超ヘビー級の警察ミステリ、登場であります!
新書判で正味470頁余。ただし、ハヤカワのポケミスなので、新書判とはいえ2段組、1頁が800字強ある。通常の1段組み文芸書の体裁だったら、500頁を超えているだろう。
「超ヘビー級」なのは、その分量だけではない。舞台は、1941年のハワイからはじまり、太平洋を横断し、香港、東京に至る。最後は1945年だ。
つまり、日米開戦から太平洋戦争、終戦、占領までが、まるごと、470頁のなかに詰まっている、一種の「近現代史ミステリ」なのである。
しかも、この著者は(ハワイ在住の弁護士だという)、偏執質ではないかと言いたくなるほど、描写が細かい。いったいこれが本筋とどう関係があるのか、イライラする場面すらある。
ところが、次第に、その執拗な描写が面白くなってくる。どこか純文学のような香りさえ、かすかに漂い、いわゆる「読書の快感」を覚えるようになる。
そうなると、もう、本書を手放すことはできなくなる。
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