【コラム】富樫鉄火のグル新 第344回 映画紹介『Coda あいのうた』

 とてもいい「音楽映画」が公開されているので、大急ぎでご紹介します。

 それは映画『Coda あいのうた』(シアン・ヘダー監督/2021/アメリカ)。
 昨年のサンダンス映画祭(独立系映画のコンペ)で、グランプリを含む史上最多の4冠を受賞。配給権の争奪戦となり、史上最高額の26億円で落札したとの話題の作品である。

 マサチューセッツの港町で漁業を営むロッシ家は4人家族だが、父・母・兄の3人が耳が聞こえない聾唖者である。娘で唯一の健聴者ルビーは高校生だが、幼いころから手話を身につけ、家族の通訳としてがんばってきた。
 父と兄は、毎朝3時に起きて漁に出る。
 聾唖者だけの漁船操業は違法のようで、毎朝、ルビーが同乗して漁を手伝ってから学校へ行く。よって授業中は居眠りばかりだが、この家族はたいへん仲が良い。
 しかも父母とも野性的というか派手な性格で、手話でスラングを連発し、アチラ方面もまだまだお盛んだ(母はミスコン出身の美魔女)。兄は暇さえあればスマホで出会い系サイトを見ており、登録女子を母が批評したりしている。
 上映開始後かなり早い段階で、聾唖者は静かに生きているものだとの安易な先入観は、見事に打ち砕かれる。

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