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■キャッツ・テイルズ(作曲:ピーター・グレイアム)

エルマー・バーンスタイン、ヘンリー・マンシー二、ソニー・ロリンズ、
ジョージ・ガーシュウィン、レナード・バーンスタインへの
トリビュートとして書かれたジャズ・テイスト満開のスーパー・ウィンド・ポップス!!

 今では誰もが知っている『ハリスンの夢』のスーパー・ヒットに始まり、『ゲールフォース』『ザ・レッド・マシーン』『地底旅行』などなど、新作発表のたびに世界中のウィンド・ミュージック・ファンを熱中させているイギリスの作曲家ピーター・グレイアム。

 その書き下ろし新作『キャッツ・テイルズ』が、またまた、ここ日本において、指揮: 秋山和慶、演奏: 大阪市音楽団のCD「ニュー・ウィンド・レパートリー2008」(大阪市教育振興公社、OMSB-2814)に世界初録音された。

 大都会ニューヨークに因んだ、5人の音楽家たちへのトリビュートとして書かれたこの作品は、委嘱時の提案で、当初から、サクソルン属を中心とする金管楽器10名と打楽器2名からなる“テンピース・ブラス・アンサンブル版”、“ブラス・バンド版”、“ウィンド・バンド版”の、異なる3つの編成用のバージョンが企画された野心作で、最も早く2007年に完成したオリジナルのテンピース版は、2008年1月28日、東京文化会館小ホールにおいて、トレイルブレイザーズ・テンピース・ブラスの演奏で世界初演され、やんやの拍手喝采を浴びる大成功を収めた。

 つづく、“ブラス・バンド版”と“ウィンド・バンド版”は、前記“テンピース・ブラス・アンサンブル版”と同じスケッチから作られたが、インストゥルメンテーションの違いを生かす意味で、それぞれ違ったアイディアやフレーズが盛り込まれており、編曲ではない。

 両者はともに2008年1月にオーケストレーションを完了。ブラス・バンド版は、イギリスのブラック・ダイク・バンドのリハーサルにかけられた後、同2月9日、ベルギー・ハレ市のヴォンデル文化センターにおいて、リュク・ヴェルトッメン指揮、ブラスバンド・バイジンゲの演奏で初演され、ウィンド・バンド版は、2月17日、京都府・八幡市文化センター大ホールで行われた前記の大阪市音楽団のCDセッションで世界初録音された。

 ウィンド・バンド版の公開での世界初演は、同4月27日、大阪国際交流センターにおける「大阪市音楽団吹奏楽フェスタ2008」(2日目)のオリジナル・コンサート(指揮: 小松一彦)となる。

 曲は、第1楽章『カタロニア (EBのために) 』、第2楽章『キャットウォーク (HMのために)』、第3楽章『スキャット! (SRのために)』、第4楽章『キャットナップ (GGのために)』、第5楽章『トッカータ (LBのために)』という、独立した5曲構成の組曲。各タイトルのイニシャルが物語るように、エルマー・バーンスタイン、ヘンリー・マンシー二、ソニー・ロリンズ、ジョージ・ガーシュウィン、レナード・バーンスタインという、5人の音楽家へのトリビュートとして書かれ、ジャズ・テイストも満開。おなじみの曲のフレーズの断片やハーモニーを生かしたコントラファクトとなっているので、演奏者だけでなく、聴衆をぐんぐん音楽に引き込んでいく。

 トランペット、トロンボーン、テナー・サクソフォン、ヴィブラフォンなどなど、ソロもビシバシ!! 全曲をやるもよし、どれかの楽章をフィーチャーするもよし。いずれにしても、演奏会場を興奮のるつぼと化す、スーパー・ウィンド・ポップスがここに誕生した!!


【編成】

Piccolo
Flutes (Ⅰ、Ⅱ)
Oboe
Bassoon
B♭ Clarinets (Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ)
B♭ Bass Clarinet
E♭ Alto Saxophone (Ⅰ、Ⅱ)
B♭ Tenor Saxophone
E♭ Baritone Saxophone
B♭ Trumpets (Ⅰ<doub.Flugelhorn(opt.)、Ⅱ、Ⅲ)
Horns (Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ、Ⅳ)
Trombones (Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ)
Euphoniums (div.)
Tubas (div.)
String Bass
Timpani、
Mallet Percussion (Xylophone、Vivraphone)、
Percussion (Drum Set、Bass Drum、Clash Cymbals、Tam-Tam、Triangle、Cowbell、Wood Block、Claves、Guiro)

【楽譜】

2008年、英Gramercy


ピーター・グレイアム Peter Graham


1958年12月5日、スコットランドのラナークシャーの音楽一家に生まれる。エディンバラ大学およびロンドン大学ゴ-ルドスミス・カレッジのエドワ-ド・グレッグスンのクラスに学び、作曲で博士号を取得。1983~86年の間、米ニューヨーク市でフリーランスの作・編曲家として活動。BBCを始め、放送、録音の世界でも活躍し、作編曲を担当したシロフォン奏者エヴリン・グレニーのCDは、“グラミー賞1999”の“ベスト・クラシカル・クロスオーヴァー・アルバム”に選ばれた。“ABAオストウォルド作曲賞2002”に輝いた『ハリスンの夢』ウィンド・バンド版(2000)など、ウィンド・バンドやブラス・バンドのための作品は、新作発表のたびに世界を熱狂させている。現在、マンチェスターのソルフォード大学作曲科教授をつとめている。

■スタースケイプス(作曲:ブライアン・バルメイジェス)

 アメリカのコンテンポラリーな作曲家に興味のある人には、フリーランスのオーケストラ・トランペット奏者として活躍し、ウィンド・バンドだけでなく、オーケストラやアンサンブル、ソロ曲など、幅広いジャンルに作品を書いているブライアン・バルメイジェスは、意外と知られた存在だ。

 教育音楽にも高い関心を持つこの作曲家は、ハイ・スタンダードな曲ばかりでなく、スクール・バンド向きにも実に多くの作品を書いている。

 アメリカ、ノース・カロライナ州のナッシュ=ロッキー・マウント・ミドル・スクール・オーナーズ・バンドのために作曲され、2007年3月23日、ノース・カロライナ・ウェスリーヤン・カレッジのコンサートで作曲者の客演指揮で初演された『スタースケイプス(Starscapes)』もそんな1曲だ。

 夜空に輝く3つの星座、「オリオン座」「りゅう座」「ぺガスス座」にまつわるギリシャ神話からイマジネーションを得た独立した3楽章構成のこの組曲は、演奏時間ほぼ5分30分。使われている楽器の種類も少なく、楽譜上のグレード表示も“Grade 2”という作品にも関わらず、巧みなオーケストレーションにより、小編成から大編成まで、どんなサイズのバンドでも高い演奏効果が期待できる作品となっている。

 ここで各楽章のテーマとなっている星座の本を紐解くと、おもしろいことに、各星座には実にさまざまな神話が残されていることがわかる。この作品は、作曲者がそういった話の中からふさわしいものを自由に選んでイメージをふくらませ、つぎのような音楽として描いたものだ。

 第1楽章「オリオン座 (狩人)」では、まず導入で満天の星空が映し出された後、海の神ポセイドンの子で腕のいい狩人“Orion”の威厳のあるキャラクターが。つづいて、第2楽章「りゅう座 (ザ・ドラゴン)」では、従者を喰い殺したためにフェニキア王子カドモスに成敗された泉の番人である大蛇“Draco”のキャラクターが。そして、最後の第3楽章「ペガスス座 (翼をもつ馬)」では、天馬“Pegasus”が大空を疾駆する様がスピード感あふれるギャロップとして。

 また、曲中、第2楽章の最後の部分には、ライオン・ロアという打楽器を使った“Draco”の叫び声が仕掛けられている。“威嚇”なのか、それとも“断末魔”の叫びなのか。とにかく、これには聴衆を演奏に一気に惹きつけてしまうだけの劇的な効果がある。(バカ受け、間違いなし!!)

 親しみやすく、平易な旋律ラインにも関わらず、ほどよい品性を保ちながら愉しめるこの作品。その作曲者、バルメイジェスの名は、秋山和慶指揮、大阪市音楽団演奏のCD「ニュー・ウィンド・レパートリー2008」(大阪市教育振興公社、OMSB-2814)にも収録されたことにより、日本国内での認知度も一気に高まることだろう!!


【編成】

Flutes (Ⅰ、Ⅱ)
Oboe
Bassoon
B♭ Clarinets(Ⅰ<div.>、Ⅱ<div.>)
B♭ Bass Clarinet
E♭ Alto Saxophones (Ⅰ、Ⅱ)
B♭ Tenor Saxophone
E♭ Baritone Saxophone
B♭ Trumpets (Ⅰ<div.>、Ⅱ)
Horn
Trombones (Ⅰ、Ⅱ)
Euphonium
Tuba
Timpani
Mallet Percussion (Xylophone、Glockenspiel、Chime)
Percussion (Snare Drum、Bass Drum、Floor Tom、Low Tom、Clash Cymbals、Suspended Cymbal、Tam-Tam、Triangle、Wind Chimes、Vibraslap、Lion’s Roar<opt.>)

【楽譜】

2007年 米FJH


ブライアン・バルメイジェス Brian Balmages

1975年1月24日、米メリーランド州ボルティモアに生まれる。父親がトランペット奏者で器楽の教師もつとめるという音楽的環境に育ち、ヴァージニア州のジェームズ・マディソン大学で音楽学士号を、フロリダ州のマイアミ大学で音楽修士号を取得した。作曲活動の傍ら、フリーランスのトランペット奏者として活躍。ミッド・アトランティック・ウィンド・コンダクターズ・カンファレンス等のコンポーザー=イン=レジデンス(座付き作曲家)をつとめる他、ボルティモア交響楽団など、数多くの演奏団体の委嘱作を書いている

■吹奏楽のための「虹」(作曲:田中久美子)

 2006年、フランスで開かれた“第1回ランベルサール国際吹奏楽作曲コンクール”のアルト・サクソフォン協奏曲部門で『セドナ』が第1位に輝いた田中久美子は、ウィンド・バンドのジャンルでも、すでに『海を渡る風』『青銅のイノシシ』『アンダルシア』などの作品がおなじみとなっている。

 そして、このほど、その大阪市音楽団の委嘱による新作『吹奏楽のための「虹」』がレコーディングされ、CD「ニュー・ウィンド・レパートリー2008」(大阪市教育振興公社、OMSB-2814)に収録。楽譜も、フランスで出版されることとなった。

 フランス語で“虹”を意味するL’arc-en-ciel(ラルク・アン・シエル)を欧題にもつこの作品は、前記CDの収録レパートリーとして2007年春に委嘱され、同8月末に完成。その後、非公開の団内試奏(指揮: 吉田行地)をへて、2008年2月18日、京都府・八幡市文化センター大ホールで秋山和慶の指揮で収録された。

 聴衆を前にした世界初演は、同じく4月27日、大阪国際交流センターにおける「大阪市音楽団 吹奏楽フェスタ2008」(2日目)のオリジナル・コンサート(指揮: 小松一彦)となる。

 曲は、単一楽章、演奏時間およそ7分20秒の作品で、溌剌としたマーチ風のイントロに始まる。主部は急~緩~急の構成で、音楽全篇にわたるキラキラ感、そして中間部でトランペット・ソロで導かれる美しい旋律は、聴くもののハートに強く印象に残る。

 ある夏の雨上がりの夕方に見た大きな二重の虹からイマジネーションを膨らませ、『人々の夢や希望が、虹の煌めきとともに、青空に無限大に広がっていきますように』との作曲者の思いが込められた、爽快感あふれるこの作品。

 演奏者にとっても、聴衆にとっても、またひとつ“元気になれる”愉しい曲が登場した!! 


【楽器編成】

Piccolo
Flutes (Ⅰ、Ⅱ)
Oboe
Bassoon
E♭ Clarinet
B♭ Clarinets (Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ)
E♭ Alto Clarinet
B♭ Bass Clarinet
E♭ Alto Saxophones (Ⅰ、Ⅱ)
B♭ Tenor Saxophone
E♭ Baritone Saxophone
B♭ Trumpets (Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ)
Horns (Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ、Ⅳ)
Trombones (Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ)
Euphonium
Tubas(div.)
String Bass
Timpani
Mallet Percussion(Xylophone、Glockenspiel)
Percussion(Snare Drum、Bass Drum、Clash Cymbals、Suspended Cymbal、Tambourine、Triangle)

【楽譜】

2008年、フランスRobert Martin


田中久美子 (たなか くみこ)

香川県高松市に生まれる。京都教育大学音楽科および京都市立芸術大学作曲専修卒業。池内友次郎、藤島昌壽の両氏に師事。1982~83年、フランスのポワチエ夏季音楽大学にてミシェル・メルレ、エディット・ルジェの両氏に師事。作品発表は在学中より始め、神戸市や仙台市の主催コンサートや京都市委嘱による音楽を作曲。作品は、国内の出版社だけでなく、フランスやオランダで出版され、2006年には、フランスの第1回ランベルサール国際吹奏楽作曲コンクールのアルト・サクソフォン協奏曲部門で、『セドナ』が第1位受賞作に輝いた。相愛音楽大学、京都女子大学の各非常勤講師をへて、現在、大阪芸術大学非常勤講師をつとめている。

■アルカディア(作曲:広瀬勇人)

『キャプテン・マルコ』でブレーク。その後にヴァンデルローストに師事し、『ブレーメンの音楽隊』『アメリカン・オーヴァーチャー』『バベルの塔』など、数々のヒット作品を作り出している広瀬勇人(ひろせ はやと)の新作が、2008年春に出版される。

 大阪市音楽団の委嘱で、自主企画CD「ニュー・ウィンド・レパートリー2008」(大阪市教育振興公社、OMSB-2814)に録音のための新作として作曲された『アルカディア』がそれだ。

 この作品は、「パラダイス(アルカディア)へ行くことを夢見た少年が、長い旅に出て、道中さまざまな困難に出会いながらも、それに立ち向かい、ついには夢にまで見た地にたどりつく」という、作曲者の自由な着想から生まれたもので、堂々としたファンファーレに始まり、急~緩~急の主部と、ファンファーレが再現される終結部からなる。旋律ラインもとても親しみやすく、その自由闊達なストーリー展開は、演奏者だけでなく、聴衆の多くの共感を得ることになるだろう。

 また、グレード3程度の作品としいう委嘱時の条件から、インストゥルメンテーションには特殊な楽器を含まず、厚めのオーケストレーションを使って書かれていることから、大編成のバンドでなくても、作曲者の意図を損なうことなく効果的な演奏ができるのが大きな特徴。バンドごとに実情の異なるスクール・バンドにもピッタリの作品だ。

 作品委嘱は、2007年の春で、同年8月末に完成。2008年2月17日、京都府八幡市文化センター大ホールで行われた前記CD「ニュー・ウィンド・レパートリー2008」のセッション初日、秋山和慶指揮、大阪市音楽団の演奏でレコーディングされた。

 聴衆を前に行われる世界初演は、2008年4月26日、大阪国際交流センター大ホールで催される「大阪市音楽団 吹奏楽フェスタ2008」(1日目)のオリジナル・コンサートで、指揮は小松一彦。

 これまでの広瀬作品ファンだけでなく、広く日本中のバンドに演奏されたい魅力的な新作が、ここにまたひとつ登場した!!


【編成】
Piccolo
Flutes (Ⅰ、Ⅱ)
Oboe
Bassoon
E♭ Clarinet
B♭ Clarinets (Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ)
E♭ Alto Clarinet
B♭ Bass Clarinet
E♭ Alto Saxophones (Ⅰ、Ⅱ)
B♭ Tenor Saxophone
E♭ Baritone Saxophone
B♭ Trumpets (Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ)
Horns (Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ、Ⅳ)
Trombones (Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ)
Euphoniums (div.)
Tuba (div.)
String Bass
Timpani
Mallet Percussion (Xylophone、Glockenspiel)
Percussion (Snare Drum、Tom-Tom<4>、Clash Cymbals、Suspended Cymbal、
Hi-Hat Cymbal、Tam-Tam、Bongo、Conga、Triangle)

【楽譜】

2008年、オランダde haske


■広瀬勇人(ひろせ はやと)

1974年12月4日、東京に生まれる。東京ミュージック&メディアアーツ尚美を首席卒業後、米マサチューセッツ州のボストン音楽院に進学し、優秀賞を受賞し卒業。さらに、ベルギーのレマンス音楽院大学院にて研鑽を積み、同音楽院作曲科および指揮科で修士号を取得した。作曲をヤン・ヴァンデルロースト、ピート・スウェルツ、アンディ・ヴォース、松平頼暁の各氏に師事。日本現代音楽協会作曲新人賞入選、ニューイングランド学生作曲コンクール第1位、21世紀の吹奏楽「響宴」入選。数多くの委嘱作品を手掛け、現在、東京ミュージック&メディアアーツ尚美専任講師、洗足学園音楽大学非常勤講師をつとめている。

■セントローレンス川のこだま(作曲:フィリップ・スパーク)

 『ドラゴンの年』『オリエント急行』『山の歌』『ダンス・ムーブメント』『ハイランド讃歌組曲』『宇宙の音楽』などなど。個性あふれる作風で新作発表のたびにウィンドの世界に新風を巻き起こしてきた、イギリスの作曲家フィリップ・スパーク(1951~)。その作品リストに、また1つ、クラシック・テイストのすばらしい音楽が加った。

 2008年、市が開かれてからちょうど400周年を迎えたカナダ・ケベック市の記念祭で初演するレパートリーとして、ケベック州を本拠とするカナダ陸軍のミリタリー・バンド“ケベック選抜軽歩兵軍楽隊(La Musique des Voltigeurs de Quebec)”が委嘱した『セントローレンス川のこだま(Sounds of the Saint Lawrence)』がそれだ。

 作曲・完成は2007年。五大湖を源とし、ケベック州を流域とする大河の名を曲名に取り込んだこの組曲は、「レント ~ モルト・ヴィーヴォ」の第1楽章、「モルト・レント」の第2楽章、「レント ~ ヴィーヴォ」の第3楽章の3楽章構成で、“ケベック民謡組曲”という副題のとおり、ケベック地方で親しまれているつぎの7つの民謡のメロディーが織り込まれている。

・山の彼方(La-haut sur ces montagnes)
・田舎ふうの夕べ(Vellee rustique)
・小さなジャン(Petit Jean)
・澄んだ泉に(A la claire fontaine)
・船乗り万歳(Vive les matelots)
・これが櫂だ(C’est l’aviron)
・居酒屋へ(Au cabaret)

 このうち、“山の彼方”のメロディーは、3つの楽章の導入などに形を変えて現れ、作品全体を結びつける最も重要な役割を果たしている。また、第1楽章には“田舎ふうの夕べ”と“小さなジャン”、第2楽章には“澄んだ泉に”と“船乗り万歳”、第3楽章には“これが櫂だ”と“居酒屋へ”といった具合に、各楽章主部には、それぞれ異なる2曲の民謡が対となって使われている。

 第1楽章で、ドラムのロールにつづき、左右1本ずつ配されたトランペットとバンド内のフルートと鍵盤打楽器の掛け合いで、まるで“こだま”のように響く「山の彼方」のメロディーは、特に印象的で、作品には、これ以外にも“こだま(エコー)”のように聴こえるさまざまな音楽的な仕掛けがある。さすがスパーク!! というところか。その他、雄大な大河の流れを感じさせる第2楽章や、祝祭の愉しさを聴かせる第3楽章の音楽からも、この作曲家のさらなる円熟味が感じられる。演奏効果にあふれた作品だ。

 音楽監督フランソワ・ドリオ大尉指揮、ケベック選抜軽歩兵軍楽隊による世界初演は、2008年4月19日、ケベック市における建市400周年記念祭において。それに先立ち、同軍楽隊の記念CDの録音も行われたが、日本でも、関係者の奔走と特別な許可により、秋山和慶指揮、大阪市音楽団の演奏がCD「ニュー・ウィンド・レパートリー2008」(大阪市教育振興公社、OMSB-2814)にセッション・レコーディングされた。とにもかくにも、世界初演後わずか2日後という、4/21のCD発売を実現した市音に拍手喝采だ!!

 (なお、日本初演は、4/26、大阪国際交流センターにおける「大阪市音楽団 吹奏楽フェスタ2008」(1日目)において。小松一彦指揮で。)


【編成】
Piccolo
Flute (Ⅰ、Ⅱ)
Oboe
Bassoon
E♭ Clarinet
B♭ Clarinets (Ⅰ<div.>、Ⅱ<div.>、Ⅲ<div.>)
E♭ Alto Clarinet
B♭ Bass Clarinet
E♭ Alto Saxophones (Ⅰ、Ⅱ)
B♭ Tenor Saxophone
E♭ Baritone Saxophone
B♭ Trumpets (Ⅰ<div.>、Ⅱ、Ⅲ)
Horns (Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ、Ⅳ)
Trombones (Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ)
Euphoniums (div.)
Tubas (div.)
String Bass
Timpani
Mallet Pecussion (Glockenspiel、Vibraphone、Chime)
Percussion (Snare Drum、Bass Drum、Suspended Cymbal、Bongo、Tambourine、Triangle、Wood Block)

【楽譜】
2008年、英Anglo Music Press


フィリップ・スパーク Philip Sparke

 1951年12月29日、イギリスのロンドンに生まれる。ロンドンの王立音楽カレッジ(RCM)にピアノ、トランペット、作曲を学び、在学中から主にブラス・バンド(サクソルン属を中心とする金管楽器と打楽器によるバンド)のための作品を発表。BBC放送の委嘱でブラス・バンドのために作曲した『スカイライダー』(1985)、『オリエント急行』(1986)、『スリップストリーム』(1987)の3作で、“ヨーロッパ放送ユニオン(EBU)新作バンド曲コンペ”3年連続第1位に輝き、アメリカ空軍ワシントンD.C.バンドの委嘱でウィンド・バンド(木管、金管、打楽器からなるいわゆる“吹奏楽”)のために作曲した『ダンス・ム-ブメント 』(1995)でアメリカの“サドラ-国際作曲賞”を、大阪市音楽団第90回定期演奏会のために書いた『宇宙の音楽』ウィンド・バンド版(2004)で同じくアメリカの“NBAレヴェリ賞”を受賞。世界的な活躍がつづいている。