昨今は、小説も映画も漫画も、殺伐とした設定が多い。家庭内暴力、性差別、異常性癖……もううんざりする――と感じている方に、この年末年始にお薦めしたい、癒される漫画がある。
『ねこと私とドイッチュラント』(ながらりょうこ/小学館:少年サンデーコミックススペシャル)である。第1巻が2018年9月に刊行され、最近、第5巻が出た。
ドイツ好き、海外好き、料理好き、おひとりさま暮らし好き、ペット好きな方には、特にたまらない漫画だと思う。
実は、近年、ドイツ在住の日本人を描く漫画が多く、たとえば『ベルリンうわの空』シリーズ(香山哲/イースト・プレス)、『ダーリンは外国人』ベルリン編シリーズ(小栗左多里&トニー・ラズロ/KADOKAWA)、『思えば遠くにオブスクラ』(靴下ぬぎ子/秋田書店:A.L.C.・DX)などが挙がる。どれも体験記が基本のようだが、その癒し度において、本書『ねこと私と~』は群れを抜いている。
これは、ベルリンで”物書き”生活を営む日本人女性「トーコちゃん」(著者自身がモデル)の日常を描いた、最近流行のコミック・エッセイだ。だが、ほかと一線を画しているのが、同居猫「むぎくん」の存在である。
この猫は、当たり前のように二本足で立って歩き、言葉をしゃべり、簡単な料理もするし、買い物にも行く。そのことを、誰も不思議がらず、当たり前のように周囲に溶け込んでいる。
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