【コラム】富樫鉄火のグル新 第370回【新刊紹介】「まじめ」に生きることが、新しい時代を生む――朝ドラのごとく気持ちのいい音楽本!

今年度(2022年度)前期のNHK朝ドラ『ちむどんどん』は、世評どおりのドラマだった。あまりのひどさに、最後は観るのをやめてしまった。
それに対し、現在放映中の後期作品『舞いあがれ!』は、とても気持ちのいい内容で、何度か涙ぐむ場面もあった。
このちがいは、何なのか。
ひとことでいうと、劇中人物が「まじめ」に生きているかどうか、だと思う。

前者は、誰もが生き方が場当たりで、「ふまじめ」だった。作者は面白くしたつもりだろうが、倉本聰のことばを借りれば「快感はあるが、感動はない」ドラマだった。
だが後者は、誰もが「まじめ」に生きている。小さな町工場を経営する家族、人力飛行機に奮闘する学生たち。
結局、わたしたちは、「まじめ」に生きている人間の姿に、感動をおぼえるのである。

本書は、クラシック音楽界における女性の活躍が歓迎されない時代に、多くの困難をぶち破って女性だけの交響楽団を組織した「女性指揮者」エセル・スタークの、「まじめ」な生涯を描いた、まさに朝ドラのようなノンフィクションである。

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