いまや出版界は「大賞」だらけである。
「本屋大賞」を嚆矢に、「新書大賞」「ノンフィクション本大賞」「日本翻訳大賞」「料理レシピ本大賞」「サッカー本大賞」「マンガ大賞」「手塚治虫文化賞~マンガ大賞」「ITエンジニア本大賞」「ビジネス書大賞」……さらには書店主催(紀伊国屋じんぶん大賞、キミ本大賞、啓文堂大賞、八重洲本大賞、未来屋小説大賞など)、地方別(宮崎本大賞、神奈川本大賞、広島本大賞、京都本大賞など)もある。
このまま増えていったら、書店の棚は、すべて「大賞別」に構成しなければならないのではと、妙な心配をしたくなる。
そこへまた、新たな大賞が加わった。「音楽本大賞」である。一瞬「またか」と思ったが、同時に「そういえば、なぜ、いままでなかったのだろう」とも感じた。
あたし自身が、編集・ライターとして音楽本にかかわってきながら、あまり考えたこともなかったが、これは、ぜひとも定着していただきたい大賞である。
実は、このニュースが流れた直後、仕事先で会った女性3人に、このことを話してみた。すると、ニュアンスこそちがうものの、誰もが「音楽本って、選ぶほど数が出てるんですか」との主旨の返事だった。
Aさんは嵐のファン。Bさんは中島みゆきのファン。Cさんは日本のシティ・ポップス好き。
(残念ながら、その場には、あたしの好きな吹奏楽やクラシックや映画音楽に感度のあるひとは、いなかった。もっとも、そんなひとは、どこへ行っても、まずいないのだが)
つまり、「音楽本」といっても、あまりにジャンルが広いわけで、そのなかのある特定の分野のファンにとっては、多くの「音楽本」が出ていることなど、視野に入っていないのである。
実は、音楽本は、数もジャンルも、実に膨大であり、ひとつの「世界」を形成しているといっても過言ではない。そういう意味では、この賞は(具体的にどういう部門があるのか不明だが)多くのジャンルの「音楽本」が出ていることを知ってもらう、いいチャンスのような気もする。
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