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■樋口幸弘のウィンド交友録~バック・ステージのひとり言 第112話 チェザリーニ:交響曲第2番「江戸の情景」の初放送

▲フランコ・チェザリーニ(撮影:Daniel Vass)]

『ディアー・ユキヒロ、

今夜、中央ヨーロッパ時間(Central European Time)の20時30分、ラジオ・スヴィッツェラ・イタリアーナ・RSI・ネットワーク2(Radio Svizzera Italiana RSI Rete2)で、この前の日曜に行なった我々のコンサートの放送がある。おそらく、そちらでも聴くことができるだろう。それは、私のセカンド・シンフォニーの初演コンサートの放送だ。

貴方が最高のホリデーをもたれますように。メリー・クリスマス&ハッピー・ニューイヤー!』

2018年(平成30年)12月18日(火)、スイスの作曲家フランコ・チェザリーニ(Franco Cesarini)が、12月9日(日)、スイス・ルガーノ市のパラッゾ・デイ・コングレッシ・ルガーノ(Palazzo dei Congressi Lugano)で開かれた自身指揮の年末恒例のガラ・コンサートが、スイス公共放送のネットワークを通じて放送されることを知らせてきたときのメールだ。(参照:《第82話 チェザリーニ:交響曲第2番「江戸の情景」の誕生》)

演奏者は、シヴィカ・フィラルモニカ・ディ・ルガーノ(Civica Filarmonica di Lugano)。1988年以降、フランコが音楽監督、指揮者をつとめ、スイス最高峰のウィンドオーケストラに列せられる。ルガーノ音楽院で専門教育を受けたプレイヤーを中心に構成されるスイスのチャンピオン・バンドだ。

スイス公共放送がコンサートを放送するくらいだから、その実力のほどは推して知るべし。ひじょうに活動的なウィンドオーケストラで、音楽監督就任以来、フランコは、すでに数百回を超えるコンサートを指揮している。

残念ながら、日本で吹奏楽を愉しんでいる人々にはあまり知られていないが、フランコは著名なフルート奏者ペーター=ルーカス・グラーフ(Peter-Lukas Graf)の高弟で、スイスのソロ・コンテストで第1位に輝いたフルート奏者でもある。グラーフのために『フルート協奏曲』も書いており、たびたび師弟デュエットを行なうほどの実力者だ。作曲家の他に、室内楽フルート奏者、指揮者としての顔をもっている。

また、ラジオ・スヴィッツェラ・イタリアーナ・RSIは、スイスのイタリア語圏向けの公共放送だ。

試しにメールに書かれてあるURLにアクセスすると、PCからいきなり流暢なイタリア語が聞こえてきた。どうやら、クラシックなどの音楽専門チャンネルらしく、FMと同時放送のようだった。

大阪からアクセス可能なことを確認後、すぐフランコに返信した。

『ディアー・フランコ、

連絡ありがとう。ラジオ番組はとても興味深い。だが、ひとつだけ問題がある。時差だ。中央ヨーロッパ時間で12月18日の20時30分といえば、日本時間では翌12月19日の早朝4時30分だ。もちろん、懸命に起きようと努めるが、目覚ましがうまく機能してくれるかどうか分からない。結果については、必ず報せる…。

ともかく、とてもエキサイティングなニュースをありがとう!

メリー・クリスマス&ハッピー・ニューイヤー!』

さて、どうしよう。もう夜の11時(日本時間)近い。さすがに、少々睡魔が….。

シヴィカ・フィラルモニカ・ディ・ルガーノのライヴは、聴き逃せないし…。

“寝るべきか”、“起き続けるべきか”の選択で悩んだ挙句、出した結論は、夜食と睡魔撲滅用ドリンクを買ってきて、今から放送を聴き始めるというもの。

(不健康の極みだが、我ながらこれは名案だ!!)

それでも睡魔は繰り返し押し寄せ、それと闘いながら放送を聴いていると、それは室内楽やオーケストラの演奏と演奏者への生インタビューで構成されるラジオ局のようだ。ときどきジングルを挿みながら番組は進行していく。音楽用語を除いて、コメンテーターのイタリア語はさっぱり理解できないが、CDではなく、ナマ収録された音楽素材中心の番組構成はとても新鮮だ。

しかし、さすがはイタリア系!!

予告された時刻になっても、フランコの番組は一向に始まらない。

ここまで必死に起きてきたのに、なにか設定を間違えたのか。ひとり焦るが、どうしようもない。そして、PCの画面に示されている定刻を10分くらい過ぎた頃、ジングルに続いて、コメンテーターがついにフランコの名前を口にした。

(ついに始まったか!)

余談ながら、かなり前、大阪市音楽団(民営化後、Osaka Shion Wind Orchestra)の団長だった木村吉宏さんから、ローマである演奏会に行ったとき、告知されている開演時間の前に行ったら、誰も居らず、定刻になった頃に奏者がゾロゾロと集まりだした、と面白おかしく聞かされたことあった。冗談だろうと思っていたが、ラテン系の国々ではよく似た話をよく聞く。隣国スイスでも、イタリア文化圏は同じなのかも知れない!

時間の概念が違うのだ。

番組は、ここからコメンテーターとフランコの2人の会話が始まった。だが、すべてがイタリア語なので、何を言っているのか、さっぱり分からない。ただ、会話の中に混じる音楽用語や人物の固有名詞などから、フランコは、これから放送される曲についてコメンテーターの質問に答えているのは確かだった。

放送は、コンサートとは違い、つぎの曲順で行なわれた。

・イクエストリアン・シンフォニエッタ(Equestrian Symphonietta)(作品52)

・交響曲第2番『江戸の情景』(Sinfonia N.2“VEDUTE DI EDO”)(作品54)

・カリビアン・シンフォニエッタ(Caribbean Symphonietta)(作品51)

(欧題は、イタリア語表記)

世界的成功を収めた交響曲第1番『アークエンジェルズ(The Archangels)』(作品50)後に完成させた2曲のシンフォニエッタと2作目の交響曲だけの重量感のあるプログラムだった。

80名近い人数のシヴィカ・フィラルモニカ・ディ・ルガーノの安定感のあるゴージャスなサウンドにも圧倒される。そして、フランコに対するリスペクトからだろう。ひじょうにモチベーションが高い。

世界初演となった『江戸の情景』における集中力は、とくにすばらしかった。

そして、割れんばかりの圧倒的な拍手が聞こえてくる!!

初演は大成功だった!

実際にナマのライヴを聴いた出版社ハル・レナード・ヨーロッパの音楽出版部門の責任者ベン・ハームホウトス(Ben Haemhouts)が、『それはもう、ファンタスティックだった!』と演奏会直後に短文メールしてきた気持ちもよくわかる。

また、放送でフランコの話す流暢なイタリア語を聞いていて、来日中も、不慣れな英語ではなく、本当はイタリア語で自由に話したかったんだろうなと感じた。

そう言えば、フランコは翻訳では何度もひどい目にあったことがあると話していた。ある国に招かれたときなどは、事前に渡したプロフィールで“フルート奏者”と書いてあったはずなのに、なんと“バグパイプ奏者”と訳されていたのだそうだ。

(あ~ぁ、お気の毒に!)

番組は、3曲の後、初めて聴くマーチがアンコールとして流れたが、その時点で時計を確認すると、まだ告知された番組枠がかなり残っていた。どうするんだろう、と思っていたら、ボーナスとして、なんとフランコのフルート独奏で、クリスマス・キャロルを2曲、ピアノ伴奏で聴かせてくれた。

いかにもヨーロッパらしいクリスマス!

とても美しいエンディングだった。

▲フルート三重奏(Flute Trio Op.24)

▲フルート四重奏曲第1番(1st Flute Quartet Op.26)(zimmermann)

▲フルート四重奏曲第2番(2nd Flute Quartet Op.30)(Vigormusic)

【コラム】富樫鉄火のグル新 第265回 イングランドの”隠れ切支丹”

 吹奏楽に長く携わっている方なら、ゴードン・ジェイコブ(1895~1984)の名をご存じだと思う。イギリスの作編曲家で、王立音楽院の教授を長くつとめた教育者でもあった。
 彼の名が広まったのは、学生時代に作曲(編曲)した、《ウィリアム・バード組曲》だった。当初は管弦楽用に書かれたが、のちに吹奏楽版となり、世界中で演奏されるようになった。(うろ覚えだが、フレデリック・フェネル指揮のマーキュリー盤が初の商業録音だったのでは?)
 これは、ルネサンス期のイギリスの作曲家、ウィリアム・バード(1543?~1623)がヴァージナル(当時のイングランドで流行した、小型チェンバロ)のために書いた曲を6曲抜粋し、編曲したものだ。たいへんうまくまとめられており(特に、管打楽器=吹奏楽の魅力が十二分に引き出されている)、編曲というよりは、再創造と呼ぶにふさわしい。ホルストの組曲などと並んで、教育テキスト的な楽曲としても知られている。
 そしてもうひとつ、本作の功績は、ウィリアム・バードの名を、世界中に、特に吹奏楽に携わる若い人たちに知らしめたことである。

 ウィリアム・バードは、“ブリタニア音楽の父”などと呼ばれた大作曲家である。

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■SLIDE MONSTERS 4Trombones(6月27日)

4人のモンスター達が再び集結!
人気・実力共に日本のトップをはしる中川英二郎の発案により「トロンボーンの神様」と称されるニューヨークフィル首席奏者ジョセフ・アレッシをはじめとする、日本・アメリカ・ヨーロッパ音楽シーンの最前線で活躍するトッププレーヤーが集結!この4人にしかできない奇跡のアンサンブルをお楽しみください!

日時 : 2020年6月27日(土) 開場 14:00 、開演 15:00
会場 : 宗像ユリックス ハーモニーホール
交通手段 : JR博多駅・小倉駅より快速で約40分。JR東郷駅下車(公演当日のみ東郷駅-宗像ユリックス間臨時バス運行)

料金 : 全席指定 一般4000円 ペア7500円 学生2000円(小~高校生)
曲目 : 未定
問合せ :

担当者宗像ユリックス 文化事業部
TEL0940-37-1483
E-Mailinfo@yurix.munakata.com
HomePagehttps://yurix.munakata.com

■吹奏楽団『ミスリル』Re:Union(2月22日)

ファン有志による非公式のアマチュア吹奏楽団ならではの、溢れんばかりの情熱をこめた演奏を届けられるよう、団員一丸となって練習に励んでいます。
名曲揃いなFFですが、どのタイトルの、どんな楽曲が演奏されるのか…?!乞うご期待ください!
たくさんの方々のご来場を団員一同お待ちしています。

チケット絶賛受付中です!(無料の電子チケットです。)
以下URLからお申し込みくださいませ。
t.livepocket.jp/e/6o_yx

日時 : 2020年2月22日(土) 開場 13:15 、開演 14:00
会場 : かつしかシンフォニーヒルズ モーツァルトホール
交通手段 : 京成電鉄
料金 : 無料
曲目 : 「BRA★BRA FINAL FANTASY / BRASS de BRAVO」より
片翼の天使、ビッグブリッヂの死闘、FFバトル2メドレー、FFダンジョンメドレー、Never Look Back ~ Dead End 他
問合せ :

担当者田口
TEL09079305407
E-Mailmtihrilwo@gmail.com
HomePagehttp://mithrilwo.html.xdomain.jp/

■クラルテウインドオーケストラ アニメ×吹奏楽コンサート~桂工務店プレゼンツ・クラルテウインドオーケストラ取手特別公演~(2月11日)

千葉県松戸市を拠点に活動する若手吹奏楽団のクラルテウインドオーケストラが 茨城県取手市にて特別公演を行います♪
なんと演奏会丸々アニメ曲特集!全世代に「最高かよ!」って言わせたい!!  前売り限定の両部セット券もございます。あの頃ハマったアニメの思い出にどっぷり浸ってみてください。

日時 : 2020年2月11日(火) 開場 13:00 、開演 13:30
会場 : 取手ウェルネスプラザ
交通手段 : JR常磐線・関東鉄道常総線 取手駅から徒歩3分
料金 : 全席自由、1部・2部入れ替え制 ○前売り券 各回500円 ○当日券 各回600円 ○両公演セット券1000円​(セット券は前売り限定販売です。ノベルティ付き!)
曲目 :
<第一部『女祭り』>13:00開場/13:30開演
「君の名は。」メドレー/高橋 宏樹 編
COMEBACK 60’~80′ ~ヒロインアニメ編~/岩村 雄太 編
(ハイジ、アッコちゃん、ベルばら、キューティーハニーなどなど!)
「魔女っ子メグちゃん」「美少女戦士セーラームーン」「ふたりはプリキュア」他

<第二部『男祭り』>16:00開場/16:30開演
組曲「宇宙戦艦ヤマト」/宮川 泰/宮川 彬良 編
名探偵コナン メドレー/高橋 宏樹 編
「マジンガーZ」「ドラゴンボール」「ONE PIECE」「進撃の巨人」他

<『女祭り』『男祭り』共通>
「デジモンアドベンチャー」より『Butter-Fly』他
問合せ :

担当者クラルテウインドオーケストラ事務局
E-Mailqlartewind@gmail.com
HomePagehttps://www.qlarte.com/

■カナデウィンドアルモニーア 第4回定期演奏会(3月8日)

こんにちはカナデウインドアルモニーアです。私たちは2015 年に設立し、2016 年1月から活動を始めた横浜市を拠点に活動している一般吹奏楽団です。

団名は「Kanade」(音を奏でる)「Armonia」(イタリア語でハーモニー・調和)を表しています。吹奏楽という音を通して、「心に響くハーモニーを奏でる」ことで、私たちの音楽を聴いてくださる方はもちろん、私たち自身も楽しめ感動するような音楽を目指しています。

このたび、第4回定期演奏会を開催することとなりました。多くの皆様に楽しんでいただけるプログラムをご用意しておりますので、皆様お誘いあわせのうえこ来場いただければ幸いに存じます。

日時 : 2020年3月8日(日) 開場 14:00 、開演 14:30
会場 : 神奈川県立音楽堂
交通手段 : JR 京浜東北線・根岸線 、 市営地下鉄 「 桜木町 駅 」 か ら 徒歩 10 分
料金 : 入場無料
曲目 : 【曲目】
 喜歌劇「こう も り」 セレクション
 風紋
 アフリカン・シンフォニ ー
 松田聖子セレクション
 他

問合せ :

担当者カワダ
E-Mailkanade.wind.a2015@gmail.com
HomePagehttps://blog.goo.ne.jp/kwa2015

■吹奏楽団オデッセイ 第14回定期演奏会(2月24日)

こんにちは。私たちは豊島区池袋を拠点に活動している平均年齢30歳強の吹奏楽団です。この度、下記のとおり演奏会を行うこととなりました。
入場無料(チケット不要)、未就学児から入場が可能で、どなたでもお楽しみいただけます。
皆様のご来場を心よりお待ちしております。

日時 : 2020年2月24日(月) 開場 13:00 、開演 13:30
会場 : 和光市民文化センターサンアゼリア 大ホール
交通手段 :
○電車
東武東上線・東京メトロ有楽町線/副都心線「和光市駅」南口から徒歩13分
○バス
和光市駅から
和光市駅南口から東武バス 西大和団地経由 司法研修所循環 乗車
「和光市役所入口」(和光市駅南口から3つ目)下車徒歩1分
大泉学園方面から
西武バス 和光市駅南口行き 乗車 「広沢」下車徒歩3分
料金 : 無料
曲目 :
エルサレム讃歌~アルメニアの復活祭の讃歌による変奏曲~(A.リード)
・吹奏楽のための第二組曲(G.ホルスト)
・となりのトトロコレクション(福田洋介編曲)
・NHK大河ドラマ『真田丸』メインテーマ(服部隆之作曲、森田一浩編曲)
問合せ :

担当者吹奏楽団オデッセイ
E-Mailteam_odyssey2006@yahoo.co.jp


■ハルモニア ウインド アンサンブル 第30回定期演奏会(2月11日)

ハルモニアウインドアンサンブルは練馬区及び周辺で活動する吹奏楽団です。第30回定期演奏会では伊藤康英さん作曲「ぐるりよざ」を採り上げます。第2部は映画音楽をお送りいたします。
ぜひお気軽にお越しください。

日時 : 2020年2月11日(火) 開場 13:30 、開演 14:00
会場 : 杉並公会堂 大ホール
交通手段 : JR中央線・東京メトロ丸ノ内線荻窪駅北口より徒歩7分
料金 : 無料
曲目 :
【第1部】
・エベレスト山 / R.ガランテ
森の贈り物 / 酒井格
・ぐるりよざ / 伊藤康英
【第2部】
・アベンジャーズ
・モリコーネ・メドレー
・戦車道行進曲!パンツァーフォー!
・ラ・ラ・ランド
・ひまわり
・「千と千尋の神隠し」Highlights
問合せ :

担当者ハルモニア ウインド アンサンブル
E-Mailhwe_web@yahoo.co.jp
HomePagehttps://hweweb.wixsite.com/harmonie

■第20回京都市立芸術大学オーボエ・ファゴット専攻生によるダブルリード大演奏会(3月11日)

特別出演:高山郁子(京都市交響楽団首席オーボエ奏者)、中野陽一朗(京都市交響楽団主席ファゴット奏者)

第20回記念スペシャルゲスト:渡邊潤也(群馬交響楽団主席オーボエ奏者)、光永武夫(元京都市立芸術大学ファゴット非常勤講師)、京都市立芸術大学オーボエ・ファゴット卒業生

賛助出演
中山美輝(京都市立芸術大学卒業生、フリーランス打楽器奏者)
原 清夏(京都市立芸術大学ピアノ専攻4年)

日時 : 2020年3月11日(水) 開場 18:00 、開演 18:30
会場 : 京都コンサートホール アンサンブルホールムラタ
交通手段 : 京都コンサートホールアンサンブルホールムラタ
京都市営地下鉄烏丸線 北山駅下車1番または3番出口 南へ徒歩5分(地下鉄「北山駅」下車①③出口 南へ徒歩5分)
料金 : 高校生以下1000円 大学・一般1500円 (当日券 高校生以下1500円、大学・一般2000円)
曲目 : 三原寛志編曲『シェヘラザード』より
G.F.ヘンデル 水上の音楽 他
問合せ :

担当者陶山
TEL090-6969-1706
E-Mail2020.double.reed@gmail.com

■樋口幸弘のウィンド交友録~バック・ステージのひとり言 第111話 スパーク「宇宙の音楽」の迷走

▲フィリップ・スパーク(本人提供)

▲スコア – 宇宙の音楽(英Anglo Music Press、出版:2005年)

『ヒグチさん、この前スコアをお預かりしましたスパやんの新曲の件なんですが、早速“プログラム”の方で協議して、話を上げましたら、上が“どうしてもアカン”ってゆうてますねん(どうしてもダメだと言ってるんです)。』

2004年(平成16年)6月下旬、大阪市音楽団(市音 / 現Osaka Shion Wind Orchestra)のプログラム編成委員のリーダー、延原弘明さんから掛かってきた電話だ。

延原さんは、Ebクラリネットの名手で、その後、楽団が民営化されて一般社団法人となったとき、初代代表理事になった人物だ。

会話の中の“スパやん”とは、無論、イギリスの作曲家フィリップ・スパーク(Philip Sparke)のことだ。何度も来阪し、ひとりで地下鉄に乗れるまでに、その空気の中に溶け込んでいたフィリップは、当時、市音内部では、大阪流親愛の念とリスペクトを込めてそう呼ばれていた。

周囲の話を総合すると、そのネーミング・ライツは、どうやら筆者にあるらしいが、今さらそんなことはどうでもいい。自然発生的に生まれた大阪ネイティブによる親称だ。

また、市音に預けていたスコアとは、フィリップのブラスバンドのための新作『宇宙の音楽(Music of the Spheres)』の出版前オリジナル・スコアのプルーフだった。

第107話:スパーク「宇宙の音楽」との出会い》でお話したとおり、これより少し前の6月1日(火)、フィリップと東京で会った際、“もし、それをウィンドオーケストラのために新たにオーケストレーションを施して作り直すとするなら、果たして市音は演奏してくれるだろうか?”という驚くべき相談を受けた作品で、帰阪するとすぐ、市音にスコアを手渡し、彼の提案を投げかけていた。

冒頭の延原さんの電話は、それに対する正式な回答だった。

『本当に申し訳ない。(“プログラム”委員の間では)面白いと思ってるんですが…。』という延原さん。

少し踏み込んでその訳を尋ねると、およそ信じられない理由が返ってきた。

延原さんの説明によると、2004年6月11日(金)、ザ・シンフォニーホールで行なわれた第88回定期演奏会(指揮:秋山和慶)で『四つの真理(The Four Noble Truths)』を日本初演したばかりの市音は、同年11月22日(月)に同ホールで開かれる第89回定期演奏会(指揮:ディルク・ブロッセ)でも、『二つの流れのはざまに(Between the Two Rivers)』を予定していた。もし、その翌年の第90回定期演奏会(日時、指揮者未定)で今度の新作をやるとなると、結果としてスパーク作品を3回連続で取り上げることになる。楽団上層部は、それは“どうしてもアカン”と難色を示したのだという。

まるで世間の目を気にする“お役所”仕事のような反応だ。

同じ作曲家の作品がつづくことがそれほど“まずい”ことなのか!?

確かに、市音は、そこまで、フィリップの作品を定期演奏会だけで7曲取り上げていた。

・シンフォニエッタ第2番《日本初演》
Sinfonietta No.2
第68回大阪市音楽団定期演奏会
1994年(平成6年)6月2日(木)
ザ・シンフォニーホール、指揮:木村吉宏

・オリエント急行
Orient Express
第69回大阪市音楽団定期演奏会
1994年(平成6年)11月2日(水)
フェスティバルホール、指揮:金 洪才

・シンフォニエッタ第1番《日本初演》
(Sinfonietta No.1)
第76回大阪市音楽団定期演奏会
1998年(平成10年)6月10日(水)
ザ・シンフォニーホール、指揮:堤 俊作

・ディヴァージョンズ
Diversions
第80回大阪市音楽団定期演奏会
2000年(平成12年)6月16日(金)
ザ・シンフォニーホール、指揮:堤 俊作

・交響曲第1番「大地・水・太陽・風」《日本初演》
Symphony No.1 – Earth, Water, Sun, Wind
第81回大阪市音楽団定期演奏会
2000年(平成12年)11月9日(木)
フェスティバルホール、指揮:渡邊一正

・エンジェルズ・ゲートの夜明け《日本初演》
Sunrise at Angel’s Gate
第83回大阪市音楽団定期演奏会
2001年(平成13年)11月14日(水)
フェスティバルホール、指揮:渡邊一正

・カレイドスコープ《日本初演》
Kaleidoscope
第86回大阪市音楽団定期演奏会
2003年(平成15年)6月6日(金)
ザ・シンフォニーホール、指揮:秋山和慶

これに、先述の第88回と第89回の2曲を加えると、定期だけで計9曲となる。内、7曲は日本初演で、すでに東京佼成ウインドオーケストラがCD(佼成出版社、KOCD-3902 / 参照:第48話 フィリップ・スパークがやってきた)に録音していた『オリエント急行』も、実は、楽譜出版後、日本初の演奏だった。

話を聞いている内、誰が“アカン”と言っているのか、すぐに想像がついた。しかし、その理由は、残念ながら、およそ音楽をやろうとする人が簡単に口にしていいものだとは思えなかった。

もっと他の理由だったら、“そうですか”と簡単に引き下がっていたかも知れない。

例えば、曲がダメだと判断したとか、演奏時間が長すぎるとか、編成が大きすぎるとか、予算がかかりすぎるとか…..。

電話をかけてこられた延原さんには、何の恨みもないが、ここから筆者の反論が始まった。

『スコアをご覧になったからお分かりだと思いますが、今度の曲は、10年に1曲出るか出ないかというクラスの作品です。個人的には、彼の最高傑作だと思っています。しかも、今回は、市音を名指しで提案してきたわけです。そんな機会を簡単に捨ててしまうということは、私には到底理解できません。』

すでにスコアを読んで作品を理解されているだけに、筆者の主張を黙って聞いているしかない延原さんは、やっとのことで、『それは、じゅうぶん理解しているのですが…。』と言葉を挿まれたが、こちらは、それを遮るように、さらに畳み掛ける。

『いいですか。世界中にフィリップ・スパークに曲を書いてもらいたい、あるいは初演をしたいという演奏団体は山ほどあるわけです。今回、彼は、世界中から市音を選んだ訳です。彼は“演奏してくれるだろうか?”と控えめに言いながらも、実は市音に演奏して欲しいわけです。そんな天から降りてきたような千載一遇の機会を他に持っていけと、そう言われるんですか? 信じられない! もう一度、みなさんでよくスコアを検討していただけないでしょうか? どんな作品にも“旬”というか、取り上げるべきタイミングというものがあります。私がこれほどまで言うことはこれまでなかったでしょう? それだけの作品なんです!』

一度火がついてしまった筆者を押し止めることなど、地球上の誰にもできない。

延原さんは、『よく分かりました。』とついに折れ、『もう一度みんなで話し合い、上層部にも再度掛け合ってみます。』と約束された。

楽団という組織に属さない自由な立場にいる筆者には、その後、市音内部で何があったかについてはうかがい知れない。さぞかし激論が交わされたことだろう。

しかし、7月に入って再び掛かってきた電話の延原さんの声は弾んでいた!

『いろいろ言う者もおりましたが、押し通しました!』

スコアの魅力が、ついに楽団を動かした瞬間だった!

この決定の有る無しで、この作品の運命は大きく変わっていただろう。

その後、世界を席巻する『宇宙の音楽』ウィンドオーケストラ版の誕生秘話である!

▲第68回大阪市音楽団定期演奏会(1994年6月2日、ザ・シンフォニーホール)

▲チラシ – 第88回大阪市音楽団定期演奏会(2004年6月11日、ザ・シンフォニーホール)

▲チラシ – 第89回大阪市音楽団定期演奏会(2004年11月22日、ザ・シンフォニーホール)