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Tuba Group S’s 3rd Concert…普段はなかなか聴く機会のないテューバアンサンブルを堪能!

日時:2007.4月13日(金)19:00開演
会場:北とぴあ つつじホール
レポート:庄司恵子(ユーフォニアム奏者)

普段はなかなか聴く機会のないテューバアンサンブルを堪能!

春の日の気持ちよい風が吹く中、「Tuba Group S’s」のコンサートを聴きに行きました。出演者はテューバ奏者が6人にピアニスト1人。少々マニアックに感じるかもしれませんが、メンバーは主宰の佐野氏のお弟子さんや東京近郊を中心に活躍されている方ばかり。どんな演奏をしてくれるのかな~、と楽しみにしていました。
オープニングはテューバアンサンブルでグリーグの「組曲ホルベアの時代より前奏曲」。この曲とアンコールで演奏された「エニグマ変奏曲」は、テューバアンサンブル5のアレンジでもお馴染み大城衝氏によるもの。さすが、テューバとメンバーを知り尽くした彼
ならではのアレンジと仕上がっていました。
その後は、ソロ曲をテューバ6人が順番に演奏されていきました。そのトップバッターはS’sで唯一の女性で、東京音楽大学を卒業し
たばかりの寺山香澄氏。彼女の音抜けの素晴らしさ、そして美しいハイトーンで奏でるシューマン「アダージョとアレグロ」は、観客
を圧倒させました。素晴らしい!2番手は、確実な技術力を感じさせるカステレーデの「ソナチネ」を聴かせてくれた大城衝氏。3番
手はヴィヴィットブラスの国木信光氏によるテレマンの「無伴奏フルートの為の12のファンタジー」。ふくよかな音色がとても魅力的
でした。
休憩をはさんで、コンサート第2部の初めは、東京金管5重奏団の仲村淳氏によるパーシケッティの「セレナーデ第12番」。演奏前から仲村氏のおちゃめなパフォーマンス(その場にいた人しかわからない 笑)で会場を和やかな雰囲気に…。そして歌心あふれる演奏にうっとり。
5番手は陸上自衛隊中央音楽隊の秋岡一夫氏によるシュミットの「ソナタ」。しっかりとした作品構成に加えて安定感のある演奏で、聴衆を魅了していました。
ソロの部のラストはS’s主宰 佐野日出男氏によるガリアルドの「ソナタ第5番」。素晴らしいテクニックは言うまでもなく、美しいハイトーン、自然でなおかつ説得力のある歌い回しに感動!!!
そしてプログラムの最後は佐野・仲村・秋岡・国木、の4名によるスティーブンスの「マンハッタン組曲」。この曲はユーフォニア
ム・テューバカルテットで演奏される機会が多いだけあって、1stテューバは音域が大変高いのですが、そんなことは全く感じさせずに
鮮やかなプレイをされた佐野氏。そして、息のあったアンサンブルはカッコよかったです!! テューバは、低い音域とそのふくよかな音色の為、オーケストラや吹奏楽等では、ハーモニーの大黒柱を担うことが多い楽器ですが、それだけではなく機動力もあり表現豊かに歌いあげられる楽器なんだなぁ!と改めて感じました。
また、一晩にして6人の個性をしっかり感じ取れ、なかなか聴く機会のないテューバアンサンブルも楽しめるS’sのコンサートはとってもお得感が★
今回は久々のコンサートとのことでしたが(なんと11年ぶりだったらしい)また近々やってくれそうですヨ。今回聴き逃した方も、次の機会はぜひ!!S’sの皆さん、次回も楽しみにしてます!!


■プログラム(全曲初演・編成:全曲 Eup.2 Tub.2)
1.組曲ホルベルグの時代より序曲(E.H.グリーグ/大城衝.編)6重奏

2.アダージョとアレグロ op.70 (R.シューマン)
テューバ独奏 寺山香澄 ピアノ 大堀晴津子

3.テューバとピアノの為のソナチネ(J.カステレード)
テューバ独奏 大城衝 ピアノ 大堀晴津子

4.無伴奏フルートの為のファンタジア(G.P.テレマン)
テューバ独奏 国木伸光

5.無伴奏テューバの為のセレナーデ12番 (V.パーシケッティ)
テューバ独奏 仲村淳

6.テューバとピアノの為のソナタ(W.シュミット)
テューバ独奏 秋岡一夫 ピアノ 大堀晴津子

7.ソナタ第五番 (J.E.ガリアルド)
テューバ独奏 佐野日出男 ピアノ 大堀晴津子

8.マンハッタン組曲(J.スチーブンス)
4重奏1st佐野 2nd仲村 3rd秋岡 4th国木

アンコール:エニグマ変奏曲より第10変奏 (E.エルガー/大城衝.編)6重奏

坂岡裕志リサイタル…楽器の特長を生かしたハイレベルな演奏と透明感のあるピュアな音色にメロメロ…

 楽器の特長を生かしたハイレベルな演奏と
透明感のあるピュアな音色にメロメロ…

日時:2007年6月22日(金)19:00開演
会場:大阪・三木楽器 開成館サロン
レポート:深川雅美(ユーフォニアム奏者)

2007年6月22日(金)19:00、三木楽器 開成館サロンにおいて開催された坂岡裕志氏のリサイタルに足を運びました。

会場には、この日を待ちわびていた沢山の方々が来場されていました。

1部と2部合わせて全9曲。坂岡氏の思い出の曲やこだわりの曲など、ショートピースを集めた盛り沢山のプログラムで、私自身、初めて聴く曲が多かったこともあり、とても興味津々でした。

プログラムは次のとおりです。

1.K.スホーネンベイク/トワイライト・セレナーデ
2.E.レウェリン/マイ レガース
3.B.トルーア/ラブ・ソング
4.中澤道子/ゾイサイト
休憩
5.J.ハートマン/ケンタッキーの我が家の主題による~グランドファンタジア
6.R.レッドハート/Confort my people
7.D.ウーバー/アクロバティックス(Euph.Duo)
8.G.ビゼー/歌劇「真珠取り」より 聖なる寺院の奥深く(Euph.Duo)
9.I.ボサンコ/グローリアス・リウ゛ァレーション
(他、アンコールを3曲)

全体にとても聴きやすい曲で構成させており、通常リサイタルというと、かたく、かしこまった雰囲気で、ついつい肩に力が入ってしまそうなものが多い中、ユーフォニアムを知らない方でも楽しめる、構成となっていました。坂岡氏の思い出や、こだわりはプログラミングだけにとどまらず、使用する楽器にもありました。
1つの楽器でプログラムを進めていくにも、かなりの集中力や精神力が必要とされるにもかかわらず、プログラム1、4、6、9曲目はいつも愛用されているユーフォを使い、2、5曲目はフロントベルのユーフォを使用。3曲目は曲の中で愛用されているユーフォからバリトンホーンに持ちかえて演奏される場面があったり、7、8曲目のデュエットではカナディアンブラスモデルのユーフォというぐあいに、さまざまな楽器が登場! 曲が進むにつれ、次は何の楽器が出てくるのだろうかとワクワクさせられ、それぞれの楽器がその効果を如何なく発揮していたように思いました。私が知るかぎり、ユーフォニアムのリサイタルで、ここまで沢山の楽器を使ってものはなかったように思います。

さて、演奏の方ですが、1曲目は少々緊張されていたようにも思われましたが、そこはさすが!これまでの実績と経験で、曲が進むにつれどんどん良くなっていくのを感じました。
時に優しく、時に激しく坂岡節を聴かせ、楽器の特長を十分に生かしたハイレベルな演奏。音色もとてもピュアで、透明感があり、とろけそうになった方も多くいらっしやったのではないでしょうか。

今回は大阪音楽大学准教授で坂岡氏の大学の先輩にあたる木村寛仁氏がゲストとして登場し、息の合ったすばらしいデュエットを2曲聴かせてくれたのですが、そのなんともエレガントな演奏は、多くのユーフォニアム・ファンの心をがっちりとつかんでいましたね。本当にすばらしいデュエットでした。

あと、忘れてはいけないのがピアニストの竹村美和子さんの素晴らしいサポート。坂岡氏との共演はの久々とのことでしたが、それを感じさせない絶妙なサポートで、安定したテンポ感、確実なタッチは、本当に素敵でした。

全体を通しては、これだけハードなプログラムをこなせるスタミナと集中力の高さは、すばらしいの一言。また、全てにおいて聴く側の事を良く考えた内容は、今までに感じたことがないほどの満足感を得ることができました。

リサイタル当日はあいにくの雨で、気持ちまでジトッとしがちでしたが、そんな雰囲気すら吹き飛ばしてくれる心地よい時間を過ごさせてくださった坂岡氏と共演者のお二方に心から拍手を贈りたいと思います。

フィルハーモニック・ウインズ 大阪 第3回定期演奏会…楽団としてはまだ発展途上だが、大きな可能性と今後の活躍を期待させるコンサートだった

日時:2007年4月5日(木)
会場:大阪の森ノ宮ピロティホール
レポート:中井正宏

3月18日の第10回「響宴」での初の東京進出を果たした興奮の余韻もまだ残る4月5日にフィルハーモニック・ウインズ 大阪の第3回定期演奏会が大阪の森ノ宮ピロティホールで開催されました。
会場では初の自主制作となる5枚目のCDもリリース日を前に先行発売されており、春休み中の中学生や高校生も多く訪れ、大入りの客席で開演を待つことになりました。
音楽監督の木村吉宏氏の指揮で、前半は吹奏楽のオリジナル曲、後半が管弦楽曲からの編曲というオーソドックスな二部構成。その前半で作品が演奏されるマーク・キャンプハウスとマーティン・エレビーとは、ミッドウェスト・クリニックで団員や役員が直接会うなどして親交を深めており、プログラムにもそれぞれ作曲者からのメッセージが寄せられていました。

さて、コンサートはマーク・キャンプハウスの「シンフォニック・ファンファーレ」で幕を開けました。昨年11月のレコーディングでは同じ作曲家の「シンフォニック・プレリュード」が収録されており、立て続けにこの作曲家の新作を演奏していることになります。一聴しただけでそれとわかるキャンプハウスらしいハーモニーによる金管楽器の輝かしい響きが演奏会の開幕にふさわしく、会場の雰囲気をいやが上にも盛り上げます。

樽屋雅徳がギリシャ神話のカストルとポルックスの兄弟をテーマに作曲した「ディオスクロイ」に続いては、この日のメイン・イベントとも言うべきマーティン・エレビーの「トリスタン・エンカウンター」でした。
この曲は、元々は1999年の全英マスターズ・ブラスバンド選手権のために委嘱されたブラスバンド曲で、その後各地のコンテストでもたびたび課題曲として選ばれ、また自由曲としてもよく演奏されています。ワーグナーの楽劇「トリスタンとイゾルデ」の前奏曲をモチーフに、主題を提示する前奏と14の変奏という構成で書かれ、半音進行や三全音音程が印象的に使われた曲です。楽劇のストーリーを彷彿とさせるように、衝撃的な激しい部分とロマンチックな美しい部分が交互に表れ、高い技術を要するソロもふんだんに盛り込まれ、悲恋の物語を彩っているようです。
フィルハーモニック・ウインズ 大阪は2005年に行った最初のレコーディングで「クラブ・ヨーロッパ」を録音し、昨年10月の第2回定期演奏会ではハインツ・フリーセン氏の指揮で「パリのスケッチ」を取り上げるなど、エレビーの作品に積極的に取り組んでおり、作曲者と直接コンタクトを取る中でこの吹奏楽版の委嘱に至り、この日がその吹奏楽版の世界初演となりました。
ブラスバンド曲を吹奏楽に編曲すると、色彩の多様性を得るのと引き替えに失うものが多くあります。特にこの曲はエレビーがブラスバンドを知り尽くしたうえでその機能をフルに活かして書いたブラスバンド界の至宝とも言える名曲であり、その意味で実際に聴いてみるとこの種の編曲作品でよく感じる違和感がなくはなかったというのが正直なところでしょう。
もちろん吹奏楽の曲として聴くと、センスのよいオーケストレーションが心地よく響いてきましたし、楽器の音色の対比が原曲は異なる魅力を引き出していたように思います。メンバーにとっても相当難しい曲だったかと思いますが、果敢に挑戦し、熱演を披露してくれました。

後半はコンクールなどでもよく演奏されるレパートリーで、この夏に自由曲として演奏するらしくこれを目当てに来た学生たちも多かったようです。
鈴木英史による喜歌劇「ロシアの皇太子」セレクションは比較的新しい編曲ですが、これまでたびたび演奏されているこの編曲者の他のセレクションと同様に、アリアや舞曲などを自由に構成してポップス的な要素を持ったメドレー風に接続しており、変化に富んだ陽気な曲が次々と移り変わり目の前を通り過ぎていきます。

そして最後はマルコム・アーノルドの映画音楽からまとめられた管弦楽組曲「第六の幸福をもたらす宿」で堂々たるクライマックスを迎えました。
盛大な喝采に応えて、アンコールには木村吉宏氏の編曲によるピエトロ・マスカーニの歌劇「友人フリッツ」の間奏曲が朗々と歌われ、コンサートの幕を閉じました。

フィルハーモニック・ウインズ 大阪は結成こそ1999年4月ですが、1年半前に現在の楽団名になってからの定期演奏会はまだ3回目であり、若い演奏者で構成されていることからも、やはりその若さがいい意味でも悪い意味でも前面に出た演奏と言えるでしょうか。木村吉宏氏の指揮や要所を押さえるプレーヤーの存在でその勢いが見事に昇華してハッとさせられる瞬間もあれば、踏み込みの甘さや何か物足りないものを感じる部分もあったように思います。
楽団としてはまだ発展途上とも言えるかもしれません。しかし、大きな可能性と今後の活躍への期待を十分に感じさせるコンサートでした。

■プログラム
○シンフォニック・ファンファーレ(マーク・キャンプハウス)
○ディオスクロイ ~航海の守り神カストルとポルックス~(樽屋雅徳)
○トリスタン・エンカウンター -吹奏楽版委嘱世界初演
(マーチン・エレビー)

○喜歌劇「ロシアの皇太子」セレクション
(フランツ・レハール/鈴木英史編曲)
○管弦楽組曲「第六の幸福をもたらす宿」(マルコム・アーノルド)

アンコール:

○歌劇「友人フリッツ」から「間奏曲」
(ピエトロ・マスカーニ/木村吉宏編曲)


 

ディオスクロイ~航海の守り神カストルとポルックス~/
OSAKAN Live Collection Vol.3/
フィルハーモニック・ウインズ大阪

 【BPショップで購入する】

http://item.rakuten.co.jp/bandpower/cd-1222/

【演奏団体】フィルハーモニック・ウインズ大阪
(Philharmonic Winds Osakan)
【指揮者】木村吉宏(Kimura Yoshihiro)

【発売元】有限会社 四つ葉印グリーン・ミュージック

 ※2007年4月5日/大阪:森ノ宮ピロティホールにてライブ録音

【収録曲】

1. シンフォニック・ファンファーレ/マーク・キャンプハウス
Symphonic Fanfare/Mark Camphouse

2. ディオスクロイ~航海の守り神カストルとポルックス~/樽屋雅徳
The Dioskouroi~Guardian angel Castor and Pollux of a voyage~/Masanori Taruya

3. トリスタン・エンカウンター/マーティン・エレビー
Tristan Encounters/Martin Ellerby

4. 喜歌劇「ロシアの皇太子」セレクション/フランツ・レハール(arr.鈴木英史)
Der Zarewitsch -Selections/Franz Lehar(arr.Eiji Suzuki)

5. 管弦楽組曲「第六の幸福をもたらす宿」/マルコム・アーノルド
The Inn of the Sixth Happiness/Malcolm Arnold
I )ロンドン・プレリュード London Prelude
II)ロマンティックな間奏曲 Romantic Interlude
III)ハッピー・エンディング Happy Ending

6. マーチ「ブルースカイ」/高木登古
March Blue Sky/Tohko Takagi

第100回定期演奏会を迎えた佼成ウインド!その舞台裏を探る。~秋山和慶氏と北爪道夫氏に聞く~

 

 1960年創団以来、常に我が国の吹奏楽界をリードしてきた東京佼成ウインド・オーケストラ。新しい響きを求め続け第100回定期演奏会を迎えた。

“from one to infinity”と名打った記念すべき100回目を迎えるTKWO定期演奏会。この演奏会では、佼成ウインドがこれまでに委嘱してきた作品群から、選りすぐりの曲を再演することで、これまでの足跡を振り返ると共に、北爪道夫の新作「雲の変容」を世界初演し、無限に広がるであろう吹奏楽の未来を展望した。満員の聴衆で埋まったホールは、過去にコンビを組んで多くの名演[注1]を残した秋山和慶。秋山の知的かつ精緻な音楽性がTKWOと融合して、壮大で新しい世界を切り開いた。

記念コンサートということで、リハーサルからゲネプロ、さらに終演後の打ち上げまでお付き合いをし、このジャンルのトップを走るプロ・バンドを余すところなく堪能させていただいたが、とくに今回の指揮者”秋山効果”がいたるところで発揮されており、ライブとして超一流の技を見せつけられた感がある。
指揮者、作曲者のおふたりにお話を伺った。

[注1]=記念コンサートに起用された秋山の佼成との付き合いは意外に古く、初期の定期演奏会(早くも第4回定期に登場)、また1979年から84年にかけて都合8枚の「東京佼成ウインド・オーケストラ・オリジナル・シリーズ」と名を打ったLPを制作している(これは後に6枚のCDとして再発売)。

■指揮者、秋山和慶氏に聞く

▲熱く語る秋山和慶氏(09.2.17)

-佼成との記念定期について

 「25年位前にはずっとお付き合いがありましたが、僕が外国に行っていた期間ご無沙汰でした。しかし、どういう訳か今回100回ということで声がかかりまして、何か古巣に帰ったようで嬉しいですね。東京佼成ウインド・オーケストラの熱心で、真摯な音楽創りには敬意を表します。また100回を数える定期演奏会の指揮者に選ばれたことはとても光栄に思います」

-記念コンサートの選曲について

「これは、佼成さんの方が新作を含む委嘱作品を構成したようです。この団体の歴史を知るという意味でも大変興味深いプログラムですね」

-佼成ウインドについて

「前の時とは時間が経ちましたからずいぶん若返っているように感じました。しかし、全員で音楽を創るという前向きさは今も昔も変わりません。ともするとプロ・オケなどでは”練習、早く終わろう”ということや演奏が出来ていないのに”なんで何度も繰り返し演奏させるんだ”みたいな意見がでることもあります。佼成さんは30年前と変わらず、上手くいかなければ”もう1度やってください”といった良い意識が継承されています。

-コンサートの聴きどころは?

「やはりウインド・オーケストラなので、管楽器の色彩豊かな響きを存分に楽しんで欲しいと思います。また北爪道夫先生の新作も非常に複雑なからみで書かれています。そのサウンドがどのようにホールに響くかということも聴きどころと言えるでしょう」

-吹奏楽を指揮して

「僕はもともとピアノ弾きでしたが、学生時代はホルンを演奏してもちろん吹奏楽も経験していますから、あの響きがやはり好きなんですよね。ということでチャンスがあれば吹奏楽は指揮したいと思っています。最近ではオーケストラでも吹奏楽の曲を演奏する機会が増えました。これからはそういった企画もどんどんやっていきたいと思っています」

-オケと吹奏楽の音楽作りについて

「オケも吹奏楽も作曲ではなく演奏面だとほとんど同じだと思っています。もちろん弦楽器がないということは大きいと思いますが…。例えば演奏する時のバランスですが、それはオーケストラでも難しいことです。リムスキー=コルサコフやR.シュトラウスのようにオーケストレーションが上手い作曲家のものはそのままやれば良いのですが、ベートーヴェン、ブラームス、シューマンなどは細かくバランスを作ってあげなければなりません。つまり指揮者・指導者は演奏をして今響いている音に対して常に理想的なバランスをとるということです。そういった練習、本番の積み重ね、長い経験を通してプレーヤーも育っていかなければいけませんね。これは時間のかかることです」

-先生からみた吹奏楽とは?

「コンクールはとても大切な要素があるのですが、それが最終目的になってしまうといけませんね。音楽とは幅の広いものですから練習した通りを演奏するのではなく、本番でどう動けるか、ということが非常に大切だと思います。ステージで鳴っている音は常に生きているのですから。また、吹奏楽の良い作品を増やすためには、作曲家の人たちが興味をもってくれる演奏を、そして誠意をもってくれる演奏とは何なのか、ということをもう一度考えなければいけません」

-指揮者、秋山和慶の今後の目標は?

「とくに今までと変わりはありませんが東京交響楽団と40年間やってきて、今は広島、九州とも同時にやっています。近年は地方のオケも大変力をつけて非常に面白い状態になっています。聴衆も大変増えています。今後はこれらを主体に日本の音楽をしっかりと育てていきたいと思っています」

-ありがとうございました。先生の今後の活躍を楽しみにしています


■委嘱作品「雲の変容」(世界初演)について      作曲家:北爪道夫

▲委嘱作について熱く語る北爪道夫氏

-完成おめでとうございます。

「いつもながら仕上がりが遅くってね(笑)。目に少々異常がおきて、五線が十本に見えていました。バンド維新から続いたのでストレスでしょうか。さて、今回の作品を書いていて感じたのは”バンドって難しい”ということでしょうか。難しいことはプロの佼成さんがやっても難しいっていうか、シンプルなことがまた難しいんですよね」

-今回の委嘱作「雲の変容」の狙い

「これからの”吹奏楽のありかた”についてでしょうか。これは言葉にするのは簡単ですが、それを音にするのは至難の業です」

-合奏の後、奏者と熱心に話し合っていますね

「いろいろバランスのとり方とか大変で、曲の形が見えてくると少し楽になります。吹奏楽は狙いを絞って演奏しないと、オーケストラよりも種々雑多なものになってしまう。しっかりとコントロールしていかないと放し飼いでは飽和状態になるでしょう。ライオンやトラを放牧しているようでは困ります。そうなるとネズミなんかは逃げまくるしかないし、ネズミの存在もわからないみたいになりやすいから。しかし、佼成ウインドさんなら大丈夫だと思っていたんですが、練習の初日ではやはり吹奏楽の体質は難しいっていうことを感じました」

-吹奏楽は、オケの管楽器の感覚とは違いますか

「弦楽器的な感性というのが音楽にどれだけ重要な位置を占めということを痛感しました。ウインドの人たちも言っていますね。でも、次の作品は吹奏楽のもっと不得意なことばかりで書いてやろうと思っているんです。最高メッゾ・ピアノくらいまでで、フォルテ以上のエリアは2割くらいしかない、みたいなね。テュッティであえてピアニッシモでちゃんと溶ける音を研究して。今回の作品のおまけに続編を書こうと思っています。ただ、演奏者や現場的には”なんだよう!”みたいなことになると思うけれど。そういった曲をもっと増やさないとこなれないでしょう。コンクール向けのひとつのパターンばかりではなくね。そういった作品を選らばざるをえないような世の中にしたいですね。そのような曲の良さは作品数が少ないとなかなか理解できないんです。現在の状況は”必要性、可能性があるのはわかるんだけど”このあたりまではいっていますよね。だからこういった曲が増えていけば、そのような作品の造り方、演奏テクニックも進化していくと思います。だから今後は曲の体質のパーセンテージを少し変化させていきたい。まぁ、吹き鳴らすことが悪いとは言わないのですが…」

-新作について

「この作品はしっかりと鳴らすところも多いのだけれども、不協和状態が突然に協和状態になる、とかが強調されないと意味がない。またカノンの部分では金管がバリバリとカノンを吹くんだけれども、バランスがオケと違うのか難しい。演奏面でも少し考えて欲しいところもあります」

-この曲の聴きどころは?

「ずばり、この作品は音質(トーンカラー)でしょうか。タイトル通り”雲”なんですね。つまり多層ですよね、今あったはずの雲がもう変化していく、といったものが欲しかったのです。和音みたいに見えるけれどそれは違っていて、次に響きの塊が奥にいる、また手前のものがいなくなるとその塊が見えてくるとか。そんなことばかり考えていました。響きの一番薄い部分、快晴ではなくて薄曇りの雲の層を打楽器とハープが帯のようにもっているんだけれど、そこに日が差してくるといった表現なんかは、ウインドで表現するってのがいかに難しいか、思い知っています」

-本番を前に今の心境は?

「先ほども言いましたが、徹底した曲をまたもう1曲書こうと思っています。定番ではないものがもっとあって良いでしょう。しかし、今の作曲家はみんな上手いですよね。人気のある作品は美味しいところと辛いところの組み合わせがしっかりしている。そういったパターン、役割を意識しない作曲家は、この世界を勉強しないしね。それで「バンド維新」っていうのをはじめたんですよ。名をなした作曲家に書いてもらって洗礼を受けてもらいたいのです。著名な作曲家ほどバンドについての捉え方に固定観念があると思いますよ。それは良くない、どんどん書いて欲しいですね」

-吹奏楽の可能性について

「広い音域でピアニッシモの表現が欲しいですよね。テュッティの合間に残っている弱音などが出来ると面白くなると思います。変わった楽器を使用すれば良いという人もいますが、あまりに大がかりな打楽器群、数台のマリンバなどを多様するのはどうかと思います。だったらオケを持ってきなさいということです。まぁ、今後は実験的に偏らず、音楽で」

-最後に練習現場の雰囲気は?

「秋山先生はとても信頼しています。作曲家のことをよく聞いてくださいますし、現場的ではニュートラルでとても良いですよ。作曲家が熱くなって騒ぐより冷静に本番に向かって仕上げる、これはプロの仕事です。演奏者も大変に良くやってくれます。個々の質問も大変多いですし、嬉しいですよ」

-長い間ありがとうございました。次回作も期待しています。


■佼成メンバーから一言

★須川展也(コンマス-サクソフォン)
「100回という節目を迎えられるということは多くの人の支えがあってのこと、それに応えるべく全身全霊を込めて演奏をしました。今日のプログラムは、いままで我々が吹奏楽の芸術性を高めたい、という想いをこめて委嘱した作品群で、これらを多くの方々に聴いていただき再認識してもらえたとことと、お客さんたちがその演奏に対して温かく答えてくれたこととが嬉しかったですね。今後とも佼成ウインドをよろしくお願いいたします」

★奥山泰三(トランペット)
「100回という記念すべき節目の今、現場にいられたことが嬉しいですね。この100回というのは佼成ウインドにとって歴史でもあり、また若い人に伝えていかなければいけないという積み重ねであったわけです。佼成ウインドはこんなにも素晴らしい作品を持っているということを若い団員に知って欲しかった」

★前田綾子(フルート)
「私自身は2001年に入団し8年目ということで、以前のことは想像するしかなかったのですが、こういうことがあった、あんなことがあったと先輩からお話を聞くといろいろな思いにはなりました。そういった経験豊かな人たちと一緒に演奏をして、団で暖め、育ててこられたレパートリーを音にしたときは”あぁこうなんだ”ということを実感できました。また、秋山先生の力は素晴らしく、本番の気迫は4日間の練習の時とは全く違いました」

★萩谷克己(トロンボーン)
「僕は以前にレコーディングをお願いしていた頃から秋山先生にはずっとコンサートをといい続けて、今回それが実現して本当に幸せでした。やはりライブは熱かったですね」

★松生知子(E♭ クラリネット)
「100回ということで、みんな凄い思い入れがあり、それに答えないといけないというプレッシャーがありました。私はまだ4年目ですが、北爪さんの委嘱作品などは、しっかりとベルアップして気持ち良く吹けました」

★パーカッション奏者(エキストラ)
「長くやってきたので、どの曲も想いがありますね。ホロヴィッツの”舞踏組曲”ではフェネルさんの指揮姿が想い出され演奏中にジーンときてしまいました。多くの偉大な先生方と音楽を創ってこれたことに今は感謝いたします。」

■身近な人たちの声

☆小貝俊一(レコーディング・エンジニア)
「秋山先生はもっと上品な指揮をする方だったと思っていたのですが、今日はねぇ、最初からアクションが大きく全然違いました。佼成のみなさんもテンションが高くなっているのが良く伝わってきました。僕は長い付き合いで、佼成の良いところも悪いところも知っているから、でもちゃんと良いところを引き出していましたね。指揮者って凄いと思いました」

☆秋山紀夫氏(吹奏楽研究家-プレ・トークを担当)
「大変おめでたいことですね。くしくも第50回の定期演奏会もここ東京芸術劇場でした。来年は創団50周年を迎え、また新しい指揮者(ポール・メイエ氏)も就任ということでますますのご発展をお祈りいたします。本日はおめでとうございました」

【プログラム】

セレブレーション/フィリップ・スパーク
Celebration/Philip Sparke

舞踏組曲/ジョセフ・ホロヴィッツ
Dance Suite/Joseph Horovitz

法華経からの三つの啓示/アルフレッド・リード
Three Revelations from Lotus Sutra/Alfred Reed

TKWO委嘱作品「雲の変容」(世界初演)/北爪道夫
Matamorphosis for the Clouds -TKWO commissioned Work(World Premiere)/Michio Kitazume

舞楽/ドナルド・グランサム
Court Music/Donald Grantham

 演奏を聴いた後、84年以来その死まで常任指揮者を務めたフレデリック・フェネルが「オーケストラは、400年かけて現在の位置を築いて来ました。私たちはとても若くどのようにしていけば良いのか、いま道を探し、今後開拓していかねばならないのです」と語った言葉を思い出し、その歩みは着実で間違っていなかったと確信できた。

次の200回定期までの時間で《吹奏楽》という分野はどのように変貌を遂げていくのであろうか。それは決して明るい前途ばかりではないと思うが、この100回記念を弾みに、他団体には真似のできないこれまでの方向性(多彩なプロのコンダクター起用、内外の著名な作曲家への委嘱・作品コンク-ル、また幅広い意味での後進の育成など、常にわが国の吹奏楽界のためを考えている姿勢。)をもって、ひたすら走り続けていって欲しい。
積み重ねてきた素敵なコンサートのひとつひとつに大きな拍手をおくりたい!

▲秋山和慶氏と須川展也氏によるサイン会は大人気
▲プレトーク担当の秋山紀夫氏とコンマスの須川展也氏
▲作曲者北爪氏の指示を聞く(リハーサルで)
▲委嘱作品「雲の変容」を聴く作曲者(北爪道夫氏)
▲秘密兵器!(ミュートが間に合わない部分に使用)
▲本日の練習予定!(ボード)

(2009.03.07)