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カトリーナ・マーゼラ(バリトン)~カトリーナ…バリトンのために書かれた最も重要な作品の1つといえる、エレビーの『バリトン協奏曲』を初収録。

ブラック・ダイク~ソロイストの競演(Soloist Showcase)…全篇を通じ、とてもハッピー! 何とも贅沢なブラスの名手たちの競演盤!

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 世界で最も有名、そして数々の成功を収めてきたイングランドのブラスバンド“ブラック・ダイク・バンド”。

 ブラスバンドのフィールドだけでなく、ポップスやクラシックの世界にもその名は轟き、大御所サー・コリン・デイヴィスが指揮したCDまであるこのバンドの限りある席に座って演奏するステータスは、寝食を忘れてブラスバンドに打ち込む者にとって、他の何事にも代えがたい“人生の勲章”のようなものだ。サッカーに例えると、イングランド・プレミアリーグのマンチェスター・ユナイテッドでプレイするに匹敵する。

 メンバーには、コルネットのリチャード・マーシャル、テナーホーンのシューナ・ホワイト、バリトンのカトリーナ・マーゼラ、トロンボーンのブレット・ベイカーなど、ソロCDをリリースする有名プレイヤーも多数在籍するが、実はこのバンドのメンバーになること、それ自体が超難関!結果、バンド全体を見渡すと、すべてのパートがすばらしいプレイヤーで構成されていることがよくわかる。

 2012年3月、ヨークシャーのモーリー・タウン・ホールで収録されたこのアルバムは、ブラック・ダイク各メンバーのソロやアンサンブルをフィーチャーした、とてもご機嫌なコンサート・アルバムだ!

 曲目欄を見て面白いのは、収録順が、最高音のソプラノ・コルネットに始まり、コルネット~フリューゲルホーン~テナーホーン~バリトン~ユーフォニアム~バスの順に音域の低い楽器に移っていき、その後にパーカッションを配すという“ブラスバンドのインストゥルメンテーション”の流れに従った構成になっていることだ。

 アルバム全体が、単にソロイストの競演にとどまらず、ブラスバンドの楽器紹介まで兼ねているのだ。

 収録曲は、いずれも各楽器の特性を生かしたレパートリーばかり!

 だが、そんな中にあって、ゲイリー・カーティン独奏のスパークの「ハーレクイン」にはとくに注目しておきたい。デヴィッド・チャイルズのために委嘱されたこの超絶技巧曲は、デヴィッドほか、スティーヴン・ミードなど、すでにいくつもCDがあるが、カーティンのこのソロには、他にはない舞台上の役者のようなアプローチやフレージングが感じられ、また、前半の囁くようなソロにピタリと寄り添う抑制された伴奏の美しさにも、思わずハッとさせられる。

 牧羊豚ベイブが農場の危急を救うべく町へ行って大活躍をする映画ベイブ・シリーズ第2弾「ベイブ、都会へ行く」(1998)の主題歌“それでいいんだ”を映画の中で演奏しているのは、実はブラック・ダイク。1999年オスカー賞ノミネートを果たしたこの曲を、このCDではズ―・ハンコックの甘いフリューゲルホーン・ソロが聴かせる。

 コアなブラック・ダイク・ファンなら、思わずニンマリだろう!

 バリトン・ユーフォニアム・セクステットの「小さな祈り」、トロンボーン・カルテットの「悪魔のギャロップ」、パーカッションによる「剣の舞」など、いくつかの曲は、バンド伴奏なしの、各セクションのアンサンブルだけで収録されている。

 その内、バリトン&ユーフォニアムで6人の、トロンボーンで4人のプレイヤーがプレイしていることに、ブラスバンドの編成(基本編成やパートの人数が決まっている)を知る人は、多少の違和感を覚えるかも知れない。だが、毎週のようにレコーディングやコンサートを行っているこのバンドのこと。実は、いつ、どんなリクエストがあっても即応できるように、レギュラーと変わらない交代要員が常に確保され、両曲では、その豊富な持ち駒を生かした演奏になっているのだ。

 「小さな祈り」ではソフトタッチで、「悪魔のギャロップ」では切れ味鋭く、いずれも楽器の特性を生かしたすばらしいセンスの演奏が愉しめる。「悪魔のギャロップ」は“ブラック・ダイク・トロンボーン・カルテット”としての初CD「フライ・ミー・トゥー・ザ・ムーン」(CD-1542)と同一メンバーの演奏だ。

 アルバムをしめるグレイアムの「キャッツ・テイルズ」の“スキャット”は、まるでコンサートのアンコールのよう!

 ブレット・ベイカー(トロンボーン)、リチャード・マーシャル(コルネット)、エンドリア・プライス(ヴィブラフォン)、アシュリー・クレッグ(ドラム・セット)の各ソロをつぎつぎ再登場させるあたりは、いかにもイギリスのバンドらしい遊び心満点の演出だ!

 全篇を通じ、とてもハッピー! 何とも贅沢なブラスの名手たちの競演盤だ!

■ブラック・ダイク~ソロイストの競演
Soloist Showcase

・演奏団体:ブラック・ダイク・バンド (Black Dyke Band)
・指揮者:ニコラス・チャイルズ (Dr. Nicholas Childs)
・発売元: ドイエン (Doyen)

【収録曲】
1. オー・フェン・ザ・セインツ(聖者の行進)/ポール・ダフィ
2. ナポリ/ヘルマン・ペルシュテッド (arr. アンディー・オーウェンスン)
3. タイム・トゥ・セイ・グッバイ/フランチェスコ・サルトーリ (arr. ダン・プライス)
4. ツィゴイネルワイゼン/パブロ・デ・サラサーテ (arr. フィル・ローレンス)
5. 映画「ベイブ、都会へ行く」より“それでいいんだ”/ランディ・ニューマン (arr. ダン・プライス)
6. パイパー・オー・ダンディ/ケネス・ダウニー
7. リート・ぺティ/ベリー・ゴーディ & タイロン・キャロル (arr. サンディー・スミス)
8. キャリックファーガス/アイルランド民謡(arr.スティーブン・ロバーツ)
9. ハーレクイン/フィリップ・スパーク
10. 小さな祈り/エヴリン・グレニー
11. 大西洋のそよ風/ガーデル・シモンズ (arr. キース・シモンズ)
12. ニューヨークの想い/ビリー・ジョエル (arr. サンディー・スミス)
13. 悪魔のギャロップ/チャールズ・ウィリアムズ (arr. D・ボイル)
14. 川面にかかる霧/ダン・プライス
15. カルテット・フォー・テューバ/エリック・ボール
16. フリング/エンドリア・プライス
17. 剣の舞/アラム・ハチャトゥリアン (arr. ジェームズ・ムーア)
18. 「キャッツ・テイルズ」から“スキャト”/ピーター・グレイアム

【このCDの詳細をチェックする】
http://item.rakuten.co.jp/bandpower/cd-2575/

【ブラック・ダイク・バンド関連のCD、DVD】
http://item.rakuten.co.jp/bandpower/c/0000001035/

(2012.08.17)