■吹奏楽曲でたどる世界史【第32回】アメリカ西部開拓時代(1860年代~1890年代頃) ~映画『11人のカウボーイ』序曲(ジョン・ウィリアムズ)

Text:富樫鉄火

●作曲:ジョン・ウィリアムズ John Williams(1932~)
●原題:The Cowboys Ouverture
●編曲:Jim Curnow
●初出:1971年(映画公開)
●出版:Warner
http://item.rakuten.co.jp/bandpower/set-0040/
http://item.rakuten.co.jp/bandpower/set-0205/

●参考音源:『ザ・オリジナル/全日本吹奏楽コンクール自由曲名演奏シリーズ Vol.2 オリジナル曲集』(ブレーン)ほか
http://item.rakuten.co.jp/bandpower/cd-0278/
http://item.rakuten.co.jp/bandpower/cd-1032/

●演奏時間:約9分
●編成上の特徴:打楽器5パートあり(ティンパニ含む)。
●グレード:4

西部劇映画の舞台となっている時代は、1700年代(モヒカン族との抗争や、独立戦争)から、鉄道建設、アラモの攻防戦などがあった1800年代までと、けっこう幅広い。

だが、いわゆる「西部開拓時代」、つまり、映画などで見るカウボーイが最も活躍していた時代は、南北戦争(1861~65)の後から、政府がフロンティア消滅を宣言した1890年あたりまでを指す。その間、大陸横断鉄道の開通、1873年式コルト45口径銃の登場、OK牧場の決闘、ビリー・ザ・キッド、アパッチ、ジェロニモなどが登場した時代だ。人々が、理想郷=フロンティアを求めて、西へ西へと開拓を進めて行った時代でもある。だから「西部劇」というのである。

この時代を舞台にした数多い映画の中で、テーマ音楽が吹奏楽版になって人気のあるのが、1971年の『11人のカウボーイ』(マーク・ライデル監督)である。

この映画は、アメリカの国民俳優ジョン・ウェインが、物語の後半であっさり殺されてしまう設定がたいへんな話題になった。内容は・・・・・・

老牧場主ウィル(ジョン・ウェイン)が、650キロ先の町まで、1500頭もの牛を運ぶことになった。しかし、折悪しく世はゴールド・ラッシュ全盛期で、町には、まともな大人の男は1人もいない。仕方なくウィルは、11人の少年を牧童(カウボーイ)として雇い入れ、旅に出る。

途中、様々なトラブルに出会いながらも、少年たちが次第に一人前のカウボーイ、いや、男として育って行く過程が細やかに描かれている。特に、昔気質の老人ウィルと少年たちのぶつかり合いは、いつの世にもある世代間対立を思わせ、異色ながら、おおいに見応えのある映画になっている。

先述のように「敵の銃弾に倒れたことのないヒーロー」ジョン・ウェインが、クズのようなチンピラにあっけなく殺されてしまい、以後、少年たちだけで牛を届けることになる設定が、なかなか泣かせる。

ちなみに、この「チンピラ」を演じたブルース・ダーンは「ジョン・ウェインを殺した男」として、一躍有名になり、以後、独特な性格俳優路線で成功するのであった。

音楽は、おなじみジョン・ウィリアムズ。この頃は、まだ、『ジョーズ』(75)も、『未知との遭遇』(77)も、『スター・ウォーズ』シリーズ(77~)も、「インディ・ジョーンズ」シリーズ(81~)も、『E.T.』(82)も、書いていない。

しかし、これら後年の傑作音楽の要素が、すでに、すべて盛り込まれているのに驚く。コープランドを思わせるアメリカン・テイストと、シンフォニックな要素がうまく一体化しているのだ。現に、スティーブン・スピルバーグ監督は、この『11人のカウボーイ』の音楽に感動して、『続・激突!/カージャック』(73)に彼を起用し、続いてあの『ジョーズ』で大ブレイクするのである(スピルバーグは、少年時代からサントラ・マニアだった)。

ここで紹介するスコアは、映画の主要テーマをもとに、作曲者自身がコンサート用にまとめた管弦楽序曲を、吹奏楽版に編曲したもの。映画サントラにも「序曲」と題されたトラックがあるが、それとは少々違う。

映画音楽ながら見事に構成されており、すべてのパートに相応のテクニックを要求されるスコアなので、コンクール自由曲に取り上げるバンドも多い。過去、全国大会では、87年に福岡工業大学付属高校(現・福岡工業大学付属城東高校)が、96年に名取交響吹奏楽団が取り上げている。

冒頭のトランペットとホルンによって奏でられるファンファーレが決まらないと、全体も締まらなくなる。しかも、ホルンにとってはなかなか難儀なパッセージである。映画音楽だからといって侮れない、意外とやっかいな曲なのだ。

初心者が多いバンドだったら、同じ出版社から、Jay Bocook編曲による中レベル(小~中編成)のスコアも発売されているので、そちらを選ぶのもいいだろう。冒頭のファンファーレも適度に簡略化されており、ホルンは1パートのみ。

なお、この曲は、日本の吹奏楽界では、≪カウボーイ序曲≫という邦題で取り上げられていることが多い。確かに映画原題は『The Cowboys』なのだから、間違いとはいえないのだが、やはり映画音楽なので、正式邦題に合わせて≪11人のカウボーイ序曲≫などと表記される方が正確だと思う。まさか≪未知との遭遇≫を、原題に即して≪クローズ・エンカウンターズ・オブ・ザ・サード・カインド≫などと表記する人は誰もいないだろう。それと同じだ。<敬称略>

【参考楽曲&おまけ解説】

西部開拓時代を思わせる音楽といえば、やはり、コープランド作曲の、バレエ組曲≪ビリー・ザ・キッド≫と≪ロデオ≫が挙がる。

ビリー・ザ・キッドとは、伝説のカウボーイ犯罪者で、21歳で射殺されたが、悪事を重ねながらもどこか憎めないガキ(キッド)のような親しみやすさがあったため、人気ヒーローとなった。

ロデオは、カウボーイが荒馬や荒牛の背中に乗ってどこまで耐えられるかを試す度胸試しのことだが、現在では様々なルールが定められた立派なプロスポーツである。

で、これらがコープランドによってバレエ音楽になっており、ともに吹奏楽版になっている。どちらもコンクールによく登場している。

同じコープランドの≪エル・サロン・メヒコ≫は、文字通り「メキシコ酒場」を描いた曲で、メキシコ民謡が使われているが、これもどこか西部開拓時代の香りがする。やはり、吹奏楽版でも人気があり、コンクールでもおなじみの曲だ。

また、本文で述べたゴール・ドラッシュを描いた、そのものズバリ≪ゴールド・ラッシュ!≫なる吹奏楽曲がある。高橋伸哉作曲、5分強のたいへん楽しい曲だ。CD『写楽』(ブレーン)に収録されている(楽譜もブレーンのレンタル)。

そもそもゴールド・ラッシュとは、1848年、カリフォルニアの川で砂金が発見されたことに端を発する。その結果、アメリカ国内はもちろん、世界中から、一攫千金を狙って人々が押しかけた。西部開拓ブームの背景には、これがあったのだ。

ちなみに、「ジーンズ」なるズボンは、ゴールド・ラッシュ時代の金鉱堀りの連中が、すぐに破れない丈夫なズボンを欲していたのに応えて、この頃生まれたものである。発明者はドイツ系の事業家リーバイ・シュトラウス。分厚い幌馬車の幌布でズボンをつくり、縫い目の要所にリベット(金属ボタン)を打ち付けて丈夫にした。さらに汚れが目立たないようにインディゴで青く染色した。ジーンズ「リーバイス」の誕生である。

構造主義の学者レヴィ・ストロースは、このリーバイ・シュトラウスの親戚である(……なんていっても、誰も知らないか)。

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