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■天野正道60th記念公演<チケット情報>

■秋田公演(終了)

【日時】2017年1月22日(日)12:30開場/13:00開演
【会場】秋田県民会館
【出演】
● 秋田市立山王中学校(指揮:木内 恒)
● 秋田県立秋田南高等学校(指揮:奥山 昇/阿部智博)
● 秋田吹奏楽団(指揮:佐藤正人)
● アニバーサリー・スペシャルバンド(指揮:佐々木新平)

【主なプログラム】
第一部
● 秋田市立山王中学校(指揮:木内 恒)
★祝典前奏曲
★ル・ボゥ・ジャパン
★情熱大陸
● 秋田県立秋田南高等学校(指揮:奥山 昇/阿部智博)
★シンボル・マーチ
★式典のための前奏曲
★式典のための音楽
● 秋田吹奏楽団(指揮:佐藤正人)
★キラキラ星変奏曲
★鼓響…故郷

第二部
●アンサンブル
★クールール・エ・ムーヴマン(Fl.五重奏)
★セカンド・バトル(Sax.五重奏)
● アニバーサリー・スペシャルバンド(指揮:佐々木新平)
※秋田出身の音大生・プロ奏者を中心としたスペシャルバンド
★アトリオン音楽ホールのためのファンファーレ
★フェスティヴァル・マーチ
★「GR」より シンフォニック・セレクション
★グランド・フィナーレ・フォー・ザ・フェスティヴァル

【チケット】
秋田駅ビル「トピコ」2階で販売中
Tel: 018-889-3580

チケットぴあ http://t.pia.jp/
Pコード 319707
※12月21日より発売予定

【問い合わせ】
秋田県吹奏楽連盟
suiren-akita@outlook.jp


■東京公演(終了)

【日時】2017年1月26日(木)18:30開場/19:00開演
【会場】紀尾井ホール
【出演】
● ブラス・ヘキサゴン
辻本憲一(trp) 長谷川智之(trp)
森博文(hrn) 古賀光(trb)
外囿祥一郎(euph) 池田幸広(tub)

【主なプログラム】
★「 未来への扉」 他

【料金】一般:3,500円、学生:2,500円

【チケット】
チケットぴあ http://t.pia.jp/
Pコード 314-993

【問い合わせ】ブラス・ヘキサゴン事務局:03-5548-1590


■川崎公演(終了)

【日時】2017年1月28日(土)12:30開場/13:00開演
【会場】ミューザ川崎シンフォニーホール
【出演】
●東京都立杉並高等学校OGフルートアンサンブル
● グラールウインドオーケストラ(指揮:佐川聖二)
● 相模原市民吹奏楽団(指揮:福本信太郎)
● 浜松交響吹奏楽団(指揮:浅田 享)
● 土気シビックウインドオーケストラ(指揮:加養浩幸)

[ゲスト]
外囿祥一郎(Euph)
白石啓太(Perc)
星出尚志(piano)
鈴木英史(piano)

【主なプログラム】
ウエルカムコンサート
●東京都立杉並高等学校OGフルートアンサンブル
天空に舞う6人の天使達(Fl 6重奏)

第一部
●グラールウインドオーケストラ(指揮:佐川聖二)
★ファントム・ドゥ・ラムール-幻影-
★交響組曲“GR”(新版)「地球が静止する日」より「Big Productions Decision」「Endi
ng Theme」
★Version remix par la forme de chaque amour change comme le kaleidoscope pour “Gral Wind Orchestra”
●相模原市民吹奏楽団(指揮:福本信太郎)
★Alas de Hierro(アラス デ イエロ)~虚空に散った若き戦士たちへの鎮魂歌~
★日本民謡メドレー(秋田県民謡)
★SHIHO a Shiho Fukumoto

第二部
●外囿祥一郎&グラールウインドオーケストラ
★三つの印

第三部
●浜松交響吹奏楽団(指揮:浅田 享)
★「GR」より シンフォニック・セレクション
★「GR」より 明日への希望
●土気シビックウインドオーケストラ(指揮:加養浩幸)
★キラキラ星変奏曲(改訂版)
★ パラフレーズ・パー「スタティック・エ・エクスタティック」アヴェック・アン・プロローグ・エ・レピローグ
★星に願いを(改訂版)
★ジュウ シメリック(委嘱初演)

【料金】SS席:3,500円、S席:3,000円、A席:2,000円

【チケット】

チケットぴあ http://t.pia.jp/
Pコード 311390

【問い合わせ】
天野正道 60thアニバーサリー コンサートツアー川崎会場実行委員会
070-1400-8463(平日20時以降)
amano_60@ac.cyberhome.ne.jp


■福岡公演(終了)

【日時】2017年4月9日(日) 12:30開場/13:00開演
【会場】アクロス福岡シンフォニーホール
【出演】
● 春日市民吹奏楽団(指揮:八尋清繁)
● J.S.B.吹奏楽団(指揮:東 久照)
● コンフォート・ウインドアンサンブル(指揮:吉原 哲)
● ラシャス ウィンドアンサンブル(指揮:尾木恒雄)
● 精華女子高等学校吹奏楽部(指揮:櫻内教昭)
● 福岡第一高等学校吹奏楽部(指揮:山崎 毅)

[ゲスト]
ブラス・ヘキサゴン

【主なプログラム】
★ コンツェルト・ムジーク・フュア・ブラスオルケスター
★ Alas de Hierro
~虚空に散った若き戦士たちへの鎮魂歌(レクイエム)
★「 ストラトス4」より5つの断章
★ ファンファーレ・サンフォニーク
★ ミュージカル「若草物語」
★ 出エジプト記より  他

【チケット】
チケットぴあ http://t.pia.jp/
Pコード 325072

【問い合わせ】
天野正道 60th アニバーサリーコンサート実行委員会福岡
amano60fuk@yahoo.co.jp


■川越公演(終了)

【日時】2017年6月10日(土) 14:30開場/15:00開演
【会場】ウエスタ川越 大ホール
【出演】
●川越奏和奏友会吹奏楽団(指揮:佐藤正人)
● NTT東日本東京吹奏楽団(指揮:山田昌弘)
● 川口市・アンサンブルリベルテ吹奏楽団(指揮:福本信太郎)
● 埼玉県立松伏高等学校(指揮:荒井美里)
● 埼玉栄中学・高等学校(指揮:奥 章/大滝 実)
● 東京都立杉並高等学校吹奏楽部/フルートアンサンブル
● Discussion of percussion“Q21”/渡辺由美子

[ゲスト]
小串俊寿(sax)
グレート栄田(vn)
並木健司(gt)

【主なプログラム】
●埼玉県立松伏高等学校/荒井美里
★ ストロベリーフィールズの薔薇~イマジンへの憧憬~
★ おほなゐ~その後
★明日への夢

●埼玉栄中学・高等学校/奥章/大滝実/
★ エクスピエイション~打楽器と吹奏楽のための
★ スイートエキセントリック
★…そして静けさは森の中へ

●川越奏和奏友会吹奏楽団/佐藤正人
★ JEUX III
★ L’etre-pour-autrui
★ エレクトリックヴァイオリンとエレクトリックギター のためのコンチェルティーノ

●NTT東日本吹奏楽団/山田昌弘/小串俊寿(サクソフォーン)
★ アルトサクソフォンのための小協奏曲
★ 忠臣蔵異聞

●川口市・アンサンブルリベルテ吹奏楽団/福本信太郎
★ カプレーティとモンテッキ 「ロメオとジュリエット」その愛と死
★二つの指輪、レンブレム・ドゥ・ゴート~カリオストロへのオマージュ~
Deux anneaux de l’embl・me de GOAT~Hommage a Cagliostro~
カプレーティとモンテッキ「ロメオとジュリエット」その愛と死
★ コンチェルト グロッソ(未定)

●東京都立杉並高等学校吹奏楽部/フルートアンサンブル

●Discussion of percussion“Q21”/渡辺由美子

【料金】1000円(全席自由)

【チケット】
チケットぴあ http://t.pia.jp/
Pコード 321279

【チケット申し込み】
amano60th.kawagoe@gmail.com

【問い合わせ】
川越奏和奏友会吹奏楽団(http://sound.jp/kswe/
天野正道アニバーサリーコンサート実行委員会


■大阪公演(終了)

【日時】2017年6月16日(金)18:00開場/18:30開演
【会場】伊丹アイフォニックホール

【出演】
園田学園巾学校高等学校吹奏楽部/園田学園高等学校OG吹奏楽団

【主なプログラム】
●交響組曲第2番”GR”より
●おほなゐ~その後

【問い合わせ】園田学園高等学校吹奏楽部
06-6428-2242


■福井公演(終了)

【日時】2017年6月18日(日)13:30開場/14:00開演
【会場】鯖江市文化センター

【出演】
ソノーレ・ウインドアンサンブル

【主なプログラム】
●交響曲1997r天、地、人」より
●カプリス
●Epitaphe
●沢地幸
●ラ・フォルム・ドゥ・シャク・アムール・ションジュ・コム・ル・カレイドスコープ
●サー・デューク
●情熱大陸
●上を向いて歩こう
●アース・ウインド&ファイア・メドレー
●トォロワジエム・バレエ・シメリック

■吹奏楽曲でたどる世界【第63回】<補遺6> 太平洋戦争末期の特攻(1945年) ~≪Alas de Hierro ~虚空に散った若き戦士たちへの鎮魂歌(レクイエム)~≫(天野正道作曲)

Text:富樫鉄火

●作曲:天野正道 Masamicz Amano(1957~)
●発表:2004年、J.S.B.吹奏楽団(鹿児島)初演
●出版:ブレーン(レンタル)
●参考音源:CD『ニュー・オリジナル・コレクションVol.3/吹奏楽のためのゴシック』(ブレーン)※演奏:陸上自衛隊中央音楽隊、DVD『J-Spirits/J.S.B.吹奏楽団』(ブレーン)※当該曲は付属ボーナスCDに収録。
http://item.rakuten.co.jp/bandpower/cd-1416/
http://item.rakuten.co.jp/bandpower/dvd-9076/

●演奏時間:約17分
●編成上の特徴:大型編成。ピッコロ(フルート3持ち替え)/フルート1・2/オーボエ1・2/イングリッシュ・ホーン/バスーン1・2/クラリネット群…E♭、B♭1~3、アルト、バス、コントラバス/サクソフォーン群…ソプラノ+標準4声/ホルン1~4/フリューゲルホーン1・2/トランペット1~3/トロンボーン…1・2、バス/ユーフォニアム(div.あり)/テューバ(div.あり)/弦バス/パーカッション…ティンパに含めて7人/ハープ

この連載は「世界史」なので、原則として「日本史」を題材にした曲は扱っていない。だが、太平洋戦争に関連する史実を扱った曲は、いくつかご紹介してきた。たとえば【第42回】≪キスカ・マーチ≫(キスカ島撤退作戦)、【第46回】≪モーニング・アレルヤ~冬至のための≫(広島原爆投下)などだ。

今回、補遺として取り上げるのも、やはり太平洋戦争にまつわる、日本史上の史実が題材である。

戦争末期、日本軍が「特攻」(特別攻撃)なる戦術をとったことは、若い方々でも聞いたことはあると思う。たとえば戦闘機に乗ったまま相手に突っ込み、自らの生命を犠牲にして体当たり攻撃することである。

この戦術に、アメリカ軍は頭を悩ませた。確かに機関銃や爆撃では、なかなか相手に命中しないが、人間が操縦しながら正確に体当たりで突っ込んでくるのだから、百発百中である。戦闘機以外にも、人間爆弾「桜花」、人間魚雷「回天」などがあった。陸軍、海軍、それぞれに存在した攻撃方法だが、特に海軍の「神風特別攻撃隊」が有名で、アメリカでは「Tokko」「Kamikaze」などと、そのまま英語になっている。

「特攻」が初めて行われたのは、1944年10月のレイテ沖海戦であった。太平洋戦争における最大の海戦として知られている。結果として、日本は、アメリカ軍のレイテ島上陸を阻止できなかったのだが、それでも敵艦に多大な損害を与えることができた。

以後「特攻」は、日本軍の究極の戦闘手段となるのである。

いまの若い方々には(私もその一員だが)、自らを犠牲にして敵陣に突っ込むなど、なかなか理解できないであろう。だが、昔から日本の軍隊には『戦陣訓』という教えがあり、特に「生きて虜囚の辱めを受けず」、つまり「敵に捕まったら生きているのは恥だ」との思想があった。そのため、敵陣から生還できないとなった際には、自爆したり、生きたまま敵陣に突っ込むなどの行動をとることが多かった、そんな背景も関係していると思われる。

では、兵士たちは、どういう形で「特攻」に参加したのか。一応、本人が志願し、上層部が許諾を判断することになっていたが、実際には、半ば強制的に参加させられたケースもあったようだ。兄弟のいない者(跡継ぎが当人以外にいない者)や、新婚間もない者は志願できないとの名目もあったようだが、戦争末期になると、それも守られなかったようである。また、ひとつの飛行隊が、まるごと特攻隊に指定されることもあったという。

これらの事実に対し、現代に生きる私たちがあれこれ言う資格はない――と私は思う。軽々しく揶揄・否定することも許されないし、かといって単純に賛美することも許されないと思う。ただ私たちは、あの時代に、ひたすらわが国のために生命を落とさざるを得なかった人たちに対して、謙虚に、祈りを捧げるべきではないだろうか。

実は、今回ご紹介する曲の存在を知ったとき、私はたいへん不安になった。特攻を題材にした吹奏楽曲だということは、すぐに分かったが、果たしてどういうスタンスで音楽化されているのか。作曲者がベテランだけに、よもやそんなことはあるまいと思ってはいたが、正直、もしかしたら特攻隊の姿が、いわゆる“戦争スペクタクル吹奏楽曲”として、ド派手に描かれているのではないか……と思うと、音源を聴くのが怖かった。

だがそれは杞憂だった。これは、ぜひ多くの方々に聴いていただき、そして、特攻や戦争の意義をあらためて考えていただきたい、素晴らしいレクイエムである。

作曲の経緯は、CDやスコアなどに併記されている、作曲者・天野正道自身や、初演したJ.S.B.吹奏楽団(鹿児島)の常任指揮者・ 東久照の解説などで明らかだが、それらによれば――

この曲は、2004年、J.S.B.吹奏楽団の第18回定期演奏会で委嘱初演された。たまたまその前年、同団のリハーサルのため、天野正道が鹿児島を訪れたとき、知覧町にある「知覧特攻平和会館」を訪れた。そこで涙を流すほどの衝撃を受けた天野は、東の「知覧特攻隊を風化させないため、そして二度とこんなことが起きないように、特攻を題材にした曲を書いてほしい」との依頼に、筆をとった。

「知覧」は、ある世代にとっては「特攻の町」のイメージがある。【注1】なぜなら、太平洋戦争末期、アメリカ軍が沖縄に上陸し、いよいよ本土決戦もやむなしとの状況に陥った時、本土最南端の航空基地として、陸軍特攻基地に指定され、多くの若い兵士たちが、ここから特攻に向かっていったからだ。

この知覧を中心に、南九州から特攻に飛び立って戦死した若者たちは、1000名を超えるそうだ。

また、基地近くにあった「富屋食堂」の経営者・島濱トメさん(1992年没)は、特攻に向かう兵士たちから母のごとく慕われ、“特攻の母”と称された。その事実は、多くの書籍、ドラマ、映画にまでなった。それらで知覧の名を知っている人も多いだろう。

この曲≪Alas de Hierro ~虚空に散った若き戦士たちへの鎮魂歌(レクイエム)~≫【注2】は、先述のとおり、単なる“音のパノラマ”ではない。天野作品には、描写・迫力満点の大曲が多いが、それを期待すると、拍子抜けするであろう。

曲は、ひたすら静かに、トランペット・ソロの追悼旋律で開始される。現代の、平和な日々。やがてひたすら静謐なまま、曲は広がって行く。目の前に広がる海を描写しているようだ。平和で静かな海。夜明けかもしれない。だが、次第に不吉な響きが覆い始める。時は遡り、“あの日々”が、眼前に甦ってくる。この場面転換を思わせる展開は、まことに見事しか言いようがない。しかも、すぐに“あの日々”に全面突入はしない。過去と現代を行きつ戻りつし、次第に曲は、昭和20年という時代を定着させる。

曲は、激しい“あの日々”を描写するが、決して大爆発にまでは至らない(これ以上の大爆発など、過去の天野作品にいくらでもあった)。たいへん冷静で、それでいて緊迫感は途切れない。戦闘機の墜落を思わせるトロンボーン木管群の下降グリッサンドが頻出する。やがて、強烈な不協和音がトゥッティで襲う。ある意味、ショッキングな部分である。

後半は、まさにマーラーを思わせるような深い瞑想によるレクイエムで、そっと静かに終わる。

もし演奏するのであれば、言うまでもないが「特攻」「知覧」に関する基礎知識なしで取り組んではならない。それは、特攻戦死者を冒涜することになる。もちろん知覧現地まで行ければいちばんいいが、そうもいかないケースもあろう。その際には、せめて本でもいいから、特攻の何たるかを、少しでも身近に引き寄せていただきたい【注3】

作曲者・天野正道は、【第5回】≪出エジプト記≫でも紹介した。いままさに「油が乗り切っている」どころか、「爆発している」と言ってもいいほどの勢いで、日本の吹奏楽界を牽引している人である(何しろ、最近では、ラヴェルの≪左手のためのピアノ協奏曲≫を吹奏楽曲にしてしまったほどなのだから!)

実は、作曲者・天野正道には、これもある意味、ショッキングな吹奏楽作品として、≪おほなゐ ~1995.1.17阪神淡路大震災へのオマージュ~≫もある。阪神淡路大震災をモチーフにした曲だが、地震や大災害の模様がかなりリアルに音楽化されている。こういった題材に正面から取り組んで、一般アマチュアが接しやすい「吹奏楽」という形態で直球勝負を仕掛けてくる姿勢には頭が下がる。

なお、鹿児島に行く機会があったら、ぜひ、この曲が生まれるきっかけとなった「知覧特攻平和会館」に寄っていただきたい。日本人として、知っておくべき何かが、ここには満ち溢れている。近海の海底から引き上げられた、ボロボロの零戦の現物に、言葉を失わない人は、いないはずだ。特攻兵士たちは、これに乗って、敵艦に突っ込み、生命を失ったのである。
<敬称略>

【注1】「知覧町」は、2007年の市町村合併により、現在は「南九州市」の一部となっている。なお、知覧は陸軍基地だが、海軍基地として、もうひとつの「特攻の町」として知られるのが、同じ鹿児島県の鹿屋(かのや)である。

【注2】タイトルの「Alas de Hierro」とは、スペイン語で「鉄の翼」の意味。

【注3】まず『知覧からの手紙』水口文乃(新潮社)は必読。結婚式直前に特攻出撃命令を受けた兵士。彼が残した婚約者への遺書。自分のことは忘れろと書く一方で、「会いたい、話したい、無性に」とも――涙なしでは読めないノンフィクションである。

『今日われ生きてあり』神坂次郎(新潮文庫)は、特攻隊少年飛行兵たちの手紙、日記、遺言、関係者談話によって構成された慟哭の記録集。

魚雷艇特攻を命じられ、敵艦に向かいながら奇跡の生還を遂げた著者の内面を文学に昇華させた“特攻文学”の最高傑作が、『魚雷艇学生』島尾敏雄(新潮文庫)

だが、いまの若い方々には、『8月15日の特攻隊員』吉田沙知(新潮社)がいちばん読みやすいかもしれない。自分のおじいちゃんは、最後の特攻隊だった。しかも、5時間前に終戦になっていたのに、出撃を敢行した。なぜ? 若い著者は、一人で関係者を訪ね、先祖の足跡を辿る。まさに、いまの若者たちのための戦争ノンフィクションだ。

■吹奏楽曲でたどる世界史【第5回】モーセによるエジプト脱出~出エジプト記(天野正道)

Text:富樫鉄火

●英語題:From Exodus
●作曲:天野正道 Masamicz Amano(1957~)
●初出:2000年(東京都立永山高校が初演)
●出版:CAFUA(レンタル)
●参考音源:
『交響組曲第2番≪GR≫より』(CAFUA/国内盤)
http://item.rakuten.co.jp/bandpower/cdi-0006/
http://item.rakuten.co.jp/bandpower/cdi-0094/
●演奏時間:約11分
●編成上の特徴:途中、木管四重奏(Ob、Cl、Fl、Bsn)が
クローズアップされる部分がある。フリューゲルホーンあり。
●グレード:4~5

 

『旧約聖書』中の第1巻「創世記」の最後で、イスラエルの民はエジプトに定住した。ところが、次第に数が増え、危険を感じたファラオ(王)によって、奴隷扱いされるようになる。

つづく第2巻「出エジプト記」は、そのエジプトで圧政に苦しむイスラエルの民(一説には200万人とも)が、モーセに率いられて民族大移動を開始する様子が描かれている。

モーセは、ある時、神の声を聞き、“解放指導者”に指名された。そして、ファラオに対し、国外退去の陳情をつづけるが、建築労働者として役に立っていたイスラエルの民を手離したくなくて、ファラオは容易に許可を下さない。

怒った神は、エジプトに様々な天変地異を起こし、ようやくファラオも、イスラエルの民を厄介払いする決意をする。

イスラエルの民は、さっそくエジプトを脱出するが、ファラオはすぐに後悔し、追手の軍隊を差し向ける。紅海に追い詰められるイスラエルの民。しかし、岸辺に差しかかった時、奇跡的に潮が引いて、イスラエルの民は、この大海を渡りきることができる。ところが、エジプト軍が追いついた時には巨大な波が押し寄せ、追手は駆逐される。

これが、スペクタクル映画『十戒』(1958)の特撮シーンで一躍有名なった「葦の海(紅海の奇跡)」の伝説である。

このあと彼らは、神の加護を受けながら、シナイの荒野に到着する。

ここでモーセは、シナイ山に登り、神から、有名な“十戒”を授かるのだ。「偶像を崇拝するな」「殺人はするな」「姦淫するな」「盗みはするな」…この「シナイ契約」こそ、まさに『旧約聖書』最大のエピソードといえよう。

このあと、契約に関する様々な法律解説がつづき、イスラエルの民は、約束の地カナンを目指して、再び旅路に着く…以上が、「出エジプト記」のおおまかな内容である。

このスペクタクルなエピソードを音楽にしたのが、天野正道の≪出エジプト記≫だ。

ただ、原典に即した具体的な場面描写よりは、作曲者自身が述べているように「『出エジプト記』をもとにした架空の映画音楽を作るつもりで」作曲されたようだ。それでも、おおむね、圧政に苦しむイスラエルの民~争い~静寂~神の啓示~脱出~紅海の奇跡…といった流れは十分あり、息をもつかせぬ展開で最後まで引っ張る。途中、ポップスの香りさえ漂わせる余裕ぶりだ。

作曲者は、近年、OVA作品『ジャイアント・ロボ』の自作サントラを吹奏楽版にアレンジした≪GR≫や、阪神淡路大震災をモチーフにした≪おほなゐ≫などで熱狂的な人気を呼んでいる。それだけに、ここでも迫力と躍動感は自家薬籠中の物といってよい。
【おまけ解説】
上記本文中でも触れた「紅海の奇跡」を、(当時としては)驚異の特撮映像で描いた映画『十戒』(1958)の音楽は、エルマー・バーンスタイン(1922~2004)によるものだが、古きよき時代の典型的なハリウッド・スペクタクル音楽なので、機会があれば、お聴きいただきたい(これを吹奏楽版組曲にしても、けっこういけると思うのだが)。

紙幅の都合でカットしたが、「出エジプト記」の最後の方に登場する“金の仔牛崇拝事件”のエピソードを、シェーンベルク(1874~1951)が、未完ながら≪モーセとアロン≫と題してオペラ化している。十二音技法による、オラトリオのようなオペラだが、度肝を抜くオーケストレーションが随所にある。

イタリア・オペラの巨匠ロッシーニ(1792~1868)も、≪エジプトのモーセ≫だの、≪モーセとファラオ、紅海への道≫だの、幾度となくオペラ化している。それだけ作曲家にとって、「出エジプト記」は、魅力的な題材だったのであろう。

ちなみに、英語題の「Exodus(エクソダス)」とは、本来が「脱出」「解放」の意味だが(宇多田ヒカルのアルバムタイトルになったこともあった)、海外では、事実上「イスラエル民族のエジプト脱出」の代名詞であり、要するに「エクソダス」といえば「出エジプト記」のこと。

文字通り『Exodus』と題したアメリカ映画もある。邦題は『栄光への脱出』(オットー・プレミンジャー監督/1960)。

この映画は、第2次大戦終戦後の、ユダヤ人国家「イスラエル」建国の物語で、旧約聖書の時代に次ぐ“第2のエクソダス”が描かれる。音楽はアーネスト・ゴールド。ユダヤ旋律を生かした、たいへんエキゾチックな音楽で、アルフレッド・リードの編曲で『Highright from Exodus』なる吹奏楽組曲になっている(Hal Leonard版)。これはかなり昔から演奏されつづけている名編曲で、最近も、CD『CAFUAセレクション2006』(CAFUA)に新録音が収録されているので、お聴きいただきたい。グレード的に「3」程度ながら、なかなか演奏効果が高く、品格のある曲なので、コンサートでも十分通用するはずだ。

余談だが、いまから30年以上前、私の高校生時代、休部状態だった吹奏楽部を復活させ、最初に演奏したのが、このスコアだった。まさしく「休部からの脱出」でした。懐かしいなァ…。
<敬称略>