「グル新」カテゴリーアーカイブ

【コラム】富樫鉄火のグル新 第175回 カレル・フサ死去

作曲家、カレル・フサが亡くなった(12月15日、行年95)。
思いつくままに、周縁をつづってみる。

カレル・フサは、1921年、旧チェコスロバキアのプラハに生まれ、プラハ音楽院やパリ音楽院に学び、1950年代にアメリカにわたった。
以後、ニューヨーク州イサカにあるコーネル大学教授などをつとめながら、作曲活動をつづけた。

わたしが好きだったのはバレエ音楽《トロイアの女たち》(1980)で、ステージは観ていないのだが、物語の流れが目に浮かぶような構成だった。
エウリピデスの原案戯曲を知っていると、何倍も楽しめる音楽だった。
また、ピュリッツァー賞を受賞し、アメリカで作曲家としての地位を確立した弦楽四重奏曲第3番(1969)や、交響曲第2番《リフレクションズ》(1982~83)なども面白く聴ていた。

この続きを読む>>>>>

 

【コラム】富樫鉄火のグル新 第174回 《イギリス民謡組曲》

11月23日の、東京佼成ウインドオーケストラ、第131回定期演奏会(藤岡幸夫指揮、東京芸術劇場。翌24日には同一内容で第1回大阪定期演奏会)のプログラムに楽曲解説を書かせていただいた。
その中で、ヴォーン・ウィリアムズの《イギリス民謡組曲》の第2楽章について、こう書いた。

第2楽章 間奏曲<私の素敵な人> 表題曲と<グリーン・ブッシュ>の2曲で構成されている。前半のソロは、スコアでは「コルネットかオーボエで」と記されており、自由に選択できるようになっている(フェネルはオーボエを使用した。本日は?)。

これについて、「選択ではなく、2本のユニゾンではないのか」とのご指摘をいただいた。
なぜこんな解説を書いたかというと、フレデリック・フェネルの著書『ベーシック・バンド・レパートリー フレデリック・フェネルの実践的アナリューゼ』(フレデリック・フェネル著、秋山紀夫訳/佼成出版社、1985年9月初版)の中に、こういう記述があったからだ。

この続きを読む>>>>>

【コラム】富樫鉄火のグル新 第173回 書評『クレージーマンガ』(クリ・ヨウジ)

驚くべき「漫画」本が出た。88歳のアニメーター、久里洋二(本書では「クリ・ヨウジ」)が、500頁を描き下ろしたのだ。

久里といえば、たった十数枚の原画による『人間動物園』が海外の映画祭で11冠を獲得している、日本の「アニメ神」である(いま見ても、これが昭和37年の作とは信じられない!)。

久里の全盛期の作品には、武満徹、一柳慧、林光、冨田勲、オノ・ヨーコなど、錚々たる顔ぶれが音楽を寄せている。

冨田などは、名盤『月の光』発表の2年前に、すでに久里のアニメにシンセサイザー音楽を付けている。

そのほか、TV「ひょっこりひょうたん島」オープニングや、NHK「みんなのうた」でも大量の音楽アニメを発表しており、「アニメは音楽で決まる」と早くから公言していた。

森高千里≪ザ・ミーハー≫のPVアニメも、久里である。

この続きを読む>>>>>

【コラム】富樫鉄火のグル新 第172回 ボブ・ディランの「詩」

ボブ・ディランがノーベル「文学」賞を受賞したが、一部には「違和感」の声もあった。

わたしも、できれば「本」を出している「作家」に贈賞してほしかったような気がした。

それでもボブ・ディランは若いころから大好きだったし、ここ数年、候補に挙がっているらしい様子を見て「まずありえないだろうけど、受賞したら快挙だなあ」と思っていたので、素直にうれしい。

しかし、日本のメディアの反応がステレオタイプなのは残念だった。
ほとんどが≪風に吹かれて≫の歌詞をあげ、「反戦歌の代表作」であると決めつけ、まるで「反体制派だから受賞した」といわんばかりだった。

この続きを読む>>>>>

【コラム】富樫鉄火のグル新 第171回 「ブラバン」とは何か

昔から、インパクトのあるネーミングには「濁音」「破裂音」が必須だといわれてきた。
「ゴジラ」「ラドン」「キングギドラ」などの怪獣から「マガジン」「サンデー」「ジャンプ」まで、確かに人気者は「濁音」だらけだった。
そのほうが印象が強くなり、耳に残るというのだ。
「トルストイ」よりは「ドストエフスキー」のほうが、「モーツァルト」よりは「ベートーヴェン」のほうが、より深刻さがあって人生の深淵を見せてくれる気になる、その理由は、「濁音」(ド、べ)のせいだ、なんて冗談話もあった。

最近、マス・メディアで「ブラバン」が、当たり前のように使われている。

「ブラバン」とは、「ブラスバンド」の略である(と思う)。
吹奏楽の名称を論じ始めるときりがないのだが、「ブラスバンド」とはヨーロッパに多い編成形態で、おおむね「サクソルン属の金管楽器」を中心に構成されたバンドを、そう呼ぶ(ことが多い)。
これに対して「吹奏楽」とは、木管・金管・打楽器で構成され、おおむね「ウインド・オーケストラ」とか「ウインド・アンサンブル」「コンサート・バンド」などと呼ばれる(ことが多い)。
もちろん、上記の分類は、あくまで「おおむね」であり、国によって地域によって、さまざまな楽器編成があるので、決定的とは言い難いのだが、しかし、まあまあ、「ブラスバンド」と「吹奏楽」は、ちがうものだと、わたしは、思ってきた。

だが日本では「ブラバン」は、「ブラスバンド」ではなくて、「吹奏楽」に冠せられている。

この続きを読む>>>>>