「英国ブラスバンド通信」カテゴリーアーカイブ

■ブレット・ベイカー ジャパンツアー「大阪音楽大学 24th Trombone Ensemble」

~大阪音楽大学トロンボーン専攻生による演奏会~
日時:2011年11月22日(火)
会場:大阪音楽大学ザ・カレッジ・オペラハウス
主催:大阪音楽大学トロンボーンアンサンブル
指揮:伊勢 敏之
BPレポーター:多田宏江

▲ブラックダイクバンド首席トロンボーン奏者、
ブレット・ベイカー氏と大阪音楽大学トロンボーンアンサンブル
Photo by Naoko Ozaki

 

ブラック・ダイク・バンド首席トロンボーン奏者、ブレット・ベイカー氏が大阪ハーモニーブラスの招きを受け、11月21日に来日しました。今回のツアースケジュールは以下の通りです。

■11月22日(火)  大阪音楽大学24th Trombone Ensemble
~トロンボーン専攻生による演奏会~ ゲスト出演

開場:18:30 開演:19:00
会場:大阪音楽大学ザ・カレッジ・オペラハウス
主催:大阪音楽大学トロンボーンアンサンブル

■11月25日(金) ブレット・ベイカー
トロンボーン公開マスタークラス&ミニコンサート
開場:18:30 開演:19:00
会場:ドルチェ・アーティストサロン大阪(ドルチェ楽器大阪店9F)
主催:株式会社ドルチェ楽器

■11月26日(土) 大阪ハーモニーブラス オータムコンサート2011
ゲスト出演

開場:17:30 開演18:00
会場:豊中市ローズ文化ホール
主催:大阪ハーモニーブラス

▲ブラックダイクバンド首席トロンボーン奏者、ブレット・ベイカー氏と
大阪音楽大学トロンボーンアンサンブル
Photo by Naoko Ozaki

ツアー最初のステージは「大阪音楽大学24th Trombone Ensemble」。第1部は大阪音楽大学トロンボーン専攻生の皆さんによるアンサンブルのステージで、古楽器サクバット4台によるアンサンブルからジャズセッションのステージなど、トロンボーンの幅広い音楽スタイルを凝縮させた素晴らしいステージでした。

第2部はトロンボーン・ラージアンサンブル。オープニングとメインの2曲は専攻生の皆さんのステージ、オープニングとメインの間にはベイカーさんがソロとして出演しました。担当教員であり、第2部で指揮をされた伊勢敏之先生は16年前にイギリスのステージでベイカーさんと共演されたことがあり今回16年ぶりの再会!

ベイカーさんのソロはピアノ伴奏ではなく、トロンボーンのラージアンサンブルで伴奏され、今回の本番のために伊勢先生が編曲されています。英国トロンボーン協会会長も務められているベイカーさんは、早速、伊勢先生の編曲をイギリスに持って帰り、英国トロンボーン協会の演奏会で演奏したいと、伊勢先生の編曲と大阪音楽大学トロンボーン専攻生の皆さんの演奏を大変気に入られていました。

▲ブラックダイクバンド首席トロンボーン奏者、ブレット・ベイカー氏
Photo by Naoko Ozaki


アンコールには東日本大震災被災者の方々のために音楽で応援しようと、ステーヴン・フェルヘルス氏が作曲した”A Song For Japan ~ 日本に捧ぐ歌”をベイカーさんも交えて演奏されました。


▲ブラックダイクバンド首席トロンボーン奏者、ブレット・ベイカー氏(左端)と
大阪音楽大学トロンボーンアンサンブル
Photo by Naoko Ozaki

 

 ツアーは始まったばかり。ベイカーさんの素晴らしいテクニックと音色を出来るだけ多くの方々に生演奏で聴いていただきたいです。幅広いジャンルを演奏されるベイカーさん。楽器を問わず、普段ブラスバンドを聴く機会の無い方にも楽しんで頂けるコンサートです。イギリスに行かなくても日本でベイカーさんの生演奏を聴ける機会! ぜひ、お見逃しなく!!

 11月26日(土)大阪ハーモニーブラス、オータムコンサート2011では会場内でCDの販売・サイン会も行います。日本では手に入らないCDや最新版のCDもご用意しております。是非皆様お越しください。

■英国赤十字社日本津波アピール、チャリティー・ブラスバンド・コンサート

British Red Cross Tsunami Appeal Brass
日時:2011年4月3日(日)19:00~
会場:サルフォード大学
BPレポーター:多田宏江

▲指揮者リチャード・エバンス氏とBritish Red Cross Tsunami Appeal Brass

 

英国ブラスバンド通信第9回目は、2011年4月3日(日)にサルフォード大学(マンチェスター)で行われました「チャリティー・ブラスバンド・コンサート」のレポートをお届け致します。

イギリスのバンズマン達も、被災地&日本を応援!
British Red Cross Tsunami Appeal Brass(英国赤十字社津波アピールブラス)のメンバーは、このコンサートのために集まった有志の奏者達です。演奏会の入場料にあたる£5、また会場で集められたお金は、全てこの「Japan Tsunami Appeal」に寄付されました。

※「Japan Tsunami Appeal」(日本津波アピール)は、英国赤十字社が東日本大震災に向けて寄付金を募る活動で、集められた寄付金は英国赤十字社から日本赤十字社に送られ、被災者の皆さまへの義援金として使われる予定です。

指揮はブラスバンド界を代表するビックネーム
日本にゆかり深いブラスバンド界のビックネーム、リチャード・エバンス氏とロイ・ニューサム氏が指揮者として、イギリスから日本を応援してくれました。

▲指揮者リチャード・エバンス氏

1980年のレイランドバンド初来日に同バンドの指揮者として日本を訪れて以来、日本を訪れ続けているリチャード・エバンス氏。2008年にはナショナル・ユース・ブラスバンド・オブ・スコットランド指揮者として、同バンド日本ツアーにユーフォニアム奏者スティーブン・ミード氏と共に日本全国を回りました。指揮者、教育者、審査員として世界中から引っ張りだこ、大人気のリチャード・エバンス氏は、東京シティ・コンサート・ブラス(TCCB)の指揮者として毎年来日され、同時に洗足学園音楽大学ブリティッシュブラスの指揮をするなど、イギリスのブラスバンド界、また日本のブラスバンドに大きな影響を与えてきた名指揮者です。

▲指揮者ロイ・ニューサム氏

どこから紹介していいか戸惑ってしまうほど、ブラスバンド界の偉大なパイオニア、世界で初めて大学にブラスバンドコースを作ったロイ・ニューサム氏。その世界初のブラスバンドコースがあるサルフォード大学で、多くの優れた指揮者・作曲者・プレイヤーを輩出しながら、今も後進指導・研究活動を続けられています。大人気DVD「ブラス・イン・コンサート」の大会を作られた一人であり、ブラスバンド・サマー・スクールも創設から今も関わり続けていらっしゃいます。ブラック・ダイク・バンドを指揮していた1990年には、ブラック・ダイク・バンド日本来日ツアーで指揮され、世界中で指導者・指揮者・審査員として活躍されています。

日本を応援するために集まってくれたメンバー達
このイベントを中心となって進めたのは、フォーデンス・バンドの日本人プレイヤー、稲葉奈摘さん、木村文香さんと、サルフォード大学スタッフでこれまで多くのサルフォード大学日本人学生のサポートをしてきたマリアン・ガーバットさんです。

プレイヤーの中には、1990年のブラック・ダイク・バンドの日本ツアー参加奏者であり、現在グライムソープ・コリアリー・バンドの首席コルネット奏者であるロバート・ウェスタコットさんや、2008年のナショナル・ユース・ブラスバンド・オブ・スコットランドの日本ツアーで首席コルネット奏者を務め、現在フェアリーバンドの首席コルネット奏者であるイアン・カルロスさんも参加しました。

同じくフェアリーバンドからは、BBC Radio2ヤングブラスソロイスト2010の優勝者であり、フェアリー・バンド首席ユーフォニアム奏者のマシュー・ホワイトさんも参加しました。(http://www.bandpower.net/soundpark/03_bbn/bbn05-1.htm)

フェアリーバンドは今月29、30日にスイスで行われるヨーロピアン・ブラスバンド・チャンピオンシップスのイギリス代表バンドです。日本を応援してくれたフェアリー・バンドのヨーロピアン・ブラスバンド・チャンピオンシップスの活躍を応援したいですね。

▲有名バンドで活躍する奏者達が日本を応援するために集まった

メンバーは次の13団体から集まってくれました。フォーデンスバンド/Fodens Band、フェアリー(ジェニーバ)バンド/Fairey (Geneva) Band、ハマンズソルテアバンド/Hammonds Saltaire Band、ウィンゲーツバンド/Wingates Band、ティルズリーバンド/Tyldesley Band、レイランドバンド/Leyland Band、グライムソープ・コリアリーバンド/Grimethorpe Colliery Band、Fairfield Band、ブラックバーン&ダーウェンバンド/Blackburn & Darwen Band、ヘップワース・クックソン・ホームバンド/Hepworth Cookson Homes Band、マーズデン・シルバー・プライズバンド/Marsden Silver Prize Band、ペンバトン・オールド・ウィガンバンド/Pemberton Old Wigan (DW) Band、Fulham Band

中には遠くロンドンから、フルハムバンドの日本人プレイヤー望月朝子さんも参加されました。演奏者38名のうち日本人は3人。日本人以外の奏者35人と、指揮者の2人は、スタッフそのほとんどがイギリス人でした。

▲有名バンドで活躍する奏者達が日本を応援するために集まった

作曲家たちの大きな協力も!
チャリティーコンサートに必要な楽曲を提供してくれた、作曲家達の大きな協力もありました。日本でも大人気の作曲家ピーター・グレイアム氏やフィリップ・スパーク氏をはじめ、ブラスバンド界で活躍する14名が協力してくれました。リハーサル時間が短い関係もあり、この日のコンサートで全員の曲を演奏することはできなかったそうですが、主催者側は協力してくれた作曲家の曲を出来るだけ多く演奏曲目に盛り込んで、今後もチャリティー・コンサートを開いていきたいそうです。

協力をしてくれた14名の作曲家(プログラム掲載順)
ピーター・グレイアム/Peter Graham、フィリップ・スパーク/ Philip Sparke、アンディー・スコット/ Andy Scott、ピート・ミーチャン/Pete Meechan、ルーシー・パンクハースト/Lucy Pankhurst、ベンジャミン・タブ/Benjamin Tubb、サチ・ウチダ‐ウィッチェリー/Sachi Uchida-Wycherley、ジェイムス・マクファディン/James McFadyen、リチャード・ロック/Richard Rock、アンドリュー・マイヤース/Andrew Myers、ダニエル・プライス/Daniel Price、アンドレア・プライス/Andrea Price、イアン・マックナイト/Iain McKnight、木村文香

温かい雰囲気の中
会場には手作りのお寿司やお菓子などが販売され、売り上げは全て寄付金とされました。さらにラッフルと呼ばれる福引の景品には、カンカシャー・クリケット観戦チケット、マンチェスター・シティ・スタジアムとミュージアム見学ツアー・チケットなど、企業からチャリティーのために提供され景品もありました。演奏会の企画運営・楽曲提供・演奏者・指揮者・カメラマンやスタッフ・景品を提供してくれた企業・会場を提供してくれた大学など、多くの人たちの協力があったチャリティー・コンサート。会場は温かい雰囲気に包まれ、このコンサートだけで£600を「Japan Tsunami Appeal」に寄付できたそうです。

その他、フォーデンス・バンドのホームページでは讃美歌「クリモンド/Crimond」を、今回の東日本大震災で犠牲になった方々に捧げる曲として、ダウンロード料£3を「Japan Tsunami Appeal」に寄付するそうです。

▲指揮者ロイ・ニューサム氏とBritish Red Cross Tsunami Appeal Brass

世界中から応援のニュースが届く中、イギリスのバンズマンたちも日本を思って音楽を奏でてくれました。そんな彼らの思いが少しでも多くの方々に届きますように。

東日本大震災にて被災された皆様に心よりお見舞い申し上げますとともに、被災地の一日も早い復旧・復興を心よりお祈り申し上げます。

<当日演奏された曲目>
March by McKnight
Fujiko by Scott
Bandology by Osterling
Hope by Tubb
Hometown – Furusato arr. by Kimura
Riverdance by Whelan arr by Farr

Olympic Fanfare & Theme by Williams
Meiso by Golland
Reflections in Nature by Redhead
…then followed The Silence by Pankhurst
The Day Thou Gavest by Scholefield arr by Wilby
Pines of Rome by Respighi arr. by Snell

Many thanks for British Red Cross Tsunami Appeal Brass!!
Conductor: Richard Evans & Roy Newsome

※以下、ポジション/名前/バンド名の順

【Principal Cornet】Iain CulrossFairey (Geneva) Band
【Soprano】Richard Poole/Fodens Band

【Cornets】
Tim Hewitt/Hammonds Saltaire Band
Anna Hughes-Williams/Blackburn & Darwen Band
Fumika Kimura/Fodens Band
Rachael Marriott
Dhani Miller/Tyldesley Band
Andy Power/Leyland Band
Steve Taylor/Hammonds Saltaire Band
Jessica Tredrea/Wingates Band
Claire Westacott/Hammonds Saltaire Band
Robert Westacott/Grimethorpe Colliery Band
Trudie Burton/Fairfield Band

【Flugel Horn】
Charlotte Ankers/Blackburn & Darwen Band
Mike Eccles/Fairey (Geneva) Band

【Tenor Horn】
Lynne Campbell/Pemberton Old Wigan (DW) Band
Hannah Drage/Hepworth Cookson Homes Band
Chris Haigh/Fodens Band
Anita Milde/Leyland Band
Helen Varley/Hammonds Saltaire Band

【Euphonium】
Emily Braverman/Marsden Silver Prize Band
James Emberley/Fairey (Geneva) Band
Matthew White/Fairey (Geneva) Band

【Baritone】
Hayley Bain
Natsumi Inaba McDonald/Fodens Band
Matthew Taylor/Fairey (Geneva) Band

【Trombones】
Beth Calderbank
Ian Drayton/Hammonds Saltaire band
Becky Maglone/Hammonds Saltaire Band
Ben Knowles/Fodens Band
Paul Warder/Fairey (Geneva) Band

【EEb Bass】
Matthew Hindle/Fodens Band
Iain McKnight/Leyland Band

【BBb Bass】
Owen Garbutt/Marsden Silver Prize Band
Jonny Shaw

【Percussion】
Asako Mochizuki/Fulham Band
Eve Moulsdale/Fairey (Geneva) Band
Simon Oliver/Wingates Band
Matt Whitfield/Wingates Band

Thanks also to Peter Graham, Philip Sparke, Andy Scott, Pete Meechan, Lucy Pankhurst, Benjamin Tubb, Sachi Uchida-Wycherley, James McFadyen, Richard Rock, Andrew Myers, Daniel Price, Andrea Price, Iain McKnight and Fumika Kimura for writing so much music for us.
Many thanks for Richard Evans & Roy Newsome, Tim and Marrianne!!

■ポール・ロヴァット=クーパー(Paul Lovatt-Cooper) /作曲家、ブラックダイクバンド打楽器奏者

◎インタビュー&文:多田宏江
2010年8月ブラスバンドサマースクールinフラムリンガム

▲Paul Lovatt-Cooper
【ホームページ】http://www.plcmusic.com/(英語)
ビデオのページ(http://www.plcmusic.com/video/)から作品と演奏の様子が鑑賞できます。

 今回のゲストは、今や世界中のブラスバンド・シーンに欠かせない作曲家の一人となったポール・ロヴァット=クーパー 氏です。ブラックダイクバンドの打楽器奏者でありながら、ワードルハイスクールの音楽教員、また音楽教育責任者も務められ、プレイヤーとしても教育者としても忙しく活躍されています。

 日本には2009年6月東京シティ・コンサート・ブラス(TCCB)の招待で来日され、TCCB第19回定期演奏会にて「南極大陸」の日本初演に立ち会った他、自身もソロ・パーカッション奏者としてゲスト演奏されました。同年6月末には「ウィズイン・ブルー・エンパイヤーズ」がイングリッシュナショナルズ(※)課題曲として各バンドにより演奏され、8月にはブラック・ダイク・バンド、オーストラリア・ツアーにて、有名なシドニー・オペラハウスで演奏される忙しさ。いったいいつ作曲する時間があるのか?? 作曲家ポール・ロヴァット=クーパー氏の日常に迫ります!!

※イングリッシュ・ナショナルズ・ブラスバンド・チャンピオンシップス、レポート
http://www.bandpower.net/news/2009/07/02_bb/01.htm

■いつからブラスバンドで演奏をはじめたのですか?

ポール:12歳からです。両親がサルベーションアーミーのオフィサーだったので、私も幼い時、サルベーションアーミーに通っていました。初めはそこでコルネットを渡されたのですが、自分には合わず、パーカッションに移りました。その後、 “私がパーカッションを演奏していること” を、友人が学校の先生に話し、その先生から「学校のバンドでドラマーを探しているんだ。もし君がロックのリズムを演奏できるなら学校のバンドで演奏できるよ」と言われ、独学でドラムを叩けるようにしました。それからブラスバンドでの演奏がスタートしました。

■影響を受けた作曲家はいますか?

ポール:フィリップ・ウィルビー氏、フィリップ・スパーク氏、ピーター・グレイアム氏ですね。学生の頃から演奏したり、聴いたりして、この方々の作品に特に影響を受けました。一番大きな影響を受けたのは、ピーター・グレイアム氏です。

サルフォード大学に進学後、大学でピーター・グレイアム氏に作曲を習い始め、作曲を専攻して卒業しました。その時から、ピーター・グレイアム氏とは家族ぐるみで、今でもとてもよいお付き合いをさせていただいています。数年前、家族とホリデーでフロリダに出かけたのですが、その時同じ道を向こうからピーター・グレイアム氏が歩いてきたことがありました。偶然のことで信じられませんでした。同じ時間に同じ場所にいるんですから、不思議な縁です。

■ポール・ロヴァト・クーパー作品集CD「ウォーキング・ウィズ・ヒーローズ」のジャケットにも、影響を受けた3人の作曲家と、ニコラス・チャイルズ氏が写っていますね。

ポール:そうです。私の人生に大きな影響を与えた4人のヒーロー達と私が写っています。4人とも写真の使用を快く了承してくれて、とても嬉しかったですね。CDのタイトルは、このCDのオープニング曲「ウォーキング・ウィズ・ヒーローズ」から取っています。

▲ポール・ロヴァト・クーパー作品集CD「ウォーキング・ウィズ・ヒーローズ」、
演奏ブラックダイクバンド、指揮ニコラス・チャイルズ

BPショップにて間もなく発売予定 >>>
http://www.rakuten.ne.jp/gold/bandpower/index.html

■日本ではどんな体験をしましたか?

ポール:とても素晴らしい時間を過ごすことができました。日本へは、リチャード・エヴァンス氏の紹介によりTCCBのゲストとして来日しました。一週間の滞在中、宇都宮ブラスソサエティでも合奏指揮の他、マスタークラスも行い、私の作品も演奏しました。TCCBの演奏会では私の作品「南極大陸」を日本初演し、ソロイストとして演奏もしました。日本はとにかく素晴らしいところでした。

滞在中は、どんなものが食べたいかと聞かれて、みなさんが普段食べているものと同じものが食べたいと、なんでも食べました。食文化からも日本の文化に触れたかったためです。日本での食事は、私が普段イギリスで食べるものと全然違いましたが、全ておいしかった。また、日本酒もたくさん飲みました。

■今年1月のバトリンズ()課題曲「スリープレス・シティズ」のスコアにも、この曲は世界の国々を回ったその雰囲気を織り込んだと書かれていましたね。

ポール:スリープレス・シティズは、音楽のポストカードのような作品にしようと思いました。私が訪れた国々の、様々な文化や、街の雰囲気を音楽で表現しました。来日した際は、まだこの作品が完成していなかったので、日本の雰囲気も取り入れたつもりです。

英国ブラスバンド通信vol.4「バトリンズ・マインワーカーズ・ナショナル・オープン・ブラスバンド・フェスティバル」
http://www.bandpower.net/soundpark/03_bbn/bbn04-1.htm

■2008年3月ナショナルズ地区大会3rdセクション課題曲「ザ・ダークサイド・オブ・ザ・ムーン」、2009年の6月のイングリッシュナショナルズ課題曲「ウィズイン・ブルー・エンパイヤーズ」、2010年1月のボトリンズ課題曲「スリープレス・シティズ」と連続で、課題曲にあなたの作品が選ばれていることについてどう思われますか?

ポール:とても嬉しいことですよ。課題曲を作曲することはとても難しいことです。ただ書きたい曲を書くだけではなく、課題曲として奏者に課題を出し、指揮者への課題も作品に盛り込んでいます。それでいて、奏者の方々にも、観客の皆さんにも楽しんで頂ける曲を目指しています。

国内の大会の他、2009年7月のワールド・ブラスバンド・チャンピオンシップス1stセクション課題曲に「イーコィリブリアム(Equilibrium)」を作曲し、2008年のオランダのナショナルズ課題曲にも「ザ・ダークサイド・オブ・ザ・ムーン」が使用されました。

■作曲するときに、何か意識していることはありますか?

ポール:私が作曲する時は、自分も聴きたい音楽を書きたいと思っています。私は映画音楽のファンでもあり、ジョン・ウィリアムス、ハンス・ジマー、クラウト・バデルト、アラン・シルヴェストリ等の映画音楽作曲家が好きです。そのため映画音楽のスタイルで作曲することが多くあります。ですので、私の作品を聴いたときには、空を飛ぶシーンや、水の中に飛び込むアクション的なものをイメージしやすいのではないかと思います。

そして、私が聴きたい音楽、チューンフルな音楽を書きたいです。作曲活動をするなかで、私の作品に対してのいろいろな意見も聞きます。それは、コマーシャルな音楽だというような意見ですが、そういうことを言う人に限って難しい音楽を書く人が多く、では私はどうかというと、そういう音楽はあまり聴きたいとは思わないのです。私が作曲するときは、演奏しても楽しい、聴いていても楽しい、そういう音楽を目指しています。

■作曲のアイディアはどのようにうまれるのですか?

ポール:正直に言って、私もどこから曲のアイディアが来るのか良くわかりません。私の作曲の流れを大きく二つに分けると、最初は音楽がインスピレーションとして頭に流れて、次にそこから、机の前に座ってコードやメロディーを調整していきます。

その最初の段階、インスピレーションとして頭に流れる(=作曲する)のは、普段の生活の中。たとえばシャワー中や、ドライブ中、歩いているときに、メロディーが頭の中を流れます。それでそのメロディーがいいなと思ったら、そこからその音楽を膨らましていきます。

通常、携帯電話のボイスメモを使い、メロディーのメモを記録しておきます。浮かんだメロディーはすぐに消えてしまうので、メモをとっておかないとそのアイディアを失ってしまうのです。これまで使ってないメロディーのメモは約50あります。そして、依頼が来たら、その中からもう一度使うアイディアを選んで膨らまし、作品にしていきます。大体これが上手くいく方法ですね。

私は先ほど述べたように、毎日普段の生活の中で作曲し続けているので、そのアイディアをいつもためておくようにしています。そして頭の中に聴こえてきた音楽を、素晴らしい奏者たちがステージ上で演奏することを想像します。たとえば、リチャード・マーシャルや、デヴィッド・チャイルズが、その音楽を素晴らしい演奏でお客さんに届けているところを想像し、私はその舞台のテンションや、観客からの空気を感じながら、作品を完成させていきます。

■ワードルハイスクールでは、音楽教育責任者も務められていますよね。

ポール:はい、学校では重要な役職についています。私は音楽の授業を担当する他に、学校の全ての音楽活動の責任者でもあります。ワードルハイスクールでは、トレーニングバンド、ジュニアバンド、スクールバンド、ユースバンドの4つのブラスバンドが活動しているほか、ウィンドバンド(吹奏楽)、ビッグバンド、クワイヤー(合唱)、パーカッションアンサンブル、フォークグループの合計9つの団体が活動しています。

私は常に全ての活動が、問題なく円滑に進んでいるか、生徒の近くで活動を見て、必要な時はアドバイスを出します。音楽教員&音楽教育責任者を務め、その他、作曲活動&演奏活動の毎日、とても忙しいですね。

■サルフォード大学在学中は「ロイ・ニューサム指揮者賞(Roy Newsome Conductors Award)」を受賞され、ワードルハイスクールでもビックバンドの指揮をされていますよね。

ポール:はい、指揮も大好きです。今は演奏と作曲をメインに忙しく活動していますが、フリーランスの指揮者として、世界中で指揮しています。この夏は、リチャード・エヴァンス氏が指揮するナショナル・ユース・ブラスバンド・オブ・スコットランド(NYBBS)にエヴァンス氏が招待してくださり、彼とともにNYBBSを今後3年間指揮する契約を結びました。

▲ブラックダイクバンドで演奏するポール・ロヴァト・クーパー氏

■ブラックダイクバンドでの演奏活動について聞かせてください。

ポール:とても楽しいです。ブラックダイクバンドで演奏することは、プロ・フットボール(サッカー)でプレーすることと似ていると思います。フットボール・チームのメンバーは多くの時間を共に過ごします。同じくブラスバンドも、私は多くの時間をよい仲間と共有しながら、楽しい時を一緒に過ごしています。

私のモットーは「熱心に仕事し、熱心に演奏する」です。ブラックダイクバンドは年間60以上のコンサートで演奏し、その他たくさんのコンテスト、ツアーも行っています。いつも私たちのできる最高の演奏を目指し、コンサートではエンターティメントと共に音楽性の高さを大切にしています。同時に、演奏が終わればメンバーとともにたくさん笑い、ジョークを飛ばしたりしています。いい時間をいい仲間と過ごし、演奏も楽しんでいます。

■今後はどんな活動をする予定ですか?

ポール:これからは特に作曲活動において大事な時期を迎える予定です。最近、自分の会社「PLCミュージック」をスタートし、自分の作品を、自分の会社から出版、宣伝する活動を始めました。テレビや映画音楽の仕事も予定していて、これから12か月はとても大きなチャンスが待っていると思います。契約の関係もあり、今はまだこれ以上詳しくは話をすることができませんが、とても楽しみで、少し違う一年になると思います。

■バンドパワー読者に、メッセージ、アドバイス等お願いします。

ポール:みなさんにこの言葉を贈りたいと思います。

「老いたから遊ばなくなるのではない、遊ばなくなるから老いるのだ」
(We don’t stop playing because we grow old. We grow old because we stop playing)
byジョージ・バーナード・ショー

この言葉は「若い心を持ち続けていれば、いくつになっても遊び楽しむことができる」ということを思い出させてくれる、素晴らしい言葉です。(playは遊びと演奏と両方の意味を含んでいる)

また、私の曲を演奏してくださる皆さんへのアドバイスは、とにかく楽しんで演奏してください。私が作曲する時は、演奏者もお客さんも、みなさんがこの音楽を楽しんでほしいという願いを込めて作曲しています。だから、みなさんが私の曲を演奏する時は、演奏を楽しんで素晴らしい時間を過ごしてほしい。音楽とは楽しむこと、素晴らしい時間を過ごすこと、それが全てだと思います。


【ポール・ロヴァト・クーパー&ブラックダイクバンドのCD、DVD】

「ウォーキング・ウィズ・ヒーローズ」が収録されているCD
全英ブラスバンド選手権2007/The National Brass Band Championships of Great Britain 2007
http://item.rakuten.co.jp/bandpower/cd-1538/

「永遠の生命/Vitae Aeternum」が収録されているCD
エッセンシャル・ダイク Vol.8/Essential Dyke Vol.VIII/ブラック・ダイク・バンド
http://item.rakuten.co.jp/bandpower/cd-1593/

「鷲が歌うところ/Where Eagles Sing」が収録されているDVD
ヨーロピアン・ブラスバンド選手権2008/
Highlights from the European Brass Band Championships 2008【DVD2枚組】
http://item.rakuten.co.jp/bandpower/dvd-9328/

【youtube動画 ポール・ロヴァト・クーパー作品】

「永遠の生命/Vitae Aeternum」byブラックダイクバンド
http://www.youtube.com/watch?v=woH-rHaRlP4&feature=related

☆小学校の金管バンドにおすすめ☆
ナショナル・チルドレン・バンドのために作曲された「ドリームキャッチャーズ」byNCBB
http://www.youtube.com/watch?v=77qZEn1RQzM&feature=related

(「ドリームキャッチャーズ」byブラックダイクバンド)
http://www.youtube.com/watch?v=ORJ8kX6dvg4&feature=related 

「エンター・ザ・ギャラクシー」byコーリーバンド
http://www.youtube.com/watch?v=32K9xwE00G0&feature=related

■オーウェン・ファー(Owen Farr) /コーリー・バンド、ソロ・テナーホーン奏者

◎インタビュー&文:多田宏江
2010年8月ブラスバンド・サマースクールinフラムリンガム

▲Owen Farr(オーウェン・ファー)
【ホームページ】http://www.coryband.com/farr/

 今回のゲストは、ヨーロピアン・ブラスバンド・チャンピオンシップスで見事3年連続優勝のハットトリックを決めた絶好調のコーリー・バンドから、ソロ・テナーホーン奏者オーウェン・ファー氏です。とにかく、どこにいても人気者。指導熱心で飾らない人柄の彼を、サマースクールの参加者たちは逃がしません。練習熱心と噂のオーウェン氏ですが、様々な楽器奏者やその練習法を研究し、インタビュー中もインタビュー以外でも様々な人の名前が飛び出し、練習だけでなく大変研究熱心な方でした。

 日本には、2007年に東京シティコンサートブラス(TCCB)のゲスト奏者として来日され、関東でワークショップも行なったそうです。バンド&ソロで世界中を飛び回りながらも、ローカル・バンドでの指揮者、エミネンス・ブラス(金管4重奏)など、幅広く活動されているオーウェン・ファー氏。テナーホーンってどんな楽器? オーウェン・ファーってどんな人?

■どのようにテナーホーンを吹き始めましたか?

オーウェン:私の出身地、ポンティプール(Pontypool)のローカルバンド、ポンティプールバンドで吹き始めました。私が5才の時に兄がポンティプール・ビギナーズ・バンドで楽器を吹き始め、私も翌年6才でジョインし、初めはコルネットを吹きました。その時、一緒に通っていた仲の良い友人は、今もポンティプール・バンドでプリンシパル・トロンボーンを吹いていて、私はコーリーで演奏するとともにポンティプール・バンドの指揮者も務めています。

テナーホーンに移ったのはそれから半年後(7才になる直前ぐらい)、バンドでテナーホーン奏者が足りないから、誰か吹かないかと言われたのがきっかけです。近所の友人がテナーホーンを吹いていて、さらに彼はとても上手だったので、彼の隣に座ったら楽しそうだと思い、自分からテナーホーンに移ることにしました。

■お兄さんが先にバンドに入っていたということですが、ご家族は音楽一家だったのですか?

オーウェン:結局、楽器を続けたのは家族の中で私だけです。小さな頃は、兄と弟と私、3人そろって同じバンドで吹いていました。その後、2人とも別々の道に進み楽器は辞めてしまい、兄弟の中で私だけが音楽家の道に進みました。

■ポンティプール・バンドで吹きながら、ゴウェント・カゥンティ・ユース・ブラスバンド(Gwent County Youth Brass Band)、ナショナル・ユース・ブラスバンド・オブ・ウェールズにも参加されたそうですね。

オーウェン:はい、どちらも参加しました。ゴウェントは大きく5つのエリアに分かれていて、そのエリアの1つがポンティプールでした。毎年クリスマスの時期に、ゴウェント中から子どもたちが集まってゴウェント・カゥンティ・ユース・ブラスバンドのコースが開かれています。演奏会にはゲスト指揮者や、ゲスト・ソロ奏者を招いて行われ、仕組みはナショナル・ユース・ブラスバンドに似ています。

ナショナル・ユースは年に2回、イースター・ホリーデーとサマー・ホリデーにコースが開催されています。スコットランド人はNYBBS(ナショナル・ユース・ブラスバンド・オブ・スコットランド)、ウェールズ人はNYBBW(ナショナル・ユース・ブラスバンド・オブ・ウェールズ)、イングランド人はNYBB(ナショナル・ユース・ブラスバンド・オブ・グレードブリテン)に参加できて、ウェールズ人や、スコットランド人もNYBBに参加することができ、両方に所属することもできます。だいたい自分の国のナショナル・ユースに所属するのが一般的ですね。

■さらに学校のバンドでも演奏されていたのですか?

オーウェン:はい、学校でも仲の良い友人とともに演奏していました。

■小中学生の頃から、既にブラスバンドで大忙しだったのですね。

オーウェン:幼い頃の私たちにとって、ブラスバンドはとても楽しいものでした。それは非常に大切なことだと思います。演奏レベルも高かったけれど、何より楽しかった。子どもたちはブラスバンドをエンジョイしていました。この体験があったからこそ今の私がいると思います。

楽しくなかったら長続きしませんよね。もし、子どもの頃にサッカーをして、楽しくないと思ったら、きっとあなたは今サッカーをしたいとは思わない。子どもたちはシンプルです。もし、親が何かを子どもに押し付ければ、子どもたちはその時はやるにしても、最終的にはやめてしまいます。何か続けるのは彼らがそれを好きだから、続かないのは義務的にやらされたからではないでしょうか。

私の両親は一度も練習しなさいとは言いませんでした。私の先生も、やる気を出させるような工夫はしても、義務的に押し付けることはありませんでした。いつも、それいいね、うまくできたねと言った感じで、子どもにとってはそれが大切だと思います。

今、私はいつも練習しています。それは義務ではありません、人に押し付けられることもありません。うまくなりたいから、私が自分で選んで練習しています。それはロジャー・フェデラーがテニスをすることと同じです。彼も誰かに押し付けられることなく、世界一のテニス・プレイヤーになりたかったから練習した、それと一緒です。

■その頃、影響を受けた人がいたら教えてください。

オーウェン:私が最初に影響を受けたのは、私の最初の楽器の先生、アラン・ウィリアムス(Alum Williams)先生です。先ほども言いましたが、彼は「それじゃダメだ」とか、「もっと練習しなさい」とは一度も言いませんでした。彼は幼い私に音楽の楽しさを教えてくれました。

次に大きく影響を受けたプレイヤーは、私が11才か、12才の頃にゴウェント・ユース・ブラスバンドのゲスト奏者として演奏したロバート・チャイルズ氏です。彼の演奏は、私がそれまで聴いたことの無い衝撃的なものでした。とても高い音、とても低い音、凄く速い音の動きも、音量の幅も、それまで体験したことのない演奏でした。

ポンティプール・バンドでも、学校のバンドでも、私はいつも楽しく演奏していましたが、その時、初めて「私もこんな風に演奏してみたい、演奏できるようになりたい!」と思い、家で練習をしました。その時は、どんな練習をすればあんな演奏できるのかわからなかったけれど、自分の出来る限り考えて練習したのを覚えています。

■オーウェン・ファーさんと言えばコーリー・バンド!ですが、コーリーで演奏する感想を聞かせていただけますか?

オーウェン:世界的な名プレイヤーが揃ったコーリーで演奏できることは、本当に光栄なことです。首席奏者たちは、みな素晴らしいプレイヤーですし、私はそのような奏者に囲まれて、バンドの真ん中(※)に座っていますから、演奏している時はもちろん、自分が吹いていない時も、聴きながら楽しんでいます。(※ブラスバンドにおけるテナーホーンの座席位置)

現在、私はウェールズに住んでいます。家からバンドルームへは車で片道1時間半。1998年大学進学のためマンチェスターに移り、その間、ウィリアムズ・フェアリー・バンドに所属しました。その時も本当に幸せな時間を過ごすことが出来ましたが、大学を卒業し、ウェールズに帰る機会を得て、結婚もし、今はコーリーで演奏しています。素晴らしいバンドで、素晴らしい奏者たちに囲まれて演奏できることを、心から幸せに思います。

■コーリー・バンドで特に思い出深い出来事があったら教えてください。

オーウェン:バンドでの一つ一つの体験はどれも素晴らしいものです。特に昨年は、今まで過ごしたことがないと思うほど、素晴らしい1年でした。ウェリッシュ・オープン、ヨーロピアン・ブラスバンド・チャンピオンシップス、ブリティッシュ・オープン、ワールド・ブラスバンド・チャンピオンシップス、出場したコンテストのほとんどで優勝できたのです。

それはランキングの問題だけではなく、一度バンドが最高地点に達した時(コーリーがそうだったように)、その先バンドはどこへ向かうのか?ということです。頂上まで達すれば、後は下り坂が待っているはずですが、コーリーはそうではなく、頂点を維持し続けました。そこには、演奏面だけではなく精神的な努力がたくさんありました。

丸1年間もその状態を維持し続けるということは、バンド・メンバー全員にとって、とても体力のいることですし、それをやり遂げたということは、とにかく信じられないくらい凄いことです。本当に素晴らしい1年を過ごし、今年はヨーロピアン・チャンピオンシップスで、3年連続優勝のハットトリックも決めました。このまま3週間後のブリティッシュ・オープンでも優勝したいですね。

■今年のブリティッシュ・オープンの課題曲、ピーター・グレイアムの「巨人の肩にのって(On the Shoulders of Giants)」は、2009年のヨーロピアン・ブラスバンド・チャンピオンシップスでコーリーが自由曲として演奏するために委託された作品ですよね。その曲をブリティッシュ・オープンで演奏するのは楽しみですか?

オーウェン:それはもう楽しみですよ。ブリティッシュ・オープンの会場、シンフォニーホールは最も優れたコンサートホールの1つですから、さらに楽しみです。

■奏者として、演奏するにあたって大事にしていることはありますか?

オーウェン:私の普段の練習は90パーセントが基礎練習、10パーセントが曲の練習です。しかし本番の時はどうか。テューバ奏者アーノルド・ジェイコブス氏の本「ソング・アンド・ウィンド」に、私が実践していることを表す言葉があります。

「演奏する時は、音楽のことを考え、息に仕事をさせる」
(When performing, you think about music and let wind do the work)

演奏に必要な要素を含む正しい練習をしていれば、それが習慣として演奏時に働きます。とても速いパッセージの曲など、フィガリング、舌の状態、その一つ一つを全てコントロールしようとしても、演奏中にそんな暇はありません。しかし、正しい基礎練習を積んでいれば“習慣が演奏を可能に”してくれます。演奏する時は、ただ、自分が出来る最高の演奏を目指して集中。深くしっかりと息を吸い、息を吐き出す。そして自分の描きたい音楽を描き出すのです。

それは、赤ちゃんの歩く練習と似ています。赤ちゃんは何度も転んだり立ったりを繰り返しながら、少しずつ歩くことを身につけます。今、大人の私たちが歩く時、歩くことを考えるでしょうか? 考えなくても自然に歩けるはずです。それは既に私たちの習慣として、体に身についているからです。私の練習はそれと同じなのです。全てが“考えなくても、習慣として出来るように”正しい習慣を練習中に身につけることを考えて練習しています。

私は自分のレベルをキープするためではなく、さらに上達するために練習しています。今、31才ですが、32才になった時には今より成長していたい。明日は今日よりも上手くなりたい。トランペット奏者のウィントン・マルサリスは世界的プレイヤーですが、彼もいつも成長を目指して練習しています。これは音楽の一つの特徴ですよね。練習に終わりはなく、はい!今、凄い奏者になった!というようなものではないと思います。音楽にゴールはない、終わりなく続いていくもので、だから楽しい。

▲オーウェン・ファーも参加する金管四重奏「エミネンス・ブラス」のCD
エミネンス・ブラスHP http://www.eminencebrass.com/(英語)

オーウェンとともに、コーリー・バンド、プリンシパル・ユーフォニアム奏者デヴィット・チャイルズ、
ロンドン交響楽団首席トランペット奏者フィリップ・コブ、
ブラックダイク、プリンシパル・コルネット奏者リチャード・マーシャルという豪華メンバー

※このCDは、BPショップでも間もなく発売予定です!

■2007年にはTCCBに招待されて来日されましたね。その時の日本の印象を教えていただけますか?

オーウェン:来日した時は、TCCB定期演奏会のゲスト演奏の他にも、個人レッスンや、バンド指導、学校や大学での指導など、様々なところでたくさんのプレイヤーに会うことができました。音楽的な視点で特に印象的だったのは、皆さんが、ただ音楽を楽しむだけではなく、上手くなりたいという熱心な気持を強く持っていることです。指導の時、私は英語で話しますので、言葉の問題もあるとは思いますが、それ以上に、皆さんとても慎重に私の話しを聞いていました。そして、たくさん質問をしてくれました。

音楽を楽しむこと。これはブラスバンドの特徴の一つでもあります。他の音楽形態と比べても、奏者も観客も音楽を楽しむ、この要素はブラスバンドにおいて、とても強いものです。日本でお会いした人たちからは、楽しむ他に「出来る限りベストを尽くすこと」、その気持ちをとても強く感じました。お会いした皆さんは受け身ではなく、強い気持ちを持っていましたので、素晴らしい姿勢だと思いました。

私はテナーホーン奏者として日本に行きましたが、私が日本に行く前に知っていたテナーホーン奏者はTCCBのひろこさんだけでした(ひろこさんはサマースクールの参加者の一人)。今は日本で多くのテナーホーン奏者にお会いできましたが、日本へ行く前は、テナーホーン奏者やブラスバンドはそんなに多くないだろうから、あまり興味を持ってもらえないのでは?と心配もしました。しかし日本に行ってみると、皆さんはテナーホーン奏者ということよりも音楽家としてとらえ、私は、どの楽器にも通用するアドバイスができたと思います。

間違いなく言えることは、10年後の日本のブラスバンドは大きく成長するだろうということです。昨日ひろこさんにも言いましたが、彼女は会うたびに、さら上達しています。初めてお会いしたのは約6年前ですが、彼女は今、素晴らしい音楽家です。たった6年という、この短い期間で彼女はとっても上達しました。

彼女のように、もし本当にうまくなろうと集中すれば、それは“ただ吹く”と“練習する”という二つの違いを生み出します。ただバンドに行って吹いてくるのと、上手くなるためにバンドに行く、上手くなるために練習する。そこから多くの違いが生れます。

また、リチャード・エヴァンズ(Richard Evans)氏がイギリスから東京に年に2回も指導に行っていること、これも大きな違いを生み出すことになるでしょう。彼は指揮・指導を通して“音楽の楽しみや喜び”と教育とのバランスを操るイギリスでもヨーロッパでも大人気の天才指揮者です。ただ楽しむ、もしくは、ただ厳しくする、のではなく、両方のバランスが絶対必要だと思います。そのような面で、彼はバンドの力を伸ばすための指導と同時に、バンドや音楽の楽しさを伝える世界的指揮者の一人です。

■今後はどんな活動をする予定ですか? またバンドパワーを読んでいるプレイヤーたちにアドバイスがあったら教えてください。

オーウェン:これからも自分の技術を磨きながら、世界中の人々にテナーホーンという楽器を紹介していきたいです。また、作曲家の人たちと連携しながら、テナーホーンのレパートリーを増やしていく活動も、今後とも続けていく予定です。テナーホーンはコルネットよりも大きく、高い音も低い音もコルネットより吹きやすい。またユーフォニアムより小さく、ユーフォニアムよりクリアな音が出ます。ソロ楽器として充分魅力ある楽器なのに、残念ながら知名度はまだ低い。世界中に、テナーホーンのソロ楽器としての魅力を伝えていきたいです。

バンドパワー読者の皆さんへのアドバイスは、今やっていることを続けてください。若い時の私もそうでしたが、たくさんの人たちの意見を聞きすぎると混乱し、自分のスタイルを見失うことがあります。音楽を楽しんで、練習も楽しんで、身になる練習を心がけましょう(たとえば、休憩をちゃんと取って口の筋肉を休める=つけることだとか)。練習は質より量、理論より実践! 心配しすぎずに、間違ってないか考えることよりも、まずは音楽を楽しんでください。

■オーウェン・ファー&コーリー・バンドのCD、DVD
http://item.rakuten.co.jp/bandpower/cd-1237/

■今年のブリティッシュ・オープン課題曲、ピーター・グライアム作曲「On the Shoulders of Giants」ウィニングパフォーマンスが収録されていDVD
http://item.rakuten.co.jp/bandpower/dvd-9378/

■コーリー、歴史的ハットトリックの始まり!
http://item.rakuten.co.jp/bandpower/dvd-9328/

■コーリー・バンドのCD
http://item.rakuten.co.jp/bandpower/c/0000000868/

■「ナショナル・ユース・ブラスバンド・チャンピオンシップス・オブ・グレードブリテン

BPレポーター:多田宏江

▲プログラム表紙

 

 英国ブラスバンド通信第8回目は、4月18日(日)にマンチェスターにある北王立音楽院行われたユースのためのコンテスト「ナショナル・ユース・ブラスバンド・チャンピオンシップス・オブ・グレードブリテン」のレポートをお届け致します。

 この日は、北王立音楽院内にあるRNCMコンサートホールと、RNCMシアターの2つの会場が使われました。部門は、トレーニングバンド・セクション、ジュニア・セクション、中級(Intermediate)セクション、上級(Advanced)セクション、プレミア・セクションの5部門です。

 もともと、この大会はロンドンで行われるナショナルズの週末にロイヤル・アルバートホールで開催されていたそうです。当時は5つの部門にわかれることなく、ユース・ブラスバンド部門として行われ、その後、ユース・ブラスバンドの大会だけを、マンチェスターにあるサルフォード大学に会場を移しました。数年前に北王立音楽院に移って、現在の5部門に分かれたそうです。

 この大会には地区大会がなく、グレードブリテン全体のユース・ブラスバンドを対象として開催されています。また、5つの部門には年齢制限が設定されていますが、どの部門に出場するかは、参加団体の判断にゆだねられています。

<トレーニングバンド・セクション/Training Band Section>
~発足したてのバンドや、楽器を始めたばかりのプレイヤーの音楽への取り組みを
励ます目的~

開演:午前9時30分 結果発表:午前12時10分
会場:RNCMコンサートホール/The Royal Northern College of Music Concert Hall
内容:各バンド15分以内、自由曲
年齢制限:16歳以下(2010年8月31日を基準とする)、年齢外演奏者は4人まで可
審査員 :Simone Rebello、Mark Peacock
賞:金・銀・銅の他、「バンド・オブ・ザ・デイ/Band of the Day」が1団体選ばれる

▲取材協力をしてくれたBolton Music Service所属のBolton Intermediate

<ジュニア・セクション/Junior Section>
~楽器を始めたばかりのプレイヤーや、若いプレイヤーによって構成されるバンド部門~

開演:午後12時30分 結果発表:午後1時40分
会場:RNCMコンサートホール/The Royal Northern College of Music Concert Hall
内容:各バンド15分以内、自由曲(ただしブラスバンドのために作曲された曲を1曲含むこと)
年齢制限:16歳以下(2010年8月31日を基準とする)
審査員 :Simone Rebello、Mark Peacock
賞:金・銀・銅の他、優勝団体は賞金£350と優勝カップ&バナー、準優勝団体は賞金

£200とグラス・トロフィー、3位は賞金£100とグラス・トロフィー。
ベスト奏者賞に奨学金£100とトロフィー。
「モスト・インプルーブド・バンド/Most Improved Band」が1団体選ばれる

<中級セクション/Intermediate Section>
~初心者から中級者向けの部門~

開演:午前9時15分 結果発表:午後4時50分
会場:RNCMシアター/The Royal Northern College of Music Theatre
内容:各バンド20分以内、自由曲と課題曲
課題曲 :Ray Farr作曲「Adventures in Brass」
年齢制限:18歳以下(2010年8月31日を基準とする)
審 査 員 :Malcolm Brownbill、Dr Peter Meechan
賞 :金・銀・銅の他、優勝団体は賞金£350と優勝カップ&バナー、準優勝団体は賞金
£200とグラス・トロフィー、3位は賞金£100とグラス・トロフィー。
ベスト奏者賞に奨学金£100とトロフィー。
「モスト・ポテンシャル・バンド/Most Improved Band」が1団体選ばれる

▲Wardle High School conducted by Lee Rigg

<上級セクション/Advanced Section>
~さらに上へと音楽への挑戦を追求するバンドのための部門~

開演:午前1時55分 結果発表:午後6時55分
会場:RNCMコンサートホール/The Royal Northern College of Music Concert Hall
内容:各バンド20分以内、自由曲と課題曲
課題曲 :Edward Gregson作曲「Variations on Laudate Dominum」
年齢制限:19歳以下(2010年8月31日を基準とする)
審査員 :Derek Broadbent、Mark Wilkinson
賞:金・銀・銅の他、優勝団体は賞金£350と優勝カップ&バナー、準優勝団体は賞金
£200とグラス・トロフィー、3位は賞金£100とグラス・トロフィー。
ベスト奏者賞に奨学金£100とトロフィー。

▲取材協力をしてくれたBolton Music Service所属のBolton Youth

<プレミア・セクション/Premier Section>
~実力を必要とする課題曲と、レベルの高い自由曲が求められる部門~

開演:午前5時15分 結果発表:午後8時10分
会場:RNCMシアター/The Royal Northern College of Music Theatre
内容:各バンド25分以内、自由曲と課題曲
課題曲 :Philip Wilby作曲「Partita」
年齢制限:20歳以下(2010年8月31日を基準とする)
審査員 :Peter Parkes、Sheona White
賞:金・銀・銅の他、優勝団体は賞金£350と優勝カップ&バナー、準優勝団体は賞金
£200とグラス・トロフィー、3位は賞金£100とグラス・トロフィー。
ベスト奏者賞に奨学金£100とトロフィー。

▲St Helens Youth conducted by Mark Bousie

中級セクションからは、大人のバンド顔負けの演奏でした。特に上級&プレミア・セクションは、大人のサード・セクションからファースト・セクションに匹敵するような演奏で、ここから大人のチャンピオンシップ・セクションにすぐ通用する演奏者が出ることを予想させるようなパフォーマンスでした。実際に過去のロー・セクション(フォースからファーストまでのセクション)課題曲を演奏するバンドもありました。

 日本の小学校の金管バンドで毎年、曲選びに苦戦している先生方も多いかと思います。中には「ドラゴンの年」のような、チャンピオンシップ・セクションの課題曲をコンクール等で演奏する小学校もありますが、今回のようなユース・ブラスバンドのコンテストの課題曲や、ロー・セクションの課題曲にも名曲は多くあります。イギリスのコンテストの課題曲として選ばれている時点で、日本のコンテストにも使用できるような1つの目安となると思います。今後はチャンピオンシップ・セクション以外のセクションやユースバンドが演奏する曲にも注目してみると、選曲のヒントがみつかるかもしれません。

 その他ユース・ブラスバンド向けの大きな大会は、この大会の他に2月のブラックプールで行われるエンターテイメント・フェスティバルと、1月のバトリンズのユースバンド部門などがあります。また、ブラスバンドに限らず、様々な種類の音楽でエントリーできる「Music for Youth」も、ユースバンドにとって大きな行事の1つです。

Music for YouthのHP
http://www.mfy.org.uk/show-reel.aspx

■トレーニングバンド・セクション/Training Band Section参加団体
Coleshill Youth Brass (Stephen Fagg) 「バンド・オブ・ザ・デイ/Band of the Day」受賞
Warren Wood Primary School (Peter Christian)
Macclesfield Youth Training (Liz Hudson)
Stockport Schools Junior (Rachel Pavey)
Bolton Intermediate Brass (Toby Hobson)
Poynton Youth Junior (Joyce Hall)
Lions Junior/Beginners (Ian Raisbeck)

■ジュニア・セクション/Junior Section参加団体
Astley Youth (Helen Minshall) 優勝
Chalford Youth (Steve Tubb) 準優勝
Stockport Schools Intermediate (James Holt) 3位

■中級セクション/Intermediate Section参加団体
Elland Silver Youth (Samantha Harrison) 優勝
Rochdale Borough Youth (Eric Landon) 準優勝
Wardle High School (Lee Rigg) 3位
Lions Youth Brass (Nigel Birch)
Poynton Youth (Andy Hirst)
Enderby Youth (Trevor Hounsome)
Macclesfield Youth (Louise Renshaw)
Tewit Youth (Craig Ratcliffe)
Egglescliffe School (Matthew Haworth)
Great Western Youth (Paul Collis-Smith)
Lydbrook Youth (Robert Morgan)
Worcestershire Youth Brass (Nicky Daw)
Cumnock Academy Brass (Craig Anderson)
Fred Longworth High School (Helen Robinson)
M.K. Youth Brass (David Rose)

■上級セクション/Advanced Section参加団体
Carnoustie & District Youth (Michael Robertson) 優勝
Youth Brass 2000 (Chris Jeans) 準優勝
Greater Gwent Schools (Sean O’Neill) 3位
Bolton Youth Brass (Helen Minshall)
Bare Trees Community (John Collins)
Gloucestershire Youth (Ian Porthouse)
Hampshire County Youth (Jock McKenzie)
Tees Valley Youth (Stuart Gray)
Dawsons Berkshire Maestros Youth (John Watts)
Stockport Schools Senior (Philip Pavey)

■プレミア・セクション/Premier Section参加団体
Gwynedd & Mon County Youth (Gwyn M Evans) 優勝
West Lothian Schools (Nigel Boddice MBE) 準優勝
Northamptonshire County Youth (Brad Turnbull) 3位
St Helens Youth Band (Mark Bousie) – Silver Certificate