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20世紀が終わりを告げる頃、スコットランドにバリトンの天才少女出現と騒がれ、ついにはブラスバンドの名門、ブラック・ダイク・バンドのソロ・バリトン奏者として押しも押されぬ大スターとなったカトリーナ・マーゼラ!!
アルバム「カトリーナ」は、“バリトン”という、ブラスバンド以外では見かけることがほとんどない金管楽器を手にスターダムに上り詰める1人の女性奏者のサクセス・ストーリーと、バリトンに注がれる深い愛情がこめられたすばらしいソロ・アルバムだ!
マーゼラの名が知られるようになったのは10代始め、スコットランドで毎年開催される少年少女たちのコンテストで、1997~2001年の5年連続でソロ・チャンピオンになった頃だ。
その実績から、ナショナル・ユース・ブラス・バンド・オブ・スコットランドのソロ・バリトン奏者に抜擢。その名がさらにイギリス中、そして世界中まで広く知られるようになったのは2004年のことだった。
ユースのプレイヤーだけで行われる“スコティッシュ・ユース・ソロ選手権”のみならず、大人もまじえた“スコティッシュ・オープン・ソロ選手権”でも優勝し、選手権の30年の歴史上初のダブル・チャンピオンに輝いたのが、そのビクトリー・ロードのはじまり。
同じ2月、BBC放送ラジオ2の“ヤング・ブラス・ソロイスト・オブ・ジ・イヤー・コンペティション2004”でも優勝。同コンペの審査にあたったロンドン交響楽団首席トランペット奏者ロッド・フランクスなどに、「カトリーナは、誰の目にも明らかな優勝者だった。」と称賛された!
さらに同年春、スコッランドのグラスゴーで開催された“ヨーロピアン・ブラスバンド選手権2014”のコンサートにソロイストとして登場し、サン=サーンスの「白鳥」を独奏。そのパフォーマンスは、CDとDVD(タイトル:「ヨーロピアン・ブラスバンド選手権2004」/廃盤)としてリリースされた。
(ユース世代のみならず、並み居る大人たちまで打ち負かしてスコットランドのダブル・チャンピオンになった当時のマーゼラのライヴが今もこうして愉しめるというのはとても凄いこと。完売/廃盤だが、手許にある人は、必見、必聴!)
その後、ハットリ財団シニア賞とBBCアカデミー奨学金を得たことが1つの転機となり、レパートリーの少なかったバリトンのための新作作りを時代をリードする作曲家につぎつぎと委嘱! その成果として、フィリップ・スパークの「スカラムーシュ」(マーゼラ自身のソロは、CD「語られることのなかった物語」CD-2133に収録)、マーティン・エレビーの「バリトン協奏曲」など、バリトン・ソロのための新作が登場する!!
2009年リリースのこの「カトリーナ」も、その流れの中でプロデュースされたアルバムだ!
バックをつとめるのは、マーゼラがかつて所属したイングランドのレイランド・バンドで、前記エレビーの『バリトン協奏曲』をはじめ、ポール・ロヴァット=クーパー、フィリップ・ハーパーなどによる、バリトンを“独奏楽器”としてフィーチャーしたすばらしい作品や編曲が愉しめる!
アルバム冒頭を彩るエレビーの『バリトン協奏曲』は、このCDが初録音!
バリトンのために書かれた作品の中でも最も重要な作品の1つとして記憶されるべき作品で、作曲者は、曲を書くにあたり、オーケストラ楽器に例えるなら、ユーフォニアムをチェロ、バリトンをビオラととらえ、けっしてユーフォニアム協奏曲ではない、バリトンのための協奏曲を作ることを意識して作曲。
アレグロ・リトミーコの第1楽章“フュージョンズ”、アンダンテ・カンタービレ・コン・ルバートの第2楽章“ソリロキー”、スケルツァンド・オミノーソ・エ・ジョコーソの第3楽章“タンジェンツ”の急-緩-急の伝統的な3楽章スタイルの協奏曲だが、全体として近代的なライト感覚あふれるスコアリングとなっている。
キラキラと煌めくようなバリトン協奏曲だ!!
初演は、2008年6月24日、アメリカのシンシナティ大学で開催された“2008国際テューバ・ユーフォニアム・カンファレンス”において、マーゼラの独奏、アンティア・ハント指揮、シンシナティ・ブラスバンドの伴奏で、イギリス初演は、2009年1月31日、マーゼラの母校、ロイヤル・ノーザン音楽カレッジで開催された“2009RNCMフェスティヴァル・オブ・ブラス”で、このCDと同じジェイスン・カッツィカリス指揮、レイランド・バンドの伴奏で行われている。
さすがはバリトンの第一人者! テクニカルな側面をフィーチャーしたアグレッシブな第1・第3楽章もすばらしいが、何と言っても聴きものは、情感にあふれ豊かに歌われる第2楽章。バックをつとめるレイランドとのリレーションもすばらしい!
アルバムの中間部に収録されているサン=サーンスの『白鳥』とラフマニノフの『リート』は、ジョン・ウィルスンのピアノ伴奏によるパフォーマンス。ともにマーゼラのお気に入りで、とてもエモーショナルなパフォーマンスが愉しめる。
トラディッショナル・タッチのポール・ロヴァット=クーパーの『ドニゴール湾』とフィリップ・ハーパーの『ヘブリディーズの子守唄』も、歌ごころにあふれ心が揺り動かされるすばらしいソロだ!
そして、その感動は、バラエティに富んだレパートリーを愉しんだ後、アルバムのアンコールのように演奏される『虹の彼方に』で再びよみがってくる!!
なんともハートフルなパフォーマンスだ!
知名度の高い他の楽器にくらべ、なかなか表舞台に出ないバリトンだが、このアルバムを聴けば、その魅力にどっぷりハマってしまうことは、BPが大保証!!
すべての金管吹きにおススメしたいすばらしいソロ・アルバムだ!
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http://item.rakuten.co.jp/bandpower/cd-3609/