【コラム】第377回【映画紹介】ジョスカン・デ・プレが流れる「信長」映画!

現在公開中の映画『レジェンド&バタフライ』のなかに、西洋のミサ(らしき不思議な野外儀式)の場面がある。その隅で、4人の修道士と思われる南蛮人が、ミサ曲を朗唱しており、信長が「悲しい謡(うたい)じゃのう」などとつぶやいている。
この音楽は、ジョスカン・デ・プレ作曲のミサ曲《デ・ベアタ・ヴィルジネ》(祝福された聖母/別名「聖母のミサ」)の〈キリエ〉である。
日本の時代劇映画に、ジョスカンがここまではっきり流れるのは、おそらく初めてではないか。

ジョスカン・デ・プレ(1450頃?~1521)は、ルネサンス期に活躍した、フランドル(現在のベルギー~フランス北西部)出身の教会音楽家。日本では、バッハを「音楽の父」と呼んでいるが、西洋では、ジョスカンのほうが、そう呼ばれている。「美術界のミケランジェロに匹敵する」(コジモ・バルトリ)とか、「ジョスカンはすべての音符を操る主人である」(マルティン・ルター)とまで称された、音楽史上の巨人である。
ほかに、ミサ曲では《アヴェ・マリス・ステラ》(めでたし、海の星よ)、《パンジェ・リングァ》(舌よ、讃えよ)、《ロム・アルメ》(武装したひと)などが有名だ。

彼の音楽は、その構成形式も内容も旋律も、あまりに美しく、見事だった。それまでのミサ曲は、

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