第3回大島渚賞が発表となった。
受賞作は『海辺の彼女たち』(藤元明緒監督)である。
「大島渚賞」といっても、まだ新しい賞なので、ご存じない方も多いだろう。
主催は、PFF(ぴあフィルムフェスティバル)で、同映画祭の一部門として運営されている。「映画の未来を拓き、世界へ羽ばたこうとする、若くて新しい才能に対して贈られる賞」で、いわゆる映画監督の新人賞である(大島渚はPFFの審査員を長くつとめ、多くの新人を発掘した)。
審査員は、坂本龍一(音楽家/審査員長)、黒沢清(映画監督)、荒木啓子(PFFディレクター)の3人。
第1回は2020年3月に開催された(コロナ禍がはじまった時期だけに、記念上映会場は、緊張した雰囲気に包まれていた)。受賞作は、ドキュメンタリ『セノーテ』(小田香監督)。
2021年の第2回は該当者ナシ。
そして今年が第3回で、前記『海辺の彼女たち』(藤元明緒監督)が受賞した。
これは、ベトナムから技能実習生として来た3人の女性たちの物語である。なんとか3か月頑張ってきたが、あまりに過酷、搾取が多く、家族へ送金もままならない。そこで、ある夜、密かに脱走する。少しでもギャラのいい仕事を求めて、怪しげなブローカーに紹介され、不法就労者として小さな港町で隠れて働くことになった。しかし、1人が体調を崩す。病院にかかりたいが、彼女たちには在留カードも身分証もない……。
昨今、日本でも問題になっている外国人労働者の問題に迫った異色作で、全編、彼女たち3人の描写に終始する(よって、コトバはすべてベトナム語で、字幕付き)。一見ドキュメンタリかと見紛うリアルな描写で、”見てはいけないもの”を見せられているような迫力がある。
わたしは、記念上映会(4月3日、丸ビルホールにて)で鑑賞し、藤本明緒監督と黒沢清監督たちのトークを聞きながら、なるほど、いかにも「大島渚賞」にふさわしい作品が選ばれたなあと思っていた。
ところが、翌日の授賞式で、病気療養中のせいか、欠席した審査員長・坂本龍一のコメントを知って、驚いた。
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