■ディビット・キング(David King)/ブリッグハウス&ラストリック・バンド・プロフェッショナル・コンダクター、コルネット奏者

◎インタビュー&文:多田宏江

2009年10月3日マン島でのマスタークラス期間中メールインタビュー
協力:Tim Hewitt (Yamaha Music UK Ltd Regional Manager)

▲David King

 デヴィッド・キング。バンズマンなら、その名を知らない人はいない、ブラスバンド界を代表する指揮・指導者&コルネット・プレイヤー。9月のブリティッシュオープンでは、ブリッグハウス&ラストリックバンドの指揮者として、デイビット・キングのオープン復活に注目が集まりました。

 そんなデヴィッド・キングは昨年、ブラック・ダイクを指揮し日本ツアーを行った1990年以来、18年ぶりに来日。世界中を忙しく飛び回るデヴィッドですが、今回はヤマハの仕事でマン島にいるところを、直撃メール・インタビュー。(マン島はアイリッシュ海北部のほぼ中心にある島で、オートバイの国際的ロードレース「ツーリスト・トロフィー」(マン島TTレース)の開催地としても有名です。またブラスバンドが盛んな地域でもあります)

YBS時代の思い出話から、現在のブリッグハウス&ラストリックバンドの話、また世界的な活動についてお聞きしました! デヴィッド・キングの今に迫ります。

■今回はヤマハのマスタークラスをマン島で行ったそうですが、どのようなマスタークラスでしたか?

デヴィッド:今回が私にとって初めてのマン島訪問になります。ヤマハの準備したマスタークラスと指揮&コルネットのセミナーを行いました。楽しいコンサートも開催され、マン島の熱意溢れる8つのバンドは素晴らしい演奏を披露してくれました。

■世界的にブラスバンドの指揮・指導をしてらっしゃいますが、今後はどのような活動を予定されていますか?

デヴィッド:昨年は岡本篤彦さんの招待を受けて日本に来日しました。来日は岡本さんのバンドである浜松ブラスバンドと大阪ハーモニーブラスとのお仕事でしたが、どちらのバンドともすばらしいバンドで音楽的なレベルも高かったです。岡本さんと、また仕事が出来てとてもうれしかったですね。
彼は何年も前にソルフォード大学に来て、私と一緒に勉強した、すばらしいコルネット奏者であり、とても才能のある指揮者です。今年(2009年)の11月19日~30日の間、再び浜松ブラスバンドと大阪ハーモニーブラスとの仕事のために来日する予定で、日本での仕事もとても楽しみにしています。

今後のスケジュールはヤマハ・ヨーロッパ、イギリス、オーストラレーシア(オーストラリア・ニュージーランドおよびその周辺の島々の総称)のアーティスト&コンサルタントとして国際的に仕事をする予定です。

 2010年2月からはノルウェー・チャンピオン、エイカンガーの指揮を2010年ヨーロピアン・チャンピオンシップス(開催地オーストリア、リンツ)に向けて開始すると同時に、ヨークシャーのブリッグハウス&ラストリックバンドとの仕事も続けていきます。

 現在、ブリッグハウス&ラストリックのコルネット・セクションはヤマハ・ゼノ・コルネットを使用しています(ソロ・コルネット・セクションはイエローブラス、バックロウはゴールドブラス)。そこでヤマハの企画によるCDレコーディングをシェオナ・ホワイト(Sheona White、テナーホーン)、カトリーナ・マルゼラ(Katrina Marzella、バリトン)と言った、ヤマハ・アーティストのブラスバンド・プレイヤー達をソロイストに招いてブリッグハウス&ラストリックとレコーディングする予定です。

 オーストラリアでは、ナショナル・オーストラリア・ブラスと新曲の委託作品のためのコンサート、フェスティバルなどを年に3回予定しています。

 その他のヨーロッパでの仕事は、スウェーデンでヨーテボリのプロフェッショナル・ブラスバンド音楽家たちとの活動、新しいヤマハのテナーホーンを含む、ヤマハの新製品の宣伝も行います。新しいヤマハのテナーホーンはヤマハ・アーティストのシェオナ・ホワイトとヤマハが開発した楽器で、豊かな響きと素晴らしいレスポンス&プロジェクションをもった最高の楽器です。

 2010年後期にはスウェーデンでもマスタークラスと、指揮者講習会を行う予定です。

 2010年は私の恩師ロイ・ニューサム(Dr Roy Newsome)先生が80歳の誕生日を迎える年でもあります。私はロイ先生と奥様をオーストラリアに招待してお祝いします。その際、ロイ先生はナショナル・オーストラリア・ブラスとシドニーのセントメアリー・バンドのゲストとして私と一緒に仕事をする予定です。

■ロイ先生の話が出ましたが、ロイ先生以外に影響を受けた先生や指揮者、またコルネット&トランペット奏者はいますか?

デヴィッド:私が特に影響を受けたコルネット&トランペットの先生は、1.父、2.ケン・スミス(Ken Smith…1960年から1970年代に活躍したニュージーランドの伝説的トランペット&コルネとプレイヤー)、3.デヴィッド・ジェイムス(David James…私が1982年にイギリスに来た時のコルネットの先生)です。

 あとのほとんどは、自分の教え子達に習ってきたように思います。教え子達は常に私に新しいアイディアと、練習し続ける意欲を沸き立たせてくれます。

■そんな、あなたにとって、音楽とは何ですか?

デヴィッド:音楽が全てではありません。音楽は素晴らしい芸術表現形態であって、そのバランスを保つことが重要です。出来る出来ないで個人を評価するような誤った考えに、はまらないで欲しい。私達を「human doing’s」、何かをする機械のように捉えるのは、不健全な考え方で、私達は「human-‘beings’」人間なのです。音楽は、この全世界に共通する言葉を通して、人生の喜びを分かち合う存在であると思います。

■YBS(Yorkshire Building Society Band)時代の思い出を聞かせていただけますか?

デヴィッド:思い出話の一つ目は、YBSが課題曲も、自由曲も演奏順番1番を引いてしまった1996年のヨーロピアン・チャンピオンシップス(開催地:ノルウェー)のことですね。その年が若いYBSにとってのヨーロピアン初出場でした。観客のだれもがヨーロピアン初出場で勝てるとは思っていなかったし、さらには課題曲、自由曲とも演奏順番が1番となると、なおさら、このバンドが勝つことは不可能だと思われていました。

 しかし、若いYBSに負ける気はなく、精神を集中させ希望を持っていた。その希望は歴史に代わりました…ヨーロピアン・チャンピオンシップスで、演奏順1番で勝ったバンドは、このバンドが初めてでした。とても素晴らしい思い出です。

 もう一つは、今考えるだけでも笑ってしまうんだけれど、バーミンガムでのヨーロピアン・チャンピオンシップス(2000)のこと。課題曲はフィリップ・スパークの「タリス・ヴァリエーション」。YBSの演奏の出来はとてもよかった。しかし自由曲、フィリップ・ウィルビーの「ダブ・ディセンディング(舞いおりる鳩)」。本来ならばCDプレイヤーで鳥の鳴き声を流すはずだったんだけど、CDプレイヤーが壊れて鳴らない。だから私達は流さないで演奏したんだ。誰も気がつかなかったみたい、なぜならバンドはの演奏は、とにかく上手くいったからね。それでその後、とっても大事なところで、銅鑼が床に落ちてしまった。しかも、その銅鑼はパーカッションの前にあったマイク・スタンドを直撃、さらにはE♭ベースのベルを打った。ひどいことになってしまったけれど、バンドはとにかく演奏を続けた。今思い返すだけで面白すぎる。何であんなことになったかわからないけど、でも、私達は勝った!

(その時のライブ音源はコチラ http://item.rakuten.co.jp/bandpower/cd-0007/

■今のブリッグハウス&ラストリックについて聞かせてください。

デヴィッド:ブリッグハウス&ラストリックブラスバンド(Brighouse and Rastrick Brass Band)は、彼らの長い歴史とヨークシャーのブラスバンドの伝統を引き継いでいます。私のプロフェッショナル・コンダクターとしての第一印象は 、彼らが本当に新しいアイディアで成長を図りたいと思っていることと、未来に向けて卓越した高い音楽レベルを保持したいと強く思っていること。

 このバンドは先ほど話にも出たYBSとは全く違うバンドでした。ブリッグハウスはゴールを持っていて、彼らの未来に焦点を当てている。このことは、音楽を作る上での可能性を凝縮させ、音楽を作りやすくします。私のブリッグハウス&ラストリックとのデビューは2009年9月のブリティッシュ・オープンでした。私はこのデビューを楽しむことが出来、2010年への自信を感じました。個人的にも仕事としても、彼らとの一1年が良いものになるだろうと思っています。

■日本人の読者があなたのレッスンを受ける手段として、バイロン・ブラス・サマースクールがありますよね? 前回のサマー・スクールはいかがでしたか? また2010年のサマースクールはどうなりそうですか?

デヴィッド:2009年のサマー・スクールは大成功でした。幅広い年齢層の様々な演奏レベルの参加者に楽しんでいただけたと思います。すぐそばにビーチのある美しい環境でブラスバンドを楽しみ、ストレスから開放された新年をスタートできます。同時に技術の向上と音楽の新しいアイディアを得ることが出来、それが今後の意欲につながっていくはずです。
同じくブラスバンドを楽しみむ仲間を作って、音楽を学び、海のそばでの魔法のような数日を楽しむ。そんなサマー・スクールは若い音楽家にとって、素晴らしい経験になるでしょう。

 日本のブラスバンド・プレイヤーの皆さん、サマー・スクールへの参加はまだ遅くはないですよ。ただし、募集締め切りは近づいて来ていますのでお早めに。(詳しい内容はこちら www.byronbrass.com  から)

■最後に、日本のプレイヤーたちにメッセージをお願いします。

デヴィッド:皆さん、ぜひ「バイロン・ブラス・サマー・スクール」へお越しください。このサマー・スクールはオーストラレーシア全体におけるブラスバンドの新しい学びの場です。あなたに、学びのチャンスと、ブラスバンドの魔法を楽しむチャンスを提供してくれますよ。


 

【デヴィッド・キングの指揮によるレコーディングCD、DVD】

◎ハイランド讃歌ヨークシャー・ビルディング・ソサエティ・バンド
http://item.rakuten.co.jp/bandpower/cd-0226/

◎ケルトの叫び
ヨークシャー・ビルディング・ソサエティ・バンド
http://item.rakuten.co.jp/bandpower/cd-0019/

◎ヴィタエ・ルクス
ヨークシャー・ビルディング・ソサエティ・バンド
http://item.rakuten.co.jp/bandpower/cd-0197/

◎宇宙の音楽
ヨークシャー・ビルディング・ソサエティ・バンド
http://item.rakuten.co.jp/bandpower/cd-0700/

◎ウィンドウズ・オブ・ザ・ワールド
ヨークシャー・ビルディング・ソサエティ・バンド
http://item.rakuten.co.jp/bandpower/cd-0184/

◎エッセンス・オブ・タイムThe Essence of Time
ジョン・フォスター・ブラック・ダイク・ミルズ・バンド
http://item.rakuten.co.jp/bandpower/cd-0210/

その他、ヨークシャー・ビルディング・ソサエティ・バンドのCD、DVD >>>

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