いまから40年近く前、新米の週刊誌記者だったわたしは、ある老人と出会った。
中塚貴志さん。当時70歳を超えていたと思う。
日本大学父兄会長を長くつとめ、15年間にわたって日本大学の経営陣と闘いつづけてきた、“日大改革派”の代表だ。禿頭に長く白い顎髭、袴の着物姿で杖をついていた。むかしながらの“国士”そのものの様相だった。小松左京の小説『日本沈没』に登場する、政財界の陰の指南役・渡老人のようだった。
わたしが日本大学出身だったせいもあり、「面白いじいさんだから、一度会っておくといいよ。日本大学のことは、表から裏まで、全部知ってるから」と、先輩に三田の自宅へ連れていかれた。先輩たちは敬意をこめて“中塚じいさん”と呼んでいた。
たしかに”中塚じいさん”は、たいへんな博学多識で、情報通だったが、ここで紹介したいのは、初めて会ったときにいただいた、老人の著書である。
それは『日大 悪の群像』(中塚貴志著、創林社/1984年6月刊)という。
なんとも凄まじい書名だが、中身も、すごかった。
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