「Q&A」カテゴリーアーカイブ

【Q&A】コンクールで「ダメ金」などになってしまうバンドの特徴とは?

【質問】
全国金賞、銅賞、(支部、県、地区)大会 金代、ダメ金、銀銅のそれぞれのバンドの特徴やありがちなこと、上位大会を目指す上でのアドバイスがあれば欲しいです!(HWO)

【回答:五十嵐 清】
HWOさん ご質問ありがとうございます。コンクールで上位大会を目指す目標を決めて、このように行動を起こすことは大切で、そして素晴らしいことです。
さて、コンクールでの受賞ランクによる分け方で、それぞれのバンドの特徴を話すことはとても難しいです。
審査は審査員の個性が出ます。そして地域により審査採点方法が異なり、順位制や得点上位下位を省くなどいろいろな方法があるので頂いた賞はとても栄誉があり大切なものです。コンクールに出場することは、今の自分たちのバンドのレベルや立ち位置を客観的に知り、次へのステップアップにつながることと思います。どの賞を受賞しても本番の演奏のために一生懸命に練習してきた成果ですので重みがあります。

では、HWOさんが高校の吹奏楽部で活躍しているという前提で回答をさせて頂きます。
各学校の吹奏楽部は先輩からの伝統を引き継ぎ、活動方法やサウンド音楽創りに個性をもっています。その中で活動しているメンバーも楽器を演奏することが好きで、そして仲間と一緒に音楽を創ることに喜びを感じていることと思います。ですから、それぞれに特色があり素晴らしく輝いて活動していると思います。

次に上位大会を目指すためのアドヴァイスとしては、
「本番のプレッシャーに負けない自分をつくること」です。

100点ではなくても、今持っている100パーセントの力を出せるようにする。
そのためにしっかりした準備をしてきたという自負、自信をもてることが大切です。
練習を怠らずコツコツ継続して身に着けた技術や考え方は自分の財産です。それを積極的にチームに活かし貢献してみてください。

日々の練習や本番での失敗を認識することが次への成功につながります。失敗したらそれをノートに書き残す。そして原因などを分析していく。PCやスマホの画面ではなくノートに書くことで、自分に向き合えると思います。
そして、1週間ごとの生活計画をしっかりマネージメントする。健康管理、授業勉強習熟、練習内容などを考える時間をとれるような余裕を持つことです。
1.楽曲を研究し理解して練習を積み重ねる。
2.チームの力になるよう自分を発揮する。
3.ステージ本番での迷いをなくす。
4.指揮先生と共にチームとして楽曲をまとめ、自信と誇りをもって演奏して聴衆に伝える。
以上、一つの考え方として参考にしてみてください。

最後に、
HWOさんは4月から上級生なるのかな? 毎回部活の終わりに、例えば「明日も元気で活動しましょう。よろしくお願いします」と明るく元気に言ってみては如何でしょうか?(明るい雰囲気、メンバーみんなでつくっている実感が大切なので)

これからも活動のポイントポイントでどんどん質問してください。お待ちしています。

BPのこのQ&A「五十嵐先生、教えてくれっチョ」で活動のヒントになるコメントを4月から毎月連載的にお話していきますので、よろしくお願いします。
http://www.bandpower.net/bpblog/archives/tag/igarashi

■今すぐに役立つ指揮テクニック~顧問先生と学生指揮者のための~

Text:五十嵐 清

指揮者は奏者(の集合体)に自分の意思を的確に伝え、演奏してもらわなければ音楽が表現できません。オーケストラで唯一直接音を出せない音楽(演奏)家です。
演奏中は言葉を発することができませんので、正確に自分の欲しい音(音楽)を奏者に伝えなければなりません。そのために奏者との意思伝達と疎通(コミュニケーション)を図ることができる、確かな「バトンテクニック」が必要です。

しかし、顧問先生や学生指揮者は、今すぐに奏者の前に立って指揮をしなくてはならないため、何年もかけてじっくり指揮のレッスン(勉強)をすることか難しいと考えられます。そこで、今すぐに役立つ必要最低限のバトンテクニック(間接運動)をわかりやすく解説し、日ころの合奏練習からも上達でき自信をもって指揮ができるテクニックを伝授します。きっと最高の音楽を奏者と共に聴衆に届けられることでしよう。

(いろいろ能書きや硬いこと話していますが、奏者と音楽を楽しむことに心がけてください)

基礎(右手)
①等速運動
・時計方向に「均等」に円を描く。
・1秒に1回転、均等に
②脱カ
・頭の上から、腕など力を抜いて一気に落とす。
(重力加速度を感じる)
③リフト
・掌(手のひら)を上向きで、へその前から目の高さまで打ち出す。
(前腕の引き上けや跳ね上ける筋肉を使い、初速(カ)を与えて持ち上げ、減速と頂点(落下点)を感じる)
④バウンド
・掌を立て(90度回転)親指の爪を上にして、上下方向で②脱力と③リフトを連続して行う。
・同じく③リフトと②脱力の順で連続して行う。
⑤加減速運動
・④の動作を①円運動にあてはめて、加速減速のある円を描く。

1. 基本の位置(Neutral/へそ前) (石手)
・肩幅程度に両足を広ける。
・左右の足はあまり前後の距離を取らない。
・脇を締める。
・肘を支点に拳(こぶし)を「へそ」の前にする。(肩に力を入れず突き出さない)
・指揮棒を持つ(握る)
・手首を回転させ、親指の爪が上向きにする。
(どの拍でも爪は見えるようにする)
・指揮棒は腕の延長上と意識する。

2. 叩き(点を表現)「かたい」
直線的な動きで、加速減速を伴い、点と点を意識して拍を瞬間的(硬く)に明確するテクニック。
→明確なテンポ、アクセント、スタッカート、鋭さ、リズム、ビート、スピードなどを表現。
<図形・ポイント>
・直線と鋭角的な打点と位置
・打点後の裏拍「ト( & )」の位置と脱カ
・腕全体ではなく、肘から先の前腕や手首での運動
・カまない
・指揮棒を固く強く握り過ぎない
・図形を大きくしすぎてテンホか揺れない
・全ての拍やフレーズをがむしゃらに振らない

1 ) 2拍子(上下運動)
①<予備位置>基本位置(へそ前)
②<予備運動(ブレス) >中央頭上まで上げる(減速)
③<点前> ②位置より基本位置まで垂直に下ろす(加速)
④ <点>基本位置で上に叩く(一拍目/強拍)
⑤<点後> ③と同じ経路を胸まで(半分)上げる(減速)
⑥<点前> ⑤位置より基本位置まで下ろす(加速)
⑦<点>基本位置にて叩く(ニ拍目/弱拍)
⑧ <点後>同一経路を頭上まで上げる(減速)
以降③~⑧の繰り返し

2 ) 2拍子(左右運動)
① <予備位置>基本位置(へそ前)
②<予備運動(ブレス) >左頭上まで上げる(減速)
③<点前> ②位置より基本位置まで斜めに下ろす(加速)
④<点>基本位置で鋭角に叩く(一拍目/強拍)
⑤ <点後>反対右側に右肩まで上げる(減速)
⑥ <点前> ⑤位置より基本位置まで斜めに下ろす(加速)
⑦ <点>基本位置にて鋭角に叩く(ニ拍目/弱拍)
⑧ <点後> ③の経路を左頭上まで上げる(減速)
以降③~⑧の繰り返し

3 ) 3拍子
①<予備位置>右脇腹
②<予備運動(ブレス) >中央頭上まで上げる(減速)
③<点前> ②位置より左脇腹位置に斜めに下ろす(加速)
④<点>左脇腹位置にて鋭角に叩く(一拍目/強拍)
⑤<点後>更に左上向きに左肩(胸)まで上げる(減速)
⑥<点前> ⑤位置より基本位置まで斜めに下ろす(加速)
⑦ <点>基本位置で鋭角に叩く(ニ拍目/弱拍)
⑧<点後>更に右上向きに右肩(胸)まで上げる(減速)
⑨<点前> ⑦位置より右脇腹位置まで下ろす(加速)
⑩<点>右脇腹位置にて鋭角に叩く(三拍目/弱拍)
⑪ <点後>中央頭上まで上ける(減速) 以降③~⑪の繰り返し

4 ) 4拍子
①<予備位置>右脇腹または基本位置(へそ前)
②<予備運動(ブレス) >中央頭上まで上げる(減速)
③<点前> ②位置より基本位置まで垂直に下ろす(加速)
④ <点>基本位置で上に叩く(一拍目/強拍)
⑤<点後> ③と同じ経路を胸まで(半分)上げる(減速)
⑥<点前> ⑤位置より左脇腹位置に斜めに下ろす(加速)
⑦<点>左脇腹位置にて鋭角に叩く(ニ拍目/弱拍)
⑧<点後>更に左上向きに左肩(胸)まで上げる(減速)
⑨<点前> ⑧位置より基本位置まで斜めに下ろす(加速)
⑩く点>基本位置で鋭角に叩く(三拍目/中強拍)
⑪<点後>更に右上向きに右肩(胸)まで上ける(減速)
⑫<点前> ⑩位置より右脇腹位置まで下ろす(加速)
⑬ <点>右脇腹位置にて鋭角に叩く(四拍目/弱拍)
⑭ <点後>中央頭上まで上げる(減速) 以降③~⑭の繰り返し

3. 平均運動(線を表現)「やわらかい」
曲線的な動きで、等速に近くなった線を意識して、拍と拍を平均的に一定の時間で結ぶテクニック。
→流れる、静か、穏やか、歌うような、やわらかい、レカートなどを表現。
<図形・ホイント>
・脇を開け身体からある程度離れた位置。
・腕全体(肩から)を動かし弧を描く。
・指揮棒先が腕の延長上を(再度)意識する。
・リズム感、フレーズ感、曲の方向性を失わない。
・テンホ・時間を常に意識する。
・折り返し点(裏拍)で尻尾をつけない。(余計な動作を入れない)

4. 杓い(しやくい) (点と線を表現)「かたいとやわらかいの中間」
曲線的な動きで、加速減速を伴い、曲線上に点=拍を通過点として示し、重みを感じ させるテクニック
・「叩き」のような鋭角な打点を示さなので、比較的アクセント鋭くない音に使う。
・「平均運動」のような曲線を描くが、加速と減速が明確であるので、加速の最速点に重店のある打点、減速の頂点に裏拍が示される。
→和音、深く重い音、レガ一トの中のアクセントなどを表現。
<図形・ホイント>
・身体に近い位置(ホジション)。
・加速と減速の差が大きい、叩きに近いに運動。
・弧を描いて手の重みを感じ、さらに最速で通過する点。
・裏拍「ト」の位置は、十分に減速した点であるが停止はしない。
(折り返し的点)
・上下運動は直線運動なので「杓い」ではないが便宜上入れる。
・柄杓(ひしやく)で水をすくう。金魚すくいなどのイメージ。
・プランコの加速減速(スピード)の感覚。

5. 実践的ハトンテクニック
今すぐに楽曲を指揮しなければならない。そんな時に
1) 立ち姿
・肩幅よりやや狭い程度に両足を広げる。
・左右の足はあまり前後の距離を取らない。
・胸を張り、頭を上体に乗せて、お腹を突き出すような感じで安定感を出す。
・曲想やダイナミクスにより上体の伸縮や前かがみ、反りなどを工夫する。
・欲しい音や楽器の方向に目線や身体を向け、合図(会話)できるような上半身の動きと身体のバランス。

2) 右手:テンポやビート感など「時間」を表す。
・図形の描く範囲・大きさ(フレーム)で曲の速さ、曲想やダイナミックスを表現。
→ズーム機能と考え工夫する。例えは、
a)高さは頭からへそ、横幅は拳が両肩ラインの50cm四方のフレーム範囲、肘は身体から15~2〇cmくらい離れた位置で図形を描く。
ダイナミックス. mf~ f、テンホ.中庸~ゆっくり
b)25cm四方程度以下のフレーム範囲で図形を描く。
ダイナミックス: p、テンポ:全般
明るい曲想では、顔の前。
落ち着いた曲想では、喉から胸の間。
悲しく暗い曲想では、胸下から腹の間。
など
・腕全体(肩)、前腕(肘)、手(手首)、指揮棒先(指)で振るかを決める。
( )は支点になるところ。
この時、支点となる部位を身体からどのくらい離すかも決める。(肩を除く)
・指揮棒を握って「親指爪の向き」を、明るい、広がり感、軽い、進行感、早いなど前向きの曲想の場合は上向き。暗い、内面的、重い、慎重、ゆっくりなど内向的の曲想の場合は斜め向きにして、曲想の変化を表現。

3) 左手.奏者とのタイミングなど会話、ダイナミックスの変化、曲想の表現など「空間」を表す。
・奏者(楽器)や新たなメロディーラインの入り(切り)のタイミング。
・ダイナミックスの変化を表現
上向きはfやクレッシェンド、下向きはpやデクレッシェンド。
手の高さや腕の伸び縮みでも細やかなダイナミックスが表現できる。
・曲想ニュアンスの表現
握っているか、開いているか。それも「きつく」「柔らかく」か。そして、
「胸の前」「顔の前」などのキーワードを組み合わせて、最も曲想を表現できるかを考え工夫する。

最後にもう一度、指揮者はオーケストラで唯一直接音を出せない演奏(音楽)家です。
奏者(の集合体)に自分の欲しい音(音楽)を的確に伝え、演奏してもらわなければ音楽が生まれません。そのためには奏者とのコミュニケーションが大切で、さらに信頼関係が必要不可欠です。楽曲を愛し研究し、奏者を尊重し、音楽的にも人間的にも魅力のある存在でいてくたさい。上手なバトンテクニックだけでは良い指揮者になれません。人間性に溢れ心を語る音楽性をもった指揮者を目指してくたさい。

■五十嵐先生、教えてくれっチョ!【特別篇】「コロナなんかに負けないぞ!」 今やろう!「笑顔で吹奏楽活動を再スタートする日のために」08

Text:五十嵐 清(東京清和吹奏楽団常任指揮者/元東京消防庁音楽隊長)

第8回うちトレ 体調ケア 「ストレス対策、リラックスの方法」

うぅぅ・・・ある程度覚悟はしていたけれど、緊急事態宣言が5月末日まで延長されてしまい、今までの努力は何だったの、まだまだ自粛しなければならないの? 仕事は? 学校は?そして部活やサークルはどうなってしまうのか?・・・などなどなど。
目に見えないウイルスへの恐怖がある中で不満と不安が再び押し寄せてきてしまい、溜まっていたストレスが一気に行動や言葉や体調に出てきてしまったという人もいるかと思います。

そこで、今回のうちトレは体調のケアのお話。

1.ストレス対策
 第1回新型コロナウイルスなんかに感染しないぞ!で免疫力アップの3つのポイントをお話ししました。しかしこんなに長く影響が出るとは思わなかった。ストレスを溜めないように努力はしていたけれど・・・
人はストレスを受けると、それを防御しようと交感神経が身体を戦闘状態にします。この状態を鎮め治まらせるために副交感神経が働き、身体や心をリラックスさせます。この二つの神経のバランスや副交感神経の命令実行する順番が崩れるとストレス反応として体調の異変や不安悩み、攻撃や無気力などが現れます。
そこで先ず身体の状態を把握し、次に心に目を向ける「身心」(敢えて心身としていません)を整える方法、セルフコントロールの方法の一例を紹介しますので、うちトレしてみてください。

1)楽しく食事をする。
食事は身心を整えるのに大切なことわかっていると思いますが、ついつい適当にまた短時間でとなってしまいます。部活動中心の生活の時は、朝練のために朝食はコンビニおにぎりやゼリー飲料、3時間目後に間食、昼食は急いでお弁当を食べる、部活後はコンビニでお腹を満たし、帰宅して味も噛み締めず短時間で食べる夕食。ちょっと大袈裟に言っていますが似通った生活をしていた人がいたのでは。そして、ステイホームの今、炭水化物メインの食事になっていませんか?

ここで、食事で気を付けて補給するべき栄養素を並べてみます。
・タンパク質:ホルモンの生成を促す→肉、魚介、卵、大豆製品など
・ビタミンC:ホルモンの生成を促す→ジャガイモ、サツマイモ、レモン、キウイフルーツなど
・ビタミンB群:精神を安定させる→豚肉、レバー、牛乳など
・カルシウム:神経の興奮を抑える→乳製品、大豆製品、小松菜、魚類など
・マグネシウム:神経の興奮を抑える→大豆製品、海藻、魚介など
・ビタミンE:自律神経を調整に役立つ→ナッツ類、魚介類、大豆製品、穀類、緑黄色野菜など
・ビタミンD:カルシウムの吸収を促す→魚介、卵、キノコなど。

えー こんなに沢山!一度の食事に全部なんてとても無理無理。
そうですよね。大切なことは、色々な栄養素を偏りのないように食事で摂ることように心がけてほしいという事。
そして「楽しくリラックスしてゆっくりと味わって」食べてほしいということです。
忙しい余裕がないからといって、食事と睡眠を適当にすることはやめましょう!時短することができることは他にあります。(だからと言って勉強や課題を時短しようと思っていませんよね)

2)ストレスは吐き出す。
ストレスを軽減するのに、口から出す、吐き出すことも一つの方法とされています。 
心の中のモヤモヤを、誰かに聞いてもらう。話しをすることで解き放すと、きっとスッキリ、ホッとして楽になります。そして、解き放すと今の状態から少し距離が離れて余裕が出てきて、周りを見られて、こんなことするといいかも!と気づき、前向きになるきっかけになるかと思います。
 このサイクル 「話す」→「放す」→「離す」を実行しましょう。

今戦っているウイルスは息苦しくなることが特徴なのに、違う意味で息切れしてしまわないよう、完全な問題解決にはならなくても、少し誰かとたわいもない話でもいいので話をしてみませんか?今は直接会って会話ができませんのでLINEやメールなどでの文字でのやり取りの目から情報が主ですが、たまには電話で話しをして声に出して会話をしてみてはどうですか?スッキリ、ホッとできると思いますよ。

3)リラックス方法(エクササイズ)
 リラックスは、緊張し酷使した身体と心をほぐして緩めて快適さを取り戻していきます。
自分自身で心の活性を高める筋肉と心の安定を妨げる筋肉を弛緩していく方法。相談カウンセリングを通して緩和していく方法などがあります。
 では、リラックスをするために、心の活性を高める筋肉と心の安定を妨げる筋肉についてお話します。

・心の活性を高める筋は、抗重力筋(コウジュウリョクキン・姿勢を保つ筋肉)です。
地球の重力に対して姿勢を保つために働く筋で、下腿、大腿、腹部、胸部、首に張り巡らされ、前後互いに伸縮をしながらバランスを取っている。常に緊張をしていて最も疲労しやすい筋肉です。
・心の安定を妨げる筋は、僧帽筋(ゾウボウキン・首や肩周辺の筋肉)と皺眉筋(シュウビキン・顔の眉間の筋肉)です。
頭から首や肩、背中まで伸びた頭を支えたり腕を動かしたり上半身の動きに関係する筋肉で、凝りの原因となる筋肉と眉間にしわを寄せたり、しかめ面をしたりするなど不快感を表す時に力を入れる筋肉です。
この二つの要素の筋肉を快適に緩めることによりリラックスをしていきます。

ではエクササイズです。
・筋肉を弛緩する(緩め方)
ポイントは筋に力を入れて、その感覚を保ち、一度に力を抜き緩める。

①腕を前に上げ出し、指を握る。
②指先、腕、肩に力を入れる。
③肘を横に張り、後ろに引く。
④肩を上げる
⑤歯を食いしばり、眉間にシワを寄せ、顔を上に首を曲げる。
⑥15秒キープ
⑦一度に力を抜く、緩める。
このルーチンをゆっくり2?3回繰り返す。

・呼吸によるエネルギー変換(リラックス)
ポイントは、酸素と取り込み、二酸化炭素をだしてエネルギー交換をする。
①背筋を伸ばす
②両肩を上げながら、目を見開いて、息を吸う。→良いエネルギー酸素を取り込む
③両肩をストンと落とし下げて息を吐く。
→悪いエネルギー二酸化炭素を出す。
④身体の力が抜けた感じを味わう。
このルーチンをゆっくり2?3回繰り返す。

どうですか?身体の力が抜けた感じを掴めましたか?
出来れば毎日の生活パターンに組み込んでください。

落ち着こうと頑張ると、なぜか身体が興奮し緊張が出てくる。そうすると焦ってドキドキしてくる。だから落ち着こうとする。そしてまた・・・これでは交感神経が働いていつまでたっても緊張がほぐれずストレスがたまります。そこで、身体を支える基幹の抗重力筋を正しい姿勢から悪い癖を作らないようにして、深呼吸をして肩や顔の筋肉をほぐして心を緩めていきましょう。
先ず身体を緩める。これから心の緊張を緩めて徐々に落ち着いていく副交感神経の働きを促すパターンを身に着けられるとようにしていきましょう。

はい!わかりました。でも・・・今、毎日ソファーでダラーっとリラックスしていますから、大丈夫だと思います。

あれ、ソファーでダラーっと…?
残念ながら、この状態は「だらけ」でリラックスとは違います。

だらけは、ソファーなどで姿勢を悪く寝転んだり、ただ何となく時間を経過させたりして無意味に過ごしている状態です。そのため身体にだるさを感じたり頭が痛くなったりとかえって疲れが出るなんてこともありますね。今学校がお休みなので「だらけ」が続くと、学校が再開されたとき「これではいけない」「きちんとしなくては…」と思い、無意識にのうちに自分に緊張感をかけてストレスになっていて、家に帰ると疲れがどっとでてしまう…という悪循環を生んでしまいますから気を付けてください。

身心のコントロールをして「本来の自分」を見つけるセルフコントロールをしていくと、「いつもどおりにやればいい」と感じてリラックスすることができ、自信を持って様々な場面に挑めるようになります。緊張することなく能力をフルに発揮できるので、楽器の演奏でも、練習してきた成果を本番のステージで存分に出せて最高の演奏に繋がります。

■五十嵐先生、教えてくれっチョ!【特別篇】「コロナなんかに負けないぞ!」 今やろう!「笑顔で吹奏楽活動を再スタートする日のために」07

Text:五十嵐 清(東京清和吹奏楽団常任指揮者/元東京消防庁音楽隊長)

第7回 うちトレ「楽器の特色を探る~音色と倍音、そして音の形~」

皆さん、辛抱して外出しない「ステイホーム」をしていてくれてありがとうございます。コロナとの闘いは長期戦の様相を呈していますが、今努力しているからこそ「笑顔で吹奏楽部活動」が出来る日はきます。引き続き気を緩めることとなく、一人一人が感染拡大防止対策を実行していきましょう。

吹奏楽は、「吹いて、奏でて、楽しい」のですが、日ごろの基礎練習は楽器の演奏テクニックの向上がメインになっていると思います。私は知識理論や奏者自身の健康も加味したトータル的なものが「基礎」と考えています。楽器の面白さ可能性や音楽の奥深さを知り、もっと吹奏楽そして音楽を楽しむためにも、「知識、体調、技術」の3つを基礎としてみてください。

今回のうちトレは、「楽器の特色」について考えます。

1.音色と倍音
ピアノの音、管楽器の音、弦楽器の音ないろいろ楽器の音があります。同じ高さ、大きさの音なのに、違った音に聞こえるのは、「音色(おんしょく・ねいろ)」の違いからで、それぞれが特有の「波形」を持っているからです。しかし、音色(波形)は大きさ(振幅)や高さ(周波数)と違って、簡単に数字で表すことはできません。
普段聞いている音は、いろいろな振動数すなわち周波数の正弦波(サイン波)を重ね合わせてできています。
例えば、2つの周波数の違う正弦波を重ね合わせると、違った波形ができます。(モデル化してあります)

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楽器の音は、いくつもの正弦波を重ね合わせてできています。その正弦波を分析すると、基準となる振動数(周波数)の音と振動数が2倍、3倍…、つまり倍音が重なり合っていることがわかります。楽器ごとに音色が違って聞こえるのは、この倍音がどの様な割合で含まれているかということです。

【ちょっと寄り道】(飛ばして読んでも構いません)
音声の /ア/ の場合を例にお話すると、振幅と周波数の違った正弦波が重なり波形ができます。次に周波数分解を行い、周波数ごとに正弦波をア1、ア2、ア3、…と取り出します。そしてさらに、FFT(高速フーリエ変換)アナライザ―という機器を使って、周波数分析して、周波数スペクトルとして表示すると、f1、f2、f3…と特定の周波数が出ていることがわかります。

音声は、声帯の振動により声道や口腔を通るときに、「ア」「イ」などの五母音がきまります。これは、口の形と舌の位置を変えて共振の特性を変えているから「ア」や「イ」と固有の音声に特性されて聞こえます。この振幅スペクトルのピークである共振周波数をフォルマント周波数といい、低い方から順に第1フォルマント(f1)、第2フォルマント(f2)、 第3フォルマント(f3)・・・といいます。特にf1とf2の値で「ア」「イ」など母音の発声に重要な役割を担います。
管楽器の発音の際にいろいろな発音を使ってと言われますが、実際には口を開け閉めできませんので、口の中で舌の位置や動きを変えることで対応すると思います。

音色の話に戻って・・・楽器の音は、複雑な波形を持っていて、それぞれが独特の響きのある「音色」を奏でています。この複雑な波形には、高周波成分(基準音程より高い音程)が含まれていて、これを「倍音」といい、この含まれ方や表方で現れ楽器の特色が決まります。

楽器の波形分析もFFTアナライザ―を用います。周波数分析をすると、基準周波数(音程)の値に強いスペクトルが現れ、その他に高い周波数にもスペクトルが現れます。純音(正弦波)は、基準周波数をfとすると、スペクトルはfのところにだけ1本線が立ちます(音叉がこれにあたります。楽器ではオカリナの音色が似ています)。フルートは純音に比べると波形にいくつかの山が見られますがなだらかなので、基準音程fの強いスペクトラム以外は、レベルが低く高周波成分がほとんど見られません。ですから柔らかく澄んだ美しい音色が得られます。バイオリンは波形が複雑にギザギザしていて、基準音程f以外に高周波成分でもスペクトルが出現していて、多くの倍音を含んでいることが特徴です。透き通った美しさ中にも華やかさも兼ね備えた音色が得られます。(楽器は音域や奏法によっていろいろな音色が出せます。これが楽器の面白さであり魅力です。その魅力を探るために毎日の演奏テクニック向上の基礎練習をして挑戦しているわけですね。)

2.音の形
音色と倍音で用いた周波数分析は、音を解析する有効な手段ですが、実際に音楽で演奏される一つの音は、始まりと終わりがあり0.1秒から数秒程度と短く、理想的な周期波形ではないので無限に繰り返されると仮定して分析結果を出しています。そのため失ってしまった情報も出てきます。

ピアノやギターでは、弦をハンマーで叩いたり、指で弾いたりして音を出します。弦の振動は最初が一番大きく、すぐに小さく減衰していきます。これに対し、オルガンや管楽器、弦楽器(弓での奏法)は、音を持続させ減衰しないようにすることができます。この発音開始から発音停止までの時間と振幅(音量)を表したものが音のエンベロープすなわち「音の形」となります。

・音の立ち上がり(アタック):発音から最大振幅(音量)になるまでの時間。
・音の芯・響き(コア):最大音量から音が安定して持続している時間。ディケイとサスティンにさらに分けられます。
・音の処理(リリース):発音停止から音量が0になるまでの時間。
の3つの時間と音量の関係(エンベロープ)の「音の形」も各楽器の特色を識別するために重要な役割をもっています。

3.まとめ
楽器音の固有の特色は、音色と倍音の関係や「音の立ち上がり(アタック)・芯(コア)・処理(リリース)」の音の形から決定されます。特に管楽器では音を出したり、止めたりすることをより明確化するために、舌を使い、「TA、TI、TU、TE、TO」など子音と母音を組み合わせて発音する「タンギング」というテクニックが必要となります。

【タンギングについて】
管楽器の発生と停止には息の流れを制御する役目を舌で行う「タンギング」をします。

「TA、TI、TU、TE、TO」など子音と母音を組み合わせて発音することは先にお話しました。

例えば「ターン(TA―N)」と発音します。

・音の立ち上がり(アタック)は「T」子音。音程と音量を決定する要因になります。
・音の芯・響き(コア)は「A」母音。音色を決めます。
・音の処理(リリース)は「N」。余韻をつけます。

この一連の舌の動きを明確にして言葉を言うイメージで息を制御するという事が大切です。(母音を発音する時、I、E、A、O、Uと口の中で舌の位置が下がってくるイメージになりますので、子音はどの母音と組み合わせるかで舌先の位置がきまります。) 

また、ジャズ、ポップスでは、「ダーッ」と余韻を付けずに音を止めます。そして発音は「D」や「B」など濁音を使います。「ダバダバダ」という具合です。

さあ、「うちトレ」…いろいろな発音を声にだして(小さな声でもいいよ)息の流れと舌の動きを確かめながら「舌の筋トレ」スタートです。私は、吹奏楽の魅力の一つに「響き(Sound)に緊張感」があると思っています。音の発音(アタック)と処理(リリース)には、舌で息をコントロールするために生まれる特色です。舌の筋トレは必要ですね。

今まで楽曲を吹けるようにならないと…と余裕なく部活動していたかもしれません。余裕のある今だからこそ、理論も考えながら身体に無駄な力をいれることなく理想の音を出せるようにしてみてはいかがでしょうか? 身体に力が入ったり、音量がオーバーフローすると音は崩れます。頑張れば頑張るほど、無理をすれば無理をするほど良い演奏につながりません。

Q: では如何に楽器の特色を出し、(音の三要素の)音程を安定させ、音量の幅を広げ、音色を豊かにして、指揮者の要求や楽曲のイメージを表現し、合奏のアインザッツの揃える…などなど課題目標をクリアしていくか?

A: それは、曲が吹けるようになることだけでなく、音を出す理論を知り、プロの音(今は音源)を聴き、自分の楽器の理想の音を研究してイメージを持つことです。

■五十嵐先生、教えてくれっチョ!【特別篇】「コロナなんかに負けないぞ!」 今やろう!「笑顔で吹奏楽活動を再スタートする日のために」06

Text:五十嵐 清(東京清和吹奏楽団常任指揮者/元東京消防庁音楽隊長)

第6回 うちトレ(その2)ブレスのチェックとコントロール(イメージトレーニング)

いつもなら・・・4月、新学期の今頃は新入生を迎えて活気がある時期なのに・・・

なーんてネガティブにならずに、バタバタしてない余裕のある今だからこそ、これまで当たり前としてやってきた練習内容などを整理して、来るべき新入生を迎えるときに、慌てずアタフタしないように準備しましょう。

今が踏ん張り時です。少しでも早く学校が再開できて学校生活や勉強が軌道に乗ってきたら、部活動が再開できます。自分たちのためです一致団結して、個人個人が、「外出しない。手洗いうがいを励行する。規則正しい生活を送り健康を維持する」など、コロナの感染拡大防止対策を徹底して行いましょう。

今回も“うちトレ”。家(うち)できるトレーニングです。

1.ブレストレーニング
第3回「管楽器で音を出す(その1)」で紹介した深呼吸の内容を楽器で吹奏するイメージでの呼吸のトレーニングをします。
メトロノームを60にセットして、何回か繰り返します。(自分のペースで回数は決めてください)
姿勢は、立って頭を首に乗せる。肩の力を抜く。背中を自然なカーブにするなど自然体になるよう上半身をリラックスする。
ゆっくり息を吐き出しましょう。肺にある空気を一度空にします。
丹田というへその握りこぶし一つ下あたりの手を当てて意識させます。
上半身全体(特に背中の下あたり)が膨らむイメージで吸い込みます。意図的にお腹を膨らましたりへこませたりすることではありませんので注意してください。
① 拍(時間)を決めて
・4拍かけて吸う。4拍かけて吐く。リラックス4拍。
・4拍かけて吸う。2拍間維持して、4拍かけて吐く。リラックス4拍。
・4拍かけて吸う。1拍で吐く。リラックス4拍。
・4拍かけて吸う。2拍間維持して、1拍で吐く。リラックス4拍。
・1拍で吸う。1拍で一気に吐く。リラックス2~4拍。
・1拍で吸う。4拍かけて吐く。リラックス4拍。
② 息を見て
次に同じエクササイズを、片手でA4判の大きさの紙1枚を軽くつまみ持ち、
口の前30cm程度離して行います。(この時へそ下に手は外しても構いません)
息がどの様に出ているか、紙の揺れや安定感を実際に目で確認する、見える(可視)化です。
③ 息を音で聞いて
/SU/の発音を使って、摩擦音で少し息に抵抗感をつけて、大きく音を出して、聞きながら(可聴化)のエクササイズです。(この練習では肩などに力が入ったり、スーと音を無理に出すと“フラっ”となりますので注意してください)

2.ブレスコントロール
腕の伸縮を使ったイメージトレーニング
・口の手前から手のひらに息を吹きかけるようにして、
①腕を下方向に伸ばしていく。
②腕を目線より上げて伸ばしていく。
③腕を伸縮させて徐々に遠ざけていく。
どうですか?何か息の出し方や長さなどの変化を感じませんでしたか?
では、息を出しながら、右手でバイオリンの弓を上下に動かような動作をしてみてください。
コツみたいなもの感じられましたか?
管楽器の息の出し方は弦楽器のボウイング(弓の動き)でいうと、ダウンのみ(上記の①)になりがちです。
ダウン、アップをイメージ・意識した「息の抑揚」を付けたブレスコントロールはロングトーン、楽曲を演奏する時に重要です。
では、エクササイズ。
メトロノーム60のテンポで、4拍で吸って(吸う拍数も変化させてください)
4、8、12、16拍と長さを変えてロングトーンをするイメージで息を出してみてください。
この時腕の伸縮を実際につけた時、頭で弦楽器のボウイングをイメージするなど工夫をして息のコントロールを会得してください。
深呼吸から呼吸法の練習では、肺に入っている空気を空にすることからスタートし、その後も吐き切るようにしています。これは呼吸を意識して行い、身体のバランスや必要な筋肉を使うことが目的です。しかし、普段の生活では呼吸は無意識にしていて、肺の中の空気を全て吐き切ることはせずに、肺に空気を残してある状態で次の吸気をします。
実際の曲の演奏の時も、肺の中の空気を息継ぎ(ブレス)ごとに全て出し切り、ニュートラルの状態にしているわけではありません。曲が進むにつれて、どんどん息が苦しくなり吸えなくなります。「息が浅くなる、上がる」と言われていますが当然のことなので、必ずニュートラルにするのではありません。例えばジョギングをしていると、走りこんでくると息が荒くなってきて、スタート時点に戻すことは困難です。この息が上がったことで、時間を経過させ目標の距離を走ることができたという達成感などを感じると思います。音楽でいうと、楽曲を演奏して時間とともに音楽の緊張や高揚を感じクライマックスに到達した達成感などを味わえるのではないでしょうか?
「楽曲フレーズのブレスごとの息の吸う量は出来るだけ同じにし、深く吸い込む」と私も指導していますが、無理をして速く吸おうとしてのどに力が入り「ハぁぁ」と音がして本当は吸い込めていないなどが見られます。管楽器を演奏すのは、特別な呼吸法ではなく普段の呼吸の拡大版と考えて、立って頭を首に乗せる。肩の力を抜く。背中を自然なカーブにするなど自然体の姿勢を心がけることです。
金管楽器の人で手元にマウスピースがあるのならば、
呼吸法の練習:①拍(時間)を決めてとロングトーンのエクササイズをマウスピースでやってみてください。マウスピースの持ち方は、前回(第5回)にありますので確認してください。
そして、その次に、前回(第5回)のバズィング練習の3)~5)をマウスピースバズィングでやってみてください。
ポイント→この時“ぽっぺた”の裏(内)側と“歯”を「張り付ける」ようにすると、口の中の圧力が一定に保たれ息が安定して出せます。
・実音F(チューニングB♭の4度下)の音程を出してみよう。
  音の出だしはあまり気にせず、Fの音を丁寧に出してみましょう。
・感じが掴めたら、Fを基準に半音ずつ音程を下げていきます。(リップスラー)
F→E、F→E♭、F→D、~B♭まで。
・B♭(チューニング音)の音程をだして、
B♭→A、B♭→A♭、B♭→G、~オクターブ下のB♭まで。
更にもう一つ。
フェイスタオルを用意して、2つ折りにして長方形を作ります。長辺にマウスピースをグルグルと巻き込みます。マウスピースの先端にあるタオルを少し折り曲げて手で押さえます。(折り曲げ方を変えると抵抗感が変わりますので自身で調整)
これは私が30年以上指導に取り入れている「お手軽サイレントマウスピース」です。
この状態で上のエクサイサイズをやってみてください。
実際の楽器で吹いているような抵抗感を感じてのトレーニングになります。
(現在は市販でサイレントマウスピースやサイレントブラスも販売させています)
今回も、うちトレ、エクササイズを紹介しました。
コロナ対策と同じで、地道に実行しなければ効果はありません。楽器が思いっきり演奏できるその日を迎えるためにコツコツとやれることを見つけてみましょう。アイデア次第で楽しい練習方法が見つかります。
やってみて、こんなアイデアが浮かんだ、実行してみて発見があった。少しわからないことがあったなど、このQ&Aコーナー「教えてくれっチョ!」に投稿してください。皆さんで共有していきましょう。
☆おまけコラム:楽器は素晴らしい相棒。
両手やメガホンを口に当てて声を出したことがあると思います。声が集中し方向が定まり音量も増え遠くまで聞こえます。メガホンがスピーカーの役割をしています。
管楽器は、マウスピース内で集められた振動が管の中の空気を伝わりベルから外気に放たれます。自分自身出した音をより方向性を定めて拡声してくれるスピーカーなのです。楽器は自分の音楽を確実に忠実に伝えてくれる素晴らしい相棒です。
私はこんな思いを込めて演奏していますと楽器という素晴らしい相棒の助けを借りて表現していきましょう。

■五十嵐先生、教えてくれっチョ!【特別篇】「コロナなんかに負けないぞ!」 今やろう!「笑顔で吹奏楽活動を再スタートする日のために」05

Text:五十嵐 清(東京清和吹奏楽団常任指揮者/元東京消防庁音楽隊長)

第5回 家で出来るトレーニング(うちトレ)

皆さん、新型コロナウイルス感染症拡大防止の緊急事態宣言が出されています。「自粛疲れ」なんてことも言われていますが、今やることは、「外に出ない、人と接触しない」ことです。今をしっかりしていかないと未来はありません。時間を区切ってメリハリのある生活スケジュールを決めて、コロナなんかには絶対に負けずに活動を再スタートする日のために、気を緩めることなく、手洗いうがいを実行して心身ともに健康で乗り切っていきましょう。
第5回目は、「うちトレ」。家で出来るトレーニングです。
前回まで、音のしくみや音の鳴る原理を物理的な面からアプローチしたので、今回読んでもらえるかとても心配です。
「吸って吐いて、振れて音が鳴る」という事は、管楽器を演奏するうえでとても重要なファクター(要素)ですので、もう一度。
「リラックスして、たくさんの空気を体内(肺)に取り込み、身体全体を使うイメージで息として意識して吐き出す。振動源となる唇やリードの振動を妨げないように息を通過させて音を出す」

姿勢(フォーム)・呼吸(ブレス)・アンブシュア

息のコントロール(スピード/圧力/量/方向/連続性など)

同一の振動源(同じ波形)

音程が合う ・ 音量が出る ・ 音色が統一される

豊かな響きになり、遠くに鳴り響く

この流れを是非とも理解して、自分に合う楽器演奏スタイルを見つけてください。

やってみて、こんなアイデアが浮かんだ、実行してみて発見があった。少しわからないことがあったなど、このQ&Aコーナー「教えてくれっチョ!」に投稿してください。皆さんで共有していきましょう。

さて、今回は「家で出来るトレーニング、“うちトレ”」です。
楽器が手元に無い!家では楽器は吹けない!なんていう人でも大丈夫です。
先ずは実行。トライしてみてください。
1.口輪筋ストレッチ
最近、大声で話したり、笑ったりしていないと思うので、口を開けることをしなくなっていませんか。
とういうことは、口の周りにある筋肉「口輪筋」を使わなくなっているかもしれません。
管楽器の演奏にはこの「口輪筋」が振動源、音の源として重要な役割をしていることは、前回お話しました。
さあ。口輪筋ストレッチです。それぞれ自分のペースでキープしてください。
1)口を閉じてゆっくりと口角を上に引き上げて笑顔を作ります。このときに、目も大きく見開いて、視線を上に向けます。(ミッキーマウスのスマイルのイメージ)

2)頬を大きく膨らまして唇を前に突き出す。(“あっぷっぷ”での変顔イメージ)
3)頬をへこませて唇をつぼめて思いっきり前に突き出す。(“ひょっとこ”のイメージ)
4)「ワー オー」と(小さく)言いながら、口を大きくゆっくりと動かします。
5)「い・え・あ・お・う」と発音するように大きくゆっくり口を動かして1サイクル。

普段は学校などでやっている、挨拶や返事、友達との話し、笑ったりして口を動かして声を出すことも管楽器の練習になっていたのですね。
家でも挨拶したり笑ったりしてはどうでしょうか?

2.金管楽器(バズィング)
しつこいようですが、金管楽器の振動源は「唇」です。
1)バズィング練習
実際に唇を振動させて、①~④を意識して音をだしましょう。
①やや微笑むイメージで息が通れるアパアシュアが出来るような適度に唇を閉じる。
②上下の唇は(努めて)フラットになるよう歯やあごの位置を工夫する。
③口角を固定する。
ポイント→この時“ぽっぺた”の裏(内)側と“歯”を「張り付ける」ようにすると、口の中の圧力が一定に保たれ息が安定して出せます。
④唇中央部がリラックスして自由に振動できるようにしておく。
⑤意識した息を安定に送り込む。
(注:意識というのは力を入れるという事ではありません。こんな音が出したいなと自分の気持ちを込めることと思ってください)

1)特定の音程(なんの音をだすか)を目指さないで、唇の振動で音を鳴らしてみよう。
  舌は使わず、息だけです。(ノータンギング)
姿勢(フォーム)、呼吸(ブレス)、アンブシュアのベストを見つけてください。
  もし音が出なかったら、焦らずに唇周辺だけでなく、顔や身体に力が入っているところをリラックスさせてトライしてください。
2)音が出たアンブシュアに、マウスピースを当ててマウスピースバズィングをおこなう。
マウスピースの持ち方の注意
ホルン以外の人は左手(ホルンは右手)の親指と人差し指の2本で、マウスピースの先端から1/3くらいの(楽器に装着した時にできた線があると思います)ところを軽く持つ。物を握って口に近づけると、口の中に入れたくなってしまう習慣があります。(小さいとき何かを握ると口に運んでいませんでしたか?)
3)実音F(チューニングB♭の4度下)の音程を出してみよう。
  音の出だしはあまり気にせず、Fの音を丁寧に出してみましょう。
4)感じが掴めたら、Fを基準に半音ずつ音程を下げていきます。(リップスラー)
(テンポや長さは自分で決めて無理のなく、「吸って吐いて、振動して音が鳴る」を実行してください)
F→E、F→E♭、F→D、~B♭まで。
5)B♭(チューニング音)の音程をだして、
B♭→A、B♭→A♭、B♭→G、~オクターブ下のB♭まで。
出来れば毎日ですが、時間は長くではなく少しずつ。

3.木管楽器(アンブシュアのチェック)
ここではフルートとクラリネットのみアンブシュアチェックをお話します。
1)フルート:頭部管のみで、「A」の音。
2)クラリネットB♭管:マウスピースにリードをセットして、オとウを同時に発音するような口の形でマウスピースを下から口の中に挿入するように、「F#」の音。
(この時、高音でやや大きめの音がするので、家の中ではチェックするだけの短時間のみの音出しにしてください。)

では、木管楽器の人は何をすればいい?
木管は楽曲の音符数が多く、読譜力と正確な運指を要求されるので、スケール全調(長調、短調とも)、クロマチックスケール各音からスタートとアルペジオを、
①音名で歌いながらシャドー運指をつけて、
②レガートタンギングで音程を頭の中で歌いながら、やはりシャドー運指で。
というような、シャドートレーニングをお勧めします。

早く早く早く、部活動が再開できて楽器を吹きたいところですが、今は我慢、我慢。
今、部活動が休みで、しばらく楽器を吹いていないからこそ、唇を酷使していないこの時、
楽曲の練習に追われていないこの時だからこそ、
基礎を再確認して、正しい奏法を再チェックするチャンスです。
「楽器を思う存分に奏でる」その日のために、いろいろな工夫やアイデアをだして
今できることからやっておきましょう。
是非とも、“うちトレ”を一日の生活スケジュールに、少しだけ組み込んでみてください。

■五十嵐先生、教えてくれっチョ!【特別篇】「コロナなんかに負けないぞ!」 今やろう!「笑顔で吹奏楽活動を再スタートする日のために」04

Text:五十嵐 清(東京清和吹奏楽団常任指揮者/元東京消防庁音楽隊長)

第4回「管楽器の音を出す」ついて考えよう。~吸って吐いて、振れて音が鳴る(その2)

皆さん、今は新型コロナウイルス感染症の拡大防止です。収束そして終息に向けて一人一人が強い意志をもって人との接触をしない、手洗いうがい消毒を実行する、そして心身ともに健康に留意していくしかありません。今は窮屈で辛く憂鬱な日々ですが、コロナなんかには絶対に負けません!活動を再スタートする日のために、自分の大好きな楽器について少し知識を蓄えてみましょう。

第4回目は「管楽器で音を出す」の続きで、アンブシュアのお話です。

アンブシュア(唇やリードの振動) 
前回、管楽器では、呼吸で得られた息の流れを使い、金管楽器は唇を振動させる、リード楽器はリードを振動させることにより、「波」が発生して振動源が作られ音が出ます。
今回は、いよいよ「音が鳴る」について考えます。
では、波の発生するメカニズムを金管楽器(リップ振動・バズィング)と木管楽器(リード振動)に分けて考えます。

その前に、私たちには口の形を変化させる、つまり唇を開らいたり閉じたり、引いたりつぼめたりする時に使う、口の周りを取り囲むようにある、「口輪筋」という筋肉があります。こちらも呼吸と同じように普段は意識して使っているという感覚はありません。
この口輪筋が衰えてくると口角が下がったり、連動している表情筋が動かなくなり表情が乏しくなります。
管楽器奏者は、この口輪筋を上手く使い、唇を支え適度な緊張を与えたり、マウスピースのくわえる時の口の形などを整えたりして、アンブシュア(唇や口腔の形)を決めていきます。
少し「微笑む」イメージです。

(日経ヘルスより引用)

1)金管楽器(リップ振動・バズィング)
金管楽器の振動源は「唇」。
振動の発生は上下の唇の間から息が流れ、その流れにより適度に緊張した唇が振動します。
唇自体を意図的に操作して硬く閉じたりひっぱったりして無理に振動を与えたりするのではありません。前回の声を出す時、声帯が適度の強さで閉じて、吐く息によって振動するとお話ししました。これと同じで、唇が声帯と同じ働きをしているのです。

上図の赤丸の唇の両端(口角)と顎の上部から唇の下あたりへこみ部分の3点が固定されて、それ以外は適度な緊張をさせるようにします。
そうすると、唇の中央に息の通る道(アパアシュア)が生まれます。
この時、唇中央部がリラックスして自由に振動できるようにしておきます。
(この部分はマウスピースの中にはいっています)
そして、肺から送り出した意識した息を通過させて、唇に振動してもらい、ブーという(バズィング)音を出します。(この場合はアップやクールダウンでの脱力させた唇を振るわせる、ブルル~~的な音の出し方ではありません)

振動発生のポイント(金管楽器)
(1)やや微笑むイメージで息が通れるアパアシュアが出来るような適度の緊張をした唇にする。
(2)上下の唇は(努めて)フラットになるよう歯やあごの位置を工夫する。
(3)口角を固定する。
(4)唇中央部がリラックスして自由に振動できるようにしておく。
(5)意識した息を送り込む。

2)木管楽器(リード振動)
木管楽器は金管楽器と違い、リードが振動源となり音を出します。
やはり、口輪筋を上手く使い、マウスピースを固定します。マウスピースとのジョインをいかにしてベストにするかが重要です。
口を硬く閉じることではなく、また歯でマウスピースを噛むこともしないようにしてください。マウスピースにリードをセッティングする時も、リガチャーで着つく締めすぎないことです。
マウスピースとリードの僅かな隙間に、息を送り、効率よくリードを振動させるためです。
ここでは、波を発生させる「振動」をテーマにしていますので、各楽器によりアンブシュアやリードのセッティングが違いますので、詳しくは各楽器の教則本などで確認してください。

2回にわたって「管楽器で音を出す」にはどのようにしたらよいか?
目標は、楽器のベストな波を発生させるための「振動源」を作ることでした。
(1)呼吸(ブレス)
(2)姿勢(フォーム)
(3)アンブシュア  

~吸って吐いて、振れて音が鳴る~「管楽器の音を出す」こと
少し理解してもらえましたか?

この音出しなら、今すぐ家でもできます!
急に学校がお休みになって、楽器ケースにマウスピースを入れたままの人でも、
金管楽器はマウスピース無しでの唇の振動のチェック。(どうしてもマウスピースが恋しい人は、自分の人差し指と中指で軽く唇に触れて・・・でもしっかり手を洗ってね)
木管楽器は・・・。自分の親指をマウスピースにみたてて、ストローをくわえてなんてアイデアもいいかも。(こちらもしっかり手洗いはしましょう)

無理して無理やり音を出すのではなく、「呼吸と振動」という原点をもう一度見直してみましょう。
今回も最後まで読んでくれてありがとう。

次回は、「楽器を存分に奏でる」その日のために ~今、家で出来るトレーニング。

■五十嵐先生、教えてくれっチョ!【特別篇】「コロナなんかに負けないぞ!」 今やろう!「笑顔で吹奏楽活動を再スタートする日のために」03

Text:五十嵐 清(東京清和吹奏楽団常任指揮者/元東京消防庁音楽隊長)

第3回「管楽器の音を出す」ついて考えよう。~吸って吐いて、振れて音が鳴る(その1)

皆さん、新型コロナウイルス感染症の影響で、活動が休止して大好きな楽器も吹けなくて、ポッカリと穴が開いてしまったような悶々と憂鬱な毎日を送っているのかな? そんな今だからこそ、これまでがむしゃらにほぼ毎日活動してきたことを、別の視点から見つめて、活動を再スタートする日のために備えてみてはどうでしょう。

第3回目は「管楽器で音を出す」にはどのようにしたらよいか? 
「空気の流れと振動」という基礎的なことから探ってみましょう。

目標は、楽器のベストな波を発生させるための「振動源」を作る。 そのためのポイントは、
(1)呼吸(ブレス)
(2)姿勢(フォーム)
(3)アンブシュア
の3つです。

1.吸って吐いて、呼吸と息の流れ
前回「音について」お話しました。「音の3要素=音量、音程、音色」に気を付ければ いいんだ。 と覚えてくれたこと思います。
その際「音とは?」で、大嫌いな理科・物理が出てきてスルーしてしまったこと・・・
もう一度おさらい、

「物体が揺れて発生する「波」が空気など媒体を伝わり、人の耳に届き聞こえる」でしたね。
管楽器の最大のポイントは、いかにして楽器のベストな波を発生させるための「振動源」を作るかです。

こたさん Q:どのようにして、波を作るといいの?
きよし A:ハイ。先ずはエネルギーとなる空気をたくさん吸い込み、息に変換して吐き出す、 「呼吸」がとても重要です。(吐き出すときに意識して「自分の心を込めた息」にします)
 
(1)呼吸(ブレス)
管楽器にとって、息は自動車のガソリン(今はハイブリッドや電気が主流となりましたが)のようなエネルギー源です。取り込み方や仕事をしてくれるように変換していかなければ音になりません。そのための「呼吸・ブレス」について探ってみましょう。

【実践編】さあ~ 深呼吸をしてみましょう。(今すぐ家でもできます。やってみてください)

1)立って上半身をリラックスさせて、口からゆっくり息を吐き出しましょう。
→ポイント:頭を首に乗せる。肩の力を抜く。背中を自然なカーブにするなど自然体になるようにする。

2)口からたくさんの空気を肺に吸い、取り込みましょう。
→ポイント:「たくさん空気を肺に吸い込む」、そうすると自然にお腹が膨らんできます。 腹筋に力を入れて、お腹を膨らまして腹式呼吸で・・・とよく耳にしますが、 間違っています! 意図的にお腹を膨らましたりへこませたりすることではありません。胸腔と腹腔を隔てる横隔膜という筋肉が、肺に空気を入れることで下がります。 丹田というへその握りこぶし一つ下あたりを意識して上半身全体(特に背中の下あたり)が膨らむイメージです。

3)吸った空気を、ゆっくりゆっくり、ゆっくりと意識をもって息として吐き出しましょう。
→ポイント:お腹やのどなどに力や無理な圧力をかけないで、リラックスした状態で自然に身体の外に戻していくイメージです。

きよし Q:どうですか?
こたさん A:なんだか、気持ちも落ち着てきて、余裕が出てきたような。 自然に楽しくなり、気づいたら、呼吸に合わせて腕が勝手に動き表現しています。

出来るだけ「自然体で深呼吸をする」
無理なく、効率よく、たくさんの息を吸って吐くことを身につけましょう。 このことが管楽器を演奏することにとても重要です。

私たちは普段生活している時は何気なくほとんど意識しないで呼吸をしています。しかし、管楽器を演奏する時は、かなり意識して吸ったり吐いたりする呼吸をしなくてはなりません。
要するに「意識して自然体で呼吸(ブレス)をする」ことなのです。(ちょっと変な表現ですがわかってもらえますか?自然体については次の項目で)

(2)姿勢・フォーム(息の流れ)
次に、息の流れにから、正しい姿勢・フォームについて考えてみましょう。

きよし Q:肺に入った空気は、どのような経路を通って口から出されるのでしょうか?
こたさん A:えーと・・・ 肺→のど→口(の中)→唇→外 かな。

肺…ではなく、ハイ当たり!
では、のどについてお話します。

のどは食事の時には食べ物の通り道となり、呼吸の時には空気の通り道となります。この選択をしているのが喉頭(こうとう)です。喉頭は気管の入り口にあり、喉頭蓋(こうとうがい=喉頭のふた)や声帯(せいたい)をもっています。喉頭蓋や声帯は呼吸をしているときには開いていて、物をのみこむときにはかたく閉じて食物が喉頭や気管へ入いらないように防いでいます。また、声帯は、発声のときには適度な強さで閉じて、吐く息によって振動しながら声を出します。すなわち、喉頭には、呼吸をする、物をのみこむ、声を出す(発声)という働きがあります。

管楽器を演奏する時は、発声時の声帯が閉まっていないように、いわゆる「のどに力を入れずにリラックスして」と指導されます。

この肺→気管→声帯→咽頭→口腔(口の中)→唇→マウスピース→楽器というような流れとなり、連続して効率よく流れるようにしましょう。そのためには、息の流れを妨げないようなリラックスした「フォーム・姿勢」をとるが大切です。

(日本耳鼻咽喉科学会HPより引用)

管楽器では、呼吸で得られた息の流れを使い、金管楽器は唇を振動させる、リード楽器はリードを振動させることにより、「波」が発生して音が出ます。

やったー! 音が鳴ったぞー!
 
次回は管楽器の音を出すことについて考えよう。 
~吸って吐いて、振動して音が鳴る(その2)です。

■五十嵐先生、教えてくれっチョ!【特別篇】「コロナなんかに負けないぞ!」 今やろう!「笑顔で吹奏楽活動を再スタートする日のために」

Text:五十嵐 清(東京清和吹奏楽団常任指揮者/元東京消防庁音楽隊長)

第2回「音」ってなに? 音のしくみは面白い!・・・かな??

前回は、新型コロナウイルスに感染しないように、活動再開に向けて健康な身体づくりについてお話しました。

今回は、「音」・・・
私たちの周りには、人の声、音楽・楽器音、生活音、騒音などなど、無数の「音」があります。
改めて「音」ってなに? そのしくみを一緒に考えてみましょう。
私たちの奏でている「音」を別の角度から考えて、楽器の音や音楽創りに役立て、吹奏楽をより楽しんでいきましょう。

音とは・・・
物体が揺れて発生する「波」が空気などの媒体を伝わり、人の耳に届き聞こえます。

例えば、太鼓をたたくと、太鼓の皮が揺れます。この揺れ(振動)が周りの空気に伝わり、空気の揺れとなって次々と伝わっていきます。耳に届くと音として感じます。
発音体の振動によって空気が押され、押された部分の空気は密度が濃くなります。そして、この空気密度の濃い部分が近くの空気をさらに押していきます。この動きが次々と移動していくことで、空気密度の濃い部分と薄い部分が発生します。これが、「音の波(音波)」が生じている状態です。このように空気密度が濃い部分と薄い部分が交互にできることで生じる波を「疎密波」と言います。
(つまりは空気に圧力差が生じることによって、空気の圧力の高いところと低いところの圧力の変化の連続した粗密波によって音が伝わり耳に届きます)
例えれば、伝言ゲームやリレーでのバトンタッチをしていき繋げていくような感じかな。
相手に伝えるときには距離が縮まり密になり、受け取ったら次に繋げるまでには距離が離れるような・・・

う~ん? 理科や物理はちょっと・・・ぜんぜんおもしろくない!
まあまあ、チコちゃんに叱られない程度におつき合いしてくださいね。

図にすると、

図から密と疎の部分を取り出し、振動の回数との関係性をグラフ化してみます。
波形が上下に一回往復する間隔を「周期」、空気の振動の大きさを「振幅」と呼びます。
これを「正弦波」といいます。(図はヤマハのHPより引用)

【音の3要素】
私たちはさまざまな音を感知し、音の特徴は、周期と振幅の組み合わせで決まります。
「音の大きさ(音量)」、「音の高さ(音程)」、「音色」の
三要素によりそれぞれの音を認識しています。このことが楽器の演奏やアンサンブルでの重要なポイントになります。

1.音の大きさ(音量)
音の大きさ(音量)は、「音波」における「波の幅(振幅)の大きさ」に比例します。波幅が大きいと空気の圧力変化が大きくなり“大きい音”、波幅が小さいと空気の圧力変化が小さくなり“小さい音”となります。この圧力変化の量を「音圧」と言い、音の大きさは音圧によって決まります。
→大きな音は、小さな音を飲み込んでしまい、その差で最大音量が小さくなって しまいます。

2.音の高さ(音程)
音の高さ(音程)は「音波」における「波の数量」つまり一定時間における振動の回数で決まります。一定時間に振動(波の数)が多ければ音は高くなり、少なければ音は低くなります。
1秒当たりの空気の振動数で、「周波数」といい、単位はヘルツ(Hz)で表します。振動は一往復で1回と数えますので、1秒間に1回振動することを1Hzと定めます。
周波数の数値が高い場合に「高音」として認識され、周波数の数値が低い場合に「低音」として認識されます。
楽器はこの周波数を変化させることで音程の変化を生み出しています。例えば弦楽器では弦を指で押さえることで、弦が振動する際に起きる波の数を変化させ、奏でる音程に変化を付けているのです。人が認識できる周波数は20Hzから20,000Hz(20kHz)と言われています。また基準となる音に対して2倍の周波数の音が「1オクターブ上」の音程になります。
  →複数の音を鳴らした時、波の数(周波数)が違うと、音程にずれてうなりが聞こえてくるのね。

3.音色
音色は、音波の質の違いによって生み出されるものです。同じ音圧、同じ周波数であっても、その波の形が異なることで、人はその音色の違いを区別します。
音波によって生じる空気の密度の濃さなどはそれぞれの楽器などの音によって異なります。この波形の違いは「振動の仕方」が異なることで生まれます。振動の仕方は、音を発するものの素材や鳴らし方によって異なります。また、音が鳴るときには、さまざまな周波数をもった「倍音」が同時に鳴ります。この倍音も含めた音の構成の違いが、「音色の違い」として認識されるのです。

ここまでに示したような非常にシンプルなサイン波は、実際にはほぼ自然界には存在しません。(聴覚検査の信号音などがシンプルなサイン波音)
私達が普段耳にする人の声、楽器や音楽、生活音や騒音等はもっともっと複雑な音色を持っているのです。そして見た目も複雑です。そんな複雑な音色の違いを私達の耳は普段から聞き取っている。このことはとてもスゴイことなのです。(また別の機会に聞くと聴くについてのお話も・・・)
最後までお付き合いいただきありがとうございました。
活動が再開され、好きな楽器を思い存分に演奏し音楽を奏でるとき、この「音の三要素=音量、音程、音色」を意識してみてはいかがでしょうか?
きっと、今まで以上に音が素晴らしく聞こえてきますよ。
(そうか、「音量、音程、音色」をパートや合奏での、「合わせる3つのポイント」にすればいいんだね)

次回は(3)「管楽器の音を出す」ついて考えます。

■五十嵐先生、教えてくれっチョ!【特別篇】「コロナなんかに負けないぞ!」 今やろう!「笑顔で吹奏楽活動を再スタートする日のために」

Text:五十嵐 清(東京清和吹奏楽団常任指揮者/元東京消防庁音楽隊長)

第1回 新型コロナウイルスなんかに感染しないぞ!

Q:皆さんお元気ですか?

A:・・・元気な訳ないでしょ!
新型コロナウイルス感染症のために、急に楽器が吹けなく活動ができなくなってしまって2か月ですよ…、学校もいけないし、友達とも会えないし…

2月中ごろから急に活動休止、卒業演奏会も送別会も何もかもが中止。4月になれば…きっと…の願いも虚しく、ついに新型コロナウイルス「緊急事態宣言」が発令されて、再開が遠のき活動再開の見込みも立たない事態になってしまいました。

楽器を演奏出来るという喜び、仲間たちと一緒に活動出来る素晴らしさ、演奏会の出来ることの ありがたさをひしひしと感じていることと思います。

これまで当たり前のこととしてやってきたことが、急にできなくなり、改めて楽器を演奏できること、ましてや仲間と一緒にやれることが、いかに有り難く、幸せなことだと感じていることでしょう。

そんな今だからこそ、新型コロナなんかに負けずに、いつでも大好きな吹奏楽活動を笑顔で再開出来る様に一人一人が準備をしましょう。
今は楽器を演奏出来ないブランク(blank)ではなくブレイク(break)。 そしてブレイクスルー(breakthrough:~を突破する)していきましょう。 ピンチをチャンスに!

先ずは一番大切なこと。
ズバリ、新型コロナウイルスに感染しないようにすること。
(最近ずっと言われていことだからとスルーしないで、もう一度再確認してみてください)

予防対策として、
1)こまめに手洗いとうがいをする。
ドアノブ、スマホ画面や各種スイッチなど様々な物に触れることにより、自分の手にもウイルスが 付きます。こまめな手洗い、うがい、アルコール消毒をしましょう。

2)人混みを避けて外出をしない。屋内では人との距離を十分取り、換気をする。
多くの人がいる環境、対面での距離が近い、一定時間以上密閉した空間にいることで感染のリスクが高まります。

3)睡眠とバランスの良い食事をとり、免疫力を高める。
ウイルスから身を守るために、強い身体作りが大切です。

今回は、3)の免疫力アップの3つのポイントを紹介します。

1.バランスの良い食事をとる。
免疫力のアップには、疲れをためないことや腸内環境を整えること、粘膜を保護することが基本と されています。そのためにはバランスの良い食事をとることが大切で、タンパク質やビタミン、ミネラル、乳酸菌などが含まれている、野菜、肉、魚、卵、豆製品、発酵食品など身近な様々な食品をバランスよく食べることです。 出来るだけ1日3食、時間を決めて各々でバランスよく摂れるといいですね。

疲労回復に役立つ:豚肉、鮭、豆腐、牛乳、緑黄色野菜、レモンなど 腸内環境を整える:ヨーグルト、チーズ、キムチなど
粘膜を保護する:ブロッコリー、カツオ、サバなど

2.質の良い睡眠をとる。
睡眠時間が減ったり、眠りが浅い状態が続くと身体の抵抗力が落ちて、病気になりやすくなります。各自が必要な睡眠時間を確保するように、起床就寝時間など一日の生活リズムをきめましょう。
スマホやテレビばかり見ていないで、就寝時間の2時間前からブルーライトに当たらないようにしましょう

3.ストレスを溜めない工夫をする
ストレスがかかるとコルチゾールというストレスホルモンが分泌され、免疫機能が低下します。
新型コロナウイルス感染症拡大の影響でかなりのストレスが溜まってしまっていることと思います。
ストレスを発散したくてもできないと考えずに、「ちょっと気分転換」で深呼吸をしながらストレッチをしてはどうでしょうか?
この深呼吸をすることは、管楽器を演奏することにプラスになりますよ。
ずっと家にいるとダラダラした生活になります、緊張する時とリラックスする時のメリハリを意識的にとる工夫を各自で見つけてください。

免疫力アップのための3つのポイントでしたが、普段の学校などが休みで生活時間や行動が不規則に なってしまっているかもしれません、自分の身体と向き合い、来るべき吹奏楽活動再開の時に健康な 身体であるように今から実行しましょう。

今回はもう知っているよ。何回も聞いてわかっているよ。という内容でしたが、実行していくのは、 強い意思を持ってやっていかなければ持続できません。ひたすら、活動が再開出来たとき、
好きな楽器を思い存分に奏でることをイメージしてやっていきましょう。

次回は、「音のしくみ」について考えてみます。

Q:休符の多い曲でppしかない曲があります。吹き出すときに唇の振動が始まるまでワンテンポ遅れることがあります。こんな場合、息の量はフォルテと同じ量は出していますが、それでも遅れる確率が高いので、改善するにはどんな練習をしたら良いでしょうか? (房友)

A:楽曲の冒頭や休符の後など音を出す瞬間は緊張しますね。楽器の管中の停まっている空気を振動させてエネルギーを伝えて音にする。自転車に例えて言えば、漕ぎ出すときが一番「全身の使い方や力が必要かつ大切」ということ。ですから実行されている、息の量をフォルテと同じ量で吹奏しているかと思います。

特に音出しのpは繊細な響きを要求されるのでプレッシャーもかかり、なかなか良い音を出すことが難しいですね。そこで、pの音作りについてレッスンしましょう。

先ずは以下を常にチェックしてください。

1.姿勢、楽器の構えが音を出すためにベストであるか?

2.下顎が張った状態になっているか?

レッスン開始!

(1)自然に出す音のダイナミックイメージをmfとして、ロングトーンしながら徐々に音量感を下げていきpにする。

→この時お腹辺りの息の支えをしっかりしてください。

(2)pのイメージの音まで到達したら、その音をキープしてロングトーンを続ける。

→この時の、息のスピード、量、楽器に吹き込む角度、口の中の容積、アンブシュア、アパーチャー、身体のバランス、緊張感などを頭の中にインプットしながらp音のイメージを持つまで繰り返し行ってください。

注意点として、

a)音量を落とし過ぎて響きがなくならない。
b)音のエネルギー感が失われない。
ようにしてください。

(3)p音のイメージを会得したら、今度はそのイメージで初めからp音をロングトーンで出す。

→ブレスはダイナミックに関係なく、しっかり瞬時に奥深く吸い込み楽器に吹奏する。そして立ち上がりのタンギングの舌の動きやタイミングや息のスピードを会得していく。

(4)指揮者やバンドメンバーとのタイミングを自身で工夫して会得していく。

弱奏での豊かな響きで全体を包み込む音を常に目指してください。

また、バンドとしてtubaが複数人いると思います。ppだからといって1本(人)で演奏するとバンド全体の響きがなくなってしまうこともありますので注意が必要です。もし1本の時は、(前にもお話ししましたが)ダイナミックは単に音量の大小ではないことを理解して曲想にマッチした「音」で演奏してください。

演奏会で弱奏が奏でる、お客様の心に寄り添うような音楽が聞こえくるようでとても楽しみです。

回答:五十嵐 清

Q:mpからpppになっていく際にイマイチクリアにできないので、どうすればよろしいでしょうか? (房友)

A:前回、ダイナミックは音量だけで考えないようにしてほしいとお話しさせて頂きましたのでこの点はよろしくお願いします。

さて、文面からはメロディーや和声、フレーズの進行などがわからないのですが、各楽器奏者の演奏テクニックでmpからpppの音にしていくことは大切です。その上にバンド全体の音楽的バランスの観点からのデ クレッシェンドとしてお話しします。

デ クレッシェンドした時、バンド全体が萎んだ感じになる。メロディーがすぐに聞こえ(いなく)なる。止まっているように聞こえしまう。バラバラな感じに聞こえしまう。などの経験をしたことがあるかと思います。

そこで、先ずメロディー(ライン)が最後までしっかり聞こえるようにするように工夫してみてください。そのために音量の大きな楽器やインパクトのある音色楽器の順番でデ クレッシェンドのスタートタイミングをずらしてmp→p(pp)にしてみてください。例えば、デ クレッシェンドのスタート順番を打楽器→金管伴奏系→金管メロディー→木管伴奏系→木管メロディーする。など試してみてください。

音楽が生き生きしているように低音がバンドの響きを豊かに保てるように支えてあげてください。

回答:五十嵐 清

Q:p(ピアノ)でタテ型アクセントを演奏する際に、よりクリアにするにはどうすれば良いでしょうか?(房友)

【A:お久しぶりです。たぶん、房友さんはTubaを演奏されていらしゃったと思います。私は、ダイナミック記号をただ単に音の強弱や大小を要求しているのではなく、曲想からの表情や感情など内面的な表現などを加味した指揮者演奏者の思いそのものを具現化できるメッセージ記号と考えています。

今回の質問では曲名や場面がわかりませんが、一般的にpには、「落ち着いた」「美しい」「静か」「穏やか」「優しい」「うっとり」「温かい」など気持ちが癒されホッとするイメージ。さらに「悲しい、寂しい、淋しい、暗い」などややダメージなイメージの両面を持っていると思います。

pにタテ型アクセントの音の演奏は、その音を短く整え、強調インパクトを伴う「響きのある」音にする。

単独で小節頭に出てくるのか、連続して出てくるのかによっても音のアタックとリリースの仕方が違ってきますが、単独と仮定して、拍重みがありコントラバスのピチカート的に次へ音への移行する響きのイメージで演奏するのはどうでしょうか。

タンギングをして音の出るタイミングを見計らって(他の奏者と揃えて)、息をやや真っ直ぐから上向きにしっかり長めに入れて、小さなツ(ッ)を入れて舌を使って緊張感のある音の止め処理をしてから響きを放つイメージ。

文字に書くとはなかなか難しいですが、「響きに緊張感」のあるように出来るといいと思います。いろいろと試してコレ!という音を手に入れてください。

回答:五十嵐 清

Q:音揺れや音色、音程が改善できる練習方法はありますか?

Q:中学校からホルンを始めた中学2年生です。1年生の頃から音程が悪かったのですが最近伸ばしたときの音の揺れが目立ちます。曲中の伸ばしでも揺れてしまいます。音色も悪くガサガサした音しか出ません。部活では腹式呼吸の練習とロングトーン、リップスラーは毎日行っています。やはりアンブシュアが悪いのでしょうか。2年生になり先輩という立場として少しでも上手に吹きたいです!音揺れや音色、音程が改善できる練習方法などがあれば教えてください。よろしくお願いします!(しゃもこ)


こんにちは、しゃもこさん。
パートナーのホルン(ニックネームはあるのかな?)ちゃんと楽しく演奏をしているようですね!中学生活も後半になって先輩としての責任もしっかり持っていて頼もしいです。

悩みは、

1.長く伸ばしす音符の時に音がゆれてしまう。
2.ガサガサした音に聞こえる。
3.音程が悪い。

ということですが、自分自身で理想、目標の音のイメージをしっかり持っているからこそ、それとのギャップが気になっているので、必ずイメージに合う音が出せるようになります。

練習方法は現在やっているデイリートレーニング「腹式呼吸」「ロングトーン」「リップスラー」で大丈夫ですのでそのまま続けてください。そして次の改善方法を取り入れながら練習してみてください。

1.フォームについて

口(唇)と楽器(マウスピース)とのマッチングの不安定(感)をなくす。
(1)楽器を胸下あたりに両手で持つ。
(2)背筋を程よく伸ばし、頭を背骨に乗せ身体を骨盤で支えるイメージにする。
(3)楽器(マウスピース)を口の高さに持っていき、腰を回さずに、左右の手を上下左右にスライドさせる。
(4)その中で身体に力を入れずに一番フィット感があるところを見つける。
(5)イメージ的に左手の位置が鼻の下あたりの延長上になる。
フォームがしっかりすると、音の揺れやカスレ、ガサガサがなくなります。

2.呼吸について

普段生活している以上に意識した「吸う」「吐く」を会得することが、管楽器の呼吸法です。
(1)ストローをくわえて「吸う」のイメージをつくる。
息が身体のどのあたりまで入っているか?鳩尾の奥の方に到達している感じになります。
そこを「吸う」ポイントとして、常にその位置を意識できるとうに、下半身で支えます。
(2)歌声を出すイメージで、息を連続して送り出す。

3.音程について

スケール、クロマチックの練習
(1)スケール、クロマチックを用いて、音と音の高さの感覚(音程)を、チューナーでガイドを定めて、自分の特徴をチェックしながら、身体にしみこませる。

この時、頭の中で歌うこと、そして楽器から出た音をしっかり聞くことを忘れずに!

家や学校の階段は、何気なく無意識に昇降できます。(たまに転んで痛い思いもしますが…。)

れは身体が階段の幅や高さに慣れ、覚えていてしみついているからです。

(2)音階の音程感イメージをピアノの鍵盤のように隣り合った音の幅が均等ではなく、マリンバのように高音域では幅が狭く長さも短い。低音域になると幅が広く、長さも長くなっている。

この形状の鍵盤を振動させるような、各音域での息の量や長さをイメージして、音の推移をスムーズにできるように練習する。

必ず上手く吹くことができます!頑張ってください。

回答:五十嵐 清

Q:どうしても楽器間で音程が合いません。特に弦楽器と合わせることが難しいです。どうすれば合うようになりますか?(オーケストラに所属した吹奏楽金管さん)

A:オーケストラに入られたのですね。

「音程」が合わない!このことは音楽をやっている誰もが悩む永遠の課題かもしれません。

さて、「音程」は生き物ですから、合わないということは悪いことではありません。しかし、「合わせないこと」ではダメなのです。オケに所属した金管さんからは「合わせたい!」という気持ちが伝わってきます。

奏者は一人一人個性があり、それぞれの考えがあります。「音程」は各自が主張する意見と同じだと思います。意見も目標を同じくした相手との話し合いにより良いものにしていけます。ですから、相手の音を聞き、「合わせていく」というより「寄せていく」「歩み寄る」ようにして、感じあい響きあうことを大切にしてください。

方法としては、チューナー等から各自の基準音を決めてから、他の楽器の音に対して「楽器の管長を変化調整させて」寄せてみてください。口だけで調整すると、音が悪くなってしまいます。いつもベストなフォーム、アンブシュアーそして息のコントロールを心がけてください。

次に楽器の特徴をお話しします。弦楽器は温度上昇で音程(基準ピッチ)が下がる。管楽器は温度上昇で音程が上がる。という正反対の特徴があります。このことを考慮して調整しないとなりません。

また、オーケストラでは弦楽器が多人数パートとして、各弦楽器セクションがユニゾンをしっかり合わせています。多人数弦楽器に少人数の小回りの利く管楽器奏者が寄せていき「合わせどころ」に誘導してみてはどうでしょうか?

吹奏楽でもクラリネットセクションに合わせていくのも、音程が安定している楽器というだけでなく、楽団の中で多人数を占めているからという考え方をすれば理解できるのではないかと思います。

ぜひオケのメンバーと楽器で会話をしていってください。

回答:五十嵐 清

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Q:少しサックスから遠ざかっていましたが、どうしても吹きたい!と思い、また演奏するようになりました。3年間のブランクで、音と音との切り替えの時に間の音などが出てしまいます。どうしてでしょうか?

A:楽器をまた演奏することになっておめでとう!とても嬉しいです。

素朴な疑問(悩み)ですが、サクソフォーンの演奏するため大切なことが隠されています。

サクソフォーンの特徴として、「円錐形」という形になっていることが挙げられます。この形状が弦楽器のような柔らかな音色と力強い迫力のある音量が出せ、そして木管と金管楽器の橋渡しの役割を担えることができます。しかし、音にムラが出やすいというマイナス面もあります。

例えば、左手中指のみ押さえて「ド」から「レ」の運指は、オクターブキーと左右の小指以外のキー全部を押さえます。このようにトーンホール(楽器に開いている穴)の開閉により楽器の鳴る管の長さに変化を生じさせ音階を演奏します。この時、管長が長いと抵抗感が増し鳴りにくく、短いと軽くなります。ですから同じ息を使っても均一な響きにならず、音が出にくい、かすれる、つなぎが悪い。また、音が大きすぎたり、広がったりと自分の意思とは違った音が出てしまいます。リコーダーと運指は同じなのに?と思うかもしれませんが、リコーダーは円柱形の形状ですから均一な響きが出てきます。

このことから、運指と管長(トーンホールの開閉の状態)を考えて「息をコントロール」しなくてはなりません。特にインターバルや音程差のある音のつなぎには気を付けなくてはなりません。そして、運指は迷うことなくスピーディーにかつ指を同じタイミングで動かすこと大切です。

いろいろな音程間でトライしてみてください。

回答:五十嵐 清

■質問を送る>>>>

■五十嵐清先生のQ&Aコーナー「教えてくれっチョ!」が復活!

▲五十嵐 清

皆さまお久しぶりです。「教えてくれっチョ!」を6年間お休みさせて頂きましたが、この度コーナーを復活させて頂けることになりました。復活を支援して下さった皆様、そして関係の方々に感謝申し上げます。

6年間の時の流れは、当時の中学生は成人を迎え、高校生は社会人となり、それぞれ勉学、お仕事やご家庭にとライフスタイルが変わったことと思います。今も吹奏楽やオーケストラで演奏を楽しんでいる方。今は離れているがいつかはまた演奏をしてみたいと考えている方などいらっしゃると思いますが、共通の思いは、学生時代の吹奏楽活動で、目標に向かって頑張り、そこから生まれた仲間との絆の尊さが今の生活の礎となっているのではないでしょうか。そして、このコーナーお休みしている間に吹奏楽活動を始めた方も多くいらっしゃることと思います。

そんな皆さんが今、活動している学校や楽団で、または個人でかかえている悩みや疑問、、相談してみたいことがあれば、どんどん「教えてくれっチョ!」に質問のメールをお送りください。

解決のヒントや次へと繋げる一歩となるように一緒に考えて少しでも楽しく笑顔で音楽活動が出来るように、微力ながらお手伝いさせて頂きます。(五十嵐 清)

■過去のQ&A

■五十嵐清先生への質問や相談は、
下記の投稿フォームよりお送りください

Q:バランスの悪い編成を調整したい

Q:私は今高校2年生です。コンクールが終わり、先輩方は引退となります。
先輩方が引退した後の私達の編成は、クラリネット3人、テナー・サックス1人、トロンボーン1人、パーカッション1人となります。とてもバランスが悪いため、パート変更を考えていますが、五十嵐先生であれば、どのようにパートを決められますか?(PN:匿名さん)


A:コンクールまで頑張った先輩たちの後を継いで、これからの部活動を担っていくこと頼もしいです。

 パート編成ですが、楽器をコンバートして編成を整えるよりも、新しい楽器を練習する覚悟でいるのならば、今の楽器をメインに楽曲や曲途中で楽器の持ち替えを考えて、マルチプレーヤーになってはどうですか?

1.クラリネットの人には、サクソフォーンを練習してもらい、サクソフォーンを4本(パート)にしてみる。

2.クラリネットの1人にフルートを演奏してもらう。

3.テナー・サクソフォーンの人には、楽曲により他のサクソフォーンに持ち替えて、重要なメロディーラインやリズムを重点的に演奏してもらう。

4.テナー・サクソフォーンの人に、クラリネットを演奏してもらい。クラリネット4本にする。

5.トロンボーンの人には、トランペットやフルートを練習してもらう。トランペットでは華やかなメロディーラインが欲しいとき。フルートでは木管の響きを重視した楽曲のとき。

6.パーカッションの人には、ドラムセットや鍵盤楽器を重点的に演奏してもらう。必要なら管楽器を演奏してもらう。

 アイデア次第で可能性十分あります。年度後半を楽しく演奏活動をしてみてはどうですか?

回答:五十嵐 清

Q:顧問がトランペットの調整管にカッターでしるしをつけた

Q:中学校の吹奏楽部の顧問がトランペットの調整管にカッターでしるしをつけました。顧問は手っ取り早い方法だと、吹奏楽で指導を受けたといいます。

私は、子供の父兄で、楽器の専門の知識はありませんが、カッターでキズをつける行為と思いました。

他に方法があるのではないかと話したのですが、全く悪気がないので、子供達は不信感をつのらせています、本当に吹奏楽の中では常識なのでしょうか。教えてください。(PN:木立さん)


A:顧問先生は生徒にチューニングの大切さや目に見える方法で管の長さを調節することを教えたかったことと思います。

 しかし、もっと別の方法でもそのことは教えることはできると思います。

 楽器にカーターで印をつけると、傷がつき楽器を劣化をさせ、音色などにも悪影響になります。大切な楽器ですので、優しく丁寧にしてあげてください。またカッターも使用本来の用途ではないと思います。

 チューニング管の調整は、気候温度や吹奏感でも変わってきますので、目測で十分と思います。

 どうしても目印が必要ならば、油性ペンで印をつたり、小型スチール定規で管を抜く長さを計測してみてはどうでしょうか?

回答:五十嵐 清

Q:2、3曲続けて演奏するとマウスピースがズレてくる

Q:曲(少人数なのでアニメ・ソングなどです)の練習をしていると曲練をし始めた時は大丈夫なのですが2回目、3回目と曲を通してやっていくと口が痛くなり、マウスピースから口がずれたり外れたりします。本番などでも曲が続くとそんなことが起きるので困っています。楽器を使った練習と、楽器を使わなくてもできる練習方法を良かったら教えてください!(PN:西川)


A:文章から金管楽器奏者と思いますので、金管楽器として回答します。

まず、マウスピースのみで安定して、音が出せるようにして下さい。
その際、利き腕でない手でマウスピースを摘むように持ち、
唇に押させ過ぎないようにすることが大切です。

次に、アンブシュアを固めるために、
ブレスする時にマウスピースを唇から外さず
鼻から息を吸ってロングトーンをしてみて下さい。

そして、楽器の持ち方や腕の力、肘の状態を注意、確認して、
楽器を支える筋肉を鍛えて下さい。

アンブシュアが固まったら、口でブレスをして唇のスタミナをつけましょう。

基本がとても大切ですので、地道にやってみましょう。

回答:五十嵐 清

Q:メンタル面が弱くて、先輩がいないと合奏で緊張してしまう

Q:私は高2でアルト・サックスをやっています!
吹奏楽部に入ったのは、高1の4月からなんですが、
なかなか指が速く動きません。
それに、メンタル面がすごく弱くて、
先輩がいないと合奏で緊張してしまいます。
どうしたらいいですか?
よろしくお願いします!(yuri)


A:自分の足りない点を克服しようと頑張っていますね。

指を速く動かすために、各調のスケールと半音階練習を、ゆっくりから一音ごとに息と指をていねいに合わせていく。楽器がなくても、指練習は音名を歌いながらシャドーでやってもいいですね。

次にメンタル面は、練習をしっかり納得するまでやって、考えながら演奏しているから、音楽を感じて自信をもって演奏することです。そして、自分の音を他パートの仲間たちと一緒に合わせ奏でる喜びを感じてみて下さい。
同じ目標をもった支え合う仲間がいるので安心して、練習したことを表現して下さい。
1(人)+1(人)=2(人)ではなく、答えは10(人)それ以上の無限大の可能性が、音楽合奏にはあります。それが音楽の魅力です。

仲間を信じて・・・一人ではありません!

回答:五十嵐 清

Q:スネアとティンパニーの基礎練習の仕方

Q:Perの中2です。
僕は今年のコンクールで
課題曲・・・スネア・自由曲・・・ティンパニをする事になりました。
それぞれの楽器の基礎練習の仕方を教えてください。
よろしくお願いします。
(PN:打楽器)


A:とても大切な楽器を任されましたね。
どちらの楽器も、一つ打ちが大切な練習です。

スネアは、弾みバウンドのイメージ「トコトコ」。
ティンパニーは一つ一つの音(符)を明確にしっかり「トントン」。

このイメージで、余動作、裏拍、余韻を感じチェックしながら
楽曲への応用を意識して基礎練習に励んでください。
そうすると、コンクールでは先生とメンバーと一緒に
納得する演奏ができると思いますよ。

回答:五十嵐 清

Q:詰まった感じの音を直す方法は?

Q:こんにちは。僕は吹奏楽部に入っていて、
中学2年生です。
楽器はトロンボーンをやっています。
そこで質問なのですが、
僕が出す音は、どうしても、
鼻の詰まったような音になってしまいます。
唇に力を入れすぎているのでしょうか?
効果的と思われる練習方法を教えてください。
(PN:ヤマ)


A:自分の音に納得できない! これは大切な上達への第一歩です。

それではチェックポイントをお教えします。

まずは、マウスピースのみで、音をチェックしてください。
その後、楽器に付けて次の事をチェックしてみましょう。

■楽器の構え方、ベル向きのチェック
→左手の握りを強すぎないように、
腕に力を入れ過ぎないように、
脇を締めすぎないようにしてください。

■唇への圧力チェック
→楽器を唇に押さえつけないように、
左右の手の力に力を入れすぎない、
握りすぎないようにしてください。

■口の中の形、容積のチェック
→できるだけ扁平にならないように、
口の中の容積を大きくとれるように、
舌の位置や発音に気をつけてください。

■息のコントロールのチェック
→息のスピード、圧力、長さ、量、方向などで
ロングトーンで響きのある音を出してください。

これらをチェックして、一音一音ロングトーンで
確実に安定した音を出せるように練習してください。

回答:五十嵐 清

Q:基本的なハーモニーの合わせ方について

Q:ハーモニーについて、
1度、5度、3度の和音の合わせ方はわかるのですが、
それ以外のハーモニーの合わせ方が
いまいち分かりません。
1度、5度、3度以外の音の役割と
ハモり方を教えてください。
(PN:キハラ)
(このみ)


A:すでに基本的なハーモニーの合わせ方は

わかっていらっしゃること、たのもしいです。

さて、ハーモニーは音程の高低のみではなく、
各音と全体の音量、音色、ブレンド、バランスなどを
チェックする必要があります。
特にオクターブを含むユニゾンはしっかり合わせてください。

主要三和音でも
長音階と短音階での音程の取り方がありますので、
特に三度音程に気をつけて
純正調の豊かで濁りのない響きを目指してください。

三和音だけでも、
長三和音、短三和音、減三和音、増三和音があります。
これ以外の和音は、
まずは音程をしっかりチューナー等で合わせて、
後は音量、音色、ブレンド、バランスより響きをとってください。

これは四和音などにも有効です。

基音となるベース(ベースが基音でないときもある)から
高音へ順番に演奏したり、
基礎になる和音をきちんと合わせてから、
絡んでいる音を合わせてください。

主な音の性格としては、

Ⅰ主音:文字通り原点基本音。
Ⅳ下属音:主音から下に完全5度の関係の音。
主音と属音を補う。
Ⅴ属音:主音から完全5度の関係の音。
完璧性を持ち響きを決定する。
Ⅶ導音:主音と短2度関係の音。主音に行こうとする音。

などが重要です。

では、耳そして身体で感じた響きを感じてください。

回答:五十嵐 清

Q:小編成バンドで練習効率をあげるには?

Q:吹奏楽マガジンで五十嵐先生を知りました。
私は今、吹奏楽部の高校2年生でクラリネットを吹いています。

私の高校の吹奏楽部は小編成です。

現在は、トランペット(2人)トロンボーン(3人)
ユーフォニアム(1人)チューバ(1人)
クラリネット(2人)サックソフォン(2人 / アルト・テナー)
ホルン(2人)パーカッション(2人)ですが、

先輩方が8月に引退されると、
トロンボーン(2人)クラリネット(2人)
サクソフォン(1人 / テナー)ホルン(1人)
パーカッション(2人)となってしまいます。
とてもバランスが悪い状態です。

パーカッションの1人はまだ初心者で、
スネアもまともに叩けずに、
夏コンに間に合うかどうかといった状態です。

また、2年生は、ほとんどが小学校のブラスバンド経験者ですが、
中学で吹奏楽をやっていたのは私しかいません。

部内の練習効率も悪く、
なかなか上達できない状態でとても困っています。
先生も忙しく、tuttiの時間が少ないのも悩みです。

この状態で夏コンに挑むつもりですが、
吹奏楽部一同、絶対に上の大会へと
進んでいきたいと思っています。

しかし、そのためには
何をどう改善すればいいかが分かりません。
五十嵐先生には、ぜひ、アドバイスや、
良い練習の方法などを教えて頂きたいです。
(このみ)


A:コンクールには、クラリネット(2人)サクソフォン(2人 / アルト・テナー)
トランペット(2人)ホルン(2人)トロンボーン(3人)
ユーフォニアム(1人)チューバ(1人)パーカッション(2人)の
15人編成で出場するという前提でコメントします。

音楽の三要素「メロディー、ハーモニー、リズム」でのパート分け、
4声部の「ソプラノ、アルト、テノール、バス」でのパート分け、
木管、木管金管ジョイント(テナー、ホルン、ユーフォニアム)、
金管、打楽器のセクションでの分け方、
いずれも、今の15人で充分編成ができていますので、大丈夫ですよ。

練習効率をあげることは、
まずリーダーが一人ひとりと話をして、
次の約束をみんなで守れるようになれば、
自分たちの中で、こうしたいとか、
もっと有効に時間を使いここまで達成したい、
など動きが出てくること思います。

その約束として

1.活動に対するけじめをつける。

・練習開始時間の厳守と出席者の確保(時間厳守と出欠の徹底)
毎日決められた時間にきちんと練習が開始できる体制を整える。

・気持ちを集中させる

2.先生のいないときに生徒リーダーを中心に練習を進める。

・先生以上のことをやろうとせずに、
自分の技量で、個人やグループでのチェックをしていく。
基礎練習や曲練習の予定表を作り、掲示して時間を共有する。
(達成するレベルと期限を明確にし、チェック欄を作る)

・苦手を克服、反復練習をするよう常に言う(チェック欄を作る)

3.目標をたて、掲示する(共通点を明確にする)

・1週間に全員が確実に達成ようにテーマを1つ設定
例:ダイナミックスの充実、音形・長さの統一
個人でも合奏でも目標テーマについては徹底的に指示する

・月間では4テーマをクリアできる

・自分で工夫する(受身にならないこと)

自分たちで自発的に練習していき、
先生に見てもらうまでにしなくてはならない内容、
いやできることを明確にして活動をしてみてください。

コンクール後、先輩が引退して、編成が、
クラリネット(2人)サクソフォン(1人 / テナー)ホルン(1人)
トロンボーン(2人)パーカッション(2人)の8人編成となった時は、

音楽の三要素「メロディー、ハーモニー、リズム」での
パート分けを重視して、
小編成の楽譜をその人数で演奏するよりも、
5重奏や8重奏、10重奏などのアンサンブルの譜面を
演奏するといいのではないかと思います。

今の意気込みがあれば、絶対に道は開けます。

回答:五十嵐 清