

日時:2016年9月28日(水)19:00~
会場:東京・すみだトリフォニーホール 小ホール
レポート:榛葉光治
元NHK交響楽団クラリネット奏者・故内山洋氏の弟子たちが織りなす「内山洋クラリネットアンサンブル」。早くも第3回演奏会が去る9月28日(水)にすみだトリフォニー小ホールにて開催された。
客席は満員御礼で当日券の販売は無しという大盛況ぶり。
3名から8名の小編成アンサンブルステージとメンバー全員による大編成のアンサンブルステージの二部構成によってプログラムが進められた。
第一部はブーフィルのクラリネット三重奏曲、プッチーニの弦楽四重奏曲「菊」などクラシックなレパートリーから、ウールフェンデンのスリーダンス、さらにはメンバーでもあり現在ポップスクラリネットアーティストとしてジャンルを超越した活躍を見せているMicina(渡邊樹菜)の新作、「楽園へのプレリュード」まで、幅広い曲で彩られた。
筆者は過去2回も聴いてきたが、今まで以上にそれぞれの曲でメンバーの個性が際立つ色彩豊かな小編成ステージだった
クラシック音楽における大切な語法や姿勢をおさえながらも、枠にとらわれないクリエイティブかつ自由な発想も併せ持つ彼らのスタイル、音楽を聴いて故内山洋氏の後進を育てる教育者としての信念や凄み、彼らに教え解いてきた音楽家としてのスタンスや魂を改めて感じた。
第二部はメンバー全員による大編成アンサンブル。
メンデルスゾーンの演奏会用小品第1番とバッハのトッカータとフーガニ短調という極めて有名な二作品に挑んだ。
メンデルスゾーンでは代表の月村淳氏と篠塚恵子氏がソリストを務め、あうんの呼吸で優美で繊細な旋律を奏でるとそれに対して伴奏のクラリネットアンサンブルも緻密につけていく一糸乱れぬ卓越したアンサンブル力を披露した。そして演奏会のラストを飾るバッハでは終始鬼気迫る表情と緊張感、重厚なオルガントーンに会場が包まれた。
故内山洋氏の最も大切にしていた作曲家であり、それを継承しようとする彼らの強い思いが生み出した渾身の響き。それはまるで氏が指揮をしているかのような感覚であった。
余談だが、筆者も副科でありながら2年間、故内山洋氏に師事したがとにかく氏は音楽において妥協を許さず、常に真摯であった。
彼らのバッハを聴いてそんな氏からのメッセージを改めて聴いた気がした。
演奏会を大喝采で閉じた後、アンコールでは氏の写真と生前使用していた楽器がステージ上に出され、氏に捧ぐアダージョが奏でられた。
まるで氏が歌っているかのような美しい調べは温かい気持ちと感動で聴衆を魅了した。
代表の月村氏はこう言う
「師の教えが私達にとって何であったのか。クラリネットを演奏する事だけなく一人の芸術家としての在り方までを教えてくれたのではと、この演奏会をやることによって考えさせられた。」
これからの内山洋クラリネットアンサンブルのさらなる可能性、今後の活躍に胸膨らむ演奏会であった。
