【コラム】富樫鉄火のグル新 第366回 新刊紹介/「循環形式」の漫画『音盤紀行』

 たいへん味わいのある「音楽漫画」をご紹介したい。
 近年、アナログ・レコード(「針」で聴く、むかしながらのEPやLP)の人気が再燃している。ポップスやクラシックでも、CDと同時にアナログ盤がリリースされるケースも多いが、中古盤もたいへんな人気である。配信やサブスクの隆盛で、CDの売れ行きが激減しているのに比して、不思議な現象ともいえる。

 人気の理由のひとつに、「アナログ・レコードのほうが、デジタル(CDや配信)よりも、音が温かい」ことがあるという。
 人間は、下は20Hz前後から、上は20,000Hz前後までの音を「鼓膜」の振動で感知できるといわれている。ところが、実際のナマ演奏では、40,000Hz前後までの音が発生しているそうで、それらは、通常感覚では感知できない。だが、その「聴こえない」音が鼓膜や脳に与える刺激が、「温かい音」となって感じるらしい。デジタルは、その「聴こえない」部分をカットしてしまうが、アナログには残っている。だから、「温かい音」を感じる……のだという。

 そんな「温かい音」をもつアナログ・レコードをめぐる連作短編集が、毛塚了一郎著、漫画『音盤紀行』である。
 現在発売中の第1巻には、5話がおさめられている。

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