BBC Radio2 Young Brass Soloist 2010
BPレポーター:多田宏江
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▲プログラムに掲載されている、ファイナリストの4人の写真
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英国ブラスバンド通信第5回目は、2月20日(土)にマンチェスターにある北王立音楽院行われた「BBCラジオ2 ヤング・ブラス・ソロイスト2010決勝戦(BBC Radio2 Young Brass Soloist 2010)」のレポートをお届け致します。
この大会は、イギリスの国営放送BBCのラジオ2の主催による大会で、毎週金曜21:30~22:00(イギリス時間)放送のBBCラジオ2ブラスバンド番組「リッスン・トゥー・ザ・バンド/Listen to the Band」のラジオ収録を兼ねたものでした。ブラック・ダイク・バンドも決勝進出の4人も、やり直しのできない一発録音が簡単かのようなほぼ完ぺきな演奏。26日のラジオ放送も楽しみな、素晴らしいパフォーマンス満載の大会でした。
<BBCラジオ2 ヤング・ブラス・ソロイスト2010決勝戦>
【日時】2010年2月20日(土) 開演19時30分
【会場】北王立音楽院/The Royal Northern College of Music
【司会】フランク・レントン/Frank Renton
【バンド】ブラック・ダイク・バンド/The Black Dyke Band
【指揮】ニコラス・チャイルズ/Nicholas Childs
【審査員】リチャード・エバンス/Richard Evans、フィリップ・コブ/Philip Cobb
ファイナリスト(決勝進出者)
・ジョナサン・ベイツ/Jonathan Bates (14) テナーホーン
・ベンジャミン・リシェトン/Benjamin Richeton (20) コルネット
・ゾーイ・ハンコック /Zoe Hancock (18) フリューゲルホーン
・マシュー・ホワイト/Matthew White (19) ユーフォニアム
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▲ファイナリストの伴奏を務めるブラック・ダイク・バンド
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ファイナリストの演奏はテナーホーン奏者、ジョナサン・ベイツからスタートしました。ウェストヨークシャー出身の14歳。イギリスの名門バンド「ブリッグハウス&ラストリック・バンド」にプレイヤーとして在籍しているだけではなく、14歳でプリンシパル(首席)ホーン・プレイヤーというのですから、演奏は年齢の概念を超えた素晴らしいパフォーマンスでした。
また彼は、ナショナル・ユース・ブラスバンド・オブ・グレードブリテン(グレードブリテン選抜ユースバンド)に2007年史上最年少プレイヤーとして、イギリスのブラスバンド界に歴史を残している若きプレイヤーでもあります。
ファイナリスト2人目はコルネット奏者のベンジャミン・リシェトン。フランス人のベンジャミンは、フランスのナショナル・ユース・吹奏楽団(ONHJ/選抜ユースバンド)で首席トランペットを務め、ヨーロピアン・ユース・ブラスバンド(EYBB)2007でもプリンシパル(首席)コルネットを務めました。2年前にSalford大学に転入後、YBSに在籍しソプラノ・コルネットを担当、現在はグライムソープ・コリアリー・バンドでソロ・コルネットを吹いています。ヨーロピアン・ユース・ブラスバンド2008でもソプラノ・コルネットを担当した他、ナショナル・ユース・ブラスバンド・オブ・スイス(NJBBS)のゲスト・ソプラノ・プレイヤーとして参加するなど、母国フランス、在学中のイギリスだけにとどまらず活躍しています。
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▲唯一の外国人参加者、フランス人のベン・リシェトン
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ファイナリスト3人目はフリューゲルホーン奏者のゾーイ・ハンコック。ウェールズ王立音楽院(Royal Welsh College of Music)に在学中の彼女は、1月に行われた「フェスティバル・オブ・ブラス」でもブリッグハウス&ラストリック・バンドをバックにソロを、ここ北王立音楽院で演奏しました。英国ブラスバンド通信の第一号で紹介した「グレート・ノーザン・ブラス・アーツ・フェスティバル」でも、レイランドをバックにソロを吹くなど既にソロイストとしてひっぱりだこ。いつもミニスカートで登場するので、ミュートを取るしぐさに女性の私でもドキッとします(笑)。暗譜で目を閉じながら演奏するその姿にもうっとりしてしまう演奏でした。
ラストを飾るのは、ユーフォニアム奏者マシュー・ホワイト。彼は3年連続ファイナル進出です。数年間レイランド・バンドでセカンド・ユーフォのポジションにいましたが、現在はペンバトン・オールド・バンド/Pemberton Old Bandでプリンシパル(首席)ユーフォニアム奏者としても大活躍。ナショナル・ユース・ブラスバンド・オブ・グレートブリテンでもプリンシパル・ユーフォニアムを務めています。
また2008年のBBCテレビ主催のヤング・ミュージッシャン・オブ・ザ・イヤーでも金管部門のファイナリストになりました。日本でスティーブン・ミードと大阪市音楽団よって初演された、ピーター・グレイアム作曲のユーフォニアム協奏曲『称うべき紳士たちの列伝に』から2楽章と3楽章を暗譜で、また2楽章ではエコーを足で操作しながら堂々と演奏していました。
4人のファイナリストの演奏が終わった後は、審査結果発表まで、ブラック・ダイク・バンドが演奏しました。2曲目の「Only for you」では、ブラック・ダイク・バンドでソプラノ・コルネットを担当する21歳のポール・ダフィー/Paul Duffyがバンドをバックにソロを披露。審査員で、結果発表を担当した22歳のロンドン交響楽団首席トランペット奏者フィリップ・コブ/Philip Cobbとともに、ファイナリストを支える大人たちの中にも若い力が光る大会でした。
結果は3度目の正直。ユーフォニアム奏者のマシュー・ホワイトの優勝でした。
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▲昨年の優勝者から、今年の優勝者へ、トロフィーの授与式の様子
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この大会の録音は2010年2月26日21:30~(日本時間2月27日6:30)BBCラジオ2で放送予定です。日本でもインターネットでBBCラジオ2を聴くことができます。ただし、ネットラジオは次回番組放送までの”一週間”と聴ける期間が限られていますのでご注意ください。
■「Listen to the band」ホームページ
http://www.bbc.co.uk/iplayer/episode/b00qyk7n/Radio_2_Young_Brass_Soloist_Final/
http://www.bbc.co.uk/programmes/b00qyk7n
<BBCラジオ2 ヤング・ブラス・ソロイスト2010決勝戦演奏曲(プログラムから)>
オープニング演奏/Introduction
ブラック・ダイク・バンド/The Black Dyke Band
・Fanfare in Jubilo (Thomas Doss)
決勝戦/The Four Finalists
ジョナサン・ベイツ/Jonathan Bates テナーホーン
・Concert Etude (Alexander Goedicke arr. Steve Pullin)
・Rainforest from ‘Windows of the World'(Peter Graham)
・Capriccio Brillante (Herman Bellstedt arr. Sandy Smith)
ベンジャミン・リシェトン/Benjamin Richeton コルネット
・Jubilance (William Himes)
ゾーイ・ハンコック /Zoe Hancock フリューゲルホーン
・Somewhere Over The Rainbow (Harold Arlen & Yip Harburg arr. Ray Farr)
・Song and Dance (Philip Sparke)
マシュー・ホワイト/Matthew White ユーフォニアム
・Movements: II – The Final Problem & III – The Great Race
from ‘In League With Extraordinary Gentlemen (Concert for Euphonium)'(Peter Graham)
審査結果までの間/During the adjudication
ブラック・ダイク・バンド/The Black Dyke Band
・Russian and Ludmilla (Glinka)
・Only for You (Paul Lovatt-Cooper) ソプラノソロ:ポール・ダフィー/Paul Duffy
・Scat (Peter Graham)
・America & Somewhere from ‘West Side Story’ (Leonard Bernstein)
審査発表&トロフィーの授与式/Results and trophy presentations
優勝者による演奏
マシュー・ホワイト/Matthew White ユーフォニアム
・III – The Great Race from ‘In League With Extraordinary Gentlemen
(Concert for Euphonium)'(Peter Graham)