【コラム】富樫鉄火のグル新 335回 配信と生演奏

第19回東京国際音楽コンクール〈指揮〉の本選会を聴いた(10月4日、東京オペラシティ・コンサートホール)。民音の主催で3年に一度開催され、1967年の第1回以来、錚々たる顔ぶれの指揮者を選出してきた。今回の審査委員長・尾高忠明も第2回の入賞者である。

 前回(2018年)の1位は、いま話題の、沖澤のどかであった(2019年にはブザンソン国際指揮者コンクールでも優勝)。入賞者デビュー・コンサートで聴いた、彼女が指揮するメンデルスゾーンの交響曲第3番《スコットランド》は、若々しい壮快な演奏で、とてもよかった。わたしはすぐに、知己のオーケストラ関係者に「ぜひ彼女を客演に呼んでほしい」とメールをおくった記憶がある。

【余談】沖澤のどかは、青森県立青森東高校の吹奏楽部で、オーボエ担当だったという。何度か東北支部大会に進出している名門だが、おそらく彼女は、福田洋介のコンクール課題曲《吹奏楽のための「風之舞」》(2004年度)を演奏した世代だと思う。一度、彼女の指揮で聴いてみたいものだ。

 今回、1位となったのはブラジルのジョゼ・ソアーレス(23歳)で、複雑な変拍子の、ストラヴィンスキー《ペトルーシュカ》抜粋を暗譜で演奏した(当初申告の3曲から、主催者が1曲を指定。全員共通の課題曲は、ロッシーニの歌劇《泥棒かささぎ》序曲)。こんな道楽者のわたしでさえ、聴き惚れ、見惚れる指揮ぶりで、終演後「あまりにダントツだねえ」と、ロビーで知人と話したものだ。
 今後、彼がどの国で、どのように活躍するのかわからないが、おそらくそう遠くない時期に、名が知られるようになるのではないだろうか。

 ところで、今回は、「宣言」も解除されたとあって、席数を絞っての有観客開催が可能となった。だが、同時に無料配信もおこなわれた(事前申し込み制)。わたしは、どっちにしようか迷ったのだが、ちょっと気になる点があったので、会場まで出かけて、ナマ演奏を聴かせていただいた(演奏終了後、仕事場にもどって、審査発表や表彰式は配信で視聴した)。

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 わたしは、毎夏、お盆近くの時期に、東京都高等学校吹奏楽コンクール(いわゆる都大会予選/府中の森芸術劇場)に4日間通って、A組70団体前後の演奏を全部聴いている。
 よく「お好きですねえ」と笑われるのだが、東京のA組を聴いておけば、おおむね、その年の吹奏楽界の人気曲や演奏団体の変化などがわかるので、夏休みをかねて、毎年通ってきた(肉体的にはかなりシンドイが)。
 昨年度がコロナ禍で中止となり、今年度はどうなるかと思っていたら、「無観客/有料配信」で開催された。

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