ブラック・ダイク~シンフォニー(エドワード・グレッグスン作品集 第5集)…グレッグスンの作品の内的な凄さとブラック・ダイクの洗練されたサウンド、演奏が光るアルバム!

 『ダイクの前にダイクなし、ダイクの後にダイクなし』と謳われる世界中のブラスバンド・ファンの憧れの的、イングランドの名門ブラスバンド、ブラック・ダイクのすばらしい演奏が愉しめるエドワード・グレッグスンの作品集!
ドイエン・レーベルが1990年代初頭にスタートさせ、さまざまなアーティストと作り上げてきたグレッグスン作品集の第5弾CDでもある。

 エドワード・グレッグスン(1945~)は、管弦楽、声楽、器楽、ウィンドオーケストラ、ブラスバンド、ブラスアンサンブル、教育音楽など、幅広いカテゴリーの作品を書いているイギリスのベテラン作曲家だ。ウインドオーケストラのための『剣と王冠』(1991)やブラスバンドのための『ダンスとアリア』(1984)は、日本でもよく知られている。

 このCDは、グレッグスンが2012年に完成させたブラスバンドのためのオリジナル作品『遠い想い出に』と『二楽章のシンフォニー』の2大作を中心に、新たにブラスバンド伴奏版が作られた『トロンボーン協奏曲』や作曲者自身が語る作品感についてのトークなどを収録したひじょうにアンビシャス性の高いアルバムだ。

 同じ年にリリースされた「ブラック・ダイク~イン・トリビュート(フィリップ・ウィルビー作品集)」(CD-3036)と同様、作曲家と作品に対する深い敬意がこめられ、真正面から取り組んだ真摯な演奏からも演奏者の充実ぶりが感じられる。

 指揮は、音楽監督のニコラス・チャイルズと音楽助監督のロバート・チャイルズのおなじみのふたり。

 アルバム冒頭の『遠い想い出に』は、ブラック・ダイクの委嘱作で、2013年1月25日、マンチェスターのロイヤル・ノーザン・音楽カレッジ(RNCM)で開催された“RNCMフェスティヴァル・オブ・ブラス”のブラック・ダイクのコンサートで、ニコラス・チャイルズの指揮で初演。同年10月20日、ロンドンのロイヤル・アルバート・ホールで開催された“全英ブラスバンド選手権2013”選手権部門決勝のテストピース(課題)としてもエントリー20バンドによって演奏された。

 初演年の2013年が、パーシー・フレッチャーが全英ブラスバンド選手権決勝のためのテストピース(課題)として、ブラスバンドのための初の本格的オリジナルとなった交響詩「労働と愛」(CD-3034、「ブラック・ダイク・ゴールドVol.2」に収録)を作曲してちょうど100周年にあたることから着想された作品だ。

 “オールデン・スタイル(昔日のスタイル)の音楽”という副題を持ち、作品には、フレッチャー以降、20世紀前半の数十年の間にホルストやエルガー、アイアランド、ブリス、ハウエルズ、ヴォーン=ウィリアムズなどによって書かれたブラスバンド・オリジナルに敬意を払い、旋律の断片や和声、スタイルなどが使われている。

 それらは決してメドレーのような姿で使われず、グレッグスンの作品の中に見事に溶け込んでいるのが要注目ポイント。ヨーロッパのブラスバンド・ファンを熱狂させたのもなるほどと頷けるすばらしいスコアリングで、ブラック・ダイクの初演もたいへんな評判を呼び、早くも名曲の1つに数えられようとしている!

 アルバムのフィナーレをしめる『二楽章のシンフォニー』は、2012年に60周年を迎えることなったナショナル・ユース・ブラスバンド・オブ・グレート・ブリトン(イギリス・ユース・ブラスバンド)と同様に30周年を迎えることになったナショナル・ユース・ブラスバンド・オブ・ウェールズ(ウェールズ・ユース・ブラスバンド)の共同委嘱作だ。

 2012年4月6日、ウェストン=シュパー=メアのウィンター・ガーデン、翌7日、ロンドンのカドガン・ホールのシリーズ・コンサートで、プラムウェル・トーヴェイ指揮、ナショナル・ユース・ブラスバンド・オブ・グレート・ブリトンの演奏で世界初演。他方、ウェールズ初演は、同年7月27日、アベリストウィスのウェールズ大学、翌28日、カーディフのランダフ大聖堂という日程で、ニコラス・チャイルズ指揮、ナショナル・ユース・ブラスバンド・オブ・ウェールズの演奏で行われた。

 ベートーヴェンがピアノ・ソナタ第32番(1882)に使ったのと同じ2楽章構成のスタイルで書かれ、ソナタ形式のアレグロの第1楽章“トッカータ”と、テーマと4つのヴァリエーションからなる第2楽章“ヴァリエーション”で構成されている。

 プロコフィエフも、交響曲第2番(1925)をこの2楽章スタイルで書いており、そのこともあって、グレッグスンは初のブラスバンドのためのシンフォニーをこの2楽章スタイルで書くことになった。

 初演後、早くも注目を集め、2013年5月4日、ヨーロピアン・ブラスバンド選手権に出場したブラック・ダイク・バンドがオウン・チョイス・テストピース(自由選択課題)として演奏。2014年の北米ブラスバンド選手権にも採用された。

 (ヨーロピアンのアツいライヴは、フルバージョンがCD「ヨーロピアン・ブラスバンド選手権2013}(CD-2986)で、抜粋が同じタイトルのPAL方式DVD(DVD-9569)に収録されており、要チェックだ!)

 トラック-4に収録されているエドワード・グレッグスンとポール・ヒンドマーシュの会話では、以上2曲の作曲の経緯などがさらに詳しく述べられ、とても興味深い。いつもながら、ヒンドマーシュの切り込みが鋭く、それに対してグレッグスンがとても丁寧に回答している様子が伝わってくる。

 その他、アルバムには、原曲がオーケストラ伴奏で書かれ、ブラック・ダイクのソロイスト、ブレット・ベイカーのリクエストで新たにブラスバンド伴奏版が作られ、ベイカー自身がソロをとった『トロンボーン協奏曲』、全英オープン・ブラスバンド選手権2008とノルウェー選手権2009の共通テストピースとして書かれ、たちまちの内に人気曲となった『ロココ・ヴァリエーション』が収録(既発売盤からのリカップリング)されている。

 グレッグスンの作品の内的な凄さとブラック・ダイクの洗練されたサウンド、そして演奏が光るすばらしいアルバムだ!

【このCDの詳細をBPショップでチェックする】
http://item.rakuten.co.jp/bandpower/cd-3082/

■ブラック・ダイク~シンフォニー
(エドワード・グレッグスン作品集 第5集) 

【演奏】ブラック・ダイク・バンド
【指揮】ニコラス・チャイルズ、ロバート・チャイルズ
【発売】ドイエン (Doyen)

【収録曲】
作曲:エドワード・グレッグスン(Edward Gregson)【全曲】

1. 遠い想い出に (オールデン・スタイルの音楽)
2. トロンボーン協奏曲

I)第1楽章:レント・トランクィッ
II)第2楽章:アンダンテ・カンタービレ
III)第3楽章:アレグロ
トロンボーン:ブレット・ベイカー

3. ロココ・ヴァリエーション
4. (エドワード・グレッグスンとポール・ヒンドマーシュの会話)
5. 二楽章のシンフォニー

I)第1楽章:トッカータ
II)第2楽章:ヴァリエーション

【このCDの詳細をBPショップでチェックする】
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