【コラム】富樫鉄火のグル新 第340回 新刊紹介『オーギー・レンのクリスマス・ストーリー』

 ポール・オースターの短編小説『オーギー・レンのクリスマス・ストーリー』【C】が、瀟洒なミニ絵本となって刊行された(柴田元幸訳、タダジュン絵、スイッチ・パブリッシング)。正確には、今回で3回目の邦訳刊行である。
 1990年の原文初出以来、30年余の年月が流れたが、いまなお、他国で、こうして「新刊」として読まれ続けるとは、海外文学では珍しいことだと思う。

 本作は、多くのひとにとっては、ウェイン・ワン監督の映画『スモーク』(1995)【D】の原作として知られているはずだ。ニューヨークの古いタバコ雑貨店を舞台に、様々な人々が交錯する、ちょっと不思議な感覚のドラマだった。常連客の作家は、オースター自身がモデルのようだ(役名「ポール・ベンジャミン」は、オースターのむかしの筆名である)。

 本作の最初の邦訳は、『スモーク&ブルー・イン・ザ・フェイス』(ポール・オースター著、柴田元幸他訳/新潮文庫、1995)【A】に収録された。これは、ポール・オースター自身が、原作や監督としてかかわった2本の映画――上記『スモーク』と、その外伝『ブルー・イン・ザ・フェイス』についてのメイキングやメモ、シナリオ、原作などで構成された、一種のファン・ブックだった。

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