「Cornet」タグアーカイブ

■ソナチナ(演奏:リチャード・マーシャル)

ブラック・ダイク・バンドのプリンシパル・コルネット奏者として、度重なる日本公演ですっかりおなじみとなったリチャード・マーシャルがブラック・ダイクの“プリンシパル”として過ごした15周年を記念してリリースされたソロ・アルバム。

アルバムは、2014年から2016年にかけて録音された既リリース音源に新録音のデニス・ライトの『コルネット協奏曲』を加えた構成。だが、すべてブラック・ダイクが準本拠としている英ウェストヨークシャー州モーリーのランドマーク、モーリー・タウン・ホールで録音されたものだけにトラックごとの音場の違和感はほとんどない。プロデュースとエンジニアリングも、ブラスバンド録音のスペシャリスト、リチャード・スコットが担っている。

冒頭を彩る新録音のデニス・ライトの『コルネット協奏曲』は、リバプール・フィルの首席トランペット奏者で伝説的コルネット奏者のハリー・モーティマー(1902~1992)のために書かれた初のコンチェルトだ。オリジナルはウィンド・バンド(吹奏楽)伴奏で、モーティマー独奏、ウォルトン・オードンヌル指揮、BBC放送吹奏楽団の伴奏で初演された。その後、ブラスバンド伴奏版とオーケストラ伴奏版が作られている。古典的協奏曲の様式で書かれた作品で、今でもしばしば演奏される。

2曲目のエルガー・ハワースの『ソナチナ』は、2007年秋、マーシャルのために書かれた。作曲当時は、ピアノ伴奏の作品で、マーシャルの来日リサイタルでも演奏された。ブラック・ダイクの委嘱でブラスバンド伴奏版が作られたが、コンテンポラリー・タッチとハードなテクニックを必要とし、この演奏のセッションでこの曲を客演指揮したハワースをリスペクトするブラック・ダイクの伴奏も、ひじょうに繊細、そして緻密だ!

マーティン・エレビーの『コルネット協奏曲』は、米ノースカロライナ州のトライアングル・ブラス・バンドの委嘱作で、2012年3月18日、同州ローリのメイマンディ・コンサート・ホールで、ジェンス・アンダーマン独奏、トニー・グラナドス指揮の同バンドの演奏で初演された。イギリス初演奏は、2014年1月、マーシャル独奏、ブラック・ダイクの演奏で行われ、BBC放送がそのライヴをオン・エアした。急-緩-急の3楽章構成で、第1楽章・第3楽章のリズミカルな展開の間に叙情的にうたいあげられる第2楽章を挟んだ古典的な協奏曲スタイルをとっている、メロディーラインの親しみやすさ、美しさは、近年発表されたブラスバンドのためのコンチェルトの中でもグンを抜く。

エドワード・グレッグスン『コルネット協奏曲』は、2016年、マーシャルのために書かれた作品で、小題のある急-緩-急の3つの楽章で構成される。2016年4月30日、フランスのリールのコンサート・ホール“ル・ヌーボー・シエークル”で開催された“ヨーロピアン・ブラスバンド選手権2016”のガラ・コンサートで、マーシャルの独奏、ニコラス・チャイルズ指揮、ブラック・ダイクの伴奏で初演された。コルネットとブラスバンド、双方のキャラクターや音楽的魅力を知り尽くしている作曲家だからこそ書くことができた作品であり、独奏者、伴奏者、聴く者のすぺてを音楽の中に惹きこんでいく!

現代を代表するコルネッティスト、リチャード・マーシャルの記念碑的ソロ・アルバムだ!

【リチャード・マーシャル】
イングランドのヨークシャー地方の生まれ。父は同地方の実力バンド、ブロッズワース・コリアリー・バンドのフリューゲルホーン奏者。9才のときにコルネットを始め、1996年、19才の若さでグライムソープ・コリアリー・バンドのプリンシパル・コルネット奏者に就任。フリーランスのトランペット奏者としても活躍。2006年1月、ブラック・ダイク・バンドのプリンシパル・コルネット奏者に就任した。2008年、フィリップ・コップ、オーウェン・ファー、デヴィッド・チャイルズとブラス・カルテット“エミネンス・ブラス”を結成。ロイヤル・ノーザン音楽カレッジ、バーミンガム音楽院のコルネット・チューターもつとめている。

【このCDをBPショップでチェックする】
http://www.bandpower.shop/shopdetail/000000000761/

■ソナチナ
演奏:リチャード・マーシャル

Sonatina

【データ】
・コルネット:リチャード・マーシャル(Richard Marshall)
・演奏:ブラック・ダイク・バンド(Black Dyke Band)
・指揮:ニコラス・チャイルズ(Professor Nicholas Childs)1、3、4
 エルガー・ハワース(Elgar Howarth)2
・発売元:ドイエン(Doyen)
・発売年:2020年
・収録:Morley Town Hall (U.K.)

【収録曲】

  1. コルネット協奏曲/デニス・ライト【12:53】
    Cornet Concerto/Denis Wright
    第1楽章:アレグロ Allegro【6:48】
    第2楽章:カンツォネッタ Canzonetta【3:45】
    第3楽章:ロンド Rondo【2:20】
  2. ソナチナ/エルガー・ハワース【17:29】
    Sonatina/Elgar Howarth
    第1楽章 【4:45】
    第2楽章 【5:07】
    第3楽章 【7:37】
  3. コルネット協奏曲/マーティン・エレビー【11:59】
    Cornet Concerto/Martin Ellerby
    第1楽章:ブリランテ Brilliante【4:31】
    第2楽章:アリエッタ Arietta【4:42】
    第3楽章:ロンディーノ Rondino【2:46】
  4. コルネット協奏曲/エドワード・グレッグスン【20:58】
    Cornet Concerto/Edward Gregson
    第1楽章:ソナタ Sonata【7:32】
    第2楽章:インテルメッツォ(さらに遠い記憶の…) 
    Intermezzo (…of more distant memories)【6:43】
    第3楽章:ロンド Rondo【6:43】

【このCDをBPショップでチェックする】
http://www.bandpower.shop/shopdetail/000000000761/

ロンドン交響楽団首席トランペット奏者・フィリップ・コプによる独奏集「ソングズ・フロム・ザ・ハート」が発売

マスメディアが“~の名手”と呼ぶ演奏家は、広いこの世界のこと、間違いなくどんな国にいる。しかし、そんな中、天賦の才能を与えられただけでなく、若くしてそれが認められ、世界中のプロが羨むような超有名交響楽団のトップシートをもサラリと手許に引き寄せてしまうホンモノの強運の持ち主がいる!

2009年7月、弱冠21歳にしてロンドン交響楽団首席トランペット奏者に任命され、9月1日に着任。このCDでもすばらしいソロを楽しませてくれるフィリップ・コプもそんな1人だ!!

ロンドン響のトランペット奏者と言えば、長年にわたり、モーリス・マーフィー(1935~2010)とロッド・フランクス(1956~2014)の2人が“ダブル首席”として活躍。多忙なオーケストラだけに、2007年のマーフィーの退団後、フランクスとともに首席の任にあたる奏者を探し出すことは、楽団として大きな懸案事項となっていた。

その後、多くの優秀な奏者が何人も試用されたが、ロンドン響の顔だったスター・プレイヤー、マーフィーの跡をつげるような、オーケストラとのマッチングでピッタリくる奏者はなかなか現れなかった。

しかし、2009年、ロンドン響のプレジデント、サー・コリン・デイヴィス(1927~2013)がタクトをとるシリーズでトライアルのチャンスを得たコブのパフォーマンスをオーケストラのメンバーが賞賛。名誉あるロンドン響首席のポジションをコブにもたらすことになった!!

つぎの瞬間、『フィリップ・コブが、2009年7月、ロンドン響の首席トランペットのポジションを喜んで受け入れた。今なお21歳の間に。』というロンドン響のプレス・リリースが世界を駆け巡り、同僚となったもう1人の首席奏者フランクスも『LSO(ロンドン響)は、とうとう、21歳のフィリップ・コブに、すばらしい首席トランペットを見い出した。』と歓迎のコメントを残した。

そう言えば、偶然ながら、マーフィーもフランクスも、世界的に知られるブラスバンド、ブラック・ダイクの出身。長く救世軍のブラスバンドでコルネットをプレイしたコブの演奏スタイルが、この伝統あるオーケストラのフィーリングにピッタリ合ったのかも知れない。

いずれにせよ、ブラスバンド出身奏者が広く音楽界で活躍する、いかにもイギリスらしい話だ!!

救世軍の作曲家ポール・シャーマンがコブのために書いたブリリアントなトランペット独奏曲『フローリッシュ』で始まるこのアルバムは、コブがロンドン交響楽団に入団後の2012年にリリースされたすばらしいソロ・アルバムで、全篇がコブの魅力に満ちている!!

曲によって楽器を持ち替え、心に響くように美しいケネス・ダウニーの『オアシス』やリリアン・レイの『サンシャイン・オブ・ユア・スマイル』、ジョイ・ウェッブ の『シェア・マイ・ヨーク』ではコルネット、エリック・ウィッテカーの『海の子守唄』ではフリューゲルホーンと吹き分けているが、これが実にすばらしい!!

コルネット・ファンには、エリック・ライゼンの名曲『心の歌』が収録されたこともビッグニュースだろう!

映画音楽のフィールドで活躍するアンドルー・ピアースの『マエストロ』は、テクニックのみならず、音楽の表情の移り変わりという点でも、このアルバムで最も聴きものの音楽の1つ。まるでライヴのようなモチベーションもすばらしい!まるでアンコール・ピースのような『インタールード』もドラマチックな曲だ!

バックをつとめる救世軍インターナショナル・スタッフ・バンドも、ロンドン響に入団した今でもときどきプレイするコブのホームグラウンドというべきブラスバンドで、相性もバツグン!!

ラストは、輝かしいトランペットの『ティコティコ』できめて、アルバムはハッピーエンド!

変幻自在な曲目とテクニックで聴かせるファースト・クラスのソロ・アルバムだ!

■フィリップ・コプ独奏集~ソングズ・フロム・ザ・ハート
(ロンドン交響楽団首席トランペット奏者)

Songs from the Heart~Philip Cobb
The International Staff Band
【収録曲】

1. フローリッシュ/ポール・シャーマン 【4:55】
Flourish/Paul Sharman

2. オアシス/ケネス・ダウニー 【4:35】
Oasis/Kenneth Downie

3. 心の歌/エリック・ライゼン 【9:08】
Songs in the Heart/ Erik Leidzen

4. サンシャイン・オブ・ユア・スマイル/リリアン・レイ 【3:26】
The Sunshine of Your Smile/Lilian Ray

5. シェア・マイ・ヨーク/ジョイ・ウェッブ (arr. アイヴァー・ボサンコ) 【4:11】
Share My Yoke/Joy Webb (arr. Ivor Bosanko)

6. マエストロ/アンドルー・ピアース 【15:48】
The Maestro/Andrew Pearce

7. インタールード/アンドルー・ピアース 【4:50】
Interlude/Andrew Pearce

8. ヴァリエーションズ・オン・ア・ワンダラス・デイ/ポール・シャーマン 【5:08】
Variations on Wondrous Day/Paul Sharman

9. みなささげまつり/デヴィッド・チョーク (arr. アンドルー・マッケレス) 【4:26】
I Surrender All/David Chaulk (arr. Andrew Mackereth)

10. 海の子守唄/エリック・ウィッテカー (arr. ポール・シャーマン) 【4:31】
The Seal Lullaby/Eric Whitacre (arr. Paul Sharman)

11. ティコティコ/ゼキーニャ・デ・アブルー (arr. ジョン・アイヴスン) 【4:10】
Tico Tico/Zequinha Abreu (arr. John Iveson)

【このCDをBPショップでチェックする】
http://item.rakuten.co.jp/bandpower/cd-3936/

 

リチャード・マーシャル/ブラック・ダイク~コルネット・ヘリテージ・コレクション Vol.2…コルネット・ソロとデュエットの定番がズラリ11曲。

吹奏楽マガジン バンドパワー

“ダイクの前にダイクなし、ダイクの後にダイクなし”と謳われるイングランドの名門ブラスバンド、ブラック・ダイクのプリンシパル、リチャード・マーシャルがコルネット・ソロの珠玉の名曲を独奏した“コルネット・ヘリテージ・コレクション”のシリーズ第2弾!

 レコーディング・セッションは、2013年、美しく豊かな残響で知られるウェスト・ヨークシャーのハリファクス大聖堂で行われた。

 この大聖堂の大きな空間に広がるコルネットとバンドの響きは、とにかく美しい!!

 指揮は、音楽監督ニコラス・チャイルズと、録音当時の首席指揮者ロバート・チャイルズ。

 ユーフォニアムのソリストとしても活躍した2人の的を得た指揮は、マーシャルののびやかなソロとアジャストしたすばらしい伴奏をバンドから引き出している。

 レパートリーは、第1弾同様、コルネット・ソロとデュエットの定番がズラリ11曲!

 ハートマンの『ファシリータ』、リンマーの『マイ・オールド・ケンタッキー・ホーム(ケンタッキーの我が家)』、『ヘイルストーム』、『ウェーバーのラスト・ワルツ』など、今もイギリスのブラスバンド・ファンを熱狂させている曲目が次から次へと登場する!

 シュトラウスの喜歌劇『カサノヴァ』から“修道女の合唱”やゴードン・ラングフォード編の『わが愛は赤い赤いバラのように』の美しさは、とくに絶品だ!

 1曲だけ入っているデュエット曲、グリーンウッドの『プレイメイツ』は、マーシャルの一人二役で、当然ながら、デュエットのタッチは見事にアジャスト!

 つねにコルネットの先人をリスペクトするマーシャルらしいのは、少年時代に初めてのコルネットを丁寧に選んでくれたブロッズワース・コリアリー・バンドのプリンシパル、ケン・ラルフ(2013年に物故)へ捧げるために、サリヴァンの『失われた音階』を選曲していること。

 そのソロも、とても感情の入ったハートフルなものとなっている!

 ブックレットの巻頭言を長年CWSマンチェスター・バンドのプリンシパルをつとめたデリック・ガーサイド、プログラム・ノートをシティ・オブ・コヴェントリー・バンドやグライムソープ・コリアリー・バンドのプリンシパルをつとめたジェームズ・スコットという、コルネットのレジェンドたちが書いているのも、まさしくマーシャルの人徳がなせる業だ!!

 コルネット吹きには、まさしくバイブルもの!

 同一楽器のソロ・アルバムなのに、一気に聴き通せる完成度の高さ!

 大成功を収めたファースト・アルバムをさらに上回る、豊かな音楽性が光っている!

【このCDをBPショップでチェックする】
http://item.rakuten.co.jp/bandpower/cd-3292/

【ブラック・ダイク・バンドの他のCD、DVDをチェックする】
http://item.rakuten.co.jp/bandpower/c/0000001035/

【リチャード・マーシャルの他のCDをチェックする】
http://item.rakuten.co.jp/bandpower/c/0000000882/

■ソプラノ・コルネットからテューバ(Ebバス)まで、ブラスバンドで使われる楽器を吹きまくる、なんともスーパーな企画盤!「グリン・ウィリアムズ~ヴィルトゥオーソ ~コルネットからテューバまで~」

こいつは、すごい!!!

イングランドの名門ブラスバンド、フォーデンズの人気者、プリンシパル・ユーフォ二アム奏者のグリン・ウィリアムズが、こともあろうに、ソプラノ・コルネットからテューバ(Ebバス)まで、ブラスバンドで使われる楽器を吹きまくる、なんともスーパーな企画盤!

それも、ただ吹きまくるというイタズラ企画ではなく、各楽器の有名なソロ曲を、コルネット曲ならコルネットを、フリューゲル曲ならフリューゲルを使って独奏するという、俄かには信じがたいアルバムなのだ!

商業CDを作っている正しいレコード会社なら、こういう野心あふれる冒険企画は、間違いなく“速攻”でボツ!

しかし、グリン・ウィリアムズの並々ならぬ実力と、その演奏活動を支える楽器メーカーや作曲家たちのサポートを受け、このアルバムは完全なインディーズとして完成した!

アルバムは、“本職”のユーフォニアム独奏、ジョン・ハートマンの『ルール・ブリタニア』でスタート。ヘルマン・ベルシュテッド『ナポリ』、アーサー・レミントン編『ヴェニスの謝肉祭』、ウェールズの名曲『マヴァニュイ』、ピーター・グレイアム『ホーリー・ウェル』といった、ぜひともウィリアムズのソロで聴いてみたいユーフォニアム独奏曲の合間に他の楽器を使った演奏をはさみ込むスタイルで進行!

日本でも大ヒットした映画「ブラス」(Brassed Off!)と同じアレンジが使われた『アランフェス協奏曲』から“アダージョ”は映画と同じくフリューゲルホーンで、ゴフ・リチャーズがヒュー・ナッシュの筆名で書いた『デメルザ』はテナーホーンで、二ール・セダカの『ソリティア』はソプラノ・コルネットで、ウィリアム・リンマー『ヘイルストーム』はコルネットで、ロッシーニの歌劇「セビリアの理髪師」から“私は町のなんでも屋”はEbバスで、ビゼーの歌劇『カルメン』(スネル編)から“花の歌”はバリトンで、といった調子でこだわりのレパートリーが演奏されていく。

しかも、“本職”のプレイヤーが真っ青になりそうな完成度!

ふつう1種類の楽器をものにするだけでも大変だというのに、なんということだ!!

アルバムにはウィリアムズのボーカル(これがなんとも美声!)まで入っているが、そんな中、アレッド・ウィリアムズとの兄弟ユーフォニアム・デュオのウェールズ聖歌『清き心』で、ウェールズが生んだユーフォ・デュオの元祖“チャイルズ・ブラザーズ”をリスペクトしているあたり、とても心憎い演出だ!

しかし、アルバムの興奮はこれで終わらない!

アラン・ファーニーが“ブラス・イン・コンサート選手権2001”のために書き、グリン・ウィリアムズが“ベスト・ソロイスト賞”を贈られた『クルトワ・ショーケース』では、ユーフォニアム、コルネット、テナーホーン、トロンボーン、フリューゲルホーン、バリトンといった楽器をとっ変え、ひっ変えの大熱演!映像がないので確証はないが、最後のシロフォンも恐らくウィリアムズが弾いたのではないかと思われるそのライヴ感は、実に爽快!

フィナーレを飾る『ランド・オブ・ソング(歌の国)』は、同じくファーニーがウェールズの有名なメロディーを使ってこのアルバムのために書き下ろしたユーフォ二アム独奏曲で、ウィリアムズの実力がたっぷりと味わえる!

演奏内容はもとより、これ1枚でブラスバンドに使われるすべての楽器のソロを味わえるというすばらしいプレゼンテーションも光る!

ブラスバンドのビギナーからベテランまで理屈なく愉しめる1枚だ!

【このCDをBPショップでチェックする】
http://item.rakuten.co.jp/bandpower/cd-3249/

 

【グリン・ウィリアムズ】
ウェールズ中部のアベリストウィスに生まれる。叔父から音楽の手ほどきを受け、ウェールズのタウィン・シルヴァー、ロイヤル・オークリー、メナイ・ブリッジの各ブラスバンドのユーフォ二アム奏者をへて、マンチェスターのソルフォード大学に学ぶ。1995年、フォーデンズ・バンドのソロ・ユーフォ二アム奏者に就任した。

ソプラノ・コルネットのレジェンドたち…イギリスのブラスバンド界で“レジェンド”と呼ばれる3人のソプラノ・コルネット奏者のソロを枚のCDにまとめた感動的な好企画盤!

 イギリスのブラスバンド界で“レジェンド”と呼ばれる3人のソプラノ・コルネット奏者、ケヴィン・クロックフォード、ピーター・ロバーツ、アラン・ウィッチャリーのソロを各6曲ずつ、レーベルの枠を超えて1枚のCDにまとめた感動的な好企画アルバム!!

 収録されている各トラックは、1982年から2011年の30年間にリリースされた15枚のオリジナル・アルバムからコンピレーションされたもの!すでに廃盤のものもあり、中古盤でも今から見つけるのがきわめて難しいレアな演奏もあるので、ファンにはたいへん喜ばれそうだ!

 3人のトップを切って登場するのは、ケヴィン・クロックフォード。

 「ブラス・イン・コンサート選手権2008」(DVD-9388)に収録されている「マッカーサー・パーク」の超絶ラストノートや「ブラス・イン・コンサート選手権2010」(DVD-9466)に収録されている「四季」から “冬”など、数々の美しいソロで日本でも知られるようになったクロックフォードは、シティ・オブ・コヴェントリー、レイランド・ヴィークルズ、ブラック・ダイク・ミルズなどで活躍し、ピーター・ロバーツの跡を受け、グライムソープ・コリアリーのソプラノ・コルネットとなった人だ。

 そのクロックフォードは、アルバム冒頭、ゴフ・リチャーズがヒュー・ナッシュという筆名で書いた『デメルザ』でいきなり泣かせてくれる。曲のメロディー・ラインも演奏の歌ごころもとにかく美しい!

 3曲目のシュトラウスの喜歌劇「カサノヴァ」から“修道女の合唱”で聴かせるソフトで伸びやかなサウンドも、涙がこぼれるほど感動的だ!!

 2人目は、ピーター・ロバーツ。

 超ロングセラーとなっているCD「レジェンド~ピーター・ロバーツ」(CD-0578)のタイトルは、正しく彼のものと言わせるほどの実力と人気を兼ね備えたソプラノ・コルネット奏者。グライムソープ・コリアリーで25年間演奏した後、ヨーロピアンを席巻した伝説的ヨークシャー・ビルディング・ソサエティで活躍し、ブラック・ダイクで有終の美を飾った名奏者だった。

 ロバーツの演奏1曲目は、フィリップ・スパークが彼のために書いた『フラワーデール』。すでにこの1曲だけで泣かされること請負いだが、その後につづく、スティーヴン・ブラの『ハイアー・プレイン』(とくに中間部)も、パオロ・ルスティケッリの『キリエ』もとても感動的だ!!

 3人目に登場するのは、アラン・ウィッチャリー。

 その39年に及ぶ演奏歴の中で、フェアリーで14年間、レイランドで12年間、フォーデンズで10年間というように、1つのバンドに長く腰を据えて演奏活動を行った。日本にも友人、知人が多い。

 彼の1曲目は、ソルフォード大学でロイ・ニューサムとピーター・グレイアムに学び、やがてウィッチャリーの妻となった内田佐智の『ディープ・ボンド』。彼の一家の絆をテーマとして書かれた美しくも愛のある作品で、ソロもひじょうにハートフル!

 つづく、ラングフォード編の『ドリンク・トゥー・ミー・オンリー』やシューベルトの『きみはわが憩い』でも、ソロの繊細さと歌心は魂を揺さぶる!

 ここからの後半9曲では、もう一度、クロックフォード、ロバーツ、ウィッチャリーの順に登場!

 各3曲ずつが、クラシックあり、ポップスありの展開で愉しめる。三人三様のソロ・ワークのすばらしさは、ここまでの演奏を堪能した後は、もうこれ以上語る必要もないだろう。

 しかし、その中で、トラック15のロバート・イ―ヴスの『ラプソディ』は、ソプラノ・コルネットのために書かれたオリジナルだけに注目しておきたい!とても貴重な録音と言えるだろう!

 ソプラノ・コルネットは、主にブラスバンドだけで活躍する楽器なので、日本ではあまり知られていないかも知れない!

 しかし、その真髄にせまるこのようなCDを聴かされると、初めてこの楽器にふれた人も、ドップリとその魅力にはまりそうだ!

 まるでビロードのようなサウンドの美しさに加え、オペラの名歌手のような歌ごごろ!

 ピーター・ロバーツの伝説的CD「レジェンド」ともども、すべての金管吹きのバイブルになりそうな、すばらしいアルバムだ!!

【このCDをBPショップでチェックする】
http://item.rakuten.co.jp/bandpower/cd-3195/

【ソプラノ・コルネット】
ケヴィン・クロックフォード(Kevin Crockford) 1、2、3、10、11、12
ピーター・ロバーツ(Peter Roberts) 4、5、6、13、14、15
アラン・ウィッチャリー(Alan Wycherley) 7、8、9、16、17、18

【演奏団体】
グライムソープ・コリアリー・バンド(Grimethorpe Colliery Band) 1、11、12
フェアリー・FP・ミュージック・バンド(Fairey FP (Music) Band) 2
ウィリアムズ・フェアリー・バンド(Williams Fairey Band) 3、17
ヨークシャー・ビルディング・ソサエティ・バンド(Yorkshire Building Society Band) 4、14
ブラスバンド・バイズィンヘン(Brass Band Buizingen) 5、6、15
ボアシャースト・グリーンフィールド・シルバー・バンド(Boarshurst (Greenfield) Silver Band) 7
レイランド・バンド(Leyland Band) 8、16
セラーズ・エンジニアリング・バンド(Sellers Engineering Band) 9
ブラック・ダイク・ミルズ・バンド(Black Dyke Mills Band) 10
ブラック・ダイク・バンド(Black Dyke Band) 13
BNFLバンド(BNFL Band) 18

【指揮者】
ジェームズ・ガーレイ(James Gourlay) 1
ブライアン・グラント(Brian Grant) 3、12
デヴィッド・キング(David King) 4、14
リュク・ヴェルトッメン(Luc Vertommen) 5、6、15
ジョナサン・ウェブスター(Jonathan Webster) 7
リチャード・エヴァンズ(Richard Evans) 8、16、18
フィリップ・マッキャン(Philip McCann) 9
ジェームズ・ウォトスン(James Watson) 10
フランク・レントン(Frank Renton) 11
ニコラス・チャイルズ(Dr. Nicholas Childs) 13

・オリジナル録音制作年:各トラック末尾のカッコ内に記載

【収録曲】
1. デメルザ/ヒュー・ナッシュ  【4:16】
Demelza/Hugh Nash [2010]

2. エマニュエル/ミシェル・コロンビエ (arr. マーク・フリーフ) 【2:57】
Emmanuel/Michel Colombier (arr. Mark Freeh)[2003]

3. 喜歌劇「カサノヴァ」から“修道女の合唱”
/ヨハン・シュトラウス(子)(arr. サイモン・カーウィン) 【3:58】
The Nuns’ Chorus from Casanova/Johann Strauss II (arr. Simon Kerwin)[2001]

4. フラワーデール(「ハイランド讃歌」から)/フィリップ・スパーク 【4:02】
Flowerdale/Philip Sparke [2003]

5. ハイアー・プレイン/スティーヴン・ブラ 【6:16】
The Higher Plane/Stephen Bulla [2004]

6. キリエ/パオロ・ルスティケッリ (arr. リュク・ヴェルトッメン) 【4:03】
Kyrie/Paolo Rustichelli (arr. Luc Vertommen)[2004]

7. ディープ・ボンド/内田佐智 【3:49】
The Deep Bond/Sachi Uchida [2002]

8. ドリンク・トゥー・ミー・オンリー(ただきみが瞳をもって)
/伝承曲 (arr. ゴードン・ラングフォード) 【5:02】
Drink to me Only/Traditional (arr. Gordon Langford)[1989]

9. きみはわが憩い/フランツ・シューベルト (arr. ウォルター・ハーグリーヴス) 【3:57】
Du Bist Die Ruh (you Are Peace)/Franz Schubert (arr. Walter Hargreaves)[1990]

10. おお聖夜(さやかに星はきらめき)(讃美歌第2編219番)
/アドルフ=シャルル・アダム (arr. スティーヴン・ブラ) 【5:39】
O Holy Night/Adolphe Adam (arr. Stephen Bulla)[1994]

11. 夜の女王のアリア(歌劇「魔笛」から)/モーツァルト (arr. サンディー・スミス) 【3:04】
The Queen of the Night’s Aria/Wolfgang Amadeus Mozart (arr. Sandy Smith)[1991]

12. ヴィリア/フランツ・レハール (arr. アンディ・クック) 【4:56】
Vilja/Franz Lehar (arr. Andi Cook)(2011)

13. 主の祈り/アルバート・ヘイ・マロット (arr. フィリップ・ウィルビー) 【3:04】
The Lord’s Prayer/Albert Malotte (arr. Philip Wilby)[2006]

14. メモリー(ミュージカル「キャッツ」から)
/アンドルー・ロイド=ウェバー (arr. アラン・キャザロール) 【4:20】
Memory/Andrew Lloyd Webber (arr. Alan Catherall)[2003]

15. Ebソプラノ・コルネットのためのラプソディ/ロバート・イ―ヴス  【6:01】
Rhapsody for Eb Soprano Cornet/Robert Eaves [2004]

16. ひばりは高らかに/アイルランド伝承曲 (arr. ゴードン・ラングフォード) 【4:05】
The Lark in the Clear Air/Traditional (arr. Gordon Langford)[1996]

17. タイスの瞑想曲/ジュール・マスネ (arr. ジェフリー・ブランド) 【4:32】
Meditation from Thais/Jules Massenet (arr. Geoffrey Brand)[1982]

18. トランペット・ヴォランタリー/ジェレマイア・クラーク (arr. プラム・ゲイ) 【2:31】
Trumpet Voluntary/Jeremiah Clarke (arr. Bram Gay)[1994]

【このCDをBPショップでチェックする】
http://item.rakuten.co.jp/bandpower/cd-3195/

ブラック・ダイク~ソロイストの競演(Soloist Showcase)…全篇を通じ、とてもハッピー! 何とも贅沢なブラスの名手たちの競演盤!

cd-2575

 世界で最も有名、そして数々の成功を収めてきたイングランドのブラスバンド“ブラック・ダイク・バンド”。

 ブラスバンドのフィールドだけでなく、ポップスやクラシックの世界にもその名は轟き、大御所サー・コリン・デイヴィスが指揮したCDまであるこのバンドの限りある席に座って演奏するステータスは、寝食を忘れてブラスバンドに打ち込む者にとって、他の何事にも代えがたい“人生の勲章”のようなものだ。サッカーに例えると、イングランド・プレミアリーグのマンチェスター・ユナイテッドでプレイするに匹敵する。

 メンバーには、コルネットのリチャード・マーシャル、テナーホーンのシューナ・ホワイト、バリトンのカトリーナ・マーゼラ、トロンボーンのブレット・ベイカーなど、ソロCDをリリースする有名プレイヤーも多数在籍するが、実はこのバンドのメンバーになること、それ自体が超難関!結果、バンド全体を見渡すと、すべてのパートがすばらしいプレイヤーで構成されていることがよくわかる。

 2012年3月、ヨークシャーのモーリー・タウン・ホールで収録されたこのアルバムは、ブラック・ダイク各メンバーのソロやアンサンブルをフィーチャーした、とてもご機嫌なコンサート・アルバムだ!

 曲目欄を見て面白いのは、収録順が、最高音のソプラノ・コルネットに始まり、コルネット~フリューゲルホーン~テナーホーン~バリトン~ユーフォニアム~バスの順に音域の低い楽器に移っていき、その後にパーカッションを配すという“ブラスバンドのインストゥルメンテーション”の流れに従った構成になっていることだ。

 アルバム全体が、単にソロイストの競演にとどまらず、ブラスバンドの楽器紹介まで兼ねているのだ。

 収録曲は、いずれも各楽器の特性を生かしたレパートリーばかり!

 だが、そんな中にあって、ゲイリー・カーティン独奏のスパークの「ハーレクイン」にはとくに注目しておきたい。デヴィッド・チャイルズのために委嘱されたこの超絶技巧曲は、デヴィッドほか、スティーヴン・ミードなど、すでにいくつもCDがあるが、カーティンのこのソロには、他にはない舞台上の役者のようなアプローチやフレージングが感じられ、また、前半の囁くようなソロにピタリと寄り添う抑制された伴奏の美しさにも、思わずハッとさせられる。

 牧羊豚ベイブが農場の危急を救うべく町へ行って大活躍をする映画ベイブ・シリーズ第2弾「ベイブ、都会へ行く」(1998)の主題歌“それでいいんだ”を映画の中で演奏しているのは、実はブラック・ダイク。1999年オスカー賞ノミネートを果たしたこの曲を、このCDではズ―・ハンコックの甘いフリューゲルホーン・ソロが聴かせる。

 コアなブラック・ダイク・ファンなら、思わずニンマリだろう!

 バリトン・ユーフォニアム・セクステットの「小さな祈り」、トロンボーン・カルテットの「悪魔のギャロップ」、パーカッションによる「剣の舞」など、いくつかの曲は、バンド伴奏なしの、各セクションのアンサンブルだけで収録されている。

 その内、バリトン&ユーフォニアムで6人の、トロンボーンで4人のプレイヤーがプレイしていることに、ブラスバンドの編成(基本編成やパートの人数が決まっている)を知る人は、多少の違和感を覚えるかも知れない。だが、毎週のようにレコーディングやコンサートを行っているこのバンドのこと。実は、いつ、どんなリクエストがあっても即応できるように、レギュラーと変わらない交代要員が常に確保され、両曲では、その豊富な持ち駒を生かした演奏になっているのだ。

 「小さな祈り」ではソフトタッチで、「悪魔のギャロップ」では切れ味鋭く、いずれも楽器の特性を生かしたすばらしいセンスの演奏が愉しめる。「悪魔のギャロップ」は“ブラック・ダイク・トロンボーン・カルテット”としての初CD「フライ・ミー・トゥー・ザ・ムーン」(CD-1542)と同一メンバーの演奏だ。

 アルバムをしめるグレイアムの「キャッツ・テイルズ」の“スキャット”は、まるでコンサートのアンコールのよう!

 ブレット・ベイカー(トロンボーン)、リチャード・マーシャル(コルネット)、エンドリア・プライス(ヴィブラフォン)、アシュリー・クレッグ(ドラム・セット)の各ソロをつぎつぎ再登場させるあたりは、いかにもイギリスのバンドらしい遊び心満点の演出だ!

 全篇を通じ、とてもハッピー! 何とも贅沢なブラスの名手たちの競演盤だ!

■ブラック・ダイク~ソロイストの競演
Soloist Showcase

・演奏団体:ブラック・ダイク・バンド (Black Dyke Band)
・指揮者:ニコラス・チャイルズ (Dr. Nicholas Childs)
・発売元: ドイエン (Doyen)

【収録曲】
1. オー・フェン・ザ・セインツ(聖者の行進)/ポール・ダフィ
2. ナポリ/ヘルマン・ペルシュテッド (arr. アンディー・オーウェンスン)
3. タイム・トゥ・セイ・グッバイ/フランチェスコ・サルトーリ (arr. ダン・プライス)
4. ツィゴイネルワイゼン/パブロ・デ・サラサーテ (arr. フィル・ローレンス)
5. 映画「ベイブ、都会へ行く」より“それでいいんだ”/ランディ・ニューマン (arr. ダン・プライス)
6. パイパー・オー・ダンディ/ケネス・ダウニー
7. リート・ぺティ/ベリー・ゴーディ & タイロン・キャロル (arr. サンディー・スミス)
8. キャリックファーガス/アイルランド民謡(arr.スティーブン・ロバーツ)
9. ハーレクイン/フィリップ・スパーク
10. 小さな祈り/エヴリン・グレニー
11. 大西洋のそよ風/ガーデル・シモンズ (arr. キース・シモンズ)
12. ニューヨークの想い/ビリー・ジョエル (arr. サンディー・スミス)
13. 悪魔のギャロップ/チャールズ・ウィリアムズ (arr. D・ボイル)
14. 川面にかかる霧/ダン・プライス
15. カルテット・フォー・テューバ/エリック・ボール
16. フリング/エンドリア・プライス
17. 剣の舞/アラム・ハチャトゥリアン (arr. ジェームズ・ムーア)
18. 「キャッツ・テイルズ」から“スキャト”/ピーター・グレイアム

【このCDの詳細をチェックする】
http://item.rakuten.co.jp/bandpower/cd-2575/

【ブラック・ダイク・バンド関連のCD、DVD】
http://item.rakuten.co.jp/bandpower/c/0000001035/

(2012.08.17)

英国の名門バンド「レイランドバンド」の首席コルネット奏者イアン・カルロス氏を招いて、NEO BRASS BANDがデビュー・コンサート(8月5日)を開催!

 北は北海道から南は九州まで、日本全国から集まったメンバーにより構成された、新しいブラス・バンド「NEO BRASS BAND」が誕生、8月5日(日)に札幌でデビュー・コンサートが開催される。

 当日は英国の名門バンド「レイランドバンド」の首席コルネット奏者であるイアン・カルロス氏をお迎えして、レクチャー・コンサートという形になる。

■イアン・カルロス レクチャーコンサート with Neo Brass Band

【日時】2012年8月5日(日)19:00開演
【会場】札幌エルプラザ ホール
(北海道札幌市北区北8条西3丁目札幌エルプラザ3)

【料金】無料
【指揮・通訳】多田宏江

【プログラム】
○When Thunder Calls / Paul Lovatt-Cooper
○Charivari / John Iveson
コルネットソロ:イアン・カルロス
○Mary of Argyll / Frank Culross
コルネットソロ:イアン・カルロス
○Arietta / Frank Culross(日本初演)
コルネットソロ:イアン・カルロス
○Fire in the Blood / Paul Lovatt-Cooper

【問い合わせ】
https://sites.google.com/site/neobrass2012/

(2012.07.26)

■マーク・ウィルキンソン(Mark Wilkinson)/フォーデンス・バンド、プリンシパル・コルネット奏者

◎インタビュー&文:多田宏江


2009年9月5日、グレート・ノーザン・ブラス・アーツ・フェスティバルが行われたブリッジウォーターホール(マンチェスター)の出演者楽屋にて。
協力:フォーデンス・バンド、プリンシパルバリトン奏者、稲葉奈摘さん
写真協力:イアン・クルーズ(Ian Clowes)
http://www.pbase.com/troonly/09_sep_bridgewater

 吹奏楽でも、ブラスバンドでも人気の高いフィリップ・スパークの「ドラゴンの年」。「ドラゴンの年」のCDと言えば、この1枚!とも言われる、1992年のヨーロピアンチャンピオンシップスのライブCD。92年のヨーロピアンで優勝し、今や伝説となったこの「ドラゴンの年」を演奏したブリタニア・ビルディング・ソサエティ・バンド(現フォーデンス・バンド)のプリンシパル・コルネット奏者は、この時20才だった! 彼は今も同じバンドで、プリンシパルの席を守り続けています。その張本人、フォーデンス・バンド、プリンシパル・コルネット奏者のマーク・ウィルキンソンさんに、ブラスバンド通信第一1号のインタビューをしてきました。

▲マーク・ウィルキンソン(左)とレポーター多田(右)

■いつからどのようにコルネットを始めましたか?

マーク:6才からローカルバンド(Ellenbrook and Boothstown Band)でバンドのメンバーからレッスンを受け、コルネットを吹きはじめました。4年後、ウォークデン・バンド(Walkden Band)というセカンド・セクションのバンドに移り、13才でベッシーズ・ボーイズ(Besses Boys Band)へプリンシパル・コルネット奏者として移籍し、18才まで在籍しました。

18才になってから、ウィンゲーツ(Wingates)で1992年の1月までプリンシパル・コルネットを吹き、92年1月、当時20才で現在のフォーデンスのプリンシパルの席に着きました。現在38才なので、もうすぐ在籍18年になります。

■ユースバンドでは吹かなかったんですか?

マーク:ベッシーズ・ボーイズは18才までのユースバンドでした。しかし、大会はユース部門ではなく、大人の部門に混ざって出場し、フォース・セクションから勝ち抜いてセカンド・セクションにまで上がりました。1ヶ月のオーストラリア・ツアーも成功して、18才になり卒業し、ウィンゲーツに移りました。

■ベッシーズ・ボーイズ卒業後、他のプレイヤー達はどんな活動をしていましたか?

マーク:軍楽隊でプロ活動を続ける人が多くいました。トロンボーン・セクションは、BBCフィルハーモニーオーケストラ・スコットランドや、リバプール・フィルハーモニー・オーケストラ・プレイヤーとして、今もプロ奏者として演奏を続けていますね。

■バンド活動と平行して、ナショナル・ユース・ブラス・バンドにも参加しましたよね?

マーク:16才からソロ・コルネットで参加し、17才、18才とプリンシパルを務めました。2000年からはナショナル・ユースのコルネット講師としてバンドに戻って9年になります。同じく、ナショナル・チルドレン・ブラス・バンドの講師もしています。

■日本人の読者があなたのレッスンを受ける手段として、サマースクールがありますよね?

マーク:ブロムスグローブでのサマースクール(The Brass Band Summer School staged at Bromsgrove School)でアラン・モリソンの後を継いで、コルネット講師を来年の夏から引き受けます。

▲photo by Ian Clowes

■1992年のヨーロピアン・チャンピオンシップスの「ドラゴンの年」を演奏された側のとしての感想をお聞かせください。

マーク:課題曲は「ウェールズの庭の5つの花」(ギャレス・ウッド)(FIVE BLOOMS IN A WELSH GARDEN /Gareth Wood)で、自由曲として「ドラゴンの年」を演奏しました。イギリスでのブラスバンド史上最高のコンテスト・パフォーマンスの1つと言ってもいいでしょう。テンポもサウンドもエキサイティングで、演奏が終わった後のお客さんの拍手歓声もすごかった。

■20才でプリンシパル、しかもヨーロピアンという大きな舞台。緊張はしませんでしたか?

マーク:緊張しましたよ。なぜなら1月にバンドを移籍して、それまでのプリンシパル・コルネット奏者、マーティン・ウィンターから引き継いだ直後でしたからね。3月のエリア(イギリスの地区大会)が移籍後初めてのコンテスト、その後が5月のヨーロピアンでした。20歳の私にとって、ブリタニアのプリンシパルは大きな席でした。マーティンはBBCフィルハーモニー・オーケストラでのトランペットの仕事が忙しく、ソプラノに移動しました。マーティンは私の後ろのソプラノの席で、私は彼の前で吹いていました。
他のプレイヤーはユーフォニアムが現ブラック・ダイク指揮者のニコラス・チャイルズ、2楽章の大きなトロンボーン・ソロはニック・ハドソンと素晴らしいメンバーに囲まれて演奏しました。

■指揮者のハワード・スネルはどんな方でしたか?

マーク:彼が私にフォーデンスでプリンシパルを吹く機会をくれました、彼が呼んでくれたおかげで、今までの素晴らしい体験があり感謝しています。音楽指導者としても素晴しいし、奏者のやる気を引き出す指導者でした。バンドは初見にものすごく強くて、難曲も初見で吹けていました。ハワードもそのように指導していました。

▲photo by Ian Clowes

■現在のフォーデンスで吹いていてどうですか?

マーク:フォーデンスでプリンシパルを吹かせてもらって楽しいですね。初めてこのバンドへ移籍したときから、その気持ちは変わりません。忙しい仕事の中でも、バンドが生きがいです。
今のバンドは、バンド全体のレベルも個人の基礎力も高い。最近はメンバーの変更が少なくメンバーが固定化したことが、サウンドの安定感につながっていると思います。特にプリンシパル・プレイヤーたちは、長く在籍しているメンバーが多く、ユーフォニアムのグリン・ウィリアムスと、トロンボーンのジョン・バーバーが1995年に移籍し約15年。ソプラノのアラン・ウィッチェリー、フリューゲルのヘレン・ウィリアムスも2000年から9年目になります。

■日本の読者達もあなたの音を聴きたいと思いますが、CDを作る予定などは?

マーク:作る予定は前々からあり、作ろう作ろうとしていますが、仕事とバンドの忙しさで長引いてしまっていますね。スタンダードの作品よりも、委嘱作品を演奏してCDにしたいと思っています。

■日本のプレイヤー達にアドバイスをお願いします。

マーク:苦手なところを練習しないと、それはいつまでも上達しません。苦手なところを練習することによって、それが逆に強みになります。弱点を強みに変えましょう。コルネット・プレイヤーの方は、よく、他のコルネット・プレイヤーのCDや演奏を聴くことが多いと思います。それによって、スタイルをコピーしたり、違うアイディアを得る事ができると思いますが、全てをコピーするというよりも、自分のしたいことをすればいいと私は思います。