【コラム】富樫鉄火のグル新 第330回 マリヤ・ユージナとスターリン(2)

 ユージナがスターリンのために弾いたモーツァルトの協奏曲第23番は、CD26枚組ボックス・セット『The Art of Maria Yudina』(SCRIBENDUM)のCD4に収録されていた。アレクサンドル・ガウク指揮、モスクワ放送交響楽団の演奏で、「1948年」収録とクレジットされている。
 「あれ?」と思った。
 いままでのレコードやCD、ネット上の記述では、「1943年」「1944年」など、さまざまに書かれてきた。ユージナは、そうたくさんのレコードを残したひとではない。おなじ顔ぶれで、おなじ曲を、そう何回も録音はしなかっただろう。

 わたしが持っている、2019年にリリースされた「モスクワ音楽院」レーベル(Moscow Conservatory Records)のCD(上掲左)も、おなじ顔ぶれで、音源としてもおなじだと思うのだが、こちらは「1947年6月9日、モスクワにてスタジオ録音」と細かくクレジットされている。このレーベルは、モスクワ音楽院の自主製作盤で、同院ホールでのライヴや、同院に縁のあったアーティストの音源を発掘リリースしている(ユージナは同院の教授だった)。
 よって、情報も信頼できるはずなのだが、ライナーノーツではなぜかこの音源についてだけ、詳しく触れられていない。単に「CD2の最後は、ユージナの代表作、ピアノ協奏曲第23番イ長調KV488の伝説的な録音である」としか書かれていない。
 まあ「代表作」「伝説的録音」とあるのだから、たぶん、「事件」の該当音源なのだろうが。

この続きを読む

コメントを残す

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください