやるという話になった。第1話でお話しした「ゾディアック・ダンス(Zodiac Dances)」やシエナ定期で日本初演予定の「ウィンド・イン・ザ・リーズ(Wind in the Reeds)」などを録るという。また、それは首席音楽監督ダンカン・スタッブズ(Wing Commander Duncan Stubbs)の退役前最後の録音なのだともいう。

ダンカンか。懐かしい名前だ。1988年にロイヤル・エア・フォース・セントラル・バンドの日本ツアーをオーガナイズしたとき、彼はバス―ン奏者だった。オーケストラを辞め、ロイヤル・エア・フォースのオーディションを受けた1人だった。ツアーの2年後に音楽監督の試験にパスし、ロイヤル・エア・フォースの各バンドの指揮者を歴任したとは聞いていた。定年ということは、彼ももう56歳を迎えるのか….。

7月6日、突然フィリップから“The Way to Heaven”という件名のメールが届いた。

『「ウェイ・トゥー・ヘブン」の録音を送るので聴いてみてくれ。曲の真ん中あたりで、ポーランドの303スコードロンの“ハリケーン”がテイクオフするのが聞こえるよ!』

“ポーランドの303スコードロン”とは、第2次世界大戦中、イギリスに逃れてきたポーランド人パイロットで編成された飛行隊で、“ハリケーン”は、スピットファイアとともに、押し寄せるドイツ空軍機を迎撃した英空軍の主力戦闘機だった。

フィリップの「ウェイ・トゥー・ヘブン」は、2015年4月11日、マンチェスターのロイヤル・ノーザン音楽カレッジで催されたプリティッシュ・アソシエーション・オブ・シンフォニック・バンズ&ウィンド・アンサンブルズ(BASBWE)のコンベンションで、ロイヤル・エア・フォース・セントラル・バンドが初演する新曲としてダンカン・スタッブズから委嘱された作品だった。

2015年は、イギリス上空でドイツ空軍機との間で繰り広げられた大空の戦い“バトル・オブ・ブリテン”から75周年。また、義勇ポーランド空軍303スコードロンの指揮所は、現在のセントラル・バンドの練習スタジオの建物からほんの数歩の位置にあった。

そんな経緯から委嘱された曲だが、添付されたmp3ファイルを聴くと、それは正しくロイヤル・エア・フォース・セントラル・バンドの演奏。同時に、それは4月のセッションの編集完了を意味していた。

作曲者の言うとおり、曲の真ん中あたりに“ハリケーン”のロールス・ロイス・マーリン・エンジンが始動し、スクランブルのためにつぎつぎと飛び立っていくシーンの描写がある。「オリエント急行」冒頭の蒸気機関車の発車シーンよろしく、エンジン音のディティールの細かい描写は実に見事だ!

しかし、それよりも何よりも音楽全体から溢れ出る、まるで鳥のごとく、青く澄み切った大空を自在に飛んでいるような爽快さがとても魅力的だった!

きっと、フィリップは、この曲をダンカンの指揮で残しておきたかったんだな!

そうだ!つぎは“ハリケーン”を準備しよう!!

■樋口幸弘のウィンド交友録~バック・ステージのひとり言:第4話 スパーク・コンダクツ・スパーク

▲「ライムライト・コンサート6」のパンフレット表紙

▲CD「ロマンス」

第4話 スパーク・コンダクツ・スパーク

フィリップ・スパークが、初めて日本のステージに立ったのは、1993年11月8日(月)、大阪厚生年金会館中ホールで開催されたプリーズ・ブラス・バンド(BBB)の「ライムライト・コンサート6」だった。

サブ・タイトルは“SPARKE CONDUCTS SPARKE”!

この日、中ホールながらも座席数1100を誇るこのホールは、満員札止め。開場前の入り口付近は人が車道まで溢れ、客席最前列から2階最後部までビッシリ埋めつくされた状況には舞台スタッフもビックリ仰天!

後日談だが、同じ日に併設の大ホール(現オリックス劇場)であったさる有名アーティストの公演を目当てに集まった“ダフ屋”のお兄さんたちも対する警備陣も面喰うほどの大盛会となった。

もともとがジョーク好き。笑いと活力にあふれる大阪の街がすっかり気に入ってしまったフィリップも、“もうかりまっか”“ぼちぼちでんなー”と受け応えをする、古きよき時代の大阪商人の慣用句をアッと言う間にマスターしてしまった!

筆者は、今でもときどき、その日のライヴの一部を収録したCD「ロマンス」(BBB自主制作、BBBCD 006)を取り出して聴くことがある。

イギリス・ブラスバンド界の重鎮でブラック・ダイク・ミルズ・バンド常任指揮者だったロイ・ニューサム(Roy Newsome、1930~2011)さんも賞賛を惜しまなかった『祝典のための音楽(Music for a Festival)』、“こんばんわ”で始まるフィリップ自身による楽曲紹介(声が若い!)、フリューゲルホーンの名手、古部幸仁さんのソロをフィーチャーした『ロマンス(Romance)』とつづく流れを聴くたび、当夜の興奮が鮮やかによみがえってくる!

自ら録音・制作したCDの中でも、とくにお気に入りの1枚だ。

さて、そのフィリップだが、この初来日時から今日までずっと守っていることがある。

それは、自作を指揮するとき、いつも新しい印刷スコアを持ってくることだ。

自作と言えども毎回新しい発見があることは無論のこと、出版されている楽曲をコピーを使って指揮するなど、もってのほかと考えているからだ。未出版や絶版の楽曲も、著作権法のルールに従い、出版社に頼んで手書きスコアのオーソライズド・コピー(出版社許諾のコピー)を製本してもらっている。

指揮で使ったスコアは、彼にとって大切な宝ものだ!

日本で、スコアのコピーにサインをねだる人がいることが、どうしても理解できないでいる。

そんなフィリップから“I have a BIGGGGG favour to ask you.”とS.O.S.のメールが入ったのは、2015年11月20日のことだった。Gをいくつも重ねているから、とくに重大な案件だ!

『知っての通り、来年1月にBBCを指揮して“山の歌(Mountain Song)”を演奏する。そのため、自分用のスコアを準備しているんだが、オリジナル原譜を複写して作ったフルスコアを見つけることができないんだ。そこで、スタンに新たに別のコピーを作ってもらうように頼んだんだけど、なんと彼は私の原譜をロストしてしまったようなんだ!』

なんてことだ!!

BBCとは“ザ・バンド・オブ・ザ・ブラック・コルト”という名の東京のブラスバンド。2016年1月10日(日)、保谷こもれびホール(西東京市)で、フィリップを招聘して創立40周年記念の第54回定期演奏会を開催することがアナウンスされていた。スタンとは、英ステューディオ・ミュージックのボスだ。

フィリップのメールは、そのメイン・プロ『ピッツバーグ交響曲(A Pittsburgh Symphony)』の第3楽章“山の歌”の手書き原譜のフルスコアの喪失を知らせるものだった。

実はブラスバンド曲の“山の歌”の出版譜には、コンデンス・スコアしかセットされていない。フルスコアは作曲時の手書きオリジナルだけなのだ。

フィリップのメールには、その喪失の事実に続き、ひょっとして記憶違いかも知れないがと断りながら、“プリーズと一緒に演奏し、一種の贈り物としてスコアを残していったかも知れないので、それをチェックしてくれないか”というリクエストが書かれていた。

遠い記憶をたどると、プリーズとフィリップはその後何度も共演し、1995年11月13日(月)~15日(水)に、東京~松本~大阪とまわった5周年記念シリーズでは、確かに“山の歌”を演奏していた。

しかし、プリーズが“山の歌”の手書きスコアとパートをフィリップから贈られたのは、それより4年前の1991年6月17日(月)、大阪厚生年金会館中ホールで開かれた初の「ライムライト・コンサート」の前だった。その後、“山の歌”は何度も演奏されているので、フルスコアもパートも指揮者の上村和義さんのライブラリーに必ず存在するはずだ。

また、引っ越しを繰り返したので確信は持てなかったが、筆者の楽譜ロッカーには、1997年11月19日(水)、大阪府立青少年会館大ホールの「ライムライト・コンサート14」で『ピッツバーグ交響曲』の日本初演(指揮:上村和義)が行なわれた際、スタン・キッチンに頼んで会場限定販売用として10冊ほど特別に製本してもらったシンフォニー全曲の手書きスコアのファクシミリ・エディションが1冊入っているはずだった。そして、無事発見!

早速これらのニュースを知らせると、間髪を入れず打ち返しがあった。

『すごい!!!!!!“山の歌”のスコアに対して最大級の感謝だ!スタンは、他の楽章は見つけている。もちろん、我々が次に会うとき、君にビールをおごろう!Thank you SOOOO much。』

またまた、Oが3つも多い!

スコアは、その日の内に国際エクスプレス便で発送して、一件落着!

しかし、ビールはまだごちそうしてもらっていない。まあ、いいか。

■ゾディアック・ダンス (干支の舞)(作曲:フィリップ・スパーク)

2016年、大阪府泉大津市の“泉大津市吹奏楽団”の結成50周年記念委嘱作品として作曲され、同年11月20日、泉大津市民会館大ホールで開催された「結成50周年記念 第45回定期演奏会」で、作曲者の指揮で初演された。

干支にまつわる動物たち、“午(うま)”、“辰(たつ)”、“寅(とら)”、“子(ね)”、“戌(いぬ)”、“申(さる)”を象徴する6つの生き物(架空も含む)である“ホース”、“ドラゴン”、“タイガー”、“ラット”、“ドッグ”、“モンキー”のキャラクターからイマジネーションを脹らませた組曲となっている。

バンドの結成(1966)の午年に始まり、10年刻みの干支をフィーチャーしたこの作品は、日本的情緒を求めたものではないが、各楽章の動物たちの動きが音楽の中から浮かびあがってくるようなとても愉しい作品となっている。

初演後、2017年4月にロイヤル・エア・フォース・セントラル・バンドによってレコーディングされ、5月の日本バンドクリニック(浜松)でも名古屋芸術大学ウインドオーケストラがとり上げた注目のコンサート・ピースだ。

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▲映像協力:泉大津市吹奏楽団、Philip Sparke

■Zodiac Dances
Six miniatures based on animals from the Japanese ‘Junishi’

・グレード:4
・作曲:フィリップ・スパーク(Philip Sparke)
・TIME:10分50秒
・出版:Anglo Music
・分類:販売譜(フルスコア&パート譜 セット)

【楽器編成】

Piccolo
Flute 1
Flute 2
Oboe
Bb Clarinet 1
Bb Clarinet 2
Bb Clarinet 3
Bb Bass Clarinet
Bassoon
Eb Alto Saxophone 1
Eb Alto Saxophone 2
Bb Tenor Saxophone
Eb Baritone Saxophone
Bb Trumpet 1
Bb Trumpet 2
Bb Trumpet 3
F Horn 1
F Horn 2
F Horn 3
F Horn 4

Trombone 1
Trombone 2
Trombone 3

Euphonium
Euphonium TC

Tuba

String Bass
Timpani
Percussion 1
Percussion 2
Percussion 3
Percussion 4

【Supplementsry Parts】

Eb Horn 1
Eb Horn 2
Eb Horn 3
Eb Horn 4

Bb Trombone 1 TC
Bb Trombone 1 BC
Bb Trombone 2 TC
Bb Trombone 2 BC
Bb Trombone 3 TC
Bb Trombone 3 BC

Euphonium TC
Euphonium BC

Eb Bass TC
Eb Bass BC
Bb Bass TC
Bb Bass BC

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■フィリップ・スパーク作品集CD「ゾディアック・ダンス(干支の舞)」が発売

 「ドラゴンの年」、「オリエント急行」、「宇宙の音楽」、「ウイークエンド・イン・ニューヨーク」など、ウィンドミュージックの世界を興奮させるイギリスの作曲家フィリップ・スパークの作品集!

演奏のロイヤル・エア・フォース・セントラル・バンドは、英国屈指の実力を誇るウィンドオーケストラであり、2017年4月に定年を迎えた首席音楽監督ダンカン・スタッブズが指揮をしたラストCDとなった。

アルバムは、バス―ンのために書かれた『ウィンド・イン・ザ・リーズ』、ユーフォニアムのために書かれた『スピリット・アイランドの伝説』の2曲のソロ曲を含むスパーク自身の作品8つに、グスターヴ・ホルストの作品をウィンドオーケストラ用にアレンジした1曲を加えた合計9曲で構成される。

近年、客演指揮者としての来日機会も多く、日本と関わり合いのある作品も多い。

冒頭の『スピリット・オブ・アンダルシア』は、スコットランドのグラスゴー・ウィンド・バンドの委嘱作で、初演は、2015年11月1日、エディンバラで行われた。当初コンサートの幕開けを飾る5分程度の華々しいオープナーを求められたが、作曲の過程でスペイン音楽の影響を受けた作品のスタイルを取り始め、随所にスペイン風のタッチが溢れ、アンダルシア地方を起源とするフラメンコをリスペクトする作品に変貌した。

ラテンの色彩感とエキサイティングなリズムが盛り込まれ、2017年6月17日、作曲者の指揮で行われたシエナ・ウインド・オーケストラの第44回定期でもオープニングを飾り、たいへん注目を集めた!!

つづく『友情の詩(うた)』は、2016年、埼玉県新座市の十文字学園女子大学吹奏楽部と指揮者西田裕の委嘱で生み出された作品。初演は、同年7月3日、同大学記念ホールで行われた。

いろいろな出会いが新たな友情を生み出すというテーマをコンセプトに作られた曲で、西田自身がパーソナリティをつとめたCSラジオ番組のオープニング・チューンとして2004年に委嘱された「ザ・バンドワゴン」、2011年の東日本大震災に際し、復興を祈念してリクエストされた「陽はまた昇る」と組み合わせて、3部作のスタイルをとった演奏も行われている。

曲は終始マエストーソの進行をとる。その穏やかで優しいメロディー・ラインは、間違いなくすべてのスパーク・ファンのハートに響くだろう!

3曲目の『リフレクションズ~ある古い日本俗謡による~』は、東京吹奏楽団の委嘱作で、2015年9月26日、東京芸術劇場コンサートホールにおける東京吹奏楽団第62回定期演奏会で作曲者の指揮で初演された。

日本の古謡“推量節”を題材に用いた注目すべき作品で、音楽の中で和と洋のコントラストを際立たせ、それを1つの作品に昇華させている。日本のメロディーを自作に取り入れた外国作品の中には、異文化的な違和感を覚えるものもあるが、スパークのこの作品はテーマの扱いがクリアで、すばらしい作品に仕上がっている。

“推量節”は、イタリアの作曲家ジャコモ・プッチーニもオペラ「蝶々夫人」にも使われている。それがスパーク作品の中ではどのように扱われるのか。日本人としては、それが聴こえてくるだけでドキドキする!

『ウェイ・トゥー・ヘブン』は、2015年、ロイヤル・エア・フォース・ミュージック・サーヴィシーズの委嘱作品。初演は、同年4月11日、マンチェスターのロイヤル・ノーザン音楽カレッジで、ダンカン・スタッブズ指揮、ロイヤル・エア・フォース・セントラル・バンドの演奏で行われた。

同年は、1940年7~10月までの間、イギリス上空に侵入したドイツ空軍機との間で繰り広げられた大空の戦い“バトル・オブ・ブリテン”の75周年にあたる。これには英連邦以外のパイロットも参戦したが、中でも有名なのは、ハリケーン戦闘機を駆って戦った“義勇ポーランド空軍”のパイロットたちだった。

曲名は、彼らの名場面を描いた絵画のポーランド語のタイトル“DRAGA DO NIEBA(天国への道)”の英語訳。音楽から青い大空をハリケーンが颯爽と飛行するシーンが浮かび上がってくるような音楽で、途中、ポーランド人だけで編成された303スコードロンのハリケーンがスクランブルのためにエンジンを始動させるシーンを楽器で表現する場面も盛り込まれている!

グスターヴ・ホルスト(1874~1934)の『セント・ポール組曲』は、このアルバムの中で異彩を放っている。オリジナルは、ホルストがロンドンのセント・ポール女学校の教員をつとめていた1912~1913年にかけて作曲された弦楽合奏組曲。4つの楽章で構成され、第4楽章には、吹奏楽オリジナルの名曲「組曲第2番」(1911)の終楽章“ダーガソンによる幻想”が転用されている。

偉大なる先人をリスペクトする興味深い編曲の登場だ!

静けさの中に虚しさを漂わせる『イン・メモリアム“戦いに倒れし者へ”』も感動的な音楽だ!

イギリスで詩人、劇作家、芸術学者として名をなしたローレンス・ビニヨン(1869~1943)が、第1次大戦後の1914年9月にタイムズ誌に発表した頌歌からインスパイアーされ、ナレーションも入る。

『ゾディアック・ダンス(干支の舞) 』は、2016年、大阪府泉大津市の“泉大津市吹奏楽団”結成50周年記念委嘱作品。初演は、同年11月20日、泉大津市民会館大ホールで開催された「結成50周年記念 第45回定期演奏会」で、作曲者の指揮で初演された。

バンドの結成(1966)の午(うま)に始まり、つづく10年刻みの干支、“辰(たつ)”、“寅(とら)”、“子(ね)”、“戌(いぬ)”、“申(さる)”を象徴する6つの生き物(架空も含む)である“ホース”、“ドラゴン”、“タイガー”、“ラット”、“ドッグ”、“モンキー”のキャラクターからイマジネーションを脹らませた組曲となっている。日本的情緒を求めたものではないが、各楽章の動物たちの動きが音楽の中から浮かびあがってくるようなとても愉しい作品となっている。

スパーク・ファンには見逃せないアルバムが、ここにまた1枚登場した!

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■ゾディアック・ダンス(干支の舞)
~フィリップ・スパーク作品集

Zodiac Dances – The Concert Band Music of Philip Sparke

・演奏団体: ロイヤル・エア・フォース・セントラル・バンド
(The Central Band of the Royal Air Force)
・指揮者: ダンカン・スタッブズ (Wing Commander Duncan Stubbs)

・録音:2017年4月、RAF Music Building, Northoit(U.K.)
・発売元:アングロ・ミュージック (Anglo)
・発売年:2017年

【収録曲】

  1. スピリット・オブ・アンダルシア 【7:13】
    Spirit of Andalusia

  2. 友情の詩(うた) 【6:51】
    Song of Friendship

  3. リフレクションズ ~ある古い日本俗謡による~ 【9:28】
    Reflections on an Old Japanese Folk Song

  4. ウィンド・イン・ザ・リーズ 【6:55】
    Wind in the Reeds
    バス―ン(Bassoon):クリストファー・ジェームズ(Christopher James)

  5. ウェイ・トゥー・ヘブン 【4:35】
    The Way to Heaven

  6. スピリット・アイランドの伝説 【8:00】
    The Legend of Spirit Island
    ユーフォニアム(Euphonium):ルイス・マッサン(Lewis Musson)

  7. セント・ポール組曲/グスターヴ・ホルスト【16:47】
    St Paul?s Suite/Gustav Holst
    I) 第1楽章:ジーグ Jig 【3:13】
    II)第2楽章:オスティナート Ostinato 【1:54】
    III)第3楽章:インテルメッツォ Intermezzo 【4:02】
    IV)第4楽章:フィナーレ(ダーガソン) Finale (The Dargason) 【7:38】

  8. イン・メモリアム「戦いに倒れし者へ」~ローレンス・ビニヨンの頌歌にもとづく~【7:38】
    In Memoriam: For the Fallen~On a Poem by Laurence Binyon

  9. ゾディアック・ダンス(干支の舞) 【10:51】
    Zodiac Dances

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■樋口幸弘のウィンド交友録~バック・ステージのひとり言:第3話 スパーク“ピッツバーグ交響曲”

Text:樋口幸弘

第3話 スパーク“ピッツバーグ交響曲”

イギリスの作曲家フィリップ・スパークは、これまでウィンドオーケストラのための交響曲を3曲、シンフォニエッタ(小交響曲)を4曲発表している。だが、彼が“交響曲”とネーミングした作品は、前記以外にも2曲ある。

最初の交響曲は、10代に書いた管弦楽作品だった。

フィリップと知り合った頃、それがどんな作品なのか一度質問したことがある。

その時、彼は『若気の至りで書いた習作のようなものなんで、その後行方不明になったスコアが二度と陽の目を見ないことを祈っているんだ!』と笑い飛ばしていた。

スコアが紛失されているので、それは永遠に謎となってしまった。

もう1つは、ブラスバンドのための作品『ピッツバーグ交響曲(A Pittsburgh Symphony)』だ!

そのルーツは、アメリカ合衆国ペンシルベニア州ピッツバーグ(Pittsburgh)を本拠とするプロのブラスバンド“リバー・シティ・ブラス・バンド(River City Brass Band)”の委嘱作として1987年に作曲され、1988年2月に初演された“山の歌(Mountain Song)”(後に、シンフォニーの第3楽章に組み込まれる)にまで遡る。

リバー・シティ・ブラス・バンドは、ピッツバーグ市のBGMに演奏が使われるほど同市では有名な存在。実際、『市内のBGMから「山の歌」が流れてきたのには驚きました!』という土産話を木村寛仁さん(大阪音楽大学教授)から聞かされたことがある。

フィリップとスタン・キッチン(英Studio Musicのボス)に誘われ、3人でクリスマス・コンサートを聴きに行ったことがある。テナーホーンの代わりにフレンチ・ホルンが使われていた以外は、イギリスのブラスバンドと同じ編成を採用していたが、トータル・サウンドは、ややアメリカナイズされていた。

作曲家としても知られる指揮者のロバート(ボブ)・バーナット(Robert Bernat、1931-1994)は、開演前に5番目の奥さんと仲良く連れだって現れた。フィリップとおしゃべりを楽しんでいる筆者を見つけると、遠い国から現れたかつての敵国人“ジャパニーズ”に興味津々。ニヤリと笑いながら『日本人と話すのは、小澤征爾以来だ。』と嘯く挑発的な第一声は、パンチが効いてなかなか強烈! しかし、その一方で、アメリカでのプロ楽団の運営についての質問には丁寧に答えてくれ、コンサートでは、超満員の聴衆に向って、ユーモアを交えながら筆者を特別なゲストとして紹介してくれた。

そして、ロバート・バーナット、この人こそ、『ピッツバーグ交響曲』成立の推進役を果たした人物だった。

1987年に完成した委嘱作“山の歌”に感銘を覚えたバーナットは、ついで作曲者に“2曲を加えて組曲にしてほしい”という追加リクエストをする。当時、フィリップは多くの委嘱をかかえ多忙を極めていたので、“1年に1曲を書いて完結させる”という条件をもとにそれを承諾。その際2人は、完成時の曲名を「リバー・シティ組曲」とすることでも合意した。

この流れで“山の歌”についで1988年に書き上がったのが、“リバー・シティ・セレナーデ(River City Serenade)”(後に、シンフォニーの第2楽章に組み込まれる)である。

アレゲニー川とモノンガヒラ川の2つの流れが合流し、オハイオ川の起点となるロケーションに広がる都市ピッツバーグのイメージから着想した川の流れを感じさせる美しいセレナーデだ。

“リバー・シティ・セレナーデ”のスコアを受け取ったバーナットはたいへん喜び、この後、約束どおり1989年にフィリップがもう1曲を書き加えてくれれば、2人の組曲計画は無事成就するはずだった。

しかし、ここで思いもよらぬ事件が勃発する!

なんと、組曲完成予定の1989年、フィリップが3曲目を書く前に、やはりバーナットから新作を頼まれていたアメリカの作曲家ジェームズ・カーナウ(James Curnow)が、その名も『リバー・シティ組曲(River City Suite)』というブラスバンド作品をリバー・シティ・ブラス・バンドの委嘱作として完成させてしまったのだ!

ここで、カーナウの名誉のために書いておかないといけないが、彼は2人のプランをまったく知らなかった。曲名が同じになったのもまったくの偶然だった。

一方で、大慌てのバーナットは、フィリップにさらに1曲を加えて4楽章構成の“交響曲”にして欲しいとリクエストを拡大する。

作曲の構想が完全に崩れてしまったフィリップは、最初難色を示したが、この当時(1989)、スイスのバンド・コンテスト“ムジークプライス・グレンヘン 1990(Musikpreis Grenchen 1990)”から委嘱されてテストピース(課題)として書き上げたばかりのウィンド・バンド(吹奏楽)のための作品『シアター・ミュージック(Theatre Music)』の第3楽章“フィナーレ(Finale)”を改作すれば、曲をしめくくる終楽章らしい音楽になると思いつき、バーナットにこれを提案。同意を得られたことから作曲を再開する。

こうして、1989年に吹奏楽曲『シアター・ミュージック』の第3楽章“フィナーレ”を改作し、シンフォニーの第4楽章となる“バーレスク(Burlesque)”が完成。

ついで、1990年、作品の幕開けにふさわしいファンファーレで始まり、シンフォニーの第1楽章となる“ピッツバーグ序曲(A Pittsburgh Overture)”が作曲され、1991年に初演。4楽章からなる『ピッツバーグ交響曲』が完結した!

手許にあるこのシンフォニーの手書きスコアのファクシミリ・エディション(現在、入手不能)を見ると、以上の経緯がよくわかる。

単独曲として書かれた第3楽章“山の歌”、組曲の1部として書かれた第2楽章“リバー・シティ・セレナーデ”のページには交響曲を類推させる記載が全くないのに、4楽章構成の交響曲になることが決まった後に書かれた第4楽章“バーレスク”のタイトルまわりには[From “A Pittsburgh Symphony”]、第1楽章“ピッツバーグ序曲”にはカッコに入った[A Pittsburgh Symphony I]という作曲者手書きの文字が現われる。

また、『シアター・ミュージック』第3楽章“フィナーレ”と『ピッツバーグ交響曲』第4楽章“バーレスク”はまったく同一ではない。『シアター・ミュージック』第3楽章には、その第1楽章“序曲(Overture)”に使われている音楽的フラグメントの影響がハッキリと現われる一方、『ピッツバーグ交響曲』第4楽章では、可能な限りそれを省こうとしている。別の作品として音楽を扱っていたことが分かっておもしろい。

どちらかというと交響曲というより組曲の性格を有した作品だ、と作曲者が自ら語ったのも以上のような経緯から。

音楽のバック・ステージにドラマあり!!

『ピッツバーグ交響曲』の初演は、1992年2月6~15日、作曲者を客演指揮者に迎えたリバー・シティ・ブラス・バンドのシリーズ・コンサート“スパークラーズ&フローリッシ―ズ”で行われ、公演初日の会場は、モンローヴィルのゲートウェイ・ハイスクールのホールだった。

▲River City Brass Band

▲Robert Barnat

▲SPARK(E)LERS AND FLOURISHES プログラム

▲SPARK(E)LERS AND FLOURISHES 曲目


【関連作品】

■山の歌
作曲:フィリップ・スパーク
https://item.rakuten.co.jp/bandpower/set-8279/

■ピッツバーグ序曲
作曲:フィリップ・スパーク
https://item.rakuten.co.jp/bandpower/set-9926/

シアター・ミュージック
作曲:フィリップ・スパーク

https://item.rakuten.co.jp/bandpower/set-8137/

■ジュビリー・プレリュード(作曲:フィリップ・スパーク)

オリジナルは、スイスの“コンコルディア・ブラスバンド・オブ・ヴェトロ”の委嘱で作曲されたブラスバンド作品。

同バンドを20年間率いてきた指揮者ゲオ=ピエール・モレンのリーダーシップに対してのリスペクトを表するために委嘱された。1992年に完成。同バンドの演奏で初演された。

“プレリュード(前奏曲)”とネーミングされているとおり、曲は、コンサートの幕開けにふさわしい華やいだムードをもち、華麗なファンファーレ風の導入につづいて、快活な主部~歌うような中間部~主部の再現部~コーダという構成をとっている。

主部も中間部も、曲全体のメロディーラインは、一度聴けば耳から離れなくなるほど魅力的!

ウィンド・バンド(吹奏楽)用のトランスクリプションは、小さな編成でも演奏可能なようにオーケストレーションされているのが特徴だ!

【この楽譜をBPショップでチェックする】
https://item.rakuten.co.jp/bandpower/set-1495/

■ジュビリー・プレリュード
作曲:フィリップ・スパーク
Jubilee Prelude

・グレード:3
・作曲:フィリップ・スパーク(Philip Sparke)
・TIME:5分00秒
・出版:ステューディオ・ミュージック (Studio Music)

【楽器編成】
1st Flute
2nd Flute & Piccolo
Oboe
1st Bb Clarinet
2nd Bb Clarinet
3rd Bb Clarinet
Eb Alto Clarinet
Bb Bass Clarinet
Bassoon

1st Eb Alto Saxophone
2nd Eb Alto Saxophone
Bb Tenor Saxophone
Eb Baritone Saxophone

1st Bb Trumpet
2nd Bb Trumpet
3rd Bb Trumpet
1st F Horn
2nd F Horn
1st Trombone
2nd Trombone
3rd Trombone
Euphonium(B.C.)
Euphonium(T.C.)
Tuba

Timpani
Percussion 1
Percussion 2

■リバー・シティ・セレナーデ(作曲:フィリップ・スパーク)

オリジナルは、アメリカ合衆国ペンシルベニア州ピッツバーグ(Pittsburgh)を本拠とするプロのブラスバンド、リバー・シティ・ブラスバンドの委嘱で1988年に作曲されたブラスバンド作品。

同バンドの委嘱で1987年に作曲された「山の歌」に2曲を加えて3楽章構成の組曲とする構想のもとに作曲をスタートさせたが、最終的に、さらに1曲を加えた4楽章構成のブラスバンドのためのシンフォニー、「ピッツバーグ交響曲」の第3楽章となった。

このウィンド・バンド(吹奏楽)用のトランスクリプションは、単独曲として1992年に完成した。

ピッツバーグは、アレゲニー川とモノンガヒラ川の2つの流れが合流し、オハイオ川の起点となるロケーションに広がる都市。

曲は、川の流れを表すように静かに始まり、7/4拍子と5/4拍子が支配する穏やかな展開をみせる。途中、カデンツァのような箇所がその流れを一瞬さえぎるが、やがて冒頭のように静かに曲を終える。

吹奏楽版は、小さな編成でも演奏できるように、オーケストレーションされている。

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■リバー・シティ・セレナーデ
作曲:フィリップ・スパーク
River City Serenade

・グレード:3
・作曲:フィリップ・スパーク(Philip Sparke)
・TIME:4分45秒
・出版:ステューディオ・ミュージック (Studio Music)
・分類:販売譜(スコア+パート譜セット)

▲ブラスバンド版の演奏

【楽器編成】
Flute & Piccolo
Oboe
1st Bb Clarinet
2nd Bb Clarinet
3rd Bb Clarinet
Eb Alto Clarinet
Bb Bass Clarinet
Bassoon

1st Eb Alto Saxophone
2nd Eb Alto Saxophone
Bb Tenor Saxophone
Eb Baritone Saxophone

1st Bb Trumpet
2nd Bb Trumpet
3rd Bb Trumpet
1st F Horn
2nd F Horn
1st Trombone
2nd Trombone
3rd Trombone
Euphonium(B.C.)
Bb Euphonium(T.C.)
Tuba

Timpani
1st Percussion
2nd Percussion

■樋口幸弘のウィンド交友録~バック・ステージのひとり言:第1話“ゾディアック・ダンス”と“グロリオーゾ”

Text:樋口幸弘

第1話“ゾディアック・ダンス”と“グロリオーゾ”

2017年の日本吹奏楽指導者クリニック(浜松)も間近かにせまった5月16日(火)の午後、クリニックのイブニング・コンサートに出演する名古屋芸術大学ウィンドオーケストラの練習にお邪魔した。

同大学大学院教授でウィンドオケの指揮にあたる竹内雅一さんとは、デハスケ・レーベル(ハル・レナード・MGB)のレコーディングがスタートして以来のつき合い。オランダ側プロデューサーの来日が叶わなかった年には、レコーディングのスーパーバイザーをつとめさせていただいたこともある。

この日は、クリニックで演奏するフィリップ・スパークの『ゾディアック・ダンス(Zodiac Dances)』とヤン・ヴァンデルローストの『グロリオーゾ(Glorioso)』の合奏が予定されていた。

 『ゾディアック・ダンス』は、大阪府の泉大津市吹奏楽団の結成50周年記念委嘱作。日本でもよく演奏される『祝典への前奏曲(Prelude to a Celebration)』につづく同団からスパークへの委嘱第2弾。初演プログラムに印刷された曲名は“ZODIAC DANCES/干支の舞”。作品名“ZODIAC DANCES”は、委嘱者の提案を作曲者が受け入れたもので、将来出版される楽譜には日本語の“干支の舞”も印刷して欲しいとの希望も出たが、そちらは叶わなかった。

“ホース”、“ドラゴン”、“タイガー”、“ラット”、“ドッグ”、“モンキー”と小題がつけられた6つの楽章で構成される愉しい組曲で、それらは楽団結成の1966年の干支である“午<うま>”に始まり、10周年ごとの各干支(“辰<たつ>”、“寅<とら>”、“子<ね>”、“戌<いぬ>”、“申<さる>”)にまつわる生き物(架空を含む)のキャラクターからインスパイアーされている。十二支をヒントとするが、日本的情緒を追い求めた作品ではなく、音楽的アプローチはあくまで西洋音楽。スパーク版“動物の謝肉祭”と言えなくもない。(初演:2016年11月20日、泉大津市民会館)

もう一方の『グロリオーゾ』は、シエナ・ウインド・オーケストラ第43回定期演奏会のための委嘱作。

ロシアの作曲家ドミトリ・ショスタコーヴィチ(1906~1975)へのオマージュとして書かれ、ヴァンデルローストが若い頃に多用した手法、すなわち作品に使いたいテーマ(この曲の場合は“ショスタコーヴィチ”の名前)のアルファベット表記のアナグラム(文字を入れ替えて別の単語を作る一種の言葉遊び)から導かれた音列やその派生的フレーズ、コードなどで作られている。委嘱当初はおよそ10分の作品という約束でスタートしながら、書いている内に熱が入って、結局は14分程度の序曲にスケールアップして完成した。近年の作品中、例外的にブライトであり、エネルギッシュなタッチで書かれている。(ラッパさんはとてもキツい!)

作曲中、2種類の曲名が考えられていたが、完成前に突然『どちらがいい?』と意見を求められたので、スコアから受ける音楽的なイメージから反射的に『グロリオーゾがいいね。』と答えたら、何日かすると本当に曲名に決まっていた。筆者としても最も親近感を覚える作品の1つである。(もちろん、シエナの面々には、初演を前にしたステージ上で“すいません”と詫びを入れたが・・・。)(初演:2017年2月11日、文京シビックホール、東京)

ともに“日本の演奏団体が委嘱し、作曲者の指揮で世界初演されたばかりの新作”というメッセージ性から、クリニックのステージでは長年ハル・レナード・MGBの録音を担ってきたステータスにふさわしい作品を取り上げたいとする竹内さんのリクエストにピッタリ。ちょうど来日中(前年11月)だった両作曲者に会ってその旨を伝えたところ、2人はとても喜んでくれて即座にOK。委嘱団体の同意も彼らがとりつけてくれた。

名芸の合奏では、両曲の初演に臨席し、作曲者から贈られた初稿スコアを持参していた筆者は、竹内さんに求められるままに、作品の背景や実際の演奏で起こったこと、その他要注意ポイントなどをアドバイスした。

すでに両曲はほとんど仕上がっていた。

浜松のステージは、間違いなくすばらしいものになるだろう。