「グル新」カテゴリーアーカイブ

【コラム】富樫鉄火のグル新 第7回スピード演奏

 1月11日(月・祝)、東京・渋谷のオーチャードホールで「渋谷ブラスフェスタ」なるコンサートが開催された。東京フィルの管打楽器奏者によって結成された「東フィル・ウインド・オーケストラ」のお披露目公演でもあった。最後は、真島俊夫作曲の新作≪ニュー・イヤー・マーチ≫を、楽器持参の来場者と合同演奏し、たいへんな盛り上がりだった。

 ところで、この日は、いくつか、吹奏楽オリジナルの名曲も演奏されたのだが、最初の2曲、≪アルヴァマー序曲≫(バーンズ)と、≪エル・カミーノ・レアル≫(リード)が、ものすごいスピード演奏で驚いた(渡辺一正指揮)。しかし、まったく乱れることなくキッチリ演奏していたのは、さすがでした。

 最近、プロ・バンドによる、この種のオリジナル名曲の演奏、どこもスピード演奏が多くなっていると思いませんか。佐渡裕指揮=シエナ・ウインド・オーケストラの≪高度な技術への指標≫(河辺公一)なんか、まるでF1なみの快速テンポだった。

 「スピード演奏」で忘れられないのは、1978年、イーストマン・ウインド・アンサンブルの来日公演における≪秋空に≫(上岡洋一)。当時私は大学生だったが、それまで耳にしていたより、ずっと速いテンポで演奏され、「なるほど、同じ曲でもテンポを変えると、ずいぶんちがった印象になるもんだな」と思った記憶がある。以後、この曲は速めに演奏されることが多くなったものだ。

 こういったスピード演奏を聴くたびに、昔ながらのじっくり・どっしり演奏を懐かしく感じるのは、私がオジサンだからでしょうか。

 ちなみに「渋谷ブラスフェスタ」のプログラムに、天野正道氏(作曲家)が寄稿した解説によれば、かつて来日したバーンズ氏は、自作の≪アルヴァマー序曲≫を聴いて、「皆、なんでこんなに速く演奏するのだ? これでは後半のシカケがわからなくなる」と言っていたそうだ。

富樫鉄火(吹奏楽大好きの音楽ライター)


※本稿の著作権は富樫鉄火が、出版権はバンドパワーが独占しています。両者の許諾なく、出典元表記のない引用や、引用の範囲を超えた複写、コピー&ペーストを固く禁止します。

【コラム】富樫鉄火のグル新 第6回お尻の痛みを軽減する方法

 コンクールやアンコンでは、普門館や府中の森芸術劇場に、まる一日座りっぱなしになる。文京シビックでなくとも、どうしたって、お尻が痛くなる。

 まる一日座ってそれらを聴くようなひとは、あまりいないだろうけど、2時間も座っていると、ほとんどのひとは、お尻が痛くなるはずだ。ワーグナーの長いオペラなんか決死の覚悟だ。昨年秋の新国立劇場、シェイクスピアの『ヘンリー六世』なんか、全三部通し上演は10時間! みなさん、大丈夫だったんでしょうか(さすがに私は分割上演で観た)。

 この、お尻が痛くなるのを軽減する方法、ご存知ですか。

 足のつま先を、手前に引くようにして、ふくらはぎを伸ばすのだ。たとえば、靴を脱いで、その上に、つま先部分を乗せる。そうすると、ふくらはぎが伸びて、血行がよくなり、下半身全体に血がめぐる。お尻が痛くなるのは、押しつぶされて血行が悪くなるからで、ほんの少しでも血がかよえば、お尻の痛みも少なくなる。

 どれくらいいるのか不明だが、コンクールやアンコンをまる一日聴くような方は、ぜひお試しあれ!

富樫鉄火(吹奏楽大好きの音楽ライター)


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【コラム】富樫鉄火のグル新 第5回文京シビックの椅子

 今年の吹奏楽聴き初めは、1月9日(土)、東京・文京シビックホールにおける、東京隆生吹奏楽団と豊島区吹奏楽団のジョイント・コンサートだった。私は豊島区民なので、昔から豊島区吹のファンなのだ。なかなか楽しいコンサートだった(畠田先生の歌声も聴けたし!)。

 ところで、文京シビックの客席の椅子、あれ、みなさん、座りやすいですか?

 あの椅子は、お尻を乗せる部分が、真ん中から折れて、2枚の割れた板でできているような感じだ。ちょうど、割れ目の部分に、お尻をはめこむようにして座る。たぶん、人間工学か何かで、このほうがラクだとの判断で、ああいう形になったのだと思うけど、私など、どうにもおさまわりが悪くて、次第に、お尻が痛くなってくる。再春館製薬に電話して「痛散湯」を注文したくなる。

 これ、私の年齢のせいなんでしょうか。それとも、若い方々は、あのほうがラクなんでしょうか。

 日本管楽合奏コンテストのときなど、朝から10時間近く座りっぱなしだが、夕方になると、なんとも耐え難くなってくる。

 まあ、それほど長い時間、座ることは想定されていないだろうけど、もしかしたら、あの椅子は、海外で開発された、ヒップの巨大な欧米人向けなんじゃないだろうか。

 そういえば、あのホールは、私の子供のころは「文京公会堂」で、毎週土曜日夜、「8時だョ!全員集合」が公開ナマ中継される会場だった。いま、そのホールで、お尻をモジモジさせながら吹奏楽を聴くことになるとは、夢にも思いませんでしたよ。

富樫鉄火(吹奏楽大好きの音楽ライター)


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【コラム】富樫鉄火のグル新 第4回大河ドラマ『龍馬伝』余話

 前回、『龍馬伝』の音楽について書いたので、余話を。

『龍馬伝』のタイトル・ロゴの筆文字
http://www.nhk.or.jp/dramatopics-blog/image/090827ryo01.jpg 
を「カッコいい」と感じている若いひとが多いらしい。

 あの文字を書いたのは書家・紫舟(ししゅう)。スズキ「アルト」のTVCFでご存じ、たいへんな美女である。私は観たことないのだが、浜崎あゆみのミュージック・フィルムのタイトル文字なども書いているそうだ。単なる「書家」というよりは、「文字」を、「絵画」の感覚で表現するといった作家だ。

 紫舟のサイト http://www.e-sisyu.com/ へ行って、その作風を知ってほしい。彼女だったら、以下の曲名をどんなふうに書くだろうか。想像すると、けっこう、楽しいよ。

   海

   風紋

   萬歳楽

   おほなゐ

   深層の祭

   饗応夫人

   躍動する魂

   科戸の鵲巣

   紅蓮の斜陽

   鳳凰が舞う

   うちなーのてぃだ

   中国の不思議な役人

   大阪俗謡による幻想曲

   この地球を神と崇める

   ……そしてどこにも山の姿はない

   春になって王たちが戦いに出るにおよんで

 どこかのレコード会社さん、CDジャケで実現させてくれませんか(それにしても吹奏楽の曲名は凝ってるねえ)。

富樫鉄火(吹奏楽大好きの音楽ライター)


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【コラム】富樫鉄火のグル新 第3回大河ドラマ『龍馬伝』の音楽

 毎年、NHK大河ドラマの第1回を、「今年の曲は吹奏楽に向いているだろうか」と、ドキドキしながら観る。昨年の『天地人』(大島ミチル)は見事に吹奏楽ドンピシャで、全国各地で演奏されていた(私がナマで聴いた中では、豊島区吹奏楽団の定演が最高だった)。

 今年の『龍馬伝』の音楽は佐藤直紀。『ALWAYS 三丁目の夕日』『ウォーターボーイズ(シンクロ BOM-BA-YA)』『海猿』などが吹奏楽版になって演奏されている。

 NHK大河ドラマのOP曲は、毎年、NHK交響楽団が演奏する。今年の『龍馬伝』は広上淳一の指揮。だが、今回は、吹奏楽で演奏するには少々やっかいかもしれない。主旋律が「女声ソロ・ヴォーカル」なのだ。

 歌っているのはリサ・ジェラルド。アイルランド系オーストラリア人で、80~90年代、「デッド・カン・ダンス」なるグループに所属し、クラシックと民族音楽を合体したような、不思議な音楽を奏でていた(近年、紙ジャケCDで復刻されている)。その後はヴォーカリスト兼作曲家として独立し、映画『グラディエイター』などの音楽に参加している。そんな「越境マルチ歌手」が『龍馬伝』OP曲を歌っているのだ。

 NHK大河ドラマOP曲に、オーケストラ・サウンド以外の響きが加わったのは、1980年『獅子の時代』(音楽:宇崎竜童)におけるエレキ・ギターが最初だった。
93年『琉球の風』では、初めて「歌」がOP曲となった。谷村新司の《階(きざはし)》だ(劇伴は長生淳)。
2000年『葵 徳川三代』(音楽:岩代太郎)では海外アーティストが初参加した。指揮シャルル・デュトワと、ケンブリッジ・キングズ・カレッジ合唱団。紀行コーナーではイラーン・パイプ(アイルランドの民族楽器)のディヴィ・スピラーンも加わった。
01年『北条時宗』(音楽:栗山和樹)では、モンゴルの女声歌手ノロヴバンザドが参加。
02年『利家とまつ~加賀百万石物語~』(音楽:渡辺俊幸)のOP曲は、同年、石川県根上町立根上中学校が演奏し、コンクール全国大会へ進出。見事、金賞を獲得した(編曲:後藤洋)。これが、コンクールに初めて登場した大河ドラマ音楽だった。
03年『武蔵 MUSASHI』では、ついに史上初の海外作曲家、巨匠エンニオ・モリコーネが起用された。
04年『新選組!』(音楽:服部隆之)では、オペラ歌手のジョン・健・ヌッツォがソロを歌い、これも吹奏楽ドンピシャで各地で演奏されたが、当のジョンが、一昨年、覚醒剤で現行犯逮捕されて、ミソを付けてしまった。
09年『天地人』の大島ミチルは、大河史上初の女性作曲家であった。

 かように大河ドラマは、音楽もそれなりの波乱万丈なのだ。そして今年の『龍馬伝』は、リサ・ジェラルドの歌唱である。

 曲は2分45秒。全編、ミニマム的なリズムが支配している。リサは前半とラスト部で主旋律を歌い、ラストは唐突に終わる。昨年の『天地人』のような「ブラス色」は皆無。だが、私みたいなオヤジ世代には、デッド・カン・ダンス時代を再び聴くようで、ちょっと懐かしいサウンドだ。

 この曲が、吹奏楽で、どんな響きになるのだろうか。少なくとも、ミュージック・エイト、月刊「バンド・ジャーナル」付録、「ニュー・サウンズ・イン・ブラス」などは出版を検討しているはずだ。どこが最初に出すのか、リサの声をどのように処理するのか、楽しみだ。

 余談だが、日本管楽合奏コンテストは、声楽や電子楽器とのコラボも許されている。どこかの団体が、オリジナル通り、女声や打ち込みを加えて文京シビックで演奏してくれないだろうか。

富樫鉄火(吹奏楽大好きの音楽ライター)


 

※本稿の著作権は富樫鉄火が、出版権はバンドパワーが独占しています。両者の許諾なく、出典元表記のない引用や、引用の範囲を超えた複写、コピー&ペーストを固く禁止します。