「楽譜」カテゴリーアーカイブ

アッベルモント: 『ミクロトピア』世界初演

2006年3月15日、ベルギー、アントワープのコンサート・ホールBlauwe Zaalにおいて、3人の若手指揮者が3人の若手作曲者の新作を世界初演するという、とてもポジティブな内容のコンサートが開催された。
 演奏は、CD『カラーズ』や『アイヴァンホー』でおなじみのアントワープ音楽院ウィンドオーケストラで、初演曲は、ベルト・アッベルモントの『ミクロトピア』、ヴォウター・レナールトスの『ヴェニスの夜』、バルト・ピクールの『交響曲第0番』の3曲(いずれも未出版)。
 なお、同コンサートでは、大阪市音楽団80周年記念委嘱作品として作曲され、内外で話題をよんでいるヤン・ヴァンデルローストの『シンフォニエッタ~水都のスケッチ』も演奏され、大いに注目を集めた。

ヒートアップ!! ピーター・グレイアム : 『地底旅行』

ジュール・ベルヌの同名小説をもとに作曲されたピーター・グレイアムの注目作『地底旅行(Journey to the Centre of the Earth)』をテストピース(課題)として、現在(2006年3月)、イギリス各地で開催されているベッソン全英ブラス・バンド選手権(2006 Besson National Brass Band Championships of Great Britain)の”チャンピオンシップ部門”地区予選で、今年もっとも注目を集めたのが、3月5日、ブラッドフォードのセント・ジョージズ・ホールで開催されたヨークシャー地区予選だ。

 これは、ある音楽企業の買収をめぐってブラック・ダイク・バンドのプリンシパル・コルネット奏者ロジャー・ウェブスター(Roger Webster)がバンドを去り、それを受けてブラック・ダイクがグライムソープ・コリアリー・UKコール・バンドのリチャード・マーシャル(Richard Marshall)をプリンシパルに引き抜き、逆にプリンシパルが空席となってしまったグライムソープ(ウェブスターの弟がマネージャーをつとめる)ではなんとロジャー・ウェブスターに参加を求めるという、稀に見る電撃移籍劇が行われて以来はじめて両者がコンテストの場で相まみえる”全英”予選だったからで、加えて今年の地区予選テストピースが、昨年オランダで開催されたヨーロッパ・ブラス・バンド・コンテスト(2005 European Brass Band Contest)でブラック・ダイク(まだウェブスターがプリンシパルだった)がフリー・チョイス(自由選択曲)として初演して度肝をぬき、優勝をかっさらう結果となったグレイアムの『地底旅行』だった偶然も重なって人気も上々。

 結果は、当日の抽選の結果、ノミネート14バンド中、7番目にステージに上がったアラン・ウィズィントン指揮、グライムソープ・コリアリー・UKコール・バンドが200点満点中196ポイントをあげてトップ。この作品をもっともよく知るはずのニコラス・チャイルズ(博士)指揮、ブラック・ダイク・バンドは、わずか1ポイント及ばぬ195ポイントで第2位に終わった。以下、デーヴィッド・キング(教授)指揮、YBSバンドが193ポイントで第3位、デーヴィッド・ロバーツ指揮、ロスウェル・テンペランス・バンドが192ポイントで第4位となり、以上、4つのバンドが10月にロンドンのロイヤル・アルバート・ホールで開催される決勝へと駒を進めることになった。ちなみに、ロンドンの決勝用テストピース(課題)は、今年夏に発表される。

 なお、ヨークシャー地区予選の<ベスト奏者(Best Instrumentalist)>には、ブラック・ダイクのユーフォニアム奏者デーヴィッド・ソーントン(David Thornton)が選ばれ、同じく<ソロイスト賞(Soloist Award)>は、グライムソープ・コリアリー・UKコールのロジャー・ウェブスターに贈られた。


【デーヴィッド・ソーントン関連のCD】David Thornton

■ユーフォニアム協奏曲「3つのストーリー、3つのワールド」
http://item.rakuten.co.jp/bandpower/cd-0599/

【ロジャー・ウェブスター関連のCD】Roger Webster

■ウェブスター・チョイス
http://www.rakuten.co.jp/bandpower/457776/554952/
■パスポート~ミュージカル・ジャーニー
http://www.rakuten.co.jp/bandpower/457776/547783/
■ピーシズ~ロジャー・ウェブスター
http://www.rakuten.co.jp/bandpower/457776/562498/
■ブラック・ダイク・バンド150周年記念コンサート [DVD]
http://item.rakuten.co.jp/bandpower/dvd-9090/

『ハリスンの夢』『レッド・マシーン』の作曲者ピーター・グレイアム、日本で、イギリスで大忙し!!

今月(2006年3月)、イギリス各地では、10月に開催されるベッソン全英ブラスバンド選手権2006(2006 Besson National Brass Band Championships of Great Britain)の地区予選が花盛り。ランク別に5つの部門で競われる”全英”の中でも最も注目されるのは、もちろん最高部門である”チャンピオンシップ・セクション”の行方だ!!

今年は、チャンピオンシップ・セクション各地区予選のテストピースに先日来日したばかりのピーター・グレイアムの『地底旅行(Journey to the Centre of the Earth)』が選ばれているので、作曲者は、アドバイスを求められたり、実際の演奏を愉しむために、今日はこちら、明日はあちら、と大忙し。

『地底旅行』は、ジュール・ベルヌの同名小説を題材として書かれた作品で、2005年のヨーロッパ・ブラス・バンド・コンテスト(European Brass Band Contest 2005)でチャンピオンとなったイングランド代表ブラック・ダイク・バンドが”フリー・チョイス(自由選択曲)”として初演して聴衆の度肝を抜いたばかりの超注目作品。2月には、日本からの委嘱でオーケストレーションされたウィンドオーケストラのための新しいバージョンが、秋山和慶指揮、大阪市音楽団の演奏で収録されたばかり。この前の来日はレコーディング・セッションにおけるコラボレーションのためだった。

滞在中、バンドパワーでは、作曲者ピーター・グレイアムに直撃インタビューを行った。その模様は4月中旬、このページを通じて配信の予定。この春一番の話題。乞うご期待!!


セッション終了後に指揮の秋山和慶さんと市音メンバーから拍手で迎えられる作曲者 『地底旅行』収録中(右はディレクターの森田一浩氏) 八幡市文化センター大ホールにて

オランダの作曲家ヨハン・デメイの新作・交響曲第3番『プラネット・アース(惑星地球)』が世界初演される

『指輪物語』『ビッグ・アップル』でおなじみのオランダの作曲家ヨハン・デメイの新作・交響曲第3番『プラネット・アース(惑星地球)』が、3月2日、オランダ・ロッテルダムのコンサート・ホール、デ・ドゥーレンにおいて、オットー・タウスク指揮、北オランダ管弦楽団の演奏で世界初演された。

初演はスタンディング・オーベーションの起こる大成功で、新聞2紙にも大きく取り上げられ、翌3日にはホーヘフェーン、4日にはフロニンヘンと続いた3日連続の演奏は、いずれも熱狂的に迎えられた。

『プラネット・アース』は、吹奏楽オリジナルから管弦楽版が作られた第1番、第2番とは異なり、最初から管弦楽のために作曲された交響曲で、近く、初演者によるレコーディングも計画されている。

宇宙の音楽/フィリップ・スパーク Music of the Spheres/Philip Sparke

Text:Philip Sparke(フィリップ・スパーク)

 曲名は、「万物の根源は数である」とする古代ギリシャの数学者ピタゴラスによって唱えられた“宇宙は、振動数比率が単純に整数倍である音程によって形成される純正な音階と同じ法則によって、その調和が保たれている”という理論から、導かれている。ピタゴラスは、また、その音程比率は、太陽系内の六つの惑星(当時は、肉眼で観測できた水星・金星・地球・月・火星・木星をもって6個と考えられていた)が太陽から隔てる距離に一致すると信じており、さらに、「それぞれの惑星は固有の音を発し、絶えまなく“天上の音楽”を紡ぎ奏でている(ただし普通の人間には一切聞こえず、ピタゴラスだけがその調べを聴くことができた)」と論じた。加えて、古代ギリシャには“ハルモニア”という言葉があり、これは現代の“ハーモニー/和声”とは異なる、“音階”や“協和音程”を表わすものであって、さらには、その完成美を極めたものとして宇宙の本質そのものを体現する言葉と考えられていた(当時、紀元前500年頃は、歴史上最古の音楽形態である単旋律音楽しか存在していなかった)。このピタゴラスの理論による“六つの音”は、本作品後半の『宇宙の音楽』および『ハルモニア』のセクションで、その土台を構築する主題として使われている。

 作品は、切れ目なく続く3つのセクションからなるが、まず冒頭は、『t=0』を喚起するホルンのソロで幕を開ける。“t=0”とは、「宇宙の誕生(ビッグバン)の瞬間tには、時間・熱量・素粒子・重力・磁力・元素などすべてのものが無(ゼロ)であった」という、いま最も多くの科学者達がほぼ確信している考えを表わしている。そしてこのソロのあとに、時間が生まれ宇宙が拡がってゆく“ビッグバンその後”の描写が続く・・・あまねく森羅万象は、たった一つの“点”の爆発から生まれたのである!

 次の緩やかなセクションは、『孤独な惑星』—地球についての黙想録である。太陽系内の他のどの星にも起こらなかった奇蹟とも言える偶然が、地球の進化を“命を育む惑星”として導いてきた。そして今や我々は、遥かなる銀河に向かって毎日のように、他の知的生命体を探す調査を続けているのである。

宇宙空間のいたるところに出現する『小惑星帯と流星群』は、危険性があるものも無いものも選択の余地なく、地球へ頻繁に迫ってくる・・・その情景を描写した後、この曲は、『未知』への問いを内に秘めながら、壮大なエンディングへと向かう。我々が開発を推し進めてきた大宇宙への飽くなき探究は、我々の将来にさらなる文明の発展をもたらすのか、それとも破滅の時を暗示するものか・・・。

(原文/P.スパーク 訳/黒沢ひろみ)

■宇宙の音楽<吹奏楽版世界初演>は、山下一史指揮、大阪市音楽団の演奏で、2005年6月3日、大阪・シンフォニーホールにて行われた。

「この世界初演のリハーサルと本番に立会うため、“お忍び”で来日していた作曲者本人による、感動の後日談!」を、ここに紹介しよう。

Spending a week in Osaka in the run up to the world premiere of
Music of the Spheres was one of the most remarkable musical experiences
of my life.

Of course, I have known for many years that the
Osaka Municipal Symphonic Band is a world-class outfit –
I have enjoyed hearing them both live and on CD and
the grace and energy of their performances has thrilled me many times.

But I was truly amazed by being able to witness the preparation for
this concert; during the three rehearsals I attended, I could see
how the band was coming to terms with this difficult piece.

I could see and hear the players adjusting their playing on each
run through to improve sound, ensemble and balance.
Each run through was better than the last and the preparation was
planned so that the concert performance saw the band reach its peak.

Only a few times have I heard performances that truly combine control
with flair – usually we get one or the other.
But this was one of those performances;
it had ice-cool technique combines with real excitment.

It was absolutely extraordinary and will remain in my memory for all time.

Philip Sparke


「宇宙の音楽」の世界初演までに過ごした大阪での1週間は、
私の人生において最も貴重な音楽体験の一つとなりました。

勿論、大阪市音楽団が世界でもトップクラスの実力を持った
音楽団体である事は、以前から私も知っておりました。
私は彼らの演奏をライブやCDで楽しんでおり、その気品と
エネルギーに満ちた演奏には、これまで何度も鳥肌が立ちました。

しかし今回、彼らのこの演奏会に賭ける熱意を目の当たりにし、
大変驚かされました。
私はリハーサルに3回立会いましたが、バンドがこの難曲の
辿り着くべき所へと近づいていく様子を、詳しく見る事ができました。

曲を通す毎に、団員が音色やバランス、アンサンブルを調整して、
演奏を高めていく様子を、目と耳で実感しました。
この様に、練習を重ねる毎に前回よりも優れた音楽が生まれていき、
又、演奏会がその到達点となる様、練習も大変良く計画されていました。

私はこれまで、正確な技術と音楽的表現とが完全に一致した演奏を
数える程しか聴いた事がありません
(普通は、そのどちらか一方のみの演奏が多いと思います)。
しかし、今回の初演の演奏は違いました。
冷静で完全無欠な技術と本物の興奮とが、見事に一致した演奏でした。

今回の演奏は文字通り最上級の演奏で、私の心の中に長く留まることでしょう。

(本文:フィリップ・スパーク/訳:広瀬勇人)

 

■宇宙の音楽/フィリップ・スパーク
Music of the Spheres/Philip Sparke

【CD】
http://item.rakuten.co.jp/bandpower/cd-0831/

【楽譜】
http://item.rakuten.co.jp/bandpower/set-8378/
【 宇宙の音楽」関連記事】

○ フィリップ・スパーク作曲『宇宙の音楽』世界初演
http://www.bandpower.net/report01/2005/07/07_omsb/07.htm

○フィリップ・スパーク『宇宙の音楽』がNBAレヴェリ作曲コンテスト
(NBA/Revelli Composition Contest)最優秀作品を受賞
http://www.bandpower.net/news/2005/12/02_sparke/01.htm