◎インタビュー&文:多田宏江
2009年9月5日、グレート・ノーザン・ブラス・アーツ・フェスティバルが行われたブリッジウォーターホール(マンチェスター)の出演者楽屋にて。
協力:フォーデンス・バンド、プリンシパルバリトン奏者、稲葉奈摘さん
写真協力:イアン・クルーズ(Ian Clowes)
http://www.pbase.com/troonly/09_sep_bridgewater
吹奏楽でも、ブラスバンドでも人気の高いフィリップ・スパークの「ドラゴンの年」。「ドラゴンの年」のCDと言えば、この1枚!とも言われる、1992年のヨーロピアンチャンピオンシップスのライブCD。92年のヨーロピアンで優勝し、今や伝説となったこの「ドラゴンの年」を演奏したブリタニア・ビルディング・ソサエティ・バンド(現フォーデンス・バンド)のプリンシパル・コルネット奏者は、この時20才だった! 彼は今も同じバンドで、プリンシパルの席を守り続けています。その張本人、フォーデンス・バンド、プリンシパル・コルネット奏者のマーク・ウィルキンソンさんに、ブラスバンド通信第一1号のインタビューをしてきました。
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▲マーク・ウィルキンソン(左)とレポーター多田(右)
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■いつからどのようにコルネットを始めましたか?
マーク:6才からローカルバンド(Ellenbrook and Boothstown Band)でバンドのメンバーからレッスンを受け、コルネットを吹きはじめました。4年後、ウォークデン・バンド(Walkden Band)というセカンド・セクションのバンドに移り、13才でベッシーズ・ボーイズ(Besses Boys Band)へプリンシパル・コルネット奏者として移籍し、18才まで在籍しました。
18才になってから、ウィンゲーツ(Wingates)で1992年の1月までプリンシパル・コルネットを吹き、92年1月、当時20才で現在のフォーデンスのプリンシパルの席に着きました。現在38才なので、もうすぐ在籍18年になります。
■ユースバンドでは吹かなかったんですか?
マーク:ベッシーズ・ボーイズは18才までのユースバンドでした。しかし、大会はユース部門ではなく、大人の部門に混ざって出場し、フォース・セクションから勝ち抜いてセカンド・セクションにまで上がりました。1ヶ月のオーストラリア・ツアーも成功して、18才になり卒業し、ウィンゲーツに移りました。
■ベッシーズ・ボーイズ卒業後、他のプレイヤー達はどんな活動をしていましたか?
マーク:軍楽隊でプロ活動を続ける人が多くいました。トロンボーン・セクションは、BBCフィルハーモニーオーケストラ・スコットランドや、リバプール・フィルハーモニー・オーケストラ・プレイヤーとして、今もプロ奏者として演奏を続けていますね。
■バンド活動と平行して、ナショナル・ユース・ブラス・バンドにも参加しましたよね?
マーク:16才からソロ・コルネットで参加し、17才、18才とプリンシパルを務めました。2000年からはナショナル・ユースのコルネット講師としてバンドに戻って9年になります。同じく、ナショナル・チルドレン・ブラス・バンドの講師もしています。
■日本人の読者があなたのレッスンを受ける手段として、サマースクールがありますよね?
マーク:ブロムスグローブでのサマースクール(The Brass Band Summer School staged at Bromsgrove School)でアラン・モリソンの後を継いで、コルネット講師を来年の夏から引き受けます。
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▲photo by Ian Clowes
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■1992年のヨーロピアン・チャンピオンシップスの「ドラゴンの年」を演奏された側のとしての感想をお聞かせください。
マーク:課題曲は「ウェールズの庭の5つの花」(ギャレス・ウッド)(FIVE BLOOMS IN A WELSH GARDEN /Gareth Wood)で、自由曲として「ドラゴンの年」を演奏しました。イギリスでのブラスバンド史上最高のコンテスト・パフォーマンスの1つと言ってもいいでしょう。テンポもサウンドもエキサイティングで、演奏が終わった後のお客さんの拍手歓声もすごかった。
■20才でプリンシパル、しかもヨーロピアンという大きな舞台。緊張はしませんでしたか?
マーク:緊張しましたよ。なぜなら1月にバンドを移籍して、それまでのプリンシパル・コルネット奏者、マーティン・ウィンターから引き継いだ直後でしたからね。3月のエリア(イギリスの地区大会)が移籍後初めてのコンテスト、その後が5月のヨーロピアンでした。20歳の私にとって、ブリタニアのプリンシパルは大きな席でした。マーティンはBBCフィルハーモニー・オーケストラでのトランペットの仕事が忙しく、ソプラノに移動しました。マーティンは私の後ろのソプラノの席で、私は彼の前で吹いていました。
他のプレイヤーはユーフォニアムが現ブラック・ダイク指揮者のニコラス・チャイルズ、2楽章の大きなトロンボーン・ソロはニック・ハドソンと素晴らしいメンバーに囲まれて演奏しました。
■指揮者のハワード・スネルはどんな方でしたか?
マーク:彼が私にフォーデンスでプリンシパルを吹く機会をくれました、彼が呼んでくれたおかげで、今までの素晴らしい体験があり感謝しています。音楽指導者としても素晴しいし、奏者のやる気を引き出す指導者でした。バンドは初見にものすごく強くて、難曲も初見で吹けていました。ハワードもそのように指導していました。
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▲photo by Ian Clowes
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■現在のフォーデンスで吹いていてどうですか?
マーク:フォーデンスでプリンシパルを吹かせてもらって楽しいですね。初めてこのバンドへ移籍したときから、その気持ちは変わりません。忙しい仕事の中でも、バンドが生きがいです。
今のバンドは、バンド全体のレベルも個人の基礎力も高い。最近はメンバーの変更が少なくメンバーが固定化したことが、サウンドの安定感につながっていると思います。特にプリンシパル・プレイヤーたちは、長く在籍しているメンバーが多く、ユーフォニアムのグリン・ウィリアムスと、トロンボーンのジョン・バーバーが1995年に移籍し約15年。ソプラノのアラン・ウィッチェリー、フリューゲルのヘレン・ウィリアムスも2000年から9年目になります。
■日本の読者達もあなたの音を聴きたいと思いますが、CDを作る予定などは?
マーク:作る予定は前々からあり、作ろう作ろうとしていますが、仕事とバンドの忙しさで長引いてしまっていますね。スタンダードの作品よりも、委嘱作品を演奏してCDにしたいと思っています。
■日本のプレイヤー達にアドバイスをお願いします。
マーク:苦手なところを練習しないと、それはいつまでも上達しません。苦手なところを練習することによって、それが逆に強みになります。弱点を強みに変えましょう。コルネット・プレイヤーの方は、よく、他のコルネット・プレイヤーのCDや演奏を聴くことが多いと思います。それによって、スタイルをコピーしたり、違うアイディアを得る事ができると思いますが、全てをコピーするというよりも、自分のしたいことをすればいいと私は思います。