“地球上で最もエンターテイメントなブラスバンド”として広く知られるイングランドのブラスバンド、グライムソープ・コリアリー・バンド!
1977年に始まった恒例の“ブラス・イン・コンサート選手権”で15回優勝(2012年現在)し、映画「ブラス(Brassed Off)」の大成功後、世界中に演奏旅行を行うなど、その活躍は、まさしく“ブラスバンド・エンターテイメントの王者”の名にふさわしいものだ。
その一方で、全英選手権4回(2012年現在、以下同じ)、全英オープン選手権3回、イングランド選手権2回の優勝を誇り、エントリーした選手権で5位以下になったことがないという、“クオリティー・パフォーマンス(演奏の質の高さ)”でもファンの支持を集めている。
このDVDは、そんなグライムソープ・サポーターのために、“ブラス・イン・コンサート選手権”が初めて映像化された2005年から2010年の6年間のベスト・パフォーマンスをまとめたもので、もともとが、グライムソープのショップ用に作られた完全限定制作盤!
DVDの映像は、映画「ブラス」のワン・シーンをフィーチャーし、バンドの歩みと母体の炭鉱(コリアリー)の廃止が英語と写真で説明される『デリー地方のアイルランド民謡(ロンドンデリーの歌)』をオープニング・チューンとして始まる。(2009年の選手権映像)
これは、グライムソープ・サポーターにとっては、涙が出そうになる、何とも堪えられないシーンだ!
その後、映像はリチャード・エヴァンズの指揮で優勝を飾った2005年の選手権のシーンへとつづき、スティーヴン・ミード、フィリップ・マッキャン、マイクル・J・ガラーシ、ジェームズ・ガーレイの指揮で演奏された2006~2009年の選手権とガラ・コンサートのパフォーマンスを時系列で組み込みながら、アラン・ウィジントンの指揮で優勝した2010年の各シーンへと流れる構成。各年のハイライト盤にあるフランク・レントンのナビゲーションはない。
しかし、こうして1つのバンドの演奏だけをまとめた映像をあらためてみると、このバンドのパフォーマンスの面白さと質の高さがとてもよくわかる。毎年、指揮者が変わりながらのことなんで、これは本当に凄いとしか言いようがない!
また、ケヴィン・クロックフォード(ソプラノ・コルネット)、リチャード・マーシャル(コルネット、トランペット)、ロジャー・ウェブスター(コルネット)、サンディー・スミス(テナーホーン)、マイクル・ドッド(ユーフォニアム)、ショーン・クラウザー(Ebバス)など、観衆をひきつける千両役者たちの活躍もすばらしいの一語!
演奏以外のステージ上に目を転じると、興趣はさらに深まる!
グライムソープが伝統的に着る紫のカラー・シャツを着た年とそうでない年、かつてこのバンドの音楽監督をつとめたエルガー・ハワースが好んだフリューゲルホーンを指揮者右手のトップにおくステージ配置の年とそうでない年、曲によってはソプラノ・コルネットを前列フロント・ロウのプリンシパルの横に持ってくる、譜面台に垂らすバンド名を示すバナーが演奏時の正式バンド名によって微妙に違う、選手権では専用バナーが使われていることなど、演目や指揮者の考え方、シチュエーションによって、舞台上のディティールは細かく違っている。バンドが全英チャンピオンだった2006年と2007年のガラ・コンのステージには、舞台前面に優勝カップが誇らしげに据えられている!
また、演奏メンバー全員が男性であることにも注目。
もともと炭鉱労働者のリクリエーション活動として始まったバンドだけに当然と言えば当然なんだが、イングランドの歴史あるバンドで、指揮者が演奏メンバーのことを“ボーイズ(Boys)”と呼ぶのは、実はかつてブラスバンドが男性だけで編成されていたことに由来する。指揮者(おやじ)の言うことは絶対で、プレイヤーはいくら年をとっていても“やんちゃ坊主”なのだ。
2005年の指揮者リチャード・エヴァンズや2010年の指揮者アラン・ウィジントンと演奏メンバーのステージ上のやりとりや、すばらしいソロをしたロジャー・ウェブスターを指揮者のフィリップ・マッキャンがハグするシーンなどに、それはよく表れている。
そんな場面を見て笑みを浮かべる観衆。中には演奏を聴きながら編み物をするおばさんの姿も!それがイギリスのブラスバンド・コンサートなのだ。
余談だが、2007年の指揮者フィリブ・マッキャンは、ロジャー・ウェブスターの前のブラック・ダイク・プリンシパル・コルネット奏者であり、2005年のプリンシパル奏者リチャード・マーシャルは、ブラック・ダイクを去ったウェブスターの跡をついでブラック・ダイクのプリンシパルとなった。そして、ウェブスターはマーシャルの抜けたグライムソープに参加した。この選手権のファンは、そういう事情も実によく知っている。
かくて、ブラスバンドの歴史は、語り継がれていく!
全篇を通して、演奏は間違いなくファーストクラス!
あまり書くとネタばれになるので、詳細はブラス・イン・コンサート選手権の各年度のDVDの紹介ページに譲るが、エンターテイメント選手権らしい爆笑をさそうとしてシーンとして請け負うのは、2005年の『リステリア』と2006年の『かっこう』!また、このバンドの高度な合奏を示すシーンとして、2005年の『バレエ音楽「ガイーヌ」組曲第2番より“終楽章”』、2007年の『グリーン・デスティニー』、2008年の『ロッキーのファンファーレ』と『マッカーサー・パーク』、2010年の『常動曲』は、ぜったいに見逃せない。
このバンドを愛し、14年に渡ってマネージャーをつとめたテリー・ウェブスター(ロジャーの弟)の仕事の大まとめとして制作されたベスト・アルバム!
映画「ブラス」とともに、何度でも見たくなる最高のエンターテイメントDVDだ!
■このDVDをBPショップでチェックする
http://item.rakuten.co.jp/bandpower/dvd-9563/
【収録曲】
1. デリー地方のアイルランド民謡(ロンドンデリーの歌)/伝承曲 (arr. パーシー・グレインジャー)
Irish Tune from County Derry/Traditional (arr. Percy Grainger)
<2009年、選手権>
2. マールボロ公爵のファンファーレ/パーシー・グレインジャー (arr. サンディー・スミス)
The Duke of Marlborough Fanfare/Percy Grainger (arr. Sandy Smith)
<2005年、選手権>
3. エブリバディ・ラブズ・ザ・ブルース/メイナード・ファーガソン(arr. サンディー・スミス)
Everyone loves the Blues/Maynard Ferguson (arr. Sandy Smith)
<2005年、選手権>
4. クワイエット・プレイス/レイフ・カーマイケル(arr. サンディー・スミス)
A Quiet Place/Ralph Carmichael (arr. Sandy Smith)
<2005年、選手権>
5. リステリア/フランツ・リスト(arr. サンディー・スミス)
Liszteria/Franz Lizst (arr. Sandy Smith)
<2005年、選手権>
6 バレエ音楽「ガイーヌ」組曲第2番より“終楽章”/アラム・ハチャトゥリアン(arr. サンディー・スミス)
Finale from the Gayanch Ballet Suite No 2/Aram Khachaturian (arr. Sandy Smith)
<2005年、選手権>
7. ヴァレロ/ジェームズ・スウェアリンジェン(arr. サンディー・スミス)
Valero/James Swearingen (arr. Sandy Smith)
<2006年、ガラ・コンサート>
8. 「レクイエム」より“ピエ・イエズ”/アンドルー・ロイド=ウェバー/(arr. サンディー・スミス)
Pie Jesu/Andrew Lloyd-Webber (arr. Sandy Smith)
<2006年、ガラ・コンサート>
9. かっこう/エルガー・ハワース(arr. サンディー・スミス)
The Cuckoo/Elgar Howarth (arr. Sandy Smith)
<2006年、ガラ・コンサート>
10. 交響詩「ローマの松」より“アッピア街道の松”/オットリーノ・レスピーギ(arr. ハワード・スネル)
The Pines of the Appian Way/Ottorino Respighi (arr. Howard Snell)
<2006年、ガラ・コンサート>
11. 春の日の花と輝く/シモーネ・マンティア(arr. ハンスバーガー & マルドナド)
Believe Me, If All Those Endearing Young Charms/Simone Mantia (arr. Hunsberger & Maldomado)
<2006年、選手権>
12. 楽劇「ラインの黄金」より“ヴァルハラへの神々の入場”
/リヒャルト・ワーグナー(arr. ハワード・スネル)
The Entry of the Gods into Valhalla/Richard Wagner (arr. Howard Snell)
<2006年、選手権>
13. 歌劇「蝶々夫人」より“ハミング・コーラス”/ジャコモ・プッチーニ(arr. サンディー・スミス)
Humming Chorus/Giacomo Puccini (arr. Sandy Smith)
<2007年、ガラ・コンサート>
14. リロイ・ブラウン/フレディー・マーキュリー(arr. スヴェイン・ヘンリク・ジスケ)
Bring Back that Leroy Brown/Freddie Mercury (arr. Svein Henrik Giske)
<2007年、選手権>
15. また恋に落ちて/フレデリック・ホランダー(arr.ポール・ドゥルリー)
Falling in Love Again/Frederick Hollander (arr. Paul Drury)
<2007年、選手権>
16. グリーン・デスティニー/タン・ドゥン(arr. ポール・ドゥルリー)
Crouching Tiger, Hidden Dragon/Tan Dun (arr. Paul Drury)
<2007年、選手権>
17. ロッキーのファンファーレ/ビル・コンティ (arr. C・シャープ)
Fanfare for Rocky/Bill Conti (arr. C. Sharp)
<2008年、選手権>
18. マッカーサー・パーク/ジム・ウェッブ(arr. アラン・キャザーロール)
MacArthur Park/Jimmy Webb (arr. Alan Catherall)
<2008年、選手権>
19. スコットランドの釣鐘草/伝承曲 (arr. アーサー・プライアー )
The Bluebells of Scotland/Traditonal (arr. Arthur Pryor)
<2009年、選手権>
20. ダンス・トゥー・ティー・ダディ/伝承曲 (arr. ダーロル・バリー)
Dance to Thi Daddy/Traditional (arr. Darrol Barry)
<2009年、選手権>
21. ワイヴス・アンド・ラヴァース/バート・バカラック & ハル・デーヴィッド (arr. ロビン・デューハースト)
Wives & Lovers/Burt Bacharach & Hal David (arr. Robin Dewhurst)
<2010年、選手権>
22. 「四季」から “冬”/アントニオ・ヴィヴァルディ (arr. ロビン・デューハースト)
Winter/Antonio Vivaldi (arr. Robin Dewhurst)
<2010年、選手権>
23. 恋はリズムにのせて/ボブ・クルー (arr. ロビン・デューハースト)
Music to Watch Girls By/Bob Crewe (arr. Robin Dewhurst)
<2010年、選手権>
24. 常動曲/オットカール・ノヴァーチェク (arr. ヤコブ・ラルセン)
Moto Perpetuo/Ottokar Novacek (arr. Jacob Larsen)
<2010年、選手権>
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